突然の入学
「アグレア〜!お主ちょっとメルナレフ魔法学園に入学してくれない?」
は?ボケたかクソジジイ。衰えた脳みそは魔法でも治せませんよ。
と、口から暴言を吐き出しそうになるが相手は国王。そのようなことを言えるわけもなく、量を半分に減らすことにする。
「は?ボケたかクソジジイ」
「国王相手にその暴言は酷くない?ワシ泣いちゃうよ?」
泣きそうになってるボケジジイは置いておいて。
国王の脳みそがいくら衰えたからと言って流石に意味のない命令は下さないだろう。
こいつが出す命令は大概意味がある。しかも直々に、となれば相当重大な任務だ。それを断るわけにはいかないだろう。それはそれとして毎回クソ理不尽だから殺したくなるけど……完全犯罪の方法ねぇかなぁ。
とはいえ魔法学園への入学か。俺は今年26になるが……魔法学園に年齢の制限はない。一応何歳でも入学はできるわけだ。
この世界の学園を体験したことない俺としてはまあそう悪くないだろう。一応王国内でも上から数えた方が早いくらいには強いしな。無双して女の子にモテモテになって「きゃー!アグレア様素敵!抱いて!」となることは間違いないだろう。そうだろう。
「素晴らしい任務ですね!謹んで拝命します!」
「何その態度の代わりよう……お主が考えてること大体分かったわ」
当たり前だ。魔法の「ま」も知らないようなひよっこども相手に無双できるとなればそれは相当楽しいだろう。生意気なガキわからせてぇ……古代魔法とか使ってボコボコにしてぇよ……そしてモテたい!
「あー、その、妄想してるところ悪いんじゃけど……学園に入学するときに魔力ほとんど封印してもらうから」
「は?」
何言ってんだこいつ。
「いやそんな意味がわからないって顔されても……そもそもそういう任務じゃないし、あんまり目立ち過ぎると困るんじゃよ……」
……そういえば任務の内容書いてなかったわ。どうせクソ面倒なんだろうが……まあ、聞くか。
「……どんな任務なんです?」
国王は非常に情けない顔を引き締めて、一気に真面目な表情になる。……やっぱ相当な面倒ごとだな。
「『予言』が出た」
「クソがよ」
『予言』。それは最上級の厄介ごとを指す。
ウチの王国には預言者がいる。普段は大して使い物にもならんが、本当に厄介な出来事が未来に起こる場合、先んじてそれを予知するのだ。
そして予知されたクソみてぇな災厄は俺たち『王国の七剣』が処理する。面倒ごとだけ任せやがって〜!便利屋じゃねぇんだぞ!
「予言によると、どうやら数ヶ月以内に魔法学園を魔族が襲うらしい。規模は≪大≫。このままでは魔術学園、および王国にとって甚大な被害を出すじゃろう」
「……それで?」
「≪王国の七剣≫に任せれば解決するという予言も同時に下った」
本当に俺たちを便利屋とでも思ってるんじゃねぇだろうな。
「そこで我々は≪王国の七剣≫の中で最も対応力が高い≪大地≫の名を冠す君に事前に潜入してもらい、いつでも対応できるようにしてもらいたいのだ」
そうは言うけどよぉ。
「入学しなきゃダメなんですか?」
「ダメじゃ。どのような状況でも対応できるように、学園内部にいることが好ましい」
……全くよぉ。面倒ごとは全部俺たちに放り投げやがって。
「そう嫌な顔をするな……ワシとて毎回このような命を下すのは心苦しいのだ」
「分かってますよ」
そもそも、俺たちはそのための剣だ。
王国の敵を全て殺すための剣。討ち滅ぼすもの。
俺たちの存在理由はそれだ。
「……他のやつじゃダメだったんですか?」
「……お主も分かりきっておるだろう」
分かってるよ。俺たちは全員人格破綻者だ。
その中で俺が1番マシだから任されたってだけだろう。全く真面目だと苦労するぜ。
「で、いつ入学するんです?」
「うむ。そのことじゃが……明日じゃ」
「は?」
もっと早く言え!!!バーカ!!!!!