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聖剣アレス

 俺はいつもの安宿に戻ってきた。扉2枚分ほどの小窓一つしかない部屋に藁が敷いてある簡易的な部屋に入り、一息つく。


 今日は疲れた。久しぶりに中身のある一日を過ごしたと思う。それも、人生最大級に濃厚な1日を。


「なぁ、お前……じゃ呼びづらいからなんか無いのか?」


『アレス、ボクの名前はアレスだよ』


「まさか、それって勇者の名前じゃないのか」


『そのまさかだよ、ボクは先代勇者、アレスさ!』


「……どういうことだ? おばけ」


『おばけじゃないよ! まぁ訳あって聖剣に封印されてるんだ』


 驚いたことに、聖剣の声の主は先代勇者だった! なんかよくわからないがまだ生きているらしい。どういうことだってばよ。


「そ、そうなのか。それで、どうしてそんな姿に?」


『剣は元々ボクが使っていたんだけどね、ボクが魔王を討伐するために、この剣にこの身全てを捧げたんだ』


 魔王を討伐することに、それほどの代償が必要なのか。それは対策を考えねばなるまい。


「そうか、500年ずっとそのままなのか?」


『まぁ、君が近くに来るまでは、ずっと寝てたようなもんだけどね』


「じゃあ、苦痛ってわけじゃないのか」


『何かで縛られてるって感覚はないんだけどね。やっぱり退屈だよ』


「それじゃ……寂しかったか?」


『そりゃあ、寂しかったさ。……これから話し相手になってくれる?』


「ああ、もちろんだよ。あいにく、俺も一人なんだ」


『わーい! ボクもずっと友達いなかったからこれから仲良くしよ? ね?』


「あ、ああ……」


 こいつ友達居なかったのか。まぁ、うん。


『じゃあ、女の子のお胸様がいかに敬うべきものなのかとか、ツインテの女の子がいかにかわいいかとか、いっぱいお話しよ!』


「いやしねぇよ!」


 何言ってんだこいつ、とんだ変態かよ。……性欲が強くなるってもしかしてほんとなのか?


 全く、眠いんだから変な話は明日にしてくれ。


「俺はもう寝る! また明日な……おやすみ」


『なんで君はそんなに女の子が嫌いなのさ! いいじゃん女の子、柔らかくて、いい匂いで』


「だから寝るって! 明日いくらでも聞いてやるから!」


 もう、眠くて……耐えれられん。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 気がついたら、俺は何もない白い空間にいた。キョロキョロと見回すが、本当に何もない。


「なんだこれ、変な夢だな」


 普段、俺はあまり夢なんか見ないし、見てもぼんやりとしたものばかりなのだが、今回はやたらはっきりしていた。


「おーこれはこれは、なんでこうなってんだろ? あ! ソイ君じゃん」


 そんな声がすぐ後ろから聞こえた。びっくりして振り返ると、そこにはボーイッシュな雰囲気の青髪ショートの女の子が立っていた。スタイルも抜群で女子なら誰もが憧れるようなすらりとした四肢に、引っ込むとこは引っ込んで、出るとこは出ている。胸は、大きかった。そしてシミ一つない肌を惜しげもなく晒す彼女は、裸だった。


 もう一度言おう、裸だった。俺はいつの間に随分溜め込んでいたんだろうか?


「だ、誰」


 少々混乱していた俺はそう返すことしかできない。すると彼女は少し悲しそうな顔をして、


「なんだよー、ボクとさっき話したばかりじゃーん、忘れちゃったの? ソイ君」


「ええ、お前がアレスなのか!? てか女だったの!? 何で裸!!?」


 本当何で女なのにボクって言ってんの? さっきまで男だと思ってたんですけど。まぁ、男にしてはかなり声が高いとは思っていたが。


「ちょ!? 落ち着いて! ……あ、ボク裸なのか。ソイ君は男だからねー、どう、ボクのカラダ♡」


 彼女はそう言ってしなをつくった。豊かなアレが強調される。俺はそれを見て不覚にもドキリとしてしまった。


「う、うるせぇな! 早く隠せよ」


「あーソイ君ったらうぶー! そんなこと言ったってガン見してるじゃないか、あはは」


 ガン見してねぇし、ちょっと目に映っただけだし!


「見てねぇよ! ほら、さっさと隠せ」


「ふーん、どうだかね。それなら、ソイ君だって裸じゃん。うわぁ意外に立派」


「ちょ、おま」


 慌てて局部を隠すが、手で隠すことしかできなかった。なんせ周りには何もないのだ。アレスも手で溢れんばかりのソレを申し訳程度に隠すのが精一杯だ。


「なぁ、お前それでなんで女好きなんだよ。女なのにボクってのも変だし、おかしなやつだな」


「かわいいから?」


「答えになってねぇ」


「ソイ君だって、女の子嫌いなフリして、実は興味深々じゃーん! 今もチラチラ見てるし、ね?」


「そんなことない」


「もう、正直になりなよ。どうする? ボクも欲求不満なんだ」


「どういう意味だ?」


「もう、女の子にはっきり言わせちゃだめだよ! 本当はえっちなこと、したいんでしょ」


「そんなことねぇよ! お前やっぱおかしいわ!」


 こんな変態女がどこにいるんだよ!


「そんなこと言わないでよー、ソイ君の目を息子さんは正直みたいだぞー?」


「あっ、ちょ、やめ」


 夢ならさっさと覚めてくれー! 襲われるー! アッーーーーーー♂



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 小窓から差し込む光で目が覚めた。目を開けるといつものみなれた天井が見えた。それにしても、夕べは酷い夢だった。アレスのやつが、超絶美少女で、誘惑してきて……。起き上がろうとすると、下半身に血が集中していることに気づいた。かなり久しぶりの感覚なので、違和感がある。


 それにしても、俺はこんなに溜め込んでいたのか。なんだか無性にムラムラする。だが、とりあえず我慢して服を着替えた。今日ははやくギルド前に行かなければ。


「アレス、起きてるか」


『ん? おはよー。昨日は激しかったね♡』


 してねぇよ! というか、夢じゃなかったのか。それなら、あの夢はどういうことなんだ。疑問が頭の中に浮かんでくるが、今は振り切って(アレス)を引っ掴むと外に出た。


 空を見上げると随分高い位置に太陽がある。これは、寝過ごしたようだ。


「やっべぇ、もう昼じゃん!」


 俺は大急ぎでギルド前に向かった。ギルド前に着くと、騎士の正装でカロナが立っていた。後ろを向いている為に、表情は見えない。


「よ、よう。遅れて、ゴメンな?」


 俺は、彼女に恐る恐る声をかけた。彼女はゆっくり振り返った。


「きしゃま! ぬゃんで今まで来なかった! ろく、6時間も待っていたのだぞ!」


 彼女は涙目だった。彼女は俺の肩を掴むとブンブン揺さぶってくる。


 えっとこれ、どうすればいいですか?






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