「ノックせず部屋に入って裸を見てすいませんでした」と幼馴染の部屋に入った経緯を誠意をもって説明しつつ教室で土下座したら真っ赤になって許してくれた。誠実さって大事
「どうもすいませんでしたあああ!」
俺【ラック】は幼馴染のエステルに土下座した。
「何!何なのよ!急に意味が分からないわ!」
エステルは金髪ツインテールとブルーの瞳。
学園で1番と言われる美少女だ。
レアな光魔法を使いこなし、皆を癒す聖女。
更に攻撃の苦手な光魔法にもかかわらず、高い魔力でカバーし戦闘能力も高い。
まさに完璧聖女なのだ。
対して闇魔法を使う俺は無様に土下座して額を床に擦り付ける。
教室のみんなが俺とエステルを囲む。
「ラックが完璧聖女に土下座してるぜ」
「何があったの?」
「二人とも早く付き合えばいいのに」
「だから何で土下座してるのよ!」
「説明が必要か?」
「分からないから聞いてるんでしょ!」
俺は土下座を解除し、黒板の前に立って、チョークを駆使して説明を開始した。
「俺はエステルの部屋に入るとエステルが着替え中で裸を覗いてしまった」
「ちょ、ストップ!いつもエステルの部屋に行ってるの?」
女子生徒が俺に質問してくる。
「その事はもういいわ!怒って無いからもう終わりよ!」
エステルが俺の講義を止める為顔を真っ赤にしながら俺に詰め寄る。
俺はエステルの口を押えて抱きしめる。
「ネットバインド!」
闇の糸がエステルを包んで動きを拘束した。
「エステルを完全に拘束している!なんて魔力量だ!」
アミアミの糸で拘束され顔を真っ赤にするエステル。
更に口にも闇の糸を撒いて拘束し、椅子に座らせ縛っておく。
「なあ、裸を覗くのも悪いが、エステルを拘束するのも悪くないか?」
「俺は誠実に説明しようとしている。みんなに話す事にした以上誠実に伝える」
「し~!話を聞きましょう。続きが気になるわ」
「そ、そうだな。いつもエステルの部屋に行ってるのか?」
「そうだ、俺はよくエステルの部屋に行き、料理が出来た事を伝えに行く。その代わりエステルの浄化魔法で洗濯と掃除はすべてやってもらっている。と言うかルームシェアしている」
「わ~お!」
「やっぱり付き合っていたのか」
「ん~~~~~!」
エステルが芋虫のように暴れる。
「付き合ってはいない。エステルは完璧と言われるが家に入ると無防備で、長いTシャツにパンツだけというだらしない格好をする一面もあるが、それも含めて完璧と言えるだろう」
芋虫のように暴れるエステルを無視して皆がラックに群がり質問する。
「なあ!や、やっぱり朝起こしたりとかそういうのはあるのか?」
「実は俺は朝が苦手で、エステルは長いTシャツにパンツだけの無防備な恰好で俺をゆすって起こしてくれる」
「天使かよ!うらやましぜ!早く付き合っちまえよ!」
「ほかにルームシェアではどんなやり取りがあるの?」
「俺が風呂に入っていると、待ちきれないと言ってタオルを巻いてエステルが入ってきたり、俺がエステルの肩や腰を振動させてマッサージをしたり、食事が夜遅くになるとエステルがテーブルでうとうとし始めて、俺がベッドに連れて行くが、無防備に身を任せて受け入れてくれる部分も完ぺきと言えるだろう。嘘をつかず誠実に言うとそんな所か」
「そ、それで?エステルの裸を覗いちゃった経緯を教えてよ!」
「うむ、俺は不覚にも夕食の前にノックをせずエステルの部屋に入ってしまった。たまたまタイミングが悪く、魔力修行を終えた後なのか汗で火照った顔の全裸のエステルを見てしまった。だからエステルに謝りたいのだ。そのせいで最近エステルに話しかけても反応が悪い。誠実に謝り許してもらいたい」
「話は分かった!土下座の続き!見守るぜ!」
「応援するわ!」
「頑張って!」
「おいおい、その前にエステルの口の拘束を解こうぜ!」
エステルは、全部の拘束を解いてよ!?と言う顔で訴える。
エステルの口の拘束が解かれると大声で叫び出す。
「おかしいでしょ!ここでやる必要ないよね!?なんでみんなが見ている前でやるの!?」
「まだ怒っているようだ、誠実な土下座を開始する!」
「ちょっと聞いて!」
俺は綺麗に土下座した。
