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プロローグ
暗い、暗い、場所だった。
僕は一人だった。
「誰かいるの?」
何度呼びかけても反応はない。
悲しかった。寂しかった。
「ねえ、返事して!」
泣きそうになる。
「少年」
どこからか声がした。
はっ、と声がした方を見る。
何も見えない暗闇の中、一箇所だけ明るかった。
「元の世界に返してあげよう」
形は見えないけれど、誰かは言った。
もう一度、生きることができる、と。
どういうことかわからなかった。
「わからないのか。お主は車に轢かれて死んでしまった。本来ならここで天国に行くか地獄に行くかの別れ道へと進むのだが、お主はまだ生きなければならない」
どうやら僕は死んでしまったらしい。
名前も家族も何もかも覚えていなかったが、生き返れば何かわかるだろうと思い、もう一度やり直すことにした。
「行くがよい」
誰かが言った時、僕の意識は消えた。
そして僕の人生は始まったのだった。