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ヤンキー君は凝り性  作者: 暁 龍弥


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4/20

「距離のはじまり」

夕方の空は、朱色と紺色が混ざり合う手前の、美しい色をしていた。

校門を出る頃、風はほんの少し肌寒く、制服の袖を揺らしていた。


今日の出来事を反芻しながら歩く足取りは、どこか落ち着かなくて、だけど悪くはない。


「……神宮寺、か」


名前を口にした途端、視界の端で何かが弾けたような感覚になる。

胸がざわつく。いや、落ち着け。まだ2回しかまともに話してない。


好きとか、恋とか、そんな軽い言葉で片づけるほど安っぽい感情じゃない。


ただ——


「気になる。やけに」


そんな自覚だけが残る。


スマホが震いた。妹からかと思ったが違った。


《差出人:神宮寺玲》


心臓が一瞬で跳ねる。


(……マジで連絡きた)


メッセージは短い。


『さっきの話、ありがとうございました。

それと、もし嫌じゃなければ……また話したいです』


ただそれだけ。その一文に、妙な温度があった。


「……こっちだってだよ」


呟きながら返信を打とうとしたその時だった。


——不意に、後ろから声がした。


「冬木っ!」


振り返ると、クラスの男子2人が走ってきていた。

一人は明るい茶髪のスポーツ系、もう一人は黒髪の眼鏡、いかにも頭良さそうなタイプ。


「よかった、名前覚えてた! 冬木だよな!」


「……間違ってはない」


「だよな! あのさ、昼の自己紹介で“料理得意”って言ってたじゃん?」


「ん」


「俺らさ、自炊できなくてさ……寮生活なんだけど、もう既に詰んでて……」


眼鏡の方が深刻そうに言う。


「インスタントに頼るのも限界で……冬木の、なんというか……料理力に救われたいというか……」


「助けてくださいお願いしますウマいもの食いたい!!」


突然90度に曲がって頭を下げてきた。

通行人がこっちを見て驚き、避けていく。


「……頭あげろ。怪しいことしてるみたいだろ」


言いながら、俺は笑ってしまった。

面白い。相手にされなかった中学時代にはなかった感覚。


「別にいいけどよ。金とか手伝いとかはいらん」


「マジ!? 神……いや、死神じゃなくて神!!」


「だから死神言うな」


「ごめん!!癖で!!」


二人は慌てふためきながらも笑っていた。


「名前聞いてなかったな」


「あ、俺は三浦! 三浦太陽! 太陽のヨウ!」


「俺は黒瀬。黒瀬晴はる。数学得意。冬木の勉強会、マジ期待してる」


(出た、神宮寺情報……早速流れてるんだな)


「別に確約はしてねぇぞ」


「でもやるだろ!? 見た目こえーけど中身いいやつだもん!」


「言い方は選べ」


この2人——

三浦はバカ正直で明るい。

黒瀬は頭良いくせにちょっと抜けてる。


だけど今の俺に必要なのは、こういうやつらかもしれない。


「じゃあ週末、寮の食堂借りろ。俺行く」


「マジか!!うおおおお!!!!」


「うるせぇ目立つ!」


三浦の声に通行人の視線が刺さる。

俺はフードも帽子も持ってない。隠れられる風貌じゃない。


「……ありがとな」


黒瀬が静かに言った。


「お前みたいなやつがクラスにいたら、なんか楽しくなる気がする」


「……期待しすぎるなよ」


「うん。でも、頼るから」


素直すぎる言葉だった。


三浦と黒瀬は、信号の向こうへ走っていった。

その背中がなんだか眩しい。


(……友達、か)


ゆっくり、ちゃんと、関係が変わり始めている。


スマホを見る。


『また話したいです』


神宮寺からのメッセージは、まだそこに残っていた。


俺は深呼吸して返信を打つ。


『また話そう。今度はお前の番だ』


送信ボタンを押してすぐに返信がきた。


『うん。楽しみにしてます』


短い。なのに、胸に残る。


(……俺、面倒な人生を選んだかもしれねぇな)


でも悪くない。


風がまた制服を揺らす。


今日からの高校生活は、静かなものにはならない。

だけど、きっと悪くない未来になる。


胸にその予感だけ抱きながら、俺は家へと歩き出した。


新しい作品も書いてるのでぜひ見てください!!

愛を求めてどこまでも〜男はどこまでも行く。あの言葉を胸に

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