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決戦の終り

「……………………ったくなんだよ、アレは」




 ベッドの上に寝っ転がった僕は、腹の底から息を吐いた。

 



「あそこから、さらに奥の手ってありなのか」



 ニニさんをあそこまで追い詰めるためだけに、百日間掛けてひたすら頑張ってきた。

 朝から晩までニニさんに勝つことだけを考えて薄暗い迷宮にずっと篭ったり、晒し者になりながらも闘技場での実戦を重ねたのだ。

 脇目もふらず一心不乱に僕は、彼女だけを見つめてきた。 

 気高くも美しいその姿に魅了され、恋に落ちた哀れな男のように。


 そのお返しが、まさかの第二形態出現とは……。

 必死でやって来て勝利がすぐそこに見えた瞬間、ひっくり返されたのだ。

 溜息だけで受け入れてみせる僕の懐の大きさを、誰でも良いから褒めて欲しい。

 

 そう。ここで簡単に心が折れないのが、僕の長所かもしれない。

 こちらだって伊達に人生、万単位でやり直してきた訳じゃない。

 ニニさんがどっかのゲームのラスボスのようなら、僕もゲームの主人公のように不屈の意思で立ち向かうだけだ。

 


 とは言っても生憎、土壇場で真の力に目覚めたり根性だけで動き回れるほどの主人公体質は、僕には備わってなかったらしい。

 


 一応、ニニさんがあの鬼モードにならないように既に何度か試していた。

 例えば『五月雨撃ちレインアロー』を使わず、じりじりと削る作戦。

 これはあっさりと『金剛バジュラ』を使われて、距離を詰められて終わった。


 ならば『五月雨撃ち』を手加減すればと考えてみたが、これも上手く行かなかった。

 元々この『五月雨撃ち』は『ばら撒き撃ち改(バラージ2)』を『四連射クワッドショット』してみたらどうだろうと考えた頭の悪い技だ。

 しかもいかに速く撃てるかをみっちりと修行したせいで、体に動きが染み付いてしまっている。

 おかげさまで連射数を、四から三に減らすくらいにしか変えられない。


 そして『三連射トリプルショット』だとニニさんの『金剛』は破れず、大技を放って動けなくなった僕の負けが自動的に決まる。

 逆に『四連射』だと『金剛』は破れるが、鬼モードになったニニさん、通称鬼ニニさんにボコられて負ける。



「ホント、アレなんだよ」



 またもや愚痴ってしまう。

 鬼ニニさんの強さは異常だった。

 まずは常人では不可能な重さの石柱を持ち上げて、投げてつけてくるパワー。

 しかもたまに吠えてくるので超怖い。完全に意識が飛んで、獣状態ビーストモードになっているようだ。

 いや大鬼オーガだから、鬼状態オーガモードが正しい呼び方か。


 その状態になると理性が失われたせいか護法も精霊術も使ってこなくなったが、なぜか身についた技能は使えるらしい。

 鬼ニニさんの移動は常時、『縮地クイックステップ』だった。

 そう、無制限に瞬間移動してくるのだ。

 その無限縮地のせいで、逃げるどころか矢を当てるのさえほぼ不可能になった。

 