「本当にすいませんでした。許してください。すぐに部屋から出て行かず、エステルの真っ白な尻と、胸に目を奪われ、エステルの胸のふくらみからくびれ、そして大きくなった尻、ふとももを上から下にじっくり観察するように見てすまない!俺は誠実に嘘をつかず言おう!エステルの完璧な体にドキドキしてしまった。さらにエステルが慌てて光魔法で俺の目つぶしをして、目の見えなくなった俺は縋るようにエステルに抱きつき、腰から太ももまでを撫でるようにさすって眼のの回復魔法を懇願してしまい本当にすまない」
「止めて!」
「誠意を持って言おう!俺は途中から回復魔法よりエステルの柔らかい肌に気持ちがいってしまい、エステルの少し高い体温と、スライムマシュマロのような吸い付くように柔らかな肌の感触を感じる為に自分の手に超集中してしまったこと!心より誠意をもって謝らせてくれ!さらに、『わ、分かったから離して』と言って俺を気遣いつつ引き離そうとするその優しい性格と手のぬくもりにもドキドキしてしまい本当にすまない!」
「も、もういいわ!怒って無いから!」
「さらにそのドタバタでエステルが転び、目の見えない俺はエステルを押し倒すような体勢になって本当にすまない。誠実に言おう!俺の心臓は高鳴り、いけない気分になり、更にエステルの柔らかな体に手を押し当てる形となって本当にすまない!」
「も、もうやめて!」
エステルが見た事が無いほど真っ赤になる。
「ラック君!そろそろやめて!エステルのライフはゼロよ!」
「もうやめてくれ!エステルに『恥ずかし死メンタルブレイク』がかかってる」
「ラック!エステルの拘束を解いてくれ!」
「エステル!ごめんね!気になってついついほおっておいちゃったよ!」
俺はエステルの拘束を解いた。
「許してくれるか?」
「お、怒って無いからもう黙ってよお!」
「そうか、エステルに嫌われたくなくて、誠意を持って対応した」
エステルは真っ赤になって「と、トイレに行ってくる!」と言って走って教室を出ようとし、つまづいて転ぶ。
もう恥ずか死しすぎて教室に居られない為か焦っているようだ。
パンツを隠して急いで起き上がって走り去った。
「白のエステル」
「白き盾のエステルと黑き剣のラック、凄まじいな」
「ラック!おそるべし!」
「戦闘能力だけじゃなく、精神攻撃も強すぎるだろ」
「流石エステルに唯一張り合って勝てる男」
「恥ずか死メンタルブレイカー」
「早く付き合えばいいのに」
その後男子生徒の間でスライム狩りが流行る。
◇
魔法戦闘試験が始まった。
生徒同士で戦い、能力を競うのだ。
学園1年の俺とエステルは全勝して最後俺とエステルの対決が始まる。
「やっぱりあの二人の戦いになるか」
「予想通り過ぎる」
ラックとエステルが対峙する。
「ラック、今まで勝てなかったけど、私も頑張って強くなったわ。それにあらかじめ体に光を纏わせることで拘束の闇魔法はもう効かないわ」
「エステル、胸が大きくなって服がはちきれそうだ。胸を考えて服を大きくした方がいい」
エステルは赤くなった。
「何の話よ!」
「こ~ら、イチャイチャしない。そう言うのは先生の居ない所でやってくださいね~」
美人の先生がおっとりと注意した。
「イチャイチャしてません!」
「ふ、俺は望むところだが?」
「ラック君黙ってね。試合開始。2人とも付き合えばいいのにねえ」
エステルが光のビームを発射する。
俺も闇のビームを発射し、お互いのビームがぶつかり打ち消し合う。
「く、負けないわ!」
エステルがさらに魔力を込めた。
俺はエステルに合わせて拮抗するように力を出す。
光と闇の魔力が反発して空間が歪む。
「ストップ~!ストップ!!」
ブラックホールが発生し、エステルが引き込まれそうになる。
俺は全力で走り、エステルを抱きしめ、全力でその場を離脱する。
「グラビティブースト!」
俺は無事逃げ出し、エステルに覆いかぶさるようにしてエステルを守る。
ブラックホールで闘技場が半壊した。
そして、エステルに跨るように馬乗りになった俺。
エステルは体ではなく顔を両手で覆い、真っ赤な顔を隠す。
「「早く付き合えって」」
皆ラックの強さを知っているので2人の心配はしていない。
それより早く付き合っちまえよ感が大きいのだ。
◇
学園長の部屋で俺とエステルは怒られた。
「エステルとラックの戦闘を今後禁止します。それと、ダンジョンに潜るパーティーですが、2人で組みなさい。どうせ結婚するんでしょ?」
「ち、違います!」
「エステル、可能性を狭めるのはよくない。魔法使いは柔軟な」
「ラックは黙ってよ!」
