表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦闘員Aの希望  作者: k a t
第二話 戦闘員Aの葛藤
11/11

戦闘員Aの戸惑い

組織の戦闘員が自由な意思を持つことによって組織の理想が推進するという考えは組織において特殊だった。戦闘員Aはこんな扱いを今まで受けたことがない。それでも、戦闘員Aは施設の方針に戸惑いつつも一人の組織の戦闘員として順応しなければならないと思っていた。進化という理念には多様性という考え方も含まれている。戦闘員Aは施設の戦闘員と自由と未来について話し合っていた。

どんな施設に配属されようが組織の理念には忠誠を誓わなければならない。施設はそれぞれの思想に基づいて組織の理念を実現しようとしている。ある者は人間社会に溶け込むような団体をつくり上げ、ある者は巨大な基地を建造していた。組織は多角的に分裂的に展開することを今までも繰り返してきた。成功と失敗を反復しながらも、それらの結果や過程や必ず組織の土となる。

 戦闘員Aは真っ白な部屋で立ち尽くしていた。組織の戦闘員がテーブルを挟んで意気揚々と組織の理念について話し合っている。まるで自由と和解こそが進化や革新へと世界を導くと信じているかのようだった。戦闘員Aがこれまでに従事してきた施設の中で組織の戦闘員の自由な行動や発言が無制限に許された場所は存在していない。組織の戦闘員は組織の戦闘員として振舞うべきである。組織の戦闘員が組織の戦闘員としての役目を担うことによって組織がより強固になる。

 戦闘員Aはここまで自由な選択と時間を与えられたことがなかった。真っ白な空間ではお互いに話し合っている組織の戦闘員もいれば、お互いを傷つけないように戦闘訓練をしている組織の戦闘員もいる。組織の戦闘員は施設の運営に従う必要がある。どんな思想や運営だろうと組織に認められる範囲ならば組織に好影響を与えるのは確かだ。戦闘員Aは施設に馴染もうと巨大な真っ白なテーブルに備え付けてある椅子に座った。

 組織の戦闘員が新しい要素によって行く先が変わるのを期待するかのような口調で戦闘員Aに質問をする。

「我々は何になるべきなのか? 我々はどう思う? 」

 組織の戦闘員なのだから組織の理念についての質問だと戦闘員Aは経験から理解した。戦闘員Aは女神に選ばれて進化したいと口にしようとしたが組織の戦闘員が聞きたいには組織の理念の実現についてだろうと考える。話し合いは質問の意図からはずれない方が有意義になる。戦闘員Aはずっと黙っていられるわけではないので組織の戦闘員の質問に答えた。

「我々は進化や革新の一歩となり、我々は道を進み道そのものになってきた。我々は我々であり続けるために進み続けなければならない。我々はいつか必ず進化する。この世界を前へと進めるために」

 組織の戦闘員は戦闘員Aの発言を聞いて過去の遺物を見たかのように肩を落とす。組織の戦闘員が期待したのは新しい話し合いの展望であり、これまでに何度も耳にした聞き飽きた言葉ではなかった。組織の戦闘員は話し合いを良いものにしようと別の組織の戦闘員に話を振る。戦闘員Aは無視されて存在しないかのように小さな存在として扱われていた。どんな施設だろうと組織の戦闘員ならば施設の運営に順応することは必須だった。

 戦闘員Aは自分が施設に適応する姿を想像しながら組織の戦闘員の話し合いに耳を傾ける。どんな施設だろうと順応しようとする姿勢こそが自身の組織の戦闘員としての自認を肯定する。出会ったことのない施設の運営だとしても戦闘員Aが積み上げてきた行動は変わらなかった。戦闘員Aは話し合いに慣れようとちょっとずつ発言をするが戦闘員Aの発言に組織の戦闘員はあまり興味なさそうだった。

 話し合いの場で前進や変革もこれまでに何度も口にされてきたのだと感じさせる。この施設にいる組織の戦闘員にとっては進歩や前進の概念こそ変化させるべきという認識らしい。この施設の組織の戦闘員は新たな進化や進歩の道を話し合いで進もうとしていた。組織の存続のために人間が必要かもしれないという意見までもが当たり前のように話されている。戦闘員Aは白いテーブルの前の自分と同じ姿をした組織の戦闘員の意見を黙って聞いている。組織の戦闘員が口にする意見は戦闘員Aが考えたことはあっても話さないようにしていたものばかりだった。

 施設に指導員がいないというのは過去に数例しか存在しておらず、この施設は少ない実例の一つだった。戦闘員Aは施設の特殊性を再確認するとともに施設に適応しなければならないという想いを強くする。この場所では戦闘員Aのような組織の理念を体現するだけの存在は安い価値しかない。価値のない行動をする組織の戦闘員は組織にとって不必要であり組織の理念を実践する者こそ組織は必要としていた。施設が有用と判断されて存続しているならば戦闘員Aが施設の運営に順応することこそ組織の利益となる。

 戦闘員Aが今一度組織の理念を思い起こしていると真っ白な部屋の扉が開いた。大きな頭を持った人間の中性的な体型をした怪人が部屋の中へと入ってくる。大きな頭の怪人が入ってきても組織の戦闘員は誰も敬礼をしようとしない。それどころかそれが当たり前の風景と言わんばかりに組織の戦闘員同士の会話を続けている。組織の戦闘員にとっては敬礼よりも話し合いの方が組織の理念の実現に近づくのかもしれないが戦闘員Aには理解しがたかった。戦闘員Aは敬礼をする必要があると考えて大きな頭の怪人に敬礼をする。組織の戦闘員は組織の戦闘員としての行動を順守してこそ組織が強い機能を維持できていると戦闘員Aは理解していた。

 大きな頭の怪人は戦闘員Aのような行動をする不純物に慣れている様子だった。大きな頭の怪人が戦闘員Aに笑顔を向けるのは組織の連帯を強めるためもあるだろう。そして戦闘員Aは大きな頭の怪人が優しく微笑みは戦闘員Aを施設の思想に染めようとする意図が感じられる。戦闘員Aには大きな頭の怪人の思惑を拒否してはいけなかった。大きな頭の怪人は戦闘員Aに近づいて話しかけてくる。

「君はいつここに来た? 」

 我々は我々であり続け、我々だからこそ我々へとなり得る。怪人や組織の戦闘員が自分たちを我々と呼ぶのは組織のことを決して忘れないためだ。戦闘員Aは怪人によっては自分のことを我々と呼ばない個体がいるのは知っていたが組織の戦闘員を君と呼ぶ怪人に出会ったことがない。戦闘員Aは大きな頭の怪人に逆鱗に触れて破壊されないように気を付ける。どんなに優しそうな怪人の力を持ってすれば組織の戦闘員の簡単に壊れる事実を忘れてはならなかった。

 戦闘員Aは大きな頭の怪人を怒らせないように慎重に答えようとするが、大きな頭の怪人の笑顔は組織の戦闘員の恐縮した態度にも慣れていそうだった。戦闘員Aが質問に答える前に大きな頭の怪人が喋り出す。最初の質問は内容を聞くためではなく、戦闘員Aと喋るために必要な言葉のようだった。大きな頭の怪人の提案は施設の連帯にとって有益なのは間違いない。それでも戦闘員Aは怪人に破壊されてきた組織の戦闘員の姿を思い出さずにはいられなかった。

「この場所を案内するよ。仲良しになろう。我々みたいに」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