 さらに恐ろしいのが回復力だ。

 体を覆うモヤモヤとした赤い霧。

 鬼モードはかなり負担がかかるようで、ニニさんが暴れる度にその体からブチブチッと不味い音がしている。

 それなのに動けるというのは、どうもあの赤い霧が治しているんじゃないかと言うのが僕らの結論だった。


「たぶんアレ、あの子の『闘血』が濃すぎるんだよ~」

「それでああなるのか。戦闘種族って本当に難儀だな」

「でもかなり辛いと思うよ~。ずっと泣いてるし」


 なぜか訳知り顔で頷くミミ子。 

 だがその指摘もあながち間違いではない気がする。

 鬼ニニさんはその真っ赤な瞳から、文字通り血の涙を滴らせながら戦っていた。

 溢れだした『闘血』のせいなのか、それとも本当に辛いのかは当事者にしか知り得ないとは思うが。


「さてどうしようか……もう打つ手なしっぽいけど」

「ゴー様はどうしたいの?」

「そうだな。ここまで頑張ったし、もう降参でも許されるかな」


 寝転がったまま、脇に座るミミ子の愛らしい顔を下から見上げる。

 その顎の動きから、彼女が微笑んでいるのが分かった。


「何でもお見通しだな、ミミ子は。そうだよ。僕は負けたくない」


 こんな浅はかで頼りない僕でも、ミミ子は庇ってくれたのだ。

 僕が馬鹿にされて傷つくのを、我慢できないと言ってくれた。

 もうこれ以上は、格好悪い姿を見せたくはない。



 その覚悟を、大勢の人の前で勝って示してみせる。



 とは言っても、もう何も残ってないしな。

 そう考えていたら何時になく真面目な顔付きのミミ子が、僕を見つめながらゆっくりと口を開いてきた。



「かなり無茶な手があるけど、やってみる~?」




   ▲▽▲▽▲




 28回目、最後の挑戦。

 僕は淡々とニニさんを追い込む。

 焦らず迷わず流れのままに矢を射る。 


 

 そしてニニさんの鬼モードが発動した。



 轟音を上げて飛んで来る石の柱は幸運にも、僕の幻影へと命中した。

 ここが最大の課題だったが、何とかクリアできたようだ。

 三回ほど本体の方へ飛んできたこともあったので、その辺りが闘技場の摩訶不思議な部分なんだろうと思う。


 しかし運が良すぎるとは、一概には言えない。

 地面に当たって砕けた石柱の大きな欠片が、僕の左手を直撃していた。

 たぶんこれ確実に肘の辺りが折れている。

 左腕がぶらぶらになって持てなくなった弓を、急いで右腕に持ち替えながら僕は倒れている石柱の脇を、巻き上がった土煙に紛れて走った。


 息がすぐ上がる状態だったが、なんとか土の山まで辿り着く。

 ニニさんがミミ子の幻影をふっ飛ばした『地壁アースウォール』が崩れた跡だ。

 そこの影に潜り込み、弓を何とか撃てるように体の向きを直す。

 座った状態で弓柄に両足のつま先をかけて、まだ動く右手で矢を弦につがえてみる。


 左手がズキズキと痛み、僕の集中力を乱してくる。

 それに右手どころか足にさえ力がまともに入らず、今は無力のまま横たわっていることしか出来ない。



 そんな情けない僕を尻目に、ミミ子の奮闘する姿が観客の視線を釘付けにしていた。



 鬼ニニさんの石柱投擲と同時に、真っ白な髪をなびかせたミミ子の幻影が飛び出していた。

 それは自由自在に空を飛び回り、怒りに吠える鬼ニニさんを翻弄する。


 動いたと思った瞬間、その姿が消え少女の後ろに鬼が現れる。

 空気を切り裂くような拳を少女が紙一重で躱した瞬間、その前面に回り込んだ鬼の腕が振り回される。

 胴が真っ二つに裂けたまま、白く残像を残して少女が飛び退る。

 

