第ニ章『異世界2話』
空席の宿が見つかったので、私と師匠は早々にチェックインを済ませ、荷物を部屋に置き早速噂の『異世界に続いている』トンネルに向かった。
トンネルにたどり着き早速トンネルの中に入ろうとした私と師匠だが、トンネルの横に看板らしき物が立っているいる事に気付き、そちらに目を向ける。
その看板は白い板に赤い文字で『このトンネルは長年整備されていない為倒壊の恐れがありますので中に入らないでください』と目立つように書かれていた。
「立ち入り禁止…師匠。このトンネル入っちゃいけないみたいだよ?」
「『立ち入り禁止』と書かれているだけで別に(無許可で立ち入った場合、罰則を科します)とは書いていないでしょう?要するに住民が書いただけで法としては成立していないのよ!
要するに(立ち入り禁止だけど、もし立ち入った場合責任は一切請け負いません)と言ってるのよ!だから入っても問題ないわ♪」
言われてみれば確かにそうと捉える事はできるが、逆に考えると立ち入り禁止になる程危険な場所と考える事もできる。それなのにどうしたらそんな考えに至るのか私は不思議でしょうがない。
「という事だから早速行くわよ!ユリス!レッツゴー!」と私の考えている事をそっちのけで師匠は私の背中に周りグイグイと背中を押してきた。
「師匠は先に行かないの?」
「・・・」
「もしかして師匠怖いの?」
私がそう言うと師匠は一瞬(ビクッ!)と肩をピクつかせて見せるが、直ぐにニッコリと笑みをうかべながら私の顔を覗き込んで話してくる。
「違うのよ。私は歩くのが遅いからユリスに迷惑をかけないようにあ・え・て後ろにいるの。決して怖いからではないのよ。私はお年寄りだから優しく扱ってねユリス。」
「お年寄りって…師匠まだ20代じゃ…」
「お年寄りに年齢は関係ないわ!」と師匠はそういいながら威張っていた。何言ってるのかなこの人は…。
そんな師匠に背中を押されながら私は『異世界に繋がる』と言われるトンネルへと入って行くのであった。
トンネルの中に入ると中は幾つものレンガが積み重なり、円を描くようにレンガが並べられていた。レンガは所々亀裂が入ってる物や砕け落ちているものも見受けられ、本当に整備されていないのが分かる程ボロボロになっていた。
「師匠…やっぱり整備されていなくて危なさそうだから帰ろうよ…それになんか此処怖い。…」と師匠に伝えるが師匠は満足していなさそうで「もう少し先を行ってみて何もなかったら帰りましょう」と無理やり背中を押され更に奥へと進む。
しばらく奥へ進むと明かりが見えてきた。どうやらトンネルの出口のようだ。私と師匠はそのまま直進しトンネルを抜けるとそこは草木で覆われ人っ子一人いない森へたどり着いた。
森を20分程歩いてみると、前から見える光に気づき足を止めた。目を凝らして光の奥を覗くと、そこは幾つものロウソクの火で照らされた街が見えた。私達が光と勘違いしていたのはロウソクの火だったらしく、そのロウソクの火が綺麗に道を照らしていた。
私は森を抜けロウソクで照らされた道を眺めながらゆっくり歩いてった。
「わぁー!綺麗!街並みは向こうの国と似てるけど向こうの街とは違って夜は電気じゃなくてロウソクの火で街を照らしてるんだ!師匠も来て来て!」と未だに森の中で隠れている師匠を呼んでみるが一向にこっちに来る気配がない。
「師匠?どうしたの?」と問い詰めながら師匠の所まで近づいてみると師匠は「まずいわね…」と言いながら顔を強張っていた。
「まずい?何がまずいの?こんなに綺麗な街のどこが…」っと私が話していると奥からガサガサっと足音が聞こえた。
私はガザガザと足音が聞こえた方へ視線を向けるとそこにはここの住人らしき大人達がでこちらに向かっているのが見える。大人達の中には腰に刀を刺している者やロープを肩に背負っている者が見受けられる。
そしてそのうちの一人が私と目が合うと、「侵入者だ!捕らえろ!」と周りの人達に聞こえる声で叫び、叫び声を聞いた他の大人達はここぞとばかりに急ぎ足で私達の所へ向かってきた。
私は状況が掴めず、「師匠!どうしよう?説得したらダメかな?」と問いかけるが反応がない。
師匠からの反応がないのも無理もないだろう。当の師匠はと言うと私の事を連れていく事もせず先ほど出てきたトンネルの方へと全力疾走で逃げていた。
「えぇ!?逃げるの!?って逃げるの早くない!?置いてかないでよ師匠!」
私も師匠に付いていこうとトンネルの方へ振り向き走ろうとしたが時はすでに遅く腰に刀を刺している住人に体を抑えられてしまう。
必死で抵抗しようとも思ったが大人の力には勝てず、簡単に取り押さえて身動きすらできない。
「うぅ…助けて師匠…」私が助けを求めるが師匠の姿はどんどん小さくなる一方、私は大人達に無理やり手を前に出され、両手を縄で縛られ街の中へ連れていかれる。
「もう一人は草むらに逃げたぞ!追え!」と他の大人達は師匠を捕まえるべくトンネルの方へと走っていった。
こうして私は両手を縛られたまま街の中へと消えていった。