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10.愛しい人に全てを

 ジョシュアは美里を2階の寝室へと運ぶ。

 


「ミサト……教えて。俺の事どう思っているの? 俺はずっとミサトの事好きなんだけど」


「ジョシュア……私も、あの日から変わらないの。ずっと好きよ」


 美里は迷いながらも正直な気持ちを伝える。勢いでジョシュアの前から消えたが寂しく恋しかったこの2年、再会できた喜びと、他の女性の存在に嫉妬した自分について全て話す。

 ジョシュアもまた、この2年かの思いをミサトに伝える。他の女性と過ごすこともあったがミサト以上の人には出会えなかったこと。再会し暴走しそうな想いを必死に耐えていた事、嫌われてもいいと全て話した。



「もう1人で消えないでね。ずっと一緒に……本当は明日、渡さそうと思っていたんだけどね」


「明日?」

「ミサトが俺を置いて消えた日だよ」


「ミサトは忘れちゃったのか〜。俺はずっとあの日を忘れられないのにさ……」



 ゴロリと美里の隣へ横になるジョシュア。美里の髪で遊びだす。美里とて忘れてはいなかった。ただ、ジョシュアが覚えていた事に驚いたのだった。


「あのさ、コレ」

 横向きになりミサトに渡したのは小さな小箱である。

「開けて」


 中には指輪が入っていた。中央にはジョシュアの瞳と同じ空色の宝石が埋め込まれている。


「あの子の家は鍛冶屋だからさ、配達がてらコレを取りにいったんだよ。あの子とは何もない」


「ミリーさんは空色の宝石の付いた髪飾りをしていたわ」

「そうだった? 気づかなかったよ」


 ジョシュアにとって女性は美里は特別で、他の女性には興味はなかったのだった。


「ジョシュア、私が貰っていいの?」

「ミサト以外に贈るつもりはないよ。手を貸して」



 美里の指に指輪をはめる。

「ピッタリだわ」


 ジョシュアは寝ている美里の指のサイズをこっそり測っていたのだった。嬉しそうに指輪を眺める美里を見れて良かったと思うジョシュア。


「愛の力かな」

「ありがとう。綺麗ね」


 スリスリと身体を擦り付けるジョシュア。


「……ジョシュア? こんな時に言うのもなんだけど」

「何?」


 グゥ……美里の腹が鳴る。


「お腹空いた……今日は朝から何も食べてないの。安心したらお腹空いちゃった」


「ミサト……ご飯食べらた続きを絶対にするからね」

「わかったわ」


 手を繋ぎ台所へ向かう美里。

「ジョシュアは待ってて、下準備はしてあるから」



 ジョシュアは椅子に座り待つ。


 台所には美里がいる。ジョシュアは落ちつくように深呼吸をしテーブルの下でガッツポーズをするのであった。


「ん? なんだコレ」

 テーブルにある小さな石を見つけたのだった。

 灯りに照らし石を見てみていると美里から声がかかる。


「ジョシュア、運ぶの手伝って……あっ」

「ミサト、これは?」


「食べながら話すわ」

「わかったよ。今日は焼き魚か。美味しそう。そして、この匂いはアレですな」



「そうよ。豚汁よ」

「1番好きなやつ」


 食べながら石について話す美里。


「ずっと血を? あの日から?」

「そう。今となると日課みたいなものでね……呪いみたいでしょ」


「ミサトからの呪いなら大歓迎だよ。ミサトの色で好き」

「もう少しで完成するはずよ、いっぱいになると血を吸わなくなるらしいわ」


「もう傷つけなくていいよ」

「でも……」


 美里は諦めて行商人から購入した小さな鳥籠付きのネックレスに入れる。


「僕が貰っていいの?」

「ジョシュアの為の物よ。でもこれが完成したら お風呂も好きな時に入れるわよ」


「前に、お湯が欲しい時は自分がいると言ったよ」

「たしかに言ったわね」



「未完成でいい。さてシャワー浴びるからお湯をお願い」


 ジョシュアはネックレスをはめると美里にキスをする。


「ミサトからのプレゼント……とっても嬉しい」

 

 2人は気付かないが石が淡く光り出した事に。


 手を引いて浴室に向かうジョシュア。美里は湯船にお湯を貯める。


 ジョシュアは美里に抱きつく。今のジョシュアはデカい犬の様である。


「お湯が溜まったわ」

「ネックレス濡れたら壊れるかな?」

 


