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湯けむり相談

「今度こそ死んだと思ったです。ホント」



 湯船に浸かって大きく伸びをしながら、リンは深々と嘆息する。

 半年以上の迷宮生活は彼女の体にかなりの筋肉増量をもたらし、脂が乗った手足はさらにむっちり感を増していた。

 ただ元から体付きのバランスが素晴らしかったため、新たな変化はグラマラスな魅力となって男の目をいっそう惹き付けるようになった。


 大きく息を吐いたせいで、チューブトップの赤いビキニブラに包まれた胸部がたゆんと揺れる。

 いかに大胸筋が発達しても、それを包む脂肪の増減には無関係らしい。

 リンの元気に弾む胸を見ながら彼女が無事だったことに安堵しつつ、僕も肩の力を抜いて湯船に身を沈める。 


 骸骨の大鎌の一振りはリンの首を半ば切断していたが、ぎりぎりで致命傷とはならなかった。

 あの時間を飛ばしたかのような攻撃の寸前、ほんの少しだけ幸運がリンに訪れていた。


 直前で真っ二つにされた水壁ウォーターウォールの滴が彼女の瞳に飛び込み、わずかにその首を反らすことに繋がったのだ。

 その結果、首の皮半分でリンは生き延びた。

 とは言っても、巻き戻しロードたベッドの上での彼女の顔は、見たことがないほど青ざめてはいたが。

 リンの当たりやすい体質がなければ、今頃は全く違った状況になっていたかもしれない。


「いつもリンばかり、辛い目に遭わせてごめんな」

「えっ? 辛くないですよ」

「そうなのか?」

「人を守って怪我するのは、全然平気なんです。何ていうか、物凄く私が必要とされてるなって感じが心地良くて」


 一瞬だけうっとりとした顔になったリンは、口端を持ち上げて満面の笑みを見せる。


「むしろ辛いのは、役に立てない時です。だからあの時、死んでたら絶対悔しくて死にきれないですね」

「ごめん。もう巻き戻しロードに頼り過ぎた無謀な真似は止めるよ」

「だからそうじゃないんです。今回悔しかったのは、たった一撃でやられた私の不甲斐なさにですよ。みんなを庇って死ねるなら、私はきっと笑って死ねます」


 あっけらかんと言い放つ少女の横顔は、なんだかとても男前だった。


「あなたが悔しくて死んでも、笑って死んでも、私たちが悲しむことには変わりないのよ。リン」


 そう諌めながらキッシェが姉らしい優しい手つきで、妹の赤髪を愛おしそうに撫でる。

 浴槽の外に突き出した頭を洗って貰いながら、リンは満足そうに声を上げた。


「その時はたっぷり泣いてね、お姉ちゃん・・・・・

「もう!」


 少しだけ眉を持ち上げて、キッシェはリンの赤髪をギュッと絞る。

 今日一番頑張った人のご褒美として、キッシェに髪の手入れをして貰っているらしい。


 髪油を丁寧に妹の髪に擦りこむキッシェもまた、この半年でかなり体型が変わった。

 リンのように目に見えるほど筋肉が付いた訳ではないが、胸や腰回りにメリハリがついてキュッと引き締まった体付きになっていた。

 そのせいで今着ている青い競泳水着が似合いすぎて、僕の心拍数がかなり跳ね上がってしまっている。

 特に肌の張りが完璧すぎて、水滴が丸く弾かれる様にはもう言葉も出ない。


 水の精霊と契約が結べてからは匂いたつほどの色気が出て来て、年上のおっさん連中によく声を掛けられている光景を見るようにもなった。

 もっともキッシェの方は相変わらず、僕以外の男性に対しては完璧な塩対応なのだが。


「…………ミミちゃんも今日は頑張ったのにね」

「まあね~」

「いや今日のミミ子は、何一つ頑張ってなかったぞ」


 洗い場ではフリルの付いた花柄のビキニ姿のモルムが、同じくフリル付きの白いワンピース水着のミミ子を泡だらけにしている。

 二人の美少女の絡み合いは、眼福としか言いようがない。


 モルムも数ヵ月に渡る迷宮暮らしで、見た目の印象が随分と変わった。

 直接戦闘に携わらないとはいえ毎日、何時間も歩き回る生活だ。

 細かった体もそれなりに肉付きが良くなり、しっかりと体力が備わった。

 そして一番変わったのが、顔をちゃんと上げるようになったことだ。


 魔術士ソーサラーにとって、絶えず状況が移り変わる戦いの場で目を逸らすことは許されない。

 それはどこか人に対して、怯えた表情を隠し持っていた少女も例外ではなかった。


 今のモルムは誰に対しても、きちんとその眼を見ながら話せるまでになっている。

 おかげで可愛い茶色の短い巻き毛や、愛らしいソバカスに魅了される人たちが後を絶たない。

 きっと今のように傷だらけの肌を隠さなくなったことが、彼女の強さに繋がっていってるんだと思う。


 ミミ子の方は、逆に安定して何一つ変わっていない。

 迷宮内ではずっと誰かの背中にいるせいで、手足は細く優雅なままだ。

 もう魅力が完成してて、上限値に達しているのかもしれない。


 もう少し、色々なところが成長してくれても良いんだけどね。 

 

