おっぱいとお風呂
おっぱいに貴賤はないと力説したら、ブラックリストに入れられたでござる
少女たちを引き連れて、僕は愛しの我が家へ帰ってきた。
夜もそれなり更けていたので、今日はうちにお泊りしてもらうつもりだ。
というか、彼女たちを野宿当然の噴水広場へ戻す気にはなれない。
この家は部屋やベッドが、急に人が増えても大丈夫なくらい余っている。
理由は簡単で、もともとこの家は大家族が使っていたモノらしい。
引き払った原因は判らないが、天井の高い大きなダイニングルームや防音のしっかりした寝室はかなり気に入ってる。さらに屋根裏部屋や地下室もあり、これで金貨7枚は破格過ぎる値段だった。
そもそもなんで僕がそんな家を買ったのかと言うと、人が増えるのを始めから想定してたのだ。当初の計画では奴隷用予算の金貨12枚で四人の奴隷と契約し、キャッキャウフフなハーレムライフを過ごす予定であった。
まさかミミ子一人に、その予算が全て費やされるとは……。
ミミ子が可愛いから、今となってはどうでも良い話だけどね。
取り敢えず彼女たちの部屋の割り振りと寝間着や下着は、ミミ子に任せることにした。
女の子の服はよく判らないし、サイズが小さければ僕のを使ってくれと言ってある。
そして僕は今、新しい来客たちの為に井戸と風呂をせっせと往復していた。
一日迷宮に篭っていたのだが、なぜか疲れを全く感じていない。
自分でも信じられない速度で、僕は大きな浴槽にあっと言う間に水を汲み終えた。
「お風呂の準備できたよ。誰から入る?」
リビングで固まっていた三人は、僕の掛け声に顔を見合わせる。
なにやらさっきまでミミ子と何かを相談していたようだが、それはもう終わったのだろうか。
「そっその、一番風呂はどうぞお先にお使いに。私たちは……後から入らせて貰います」
「そうなの? それじゃお先に」
まあいきなり一緒に入るってのは、流石に夢を見過ぎたか。
落胆を顔に出さない様に努力しながら、一人で風呂に向かう。
石鹸を泡立てた海綿でひとしきり全身を擦り上げて垢を洗い落とし、ゆっくりと湯船で足を伸ばす。
今日は二回しか巻き戻ししてないのに、随分と長く感じた一日だった。
目を閉じてウトウトしていたら、風呂の戸が小さくノックされた。
「えっ、はい?」
「すみません、ご一緒させて貰ってよろしいですか?」
「あ、はい」
思いがけない展開に思考がついて来ない僕は、キッシェたちの呼びかけを生返事で承諾する。
ガラリと風呂の戸が開き、三人の少女がタオルを巻きつけた姿で、恐る恐るといった風に入ってきた。
言葉を失った僕は、湯船に浸かったまま少女たちの姿を食い入るように眺める。
キッシュはすらりとした体付きだが、タオル越しでも十分に大きいとわかるサイズだった。ちょうどお椀をひっくり返したくらいの盛り上がりだ。
キッシュより頭一つ大きいリンは、やはりボディも抜きん出ていた。
たっぷりとした腰回りと僕の手の平なら余裕で溢れそうな双丘を、窮屈そうにバスタオルへ押し込んでいる。
恥ずかしそうに俯くモルムは、二人の後ろに隠れてしまってるのでよく見えない。
でもミミ子よりは起伏がありそうだ。明らかにモルムのほうが年下っぽいんだが……。
「あれ、みんなもお風呂? 奇遇だね」
テンパったせいかよく判らない言葉を口走ってしまう。
僕の言葉に三人はきまりが悪そうに目を逸らした。
しばし気まずい沈黙が流れる。
「お邪魔しまっす!」
張り詰めた空気の中で、最初に行動を起こしたのはリンだった。
体を洗うためにたらいに汲んでおいたお湯を手桶にすくい、いきなり頭から被る。
豪快な洗い方だなと思って見てると、顔を上げたリンと真っ直ぐに目があった。
濡れた髪を額に張り付かせたまま、なぜか凄い真面目な顔で少女は僕を見つめてくる。
そこでようやく僕も気がついた。
リンの側頭部からぽこんと突き出した黒いモノに。
「それ、頭についてるのって角?」
「そうです、隊長殿」
詳しく聞こうと思った瞬間、キッシェがいきなりバスタオルの前をはだけた。
僕の視線がそちらへグイッと引き寄せられる。
少女の隠されていた場所には、上を向く淡い桜色の突起が綺麗な半球を描く膨らみの先に色付いていた。
腰がキュッとくびれているせいか、艶かしさが半端ない。
そこで僕は再び気がついた。
キッシュの首筋や鳩尾、それに腰回りを覆う青白い鱗の輝きに。
「それは鱗?」
「はい、私は竜鱗族の混じりものなんです」
「リンもそうなの?」
「私は牛鬼の混じりものです」
そして二人は揃って目を伏せた。
これが彼女たちの隠してた秘密なんだろう。
なるほどこれで色々合点がいく。
彼女たちの迷宮一ヶ月目とは思えないあの動き。
亜人の血が混じってるというなら納得だ。