 既にそこに回り込んでいる鬼の姿。

 だが空中で急速に少女は動きを止める。

 そのあり得ない制動に、苛立つように鬼は唸り声を漏らす。


 石の柱がまたも引きぬかれ、中空に打ち上げられた。

 上昇する石の柱の真上に回りこみ、凄まじい勢いで鬼が真下へ蹴り抜く。

 破片が盛大にフィールド中に飛び散り、散弾と化して少女に襲いかかる。


 それを人では成し得ない動きで、ことごとく少女は避け切ってみせる。

 観客席の誰一人、その有り様に声を上げようとはしない。

 たぶん僕と同じで、唖然として見守ることしか出来ないんだろう。


 だがその幻想的な光景も、長くは続きそうにない。

 ミミ子の虚像は、徐々にその姿を保てなくなっていた。

 拳の一振りだけで、地面が裂けるのだ。

 その余波だけでも、計り知れないものがある。


 ほぼ白い空気の塊となりつつある少女。

 それを執拗に追い続ける鬼の姿。

 …………たぶん鬼ニニさん、本能だけで動いてる気がする。


 やがて幻影は最後の時を迎えた。

 そのわずかに判別できる首元を、鬼に食い千切られてミミ子の『陽炎イリュージョン』は姿を消す。

 そのまま鬼ニニさんは、フィールドの隅でしゃがみ込んでいたミミ子へと距離を詰める。


 痛々しい打撲音が響き、ミミ子は僕の近くまで吹っ飛んでくる。

 確実に肋骨が砕けたような音だった。

 毎回、このたった一撃でミミ子の『安全人形』は破壊され、その意識が刈り取られていた。

 目を閉じて地面に項垂れるミミ子に、僕は心の中で最大の賛辞を送る。


 彼女はその動きで、僕が回復できる貴重な五分を稼いでくれたのだ。

 もっとも左手は折れたままで酷く疼くし、力が戻ったとはいえ『五月雨撃ち』を撃てるほどじゃない。

 ただ渾身の一射を撃てるのみだ。



 チャンスは一度だけ。

 無限縮地を使う鬼ニニさんでも、必ず現れると決まっている場所がある。

 ――その瞬間を狙い撃つ。



 石柱にもたれ弓を抱える僕の姿に気づいたのか、ミミ子を吹き飛ばした鬼ニニさんがそちらへ首を回す。

 その赤い涙を流す真紅の虹彩がわずかに細くなった。

 それが『縮地』を使う前のニニさんの癖であった。

 待ち構えてた時の訪れに、僕は両足をあらん限り突っ張って弓を押しやり、残った右手と歯を使って出来うる限り弦を引き絞る。

 その刹那、あらゆる動きが僕の中で時が止まったかのように停止した。



 僕の前に鬼が姿を現し――。

 その一瞬、座っていた僕が矢を放つ――。

 そして鬼の目の内が小さく動き、その体がブレる――。

 撃ち出された矢はその体を貫くことなく、彼方へと姿を消し――。

 

  

 

 次の瞬間、真横からもう一人の僕が放った矢が、鬼の角を射抜いた。




 鐘を打ったような高音が、綺麗に晴れ上がった空に響き渡る。

 標的を見事に射抜いた矢はその役割を終え、クルクルと円を描きながら宙を舞って地面へと落ちた。

 その様を詰めかけた観客の誰一人、声を発することもなく凝視する。

 満員の客席は、息を呑む音さえ聞こえない程の完璧な静寂に支配されていた。



 最後の一矢は、見事にその角をへし折っていた。



 長い沈黙の後、不意にニニさんが糸が切れたように膝から崩れ落ちる。

 地に伏して動かなくなった鬼を、僕は土の山に身を隠したまま、さらに時間をかけて観察した。 


 と倒れていた筈のミミ子が、いきなりぴょんと軽やかに立ち上がる。

 そのまま、すたすたとニニさんに近づき、その体を指で突き回す。

 反応がないと分かったのか、狐耳の少女はおもむろに懐から取り出した白旗を、唐突に動かない大鬼オーガの体に突き立てた。

 

 

 僕らの勝利が確定したその瞬間、凄まじい歓呼の声が観客席から湧き出した。

 皆が立ち上がり口々に叫びながら、それぞれ抱き合い手を叩き腕を振り回す。 


 突然の大歓声に混乱する僕に、笑みを浮かべながら近づいてきたミミ子が肩を貸し立ち上がらせてくれる。

 両足を踏ん張り、初めて観客席にまともに向き直る。

 僕を見つめる彼らの目は、畏怖と戸惑い、そして純粋な感嘆に満ち溢れていた。



「…………勝ったのか?」

「そだよ。とうとうだよ、ゴー様」



 その一言は目の前の大勢の称賛よりも、僕の心を震わせた。



「ありがとう、ミミ子。お前に会えて本当に良かったよ…………」



 万雷の拍手と健闘を褒め称える声を聞きながら、僕は静かにその意識を手放した。





   ▲▽▲▽▲




 『水玉龍の歓楽酒場』は今日も大賑わいだった。

 