「大丈夫よ、このまま入ったら?」


「やっぱり外して……待って、その前にお湯が出るか試すよ」


 ドキドキする2人。


「……水だね」

「最後までやるからネックレスを返して」


「え……酷い」

「え? せっかくだから最後までやる」


「……このまま入るよ。外したらミサトが持って行きそう」

「わかったわ。私は台所を片付けてくるね」


 そう言うと美里は浴室から出るのであった。




「ミサトもどうぞ」

「わかった」


 風呂から上がり水を飲むジョシュア。そしてリビングをウロウロするのであった。


 ジョシュアは緊張していた。そして湯船に浸かる美里も緊張していたのだった。



「とりあえず風呂からでるか」


 美里は湯船の縁に手をかけて立ち上がるも近くに置いてあった桶が落ちる。カランカラン。浴室に響く音と同時にドタドタと聞こえる足音と共に浴室のドアが開く。


「ミサト、どうしたの? 大丈夫……?」

 ジョシュアはジッと美里を見る。顔を見て、視線を下げ食いつく様に見つめる。


「いや……違っ……待って……あっ」


「ちょっと、ジョシュア……鼻血……鼻血よ」


 美里は裸なのを忘れジョシュアの元に駆け寄る。そして手を伸ばすと鼻血の出ている方の鼻翼を抑える。


「石に血が付いた……」

「大丈夫……洗えば……あら?ジョシュアの血を吸ったのかしらね。鼻血は抑えていたらすぐに止まるからね」


「ごめん、石に血……俺の血は不味そうなのに」

 ジョシュアは近くのタオルをミサトに渡す。


 ジョシュアは自分で鼻翼を抑え、器用に洗面台でネックレスについた血を洗い流す。


「水は吸わないね。それならミサトの月のモノのを」


「え……汚いでしょ、それにね、この世界に来てから月のモノはないのよ。不思議よね、落ち人だと知られる訳にはいかないから誰にも聞けなくて」


「…………え。ミサトは師匠とは寝てないの?」

「え? 何故?」


「いや……ここには泊まったりしてたと」

「行商人さんは裏に停めた馬車で寝泊まりするか店よ。ここの2階にはジョシュアが初めてのお客様よ」


 美里の手を引いて台所へ向かう。水を飲ませると美里を抱き上げ寝室へと向かう。


「ミサト……この世界ではね。初めてを迎えないと月のモノは来ない」


「え……」

 ベッドに寝かせて美里にキスをする。


「僕に初めてを頂戴、そして僕と結婚して、大切にする。美里の言ってた優しい旦那さんになる。あと、僕以外の夫はいらない位に愛を捧げる。ミサトの愛を僕1人に注いで」


 

「ジョシュア……わかった。私と結婚して私だけに世界一優しい旦那様になって」

「旅行もしよう。僕の両親にも会ってもらえる?」


「わかった。旅行は楽しそう」


 2人は唇を重ねるのだった。




 夜明け前の2人はベッドの中だ


「ねぇ、ミサト。ちょっと試したい事があるのだが……」

「まぁ、試してみたら?」


 2人は指先を切り血を一滴ずつ石に垂らす。


「まだの様ね。やはり完成させたいわ。返して」

「え……僕のになったのに返せと?」

「そうよ。ほら頂戴」

「嫌だよ……僕のだ」

 2人はじゃれあっているとジョシュアの手から溢れる石。


 コロコロと転がり向かう先はシーツに残る破瓜の痕。

「あっ……石コロちゃんが……私の粗相に」

「ミサト……粗相ではない。私に全てを捧げた証だ。この部分だけ保管しておこう。ねぇ、女神様に頼んでよ。僕が亡くなったら一緒に入れて欲しい。見て、ミサトの血以上に僕の出したモノに……ん……ミサト……」


「……ジョシュア、石に吸われている? しかも私のだけじゃない」


「そうだね……僕の出したモノを首から下げるのか……よく洗ってから……おぉ」


 石は急に大きく光り輝く。


「もしや、完成なのかも……見てミサト。石の色……黒じゃない」

「ほぉ、黒と空色が混じって綺麗ね」


「2人の色の石だね」

「本当に俺が貰っていいの?」



「勿論、私の全てはジョシュアのよ」

「……もう日付けは変わった。今日はミサトが消えた日だけど世界一幸せな日に変わったよ。このまま、婚姻届を出しに行こうか平民は身分証はいらないし」


「いいね。今日は結婚記念日だね」


 翌日、役場に婚姻届を出す。周囲からは驚きの声と祝福の声に混じり溜め息が聞こえた。


「さて、新婚旅行にいくよ。まずは王都に戻り師匠に挨拶して荷物も引き取ってくる。そして僕の生まれた街に行くよ」


 店の入り口にひと月程新婚旅行の為に休業と言う張り紙をはる。向かうは王都である。



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