それと噴水広場にいながら、あまり洗えてない体もそうか。
この都市では、亜人はあまり良いようには扱われない。
うっかり肌を晒してバレてしまうと、どんな目に遭うか分かっていたんだろうな。
「触らせて貰ってもいい?」
僕の問い掛けにキッシュは、一瞬体を強張らせたが黙ったまま頷いてくれた。
湯船から出た僕は遠慮なく手を伸ばす。
やや硬いが肌の張りがあって、押し返すような弾力に指が包まれる。
素晴らしい手触りだ。
「リンのも触っていい?」
キッシェの横に並ぶリンに尋ねると、戸惑った顔をされたが素直に頭を下げてくれた。
もう片方の手でゆっくりと触れる。
こちらもキッシェに負けず劣らずの肌の張りだった。
ただ大きい分だけかなり柔らかい。
どこまでも指が埋まっていく感触に、僕の気持ちは昂ぶっていく。
「あのう……」
「どうしたの?」
「普通はこんな時、鱗の部分を触るんじゃないでしょうか? どうして……その、アッ!」
思わず先端をキュッと捻ってしまった。
「私もてっきり角を触らせてくれって意味かと思ったです――うっ」
リンの方も先っぽを指先でつまみ上げる。
「だってほら、男ってそういうものなんだよ。胸があればまず揉む! これが当たり前です」
「そんなものですか。その…………私の肌、気持ち悪いって思わないのですか?」
「すごい綺麗だね、この鱗。青白くて滑らかで」
そっとキッシェの鱗に指を這わせる。
ひんやりと冷たく硬質な感触が伝わるが、どこまでも滑らかでスベスベと心地いい。
僕の指の動きに、キッシェは驚いた顔のまま静かに目を閉じる。
その眦から水滴がすっと肌を伝った。
「…………こんな、かさぶたみたいな肌なのに……」
「いや、これ凄く手触り良いよ。ずっと触ってたいね、むしろ」
リンが興奮した面持ちで、僕らの会話に割り込んでくる。
「私の角はどうですか?! 隊長殿」
「うん。かっこ良すぎだと思う、その角。曲がり具合に実にそそられる」
頭をぐいぐいと押し付けて来たので、角に優しく触ってみる。
黒く硬いリンの角は上向きに弧を描いており、親指ほどのサイズだが存在感がすごい。でも可愛い女の子に頭に角が生えてると、アクセントの強い髪飾りにしか見えないな。
なるほど、ちょっと左右にボリューミーなリンの髪型はコレを隠すためだったのか。
「もしかしてモルムも混じりもの?」
「いえ、モルムは普通の人間です。ただ……」
その先を聞いた僕は黙って、二人の後ろの隠れる少女に近づいた。
驚かせないようにゆっくりとバスタオルを剥ぎ取る。
恥ずかしそうに顔を背けるモルムの腹部や胸元には、引きつった火傷の跡や切り裂かれたような古創が一面に残されていた。
「触っても良いかな?」
「………………うん」
少女の許しを得た僕は、そっと震える肌に口付ける。
今日一日でたくさんの汗をかいたのか、モルムの肌は塩の味がした。
ついばむように少女の柔らかな肌に唇を押し付けると、モルムは僕の頭をぎゅっと抱きしめてきた。
少女の胸に耳を当て柔らかな心音を聞きながら、僕はモルムがここに居ることに深い満足を覚えた。
「よし、みんな汗かいてるし僕が洗ってあげるよ」
三人を風呂椅子に座らせ、石鹸を泡立てた手の平で順繰りに洗っていく。
リンは全身が柔らかで、指がどこまでも沈み込むような肌触りだった。
特に大きなお尻を丁寧に洗ってあげると、嬉しそうな声を上げていた。
キッシェは鱗肌のせいでお腹周りや背中がすべすべで、洗ってるほうも気持ちが良い。ちょっとくすぐったがりなのか、洗ってる最中に息切れを起こすほどだった。
モルムはできるだけ丁寧に隅々まで洗ってあげた。
ちょっと洗いすぎて、少し漏らしてしまったのは驚いたが。
そのあと四人で一緒に湯船につかり、心の底まで暖まった。
最後に少しのぼせた僕自身を、三人が優しく労わってくれた。
慣れてないぎこちない感じが、逆にすごい良かったり。
お風呂から上がると、ミミ子が選んだ下着に皆で着替える。
リンはピンクのはち切れそうなビスチェで、赤毛とすごくマッチしている。
キッシュは淡いベージュの大胆なベビードール姿だ。
いつもキリッとしている女性が、そんな姿だと激しく興奮するね。
モルムは白絹のキャミソールで、妖精にような愛らしい。
その後は無言のまま、一緒に僕の寝室へ向かう。
ベッドの上にはすでに、お馴染みの黒絹のキャミソールを着たミミ子が待ち構えていた。
そして寝台の脇には見慣れない香炉が置いてあり、嗅ぎ慣れない匂いがそこら中から漂っていた。
それからの記憶はあまり残っていない。
『竜鱗族』―おもに大陸東部に居留する水の加護を受けた種族。上位種のみトカゲ顔
『牛鬼』―有角種の中では希少。男性と女性で見た目が大いに変わる
『春呼びの香』―催淫効果のある芳香を放つ




