戦闘員Aの指導
戦闘員Aは変革を求めて指導員の指導を受ける。指導員という存在が女神によって創造されてからは組織の戦闘員の質は飛躍的に向上し続けていた。指導員の指導は的確であり戦闘員Aは指導員の指導によって戦闘が強くなったと実感していた。指導員の指導を信じなければ強くはなれない。それなのに戦闘員Bはどこ吹く風といった雰囲気で指導員の話を聞いていた。
女神の奇跡によって指導員のような存在に進化する戦闘員もいる。指導員と呼ばれる存在が現れてから組織の戦闘員の質は飛躍的に向上したという。指導員の指導を受けることによって戦闘員には様々な好影響がもたらされる。指導員は今では組織に欠かせない存在になっていた。
組織の戦闘員は組織の増強のために指導員の指導を受けなければならない。戦闘員AとBが指導員の指導を受けているのも戦闘員としての革新を求められているからだった。戦闘員一人一人が強い意志と能力を持てば組織の理念の達成の時期はより早くなる。組織の理念を邪魔しようと存在に対抗しなければならない。戦闘員AとBはそれぞれの映像記憶をチェックされると同時に指導員から質問を投げかけられる。
「お前はそんなに処分されたいのか? 001001番。どうなんだ? 」
戦闘員Bの態度は指導員の前だと少しだけまともになる。戦闘員Bの発言は慎重に言葉を選んでいるようだった。
「我々は組織のためだけに存在する。我々はそれ以上の存在足り得ない」
指導員の指導には精神教育も多分に含まれている。精神の再教育や精神の向上を図る前には精神状態を理解するのが非常に重要だった。指導員は組織の理念を肯定するとともに、戦闘員Bの心の中を聞こうとする。
「我々が組織のために存在するのは分かっている。重要なのはお前がそれを理解しているのにお前の態度には組織の理念が反映されていないことだ。我々は進化には多様性が必要だと理解しているが、我々を退化させるような多様性は必要としていない。お前がその態度を改めない理由を聞かせろ」
指導員も組織の戦闘員の処分を決定する権限を持っている。組織にとって不必要と判断を即座に下す指導員もいれば、処分の権限を行使せずに粘り強く指導する指導員もいる。戦闘員AとBの前に座っている指導員は即刻で処分するという噂と処分したことがないという噂のどちらともが流れていた。
戦闘員Bは自分が処分されたくなければ処分されないように答えなければならない。戦闘員Aは横で戦闘員Bが指導を受けているのを見ながら、戦闘員Bが態度を改めると答えればいいと思っていた。戦闘員Bが態度を改めなければいけないのは誰の目から見ても明らかだ。指導員の指導でも何度も同じことを言われている。
戦闘員Bは指導員の尋問のような質問を聞いても怯む様子はない。戦闘員Bは真っすぐと指導員の顔を見て質問に答えた。
「我々は多様性を必要としている。大いなる真実が一つの事象において正解でない時もあるからだ。我々が退化を望んだことはなく、我々はさらなる一歩を歩むために存在している」
組織の戦闘員が指導員に反省や過ちを言及された時には組織の理念を述べるのは組織の戦闘員の慣例の一つだった。言葉を繰り返すことによって内面の思想を強化しなければならない。それも組織の戦闘員としての心得の一つだった。
しかし、指導員は戦闘員Bの返答に納得している様子はない。指導員は間髪入れずに鋭く指摘する。
「どんな理念でも行動が伴わなければ無いと同じだ。平和を説く差別暴と力を認められない理由と同じで進化を唱えながら退化する行動をする存在を認められない。美しい理想を語りながら醜い生きる連中を卑怯者と呼ぶように、醜い主張をしながら醜さを美しいとする連中もまた偽善者だ。お前は何者なんだ? 」
戦闘員Aには戦闘員Bが今まで生き残れた理由は分からない。戦闘員Bには向上心の欠片も感じない。戦闘員Bのような者が組織の革新の一助になるとは考えられない。戦闘員Bのような存在は組織によって処分されるべきなのだろう。戦闘員Aはそんな風にも考えていたが、そうは思わない瞬間がある。
戦闘員Bは指導員に対して一歩も引かずに言葉を述べた。
「私は前に進む者です。そして、私は組織から生まれた存在です」
戦闘員Bの真っすぐな言葉を指導員は正面で受け止める。戦闘員Bの言葉に周りが動けないことが今までに何度かある。時には組織の戦闘員に対して向けられた言葉であり、今のように指導員に対して向けられる言葉の時もある。戦闘員Bの動じない姿には組織を推進させる力になると感じさせる。指導員が戦闘員Bを処分しない理由も戦闘員Bを処分すると多様性の理念からはずれると思っているのではないか。戦闘員Aは指導員の内面をそのように推察していた。
指導員は戦闘員Bから目を離さずに静かに呟いた。
「私ではなく我々だ。注意しろ」
戦闘員Bは指導員の言葉を受け入れる。指導員は今回も戦闘員Bを組織に必要と判断したようだった。それか、戦闘員Bを進歩できる存在だと判断したということ。女神によって指導員となった存在が戦闘員Bは組織に好影響を与えると考えた。指導員の力は指導員と呼ばれる存在が組織に現れてから、現在までの間に確かに証明されてきた。戦闘員Aのような一戦闘員が指導員の判断を疑うべきところではない。
指導員は戦闘員Aの方を向く。指導員は戦闘員Aを優しく褒めた。
「お前はよくやっている。組織の理念を忠実に実行して、任務への態度も立派なものだ。言うべきところはない」
戦闘員Aは指導員に敬意を表す敬礼をする。
「光栄です。我々は革新をして進歩を続けます」
戦闘員Aの組織への忠誠心は今までの行動からしても疑いようがない。戦闘員Aが組織に悪影響を与える理由など考えなくてもよかった。戦闘員Aのような存在は世界の進化や変革の力の助力となる。戦闘員A自身も自分の今までの誠実な働きぶりから、自分が組織の理念を実行している者だと思っていた。戦闘員Aは任務を終えた時のように指導員に礼を述べる。
「我々はまた進歩しました。指導員のお力添えを感謝します」
指導員は戦闘員Aに敬礼を返す。戦闘員Aは指導員と組織の理念によって繋がっていると強く感じたが、指導員の手が伸びたのは戦闘員Bの肩だった。指導員は真っすぐと戦闘員Bを見つめて組織の理念を強く強調する。指導員の言い方は戦闘員Bを変えようと強く言い聞かせているみたいだった。
「我々は進化のために存在する。それを決して忘れるな」
戦闘員Aも指導員と同じように戦闘員Bに組織の理念を言い聞かせてきた。戦闘員Bは組織の戦闘員としての態度を改めなければならない。戦闘員Aは指導員の対応を理解しつつも、自分の中に小さな暗黒の感情の芽が根付いているのに気づかずにはいられなかった。この黒い感情は組織のために何の役にも立たない。戦闘員Aは心の中の小さな芽を刈り取って組織への忠誠心を強く認識する。戦闘員Bが立派な組織の戦闘員になれば組織が前へと進む推進力になるという事実だけが組織にとっては重要である。戦闘員Aは組織への忠誠を心に刻みながら戦闘員Bと共に指導員の元を後にした。真面目な態度ではない者の方が指導員の指導に熱が入る。戦闘員Aは指導としては当たり前の事実も指導員のいる場所に置いてきた。