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8.最愛と再会

「え、ジョシュア? どうして?」


「ミサト……ミサト……」

 顔中にキスの雨を降らすジョシュア。


「あ……待って、ジョシュア……待って」

「嫌だ、勝手にいなくなって、ずっと探してた」


 ギュウギュウと美里を抱きしめるジョシュア。


「ねぇ……ミサト。この髪飾りを使い続ける理由は? いなくなった日に……俺に言った気持ちは今も変わらないの?」


「ジョシュア、お願い、少し落ち着いて」


「無理だよ。だって2年も探していたんだ。師匠は何も教えてくれなかったから」


 悲しそうに伝えるジョシュアであった。


「私だって、貴方が騎士を辞めていたのを知らなかった」


 ジョシュアは美里の首元に顔を埋める。


「なぁ、ミサト。好きなんだ。初めて会った日からずっと好きだった。今だって変わらない。あの日、俺の話を聞く前に消えた。酷いよ、俺も一緒に連れて行って欲しかった」


「ジョシュア……ごめんなさい。勝手にいなくなって。私もずっと会いたかったの」


 ジョシュアは美里の顔をひと撫でする。辺りにはオニオンスープのいい匂いが漂う。


「ミサト……お腹空いた」


「私も……先にご飯にしましょうか」

「うん」



「……ジョシュア」


「ん?」


「あの……近すぎよ」


 盛り付けをする美里を後ろから抱きしめ、肩に顎をのせる。

「いいの、いなくなった罰だから」

「そう……」


 美里は気にせず盛り付けを終える。


「あの……このままだと火傷するから、一旦離れて運ぶのを手伝って」

「わかった」


 ジョシュアは店内を見渡し美里に伝える。


「あそこで食べよう。街並みが綺麗だし、俺と美里が食事中なのを見せびらかす」


 窓側の席に料理を並べる。


「…………意味がわからない」


「もぉ、ミサトはモテモテなの。気付いてないの?」



 不思議そうに窓に映る自分を見つめる美里。ジョシュアは思う、思い焦がれた大切な女性、この瞬間、隣にいるのは自分なのだと。



「ほぉ。私がモテモテなのね」

「……まぁ、いいや。食べよう。座って」


 美里は向かいの席に座る。


「……ねぇ、ふざけているの?」

「え……」


 こっちだと言い、隣の席をポンポンと叩くのであった。

「見ない間に随分と積極的になったわね」


「まぁね。また逃げられたら困るからね」


 美里はジョシュアの隣に座ると手を握られる。


「こういう時は左利きはいいね」

 ニコリと笑うジョシュアに何も言えない美里であった。



 のんびり食事を始める2人。窓の外の街は帰宅途中や食事に向かう人達で賑わっている。



「それでね、王女はアイザックを捨てたんだよ。ところでアイザックを見た感想は?」


 昼間に訪れたアイザックを思い出す。


「ん?感想? 大きな人だったね」

「それだけ? カッコいいとかさ」


 ジョシュアよりも大きな身体で背も高い。チラリとジョシュアを見て、再びアイザックを思い出す。


「あのね……やはり異世界のイケメンの基準は理解出来ないわ。アイザック様の顔の痣を抜きにしても……無いわ」

「……?」



 美里の知るアイザックは目を瞑っていた。顔立ちは悪くなかった。そして、今日改めて見たアイザックは瞳は一重で細かった……隣にいるジョシュアを見る。パッチリ二重に空色の瞳。堀が深めの顔立ち。目元の黒子が可愛らしい。

 そして、もう1人の男を思い出す。浅黒い肌に堀の深い顔、顎髭がチャームポイントの行商人の男。



「イケオジ……行商人さんの方がイケメンよ。前にも言ったけどジョシュアの方がね、何百倍もイケメンよ。アイザック様の性格も知らないしね。王女とは寝ていたんでしょ。互いに不誠実でしょ。仮にも王女様よ。少し考えたら手を出しちゃダメでしょ。ジョシュアも王女に誘われたら寝るの?」


「ん〜難しいね。今の俺は寝ないだろうけど王女の事が好きだったら寝ちゃうかもね。はい、ミサトあ〜ん」


 無意識に口を開ける美里に食べ物をつっこむジョシュアであった。


「ちょっと……大きすぎよ」

「あはは、ごめん」



 窓の外では、美里の店に灯りが灯っているのを見て中を見たり、通りすがりに見ていく人々は2人で食事する姿を見て驚くのであった。



 食後は一緒に片付けをする2人。騎士団では馴染みの皿洗いである。



「ジョシュアは向こうで寝るの?」

「ん〜ミサトがいいなら、こっちがいい。ミサト……俺の寝床なんだけどさ。あそこはね……物置なんだよ」


「知ってるわよ」

「こっちで寝ていいの?」


「2階に空いてる部屋があるから使う?」

「ありがと、早速、荷物運んでもいい?」


 急いでジョシュアは荷物を取りに行く。バック1つの荷物であった。



「少ないわね」

「いや……ひと月の予定だったから」


「そうなの? じゃあ来月には戻るのね」

「…………帰らない。師匠は意地悪だよ。ミサトがいると教えてくれないからさ。ひと月で戻る予定だから最低限の荷物にした」


 ジョシュアは空き部屋に荷物を放り込む。

「上は結構広いね」


「そうなのよ」


 店の二階には小さめのキッチンとリビング、部屋は2つあり他にトイレと浴室がある。


「ここのお風呂が最高でね」


 ジョシュアの手を引いて案内する。大きな窓があり、カフェは少し小高い丘にあるため、街並みが綺麗にみえるのであった。


「お風呂沸かすね」

「……ありがと」

「ん?」


「ふふっ、何でもないよ」


 ジョシュアは脱ぎだし上半身裸になる。

「ジョシュア、逞しい身体だったのね」


「まぁね。一緒に入る?」

「…………遠慮しますわ。オホホホホ」


 赤い顔でリビングに戻る美里であった。


 


 美里の心臓は今にも口から飛び出しそうであった。

「はぁ、ジョシュアはカッコ良すぎるわね」


 ソファに横になりゴロゴロとするのであった。

 その頃ジョシュアも風呂では心臓の音がドクドクするのを感じていた。



「ミサト、お風呂ありが……え? 寝てる……」


 ソファに横になり眠る美里。

「嘘だ……寝てるなんて。ミサト……ねぇ……起きて」

「んっ……んんっ……」


「はぁ、無理だ……俺に耐えろと言うのか……」


 ミサトを抱き上げ寝室へと運ぶジョシュア。


「ん……ジョシュア」


 へにゃりと笑うミサトを眺め、一緒に横になるジョシュアであった。

「まっ、まだ始まったばかりだ。ミサト、もう離さないから覚悟してね」

 

 そっとミサトの頬に口付けを落とし自室へ戻るのであった。その夜、ジョシュアは眠れぬ夜を過ごし、美里は夢の中であった。



 

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