 安くてボリューミーな料理と流し込めるように飲める値段の麦酒エールが売り物のせいで、年中大入りの店であったが今日は殊の外混み合っていた。

 そんな満席のテーブルの一つに着く四人の男たち。



「乾杯!」



 大きくジョッキを打ち合わせて、一気に飲み干していく。

 まだ少し熱気が残る季節なので、『凍水の小晶石』で冷やした麦酒エールは素晴らしく旨い。



「しかし、凄かったな。今日の試合は」

「ああ、確実に歴史に残る一戦だったぜ」


 

 盾持ガードのドナッシの呟くような絶賛の声に、小隊パーティ隊長リーダーであるソニッドが頷きながら同意を示す。



「確かにレベル3と2でレベル6に勝つなぞ、聞いたこともないのう」

「マジであの先読み凄かったな…………」


 

 つまみの白魚の姿揚げを頬張りながら魔術士(ソーサラー)のラドーン爺さんと、射手アーチャーのセルドナが話を続ける。

 


「ところで最後のアレ、何がどうなったんだ? 『鉄壁』が暴走しだしてから、動きが速すぎてよく分からんかったぜ」 

「あれか……そうかそうか、そんなにアレが何か聞きたいか」

「えっ、いやそんな身を乗り出されるほど聞きたいってわけじゃ……」

「みなまで言わんでも分かるぞ、ドナッシ。聞きたい気持ちが溢れているのが透けて見えるぜ!」



 突如、得意満面な顔に変わったリーダーに、ドナッシは若干引きつつ周囲を見渡す。

 それに対して、他のメンバーは黙って首を横に振った。

 語りたがり屋のリーダーのいつものパターンが発動したのを察したドナッシは、ジョッキの泡を髭に絡めつつ続きを促す。



「勿体ぶらずにさっさと教えてくれよ、リーダー」

「ふふふ。よくぞ聞いたな。アレこそが俺様直伝の技『死んだふり』よ!」

「はあっ? そりゃ確かにミミ子ちゃんがぶっ倒れてたけど、ありゃ確実に一撃食らってたぞ……そうかアレも幻影だったんだな」

「チッチッチッ。そんな単純な話じゃねーぞ。そもそも小僧の幻影も出てたし、幻影の数が足りなくなるだろ。攻撃を食らって倒れたのはミミ子ちゃんの実体だ」

「じゃあどうやって耐えたんだよ!」

 

 ドナッシの熱の篭った問い掛けに、ソニッドはニンマリと笑みを浮かべた。


「ヒントは簡単。ダメージを無効にできるモンがあるだろ」

「……………………『安全人形』か! でもそれなら動けるわけが――まさか!」

「そうさ。小僧のやつ、自分の『安全人形』をミミ子ちゃんに渡しておいたのさ」 


 『安全人形』を一人に複数持たせる行為は、隠し玉的な戦略で稀に使われることはある。

 人形の数の分だけ怪我が分散され代価の感覚消失が薄くなり、より長く行動が可能になるのだ。

 ただそうした場合、渡した人間は少しの傷でもリタイヤせざるを得なくなるため、奇襲的な使い方以外で選択する奴は滅多に居ない。

 


「あの『鉄壁』相手に…………そんなリスクを背負ったのか…………あり得ねぇ」

「そうでもしないと勝てないと踏んだんだろ。アイツは俺達のパーティに初めて来た時から妙に肝が据わっていたしな」

「つまりミミ子ちゃんが囮になってまず倒される。そして幻影がなくなったと見せかけて、座り込んだ坊主の幻影で誘き出して死角から狙撃したってことか」

「そうなるな。アイツがいつの間にか隠れてて、俺もすっかり『不意打ちハイドアタック』されたぜ」

「斥候が不意打ちされりゃ世話ないな」

「全くだぜ」

 

