森の再調査
改めて注意事後。各タイトルの内容はハヤト基準となり、ルカの話の裏での行動です。
その為、本文との内容とは基本的に異なります。
朝早く重たい背負い袋を持って宿を出る。
修理に預けた長剣はまだ返ってきてない。それでも宿にいても暇なだけだ。仕方がなくギルドに向かう事にした。
ほんの少し肌寒い朝の空気は澄んでおり、宿の近くの孤児院は朝早い事もあって今日は静かだ。
ギルドに着くと、いつもよりも人が少ない。
すっかりと軽くなった背負い袋を椅子においてぼんやりと依頼ボードを見ていると受付カウンターから声がかかった。
「ルカさん。丁度よかったです」
受付カウンターに向かうと、セレンが含みを帯びた笑顔を向けているのに嫌な予感がする。
「……ん? なんだよ」
「ギルドからの指名依頼がありまして、是非引き受けて欲しいんですよね」
「は?」
聞き間違いか?俺に指名依頼?
「……とりあえず内容聞いてもいいか?」
「はい。こちらですね」
セレンは嬉しそうにカウンターの裏から一枚の依頼書を出してくる。恐る恐るその真新しい紙を覗き込む。
「げっ……」
「そんな露骨に嫌そうな顔しないで下さい。ほら報酬は破格ですよ」
「いや、報酬はいいけど、依頼人がな」
改めて依頼書の依頼人の欄をみる。
――依頼人、グレース・ランデルローズ
名前は聞いた事はない。が、ミドルネームがあるという事は十中八九、貴族だろう。この時点で厄介事の予感しかしない。
「……なんで俺なんだ?」
「依頼人が“信頼できる冒険者に頼みたい”とおっしゃっていて……その条件に、ルカさんがぴったりだったので」
「……俺、信頼されるような覚えないけどな」
「その……ギルドとして“無難で安全”だと判断しました」
(……要するに、貴族から反感を買いにくい人物って意味か)
まあ、納得した。
「で、依頼内容は?」
「短距離の護衛です。依頼人が隣町を視察したいとの事で、他のパーティと一緒に同行して馬車の護衛ですね」
「ああ、なんか貴族の馬車がきてたな」
セレンが小さく頭を下げ、小声で話しかけてくる。
「……ギルドと、この町の信頼に関わるので、お願いできませんか?」
「ちなみに武器を修理に預けているんだが……」
「護衛の日は一週間後です。間に合いますよね」
笑顔で答えるセレン。
ああ、断れないやつか。仕方がない腹を括るしかないか。
「……わかったよ」
諦めて依頼票を受け取る。
「ありがとうございます!」
セレンの笑顔は、いつもより少しだけ安心したように見えた。
*
護衛依頼の日になり集合場所となっている門へ向かうと、すでに何人かの冒険者が揃っていた。
俺とは別のギルド推薦パーティのようだ。見たことのある中堅の三人組だ。絡んだ事はないが真面目なパーティのイメージがある。
「よお!今回はよろしく頼むな」
軽く自己紹介をしていると一台の馬車が停まる。華やかな馬車で来るかと思ったがまともな貴族のようで少し安心した。
馬車に追従していた騎士が馬車の扉を開けると、青を基調とした上品なドレスに、旅用の外套。
明らかに“町の人間”ではない気品が漂う金色の長い髪を揺らして令嬢が降りてくる。
令嬢は軽く会釈をする。
その姿にどういう礼をすればいいか分からず、周りを伺うが他の冒険者もただ固まっている。
「お待たせ致しました。皆様、どうかよろしくお願い致します」
凛とした声でそう挨拶した。
俺たちは慌てて頭を下げる事しか出来なかった。
「ギルドの方が“信頼できる冒険者”だと紹介してくれました。頼りにしております」
ギルドの謎の信頼と貴族からの重圧を背負いながら、俺は内心でため息をついた。
(……面倒事の匂いしかしねぇ)
こうして令嬢と騎士三人、冒険者四人の隣町までの近いはずの――だが長く感じそうな旅が始まった。




