傾向と対策
攻略情報を見ずに手探り感覚を楽しんでいたら、クリア済みのギルメンが手伝いに来てくれて余韻もなく終わったでござる
少し整理するために、みんなの現在の実力を考えてみた。
リン。
現在レベル1盾持で、所持技能は『盾撃』と『威嚇』。
牛鬼の血を引くだけあって、その膂力には眼を見張るものがある。
大鬼や豚鬼なども含む有角種は普通の人間とは筋繊維の構造が違っているらしく、同じような体格なら筋力は倍以上の差があるといわれる。
彼女の場合、見た目は少し大柄な美人の女の子だが、その運動能力はたまにレベル3の僕を凌駕してたりする。
『天資の宝珠』、通称ギフト石で調べたリンの才能は『闘血』。
これは有角種ではよくある特性で、危険な状況にも怯まず逆に闘争心が増す性質を指す。
伊達に戦闘種族と呼ばれてない。
まさに盾持向けの特性といえるが、リンの場合はちょっと前に出過ぎている場面もあるので一概に良いともいえないか。
盾持の本質は味方を守ることで、モンスターに止めを刺すことではないし。
だが真っ先にモンスターに挑みかかる勇気は評価したい。
彼女の勇猛さはパーティの空気を奮起させるのに一役買ってるし、普段の生活でも率先して行動するので良いムードメーカーだ。
単純な思考の持ち主と見せかけて、たまに鋭い一言を放ったりするので実はかなり頭の切れる子だとも思う。
あとパーティの中で一番の巨乳だ。
それと兜をかぶりにくいという理由で、少し前に赤毛をバッサリ切って角を表に出すようになった。その髪型が似合ってる上に、グラビアモデルみたいな体型も加わってよくナンパされるらしい。
家では主に炊事を担当してくれてる。
キッシェ。
現在はレベル1狩人で、レベル1斥候の資格も習得中だ。
所有技能は『精密射撃』に、『武器投擲』と『気配感知』。
竜鱗族の血を引く彼女は、皮膚の一部が硬化した角質に覆われておりダメージにかなり強い。ただ筋力などは年相応の女性と同じくらいしかなく、モンスターとまともにぶつかれば押し負けてしまう。
その辺りをクリアー出来れば、理知的な性格と相まって優秀な盾役になれる素質は揃っていると思う。
キッシェの才能は『水の精霊憑き』。
二人目の精霊憑きに歓喜した僕であったが、やはりそう甘くはない。
キッシェは精霊の使役方法を知らなかったのだ。
というか自分が『水の精霊憑き』だということも、僕にいわれて初めて知ったらしい。
精霊使いは才能が全ての職業であるため、その職能に関してはギルド側にもノウハウがない。
他のジョブのように職業訓練講習が存在しない職業だ。
ではどうするかというと先達の精霊使いに弟子入りする師弟制しかない。
現在、ギルドに先生を探して貰っているところである。
性格は一言でいえば慎重で心配性。
パーティ全体の姉のような役割をしてくれている。
たまに無意識でキツイ言葉を放ってしまうことがあり、あとで落ち込むこともよくある。
しかし頑張り屋で努力家の彼女が、みんなを引っ張る存在であることは間違いない。
一見するとスレンダーなプロポーションだが、出てるところはきっちり出ている。
本人はお尻がやや大きめなのを気にしている。
最近は暑いので、以前ほど肌を隠さないようになった。
家では主に掃除と洗濯担当。
モルム。
現在レベル1探求者でジョブは取っていない。所有技能は『罠解除』。
普通の人間の少女であるモルムだが、その集中力は群を抜いている。
習得に二、三ヵ月かかると言われた罠解除を、わずか一週間でモノにしたのは本当に驚いた。
ただそれ以外は只の14歳の少女だ。
だからあまり戦闘には参加させないようにしてるし、ジョブを選ぶのも特に勧めていない。軽く一撃貰っただけで骨が砕けそうな状況で戦わせるほど、僕は馬鹿でも鬼でもない。
モルムの才能は残念ながら『天資の宝珠』では確認できなかった。
とはいっても、彼女に秘めた才能がないとは言い切れない。
グレードが一番低い石だし、ある程度の歳にならないと表面化しない才能もある。
性格は最初、引っ込み思案で大人しい子と思えたが実は三人の中で一番変な子だった。
予想外のことをいきなり実行したりと、行動パターンが全く読めない。
そのトリッキーさは、将来を考えると色々楽しみだ。
もっともその辺りは、モルムの好きにさせてあげたいと考えている。
くるりと輪を描く癖っ毛を短くしてるので、ちょっとふわもじゃな髪型になっている。
やや垂れた目尻に薄いソバカスと、キュートな要素が詰まった女の子だ。
体型は歳の割には、それなりに出たり引っ込んだりしてると思う。
これも将来性に期待できる。
家での仕事は、僕と一緒で買い物担当だ。
ミミ子。
精霊使いレベル1で、所有技能の『陽炎』を使って擬似盾や囮をやってくれている。