 ちなみに我が家の女性陣の胸の大きさだが、まずちびっ子四人とミミ子が並ぶ。ついで、まな板の順となる。

 その次はサリーちゃんの手の平すっぽりサイズ、モルムの手の平でちょっと余るサイズへと続く。

 キッシェからは果物に例えると特大夏みかんで、リンは特上メロンサイズ、ニニさんは小さめのスイカだろうか。

 メイハさんとイリージュさんは、形状から言ってパイナップルかな。


 男の僕には詳しいカップ数は分からないが、みんなの大きさが平均値を大きく上回っていることだけは分かる。

 厳選したわけでもないのに、不思議なことだ。



「ところで、どうして水着なんじゃ?」

「みんなで海に行こうかと思って買ったけど、今年の夏は機会がなくて」

「それで風呂場で水着なんじゃな」

「あとサリーちゃんが恥ずかしがるかなって」

「うむ。年頃の男女が、湯浴みをともにするなどもっての外じゃ」



 そう言い放ちながら湯船で胸を張るサリーちゃんことサリドールは、黒の超マイクロビキニを着ていた。

 正直、透けるような肌の美少女が、局部を紐で隠しただけの姿の方が興奮するのだが、ここは黙っておこう。


 確かに『蘇りし者レブナント』だけあって、サリーちゃんは全く血の気が通ってないようにも見える。

 ミミ子やニニさんの肌も確かに白いが、それとは一線を画するほどに白い。

 まるで色が付いてないかのような白さだ。


 逆に長い髪は、光を失ったかのように黒い。

 そんな髪を器用に編み上げて、バスタオルで覆ってる姿も愛らしい。

 サリーちゃんは、髪が濡れるのがかなり苦手だと言ってた。


「ふむ。それで我をここに誘った訳は、その骸骨とやらの話を聞きたいというので合っておるかや?」


 もちろんそれがメインだが、一緒に暮らす以上は仲良くなりたいという下心もなきにしも非ずだ。

 わざわざお風呂に誘っている時点で気付いてほしいが、サリーちゃんは色々世間からずれているしな。


「それはさておき、さっきから出てくる巻き戻しというのは何じゃ?」

「それはね――」


 信じて貰えないと思うが、説明しておく。


「ふむむ、恐ろしい技じゃのう」


 信じちゃったよ。純真なのか、それとも頭が凄く柔軟なのか。


「む!」

「どうかした?」

「我の策を見抜いたようなあの動きは、お主の仕業か!」

「ああ、うん。そうだよ」


 なぜか頭をぺちりと叩かれた。


「色々と納得がいったのじゃ。ただの弓が上手いだけの小僧ではないとは思うておったが」

「まあ巻き戻しを信じてくれたようで話が早い。サリーちゃん、骨の馬に乗った骸骨って知ってる?」

「知っておるのじゃ。それは『刈りとりし者ペイルライダー』じゃな」

「やっぱり、『蘇りし者レブナント』の系統か」


 得意げに頷く少女は、お湯をちゃぷちゃぷと弄びながら話を続ける。


「あやつは死の運び手じゃ。生半可に立ち向かえば屍にされるのが落ちじゃ」


 サリーちゃん曰く、骨の馬による高い機動性と、大鎌による強力な殺傷能力を持ち合わせる厄介な相手らしい。

 死者故に搦め手もほとんど効かず、馬上からの攻撃は間合いが広く隙がないとのことだ。


「我執をもったまま死んだ武者が、稀に冥府から送り返されてくるのがあやつらじゃ」


 どうりで尋常じゃない腕前だったのか。

 そんな面倒な人たちを送り返してくるなよ、冥府。


「戦場で遭えば、即刻尻尾を巻いて逃げるのを勧めるのじゃ」

「それが良いかなあ。またレベルが上がったら挑戦するよ」

「人の話を、ちゃんと聞かんか」


 また頭をぺちりと叩かれた。


「我は戦場と云うたのよ。だが迷宮では話が別じゃて」


 サリーちゃんは、薄い胸を精一杯張ってみせる。

 先っぽの形がくっきりと浮かび上がって、凄く扇情的な眺めになっている。

 己のエロティックな姿に全く気付かないまま、サリーちゃんはしたり顔で言い放った。



「――迷宮に喚び出されたのが、そやつの運の尽きじゃな」



水着―化学繊維は存在してないので、全て天然繊維製。職人の技が光る。下着に使うには生地が厚く吸水性も低いので無理だった

海水浴場―馬車で一日のとこに海沿いの街がある


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