~Epilogue
空は青い、日差しは暑く、遠くに鳥が飛んでいる。
「いやー! 船旅はいいですなー!!」
剣鬼と呼ばれた男は嬉しそうにはしゃいでいた。
「ラォーグさん。 着いて来て下さるのはありがたいのですが、本当に良かったのですか?」
ウィーゼルの言葉に笑いながらラォーグは答える。
「いえいえ、私こう見えて魔族を随分殺して成り上がっているんですよ。 で、次には人間を殺しまくっています。 共存の道を歩む以上、大陸に残るのは良くないかと思いまして。 何より戦えませんし」
最後に小声で何か言っていたが、ウィーゼルはそれを聞かなかったことにする。
「オーラスくん! 引いてますよ! ほら!」
「待て待て待て! 引いてる! 引いてるって! なんだこれあがらねぇ!? 何か下にでっかい影見えるんだけど大丈夫か!?」
レイシスとオーラスは船旅を満喫しているようだった。
「きぼぢわるい」
ルイナは初めての船旅に(ラォーグ以外そうだが)完全にグロッキーとなっている。
さっきまでは酔い止めも効いていなかったため、錯乱し海の水を全て魔法で蒸発させるとまで言っていたくらいだった。
そんなルイナの背を撫でながら、ウィーゼルは青い空を眺めている。
「私達の逃げてきた大陸に行き、人と魔族の戦いを止める。 何とも勇者らしい発想ですな! ですが良かったのですか? シルベア様を置いてきてしまって」
「いえ、連れて来る訳には行きませんし…。 なるべく早く戻ろうと思っていますし、彼女も分かってくれていると思います」
ゲラードは知らない、シルベアが物凄く恨めしそうに見ていたことを。
そしてそれを必死に隠していたことも。
「ゲラードくん! 女の人が分かってくれていると思ったら大間違いですよ? もっと大切にしてあげてください!」
「大体男の人っていうのはね。 自分勝手で女のことなんて考えてないのよ。 うぷっ」
二人は明らかに特定の人物を睨みつけている。
オーラスはレイシスから顔を逸らし釣りに集中する振りをし、ウィーゼルは何も分かっていないようで、普通にルイナへ笑顔を返していた。
「僕達は人も魔族も殺め過ぎたからね。 ラォーグさんじゃないけど、大陸で新しい人生を送る方がいいと思ってね」
「戦えませんしね」
ウィーゼルはまたラォーグの言葉を聞き流す。
ゲラードはそのやり取りを笑いながら見ていた。
そして腰に掛けた剣を抜き、青い空へと掲げる。
天剣グリムカーレッジは日を受け、銀の光を返す。
「行きましょう。 まだ戦いは終わっていませんから」
ゲラードの言葉に、ウィーゼルは頷く。
二人の勇者の旅路はまだ遠く険しい。
だがその顔に陰りはなく、新しい平和への願いをその胸に秘めていた。
『紅蓮の王の前に現れし勇なる者。 その強気意志だけが、この永き混沌を終焉に導くであろう』
一人はその手に漆黒の剣を携えていたと言われている。
一人はその手に白銀の剣を携えていたと言われている。
あらゆる大陸で人と魔族の争いを治めた、平和の象徴『継承の勇者』。
二人の勇者の伝説は今もなお、語り継がれている。
おわり