僕が初めて買った奴隷で、白狐族の女の子だ。相変わらず本名不明で年齢不詳。
獣眼種と言えば有角種に負けず劣らずの肉体派のはずなんだが、ミミ子はその辺りからっきしだ。
手も足も腰もほっそりしてて触るだけで折れそうな雰囲気をまとっており、ちょっと動くだけで座り込む体力の無さも健在だ。
だが感覚に関しては僕を上回る鋭敏さをたびたび見せてくれるので、その辺りは凄いなと感心している。
性格は見た目に反してぐ~たらで怠け者だ。
疲れるとすぐ自分の尻尾にくるまって、どこでも寝こける習性がある。
この時の寝顔が普段の美人なすまし顔とはかなりギャップがあるらしく、ロビーの椅子に背筋を伸ばして座ってる時はみな遠巻きにしているが、椅子の上でとぐろを巻き出すと色んな人がその可愛さに惹かれて覗き込んでくる。
キッシェたちも十分美人なのだが、ミミ子の造形はちょっと群を抜いてて作り物のような感じさえする。
真っ白な髪は触ると溶けそうなくらい細く綺麗で、大きな金色の瞳孔で見つめられると神々し過ぎて思わず呼吸を忘れるほどだ。
だがぺったんこだ。
僕にハーレムを作るよう唆してる張本人で、今の流れも全部ミミ子が我が家に来たせいだと思っている。
でもちょっと、いやかなり人間不信だった僕が、他人と関わろうと思ったのはミミ子の影響であるのは間違いない。
家事の担当は主に食べる係。
最後に僕だが現在射手レベル3で、所有技能は『ばら撒き撃ち』と『早撃ち』と『精密射撃』。
それと先日技能試験に受かった『見破り』が加わる。
そういえば他のも試験に受かったので、名前が変わったんだった。
『ばら撒き撃ち』が『ばら撒き撃ち改』に。
『早撃ち』は『二連射』へ。
そして『精密射撃』が『必中矢』に。
正直名前が変わっただけで、やってることはいつもと変わらないんだけどね。
家事は買い出しと、風呂沸かし担当だ。
僕についてはあまり語ることもないので、代わりに職業取得の仕組みでも。
職業とは、迷宮組合が認定した迷宮内での担当を判りやすく示したものだ。
大まかに分けて、モンスターの攻撃を受け止めて味方を守る盾役。
モンスターに攻撃を仕掛ける攻撃手。
戦闘の補助や探求の進行を物理面で手助けする遊撃手。
同じく魔法で支援する後衛。
の四つに分類される。
ここから更に各ジョブに分かれていく。
盾役なら盾持や護法士。
攻撃手は戦士や射手。
遊撃手は斥候や狩人。
後衛は魔術士や治癒士。
上級職も入れるともっと種類は増えるが、だいたいこんな感じの分類だ。
それに戦士でも片手武器で盾を持てば盾役が出来たり、護法士も正確には法術をつかうので後衛でもあるとかで、厳密な区分けにはなっていない。
あくまでも便宜上そう呼んでるだけである。
職業はギルドの認定試験に受かれば、正式に取得が認められ探求者認識票への記載が許される。
この試験だが様々な種類があり、簡単な奴は職業訓練講習を最後まで受ければ良いだけとかもある。
だが大半は実技試験であり、さらに実地試験として迷宮内での達成依頼の場合もあり得る。
斥候の上級試験だと達成依頼で、手ぶらで迷宮の一区画を踏破するとかあるらしい。
各職業にはジョブ技能と呼ばれる特技がある。
これも技能講習を受けて覚えるものであるが、技能をある程度もっていれば職業の認定を受けられる場合もある。
例えば斥候の初級技能は、『気配感知』と『罠感知』に『罠解除』。
それに『武器投擲』、『忍び足』、『軽技』の六つだ。
このうちの四種類をもっていれば斥候として扱われる。
これらの技能は本人のレベルにより取得の上限が決まっており、レベル2までは初級クラスまでしか許されない。
レベル3に上がってようやく中級技能の取得許可が出るのだ。
ジョブ自体のレベルも同様で、本人のレベル以上にはなれない仕組みだ。
そして現在、僕はレベル3から許可される毒物取扱い技能講習へ通うのを検討している。
どうしても今の短弓では攻撃力の低さが目立つ。
だがかなり前に三層で巨大蟷螂と戦った時、その時のリーダーが使っていた毒の威力は目を見張るものがあった。
というかそれ以外に突破口が見えない。
現在の僕らのパーティで、カマキリに勝つ方法なんて他にあるだろうか。
だがあと一ヶ月以内に、僕らはそれを成し遂げなければいけない。
それがある女性と交わした約束の内容だった。
話は少し前、女の子たちと巻き戻し能力を共有してから数日後まで巻き戻る。
『武器投擲』―斥候と狩人の初級技能。投げても武器は消えない
『見破り』―射手と狩人の中級技能。弱い部分をみつける
『ばら撒き撃ち改』―射手の中級技能。同時発射本数が五から八へ
『二連射』―射手と狩人の中級技能。素早く二回撃つ
 