 大声で笑い合う二人。

 そこにセルドナが口を挟む。


「ちょっと待ってくれよ。それだけじゃないだろ」

「何がだよ?」

「最後の幻影とアイツの矢の動き。あれこそが俺直伝の『囮矢デコイアロー』と『影矢シャドウアロー』そのものだろ!」

「それはないのう」

「うん、ないな」

「その二つは、お前じゃなくても使えるよな」

「…………そ、そんなぁ」


 皆から一斉に否定されたセルドナは、やけくそ気味にジョッキを一気に呷る。

 そして独り言のように呟く。



「そういや師匠が帰り際に漏らしてたな、ついに『極眼ホークアイ』に目覚めたとかどうとか…………」



 ロウン師匠の嬉しいのか悔しいのかよく分からない微妙な顔付きを、セルドナは改めて思い出す。

 それはセルドナも同じような気持ちだったので、よく理解できた。

 あの少年の動きは、ニニ姫の行動を予め分かっていたとしか思えなかった。

 自分に同じことが出来るかと問われたら、無言で酒を呷るしかない。


「それが『極眼』なのかもな……」

「そもそも俺達じゃ、あの『鉄壁』の凶暴状態にさえ辿り着けてなかったよな」

「あれは初めて見たのう。あの子たち、よくあんなのに勝てたもんじゃ」

「おいおいおいおい、誉めてばっかりでどうする? 俺たちはそれじゃ駄目だろ?」

「ああ、分かってるぜリーダー。だが時に強者を称え、その技から学んでいくのも大事だぜ」

「それに儂らの仇討をしてくれたようなものじゃしのう」

「そうだな。何はともあれ、あの『鉄壁』に坊主とミミ子ちゃんは勝ったんだ。そこは素直に祝福すべきだろ」


 皆の意見にソニッドは大きく頷いた。

 先日の自分たちの敗北の借りを返して貰い、スッキリと飲める酒が非常に旨いことに何の異論もない。

 今度、勝者にも美味い酒を届けてやるとするか。

 坊主に賭けておいたおかげで、懐はかなり温かいしな。



「よう、楽しんでるか?」

「おう、マスター。ゴチになってるぜ。しかし今日はえらい太っ腹だな」



 只酒をたっぷりと楽しんでいた四人のテーブルに、ジョッキを手にしたエプロン姿の男が声を掛けてくる。

 本日は珍しいことに閉店まで麦酒エールが、いくら飲んでも無料の大サービスとなっていた。

 そのせいかいつも以上に店が混み合っており、話しかけてきた酒場のマスターもさっきまでは忙しそうにテーブルの間を走り回っていた。



「ああ、今日はしこたま稼がせてもらったしな」

「ほほう、マスターも小僧に賭けてたのかよ」

「ああ、その件でお前らに感謝したくてな」

「何でまた俺たちに?」

「お前らの試合の時に、あの『名無しの弓使い』と仲良くなったんだよ」

「お、その二つ名に決まったのか」

「おう、さっき公布があったぜ。まあその時に次にアイツが出るときは賭けてやるって約束しちまったんだ。久しぶりの天井なしだったんで物凄く悩んだんだが、俺はもう…………二度と約束は破らねえと決めてたしな」

「…………母ちゃん、帰ってきたのか?」

「…………まだだ」

「…………そうか」


 ちなみに普段の闘技場は掛け金の上限が決まっているが、それが撤廃される試合が稀に開催される。

 それは天井なしと呼ばれており、ギャンブラーがここぞとばかりに集まってくる試合でもあった。


「しかし、久しぶりに楽しめた試合だったな」

「ああ、最高の試合だったぜ……うん、もうこれ以上表現しようがないな」

「よし! ここは、一つ乾杯しておくか」

「おう!」



 五つのジョッキが高らかに掲げられる。



「俺達の明日と、『名無しの弓使い』の健闘を祝して」

「「「「乾杯!!」」」」



 今日も『水玉龍の歓楽酒場』は、陽気な男たちで賑わっていた。



絶歩ゼロステップ』―『縮地クイックステップ』の最終形。一言で表すと無限縮地。

極眼ホークアイ』―『見破りスポット』の最終形。ずっと目を開いているのでドライアイになりやすい。

『凍水の小晶石』―氷精の精霊印が刻印ルーンされた石。中と大もある。

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