「わ、私たちは違います。違うんです」
「エステル、黙って私の話を聞きなさい」
「だからちが!ふぐ~」
俺はエステルの口を無言で抑えた。
「なんで、口を、押えふぐ~」
「あなたが黙ってと言ったでしょう?だからきっとラックは無言で口を閉じさせてるのよ。それとわたしも2人には黙っていて欲しいです。そのままで話を聞いてくださいね。2人が組むことは決定です。嫌だとかそう言うのは聞きません。以上です。下がりなさい」
エステルは真っ赤になりながら顔を赤くして部屋を後にした。
扉が閉められる。
学園長は扉が閉まるとコーヒーを淹れて一口すする。
「ふ~、早く付き合えばいいのに」
◇
俺とエステルは2人組のパーティーとしてダンジョンに潜る。
「しょ、しょうがないわよね。学園長の言葉には逆らえないから一緒に行動しましょ」
「うむ、エステルが疲れたら俺がおんぶしよう」
「まだダンジョンに入ったばかりよ!」
魔物を余裕で倒し、俺の収納魔法で回収していく。
どちらか1人だけでも戦いは余裕なのだが、2人一緒に行動する。
すれ違う生徒全員がにまにまと俺とエステルを見る。
休憩ポイントにつくと、俺はストレージから食事を取りだし、エステルは俺に浄化の魔法をかける。
流れるように自然と息が合い、周りの生徒が思わず声を出す。
「もう出来上がってる!」
そこにけが人の生徒が運ばれてくる。
「奥に魔物の群れがきゅうに現れた。まだ奥に人が居る!」
「エステル!治療を頼む!」
「ラック!魔物を全滅させて救出して来て!」
俺は走って奥に進む。
後ろからは休憩していた生徒が追ってくる。
「ゴブリンの群れか。ブラックショット!」
黒い魔法の弾丸を無数に飛ばし、ゴブリンを全滅させた。
「ラックが戦っている内に負傷者をエステルの所まで運べ!」
「ゴブリンキングだ!」
正との声で目を向けると、ひときわ大きいゴブリンが姿を現す。
「グラビティフィスト!」
俺は手のひらをかざして黒い球体をゴブリンキングに飛ばす。
ゴブリンキングを黒い球体が包むとかざした右手を握りつぶす。
それに連動して球体が一気に収集くして爆発すると、ゴブリンキングは倒れた。
残りの魔物が居ないか確認すると、エステルが皆の回復を終えて、俺とエステルは笑顔でハイタッチをした。
「「だから早く付き合えって」」
◇
ラックがボロボロになって帰ってきた。
血を服ににじませ教室に入る姿を生徒全員が注目する。
「エステル!竜を倒して来た。決めていたんだ。竜を倒せたらエステルに告白するって!」
「今ここで!!」
「場所など些細な問題」
「大問題よ!」
「頼む。付き合ってくれ!竜の指輪を作るために店に行きたい」
竜で作った指輪は最高峰の愛の証。
「ちょっと!声が大きいわ!」
俺は土下座した。
「誠意をもって言お」
エステルが俺の口を手でふさいだ。
「わ、分かったわ。教室を出ましょう!」
「それは店に来てくれるのか?そうでないなら誠実に、むぐむぐ」
ラックとエステルは教室を出て行った。
教室では2人の話で盛り上がる。
「エステルって、ラックの事が相当好きだよね?」
「ラックのあの性格で一緒にいるって相当好きだよ。あの性格を分かって一緒に居るから」
「ああ、相当好きだよな」
「でも、2人のあの感じ、好きだな~」
「俺は早く付き合えよって思うぜ」
「でもそうなったらあのやり取りが見れなくなっちゃうよ」
この教室では2つの派閥があった。
【黙って2人のやり取りを楽しみたい放置派】
そして【早くお前ら付き合えよ派】だ。
前まで少数派だった【黙って2人のやり取りを楽しみたい放置派】が勢力を急速に拡大させる。
「なあ、最近分からなくなるんだけど、【誠実】ってなんだろうな?」
「ラックを見ていると常識を壊されていくよね?」
「誠実に何でも正直に言えばいいってものでもないよな。優しい嘘や沈黙も必要だ」
「ラック君は思った事を全部言ってるよね?」
「ある意味裏表も無いし、正直で誠実、か」
「うん、深いな」
ラックは誠実さと言う名の言葉のナイフでエステルを何度も【はずか死】させる。
2人の関係はなかなか進まないのであった。
「「早く付き合えばいいのに」」
「「もっと揉めて欲しい」」
2つの派閥が同時に思いを口にした。
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おバカ系作品です。