ギルド会議
森の異変が収束してからニ日。
ようやく町全体に、いつもの空気が戻りつつあった。
ギルドでは治療班が忙しなく動き、奥の部屋では「魔物の異常化」について騒々しく議論が続いている。だが、依頼掲示板の前では笑い声も戻り、冒険者たちが互いに肩を叩き合っていた。
(……やっと息ができるな)
俺はカウンター越しに、セレンから封筒を受け取る。
「ルカさんの今回の討伐・防衛戦の報酬です」
そっと封筒の中身の確認する。予想よりも高い報酬額が書かれている。
「こんなに貰っちゃっていいの?」
「自覚がないだけでちゃんと働いてましたよ」
セレンは疲れが残った顔のまま、けれどほんの少し、嬉しそうに笑った。
(……まあ、生き残っただけでも十分だな)
封筒をポケットにしまい、ふと隣を見ると、トーマスが真剣な顔でザックを指さしていた。
「ザックさん!! 報酬入りましたよね? ポ、ポーション代……あの……全部……」
「いいじゃねぇか!一緒に飲みに行こうぜ!」
「飲む前に払って下さいよ!! ポーション代で報酬ほぼなくなるんですから!」
「だーー!! 聞こえなーーい!!」
耳を塞いで逃げ出すザック。
「ちょっと待って下さいって!! 金払えー!!」
ザックの悲鳴が町の方へ消えていった。
……まあ、元気そうで何よりだ。
*
ギルドを出て、馴染みの武具店に向かうとそこは人で溢れかえっていた。
「よう!お前さんも装備の修理か?」
「ああ、そのつもり、だったんだがな」
視線を近くのテーブルに向けると傷ついた防具や武器が積まれている。机にのらなかったのだろう。床には防具でいっぱいの木箱が並んでいた。
「悪いな。この間の件で修理依頼が多くてよ。一週間くらい待ってもらうぞ」
少し考えたが、仕方ない。
暫く休業になりそうだ。
無理をさせた長剣を預けて店を出る。
そのまま露店が並ぶ通りに足を向けてる。
「お、ルカじゃねぇか! 安くしとくから買っていきな!」
馴染みの八百屋の親父がどっさり野菜を並べながら手招きする。見た感じかなり繁盛しているようだ。
「今日は冒険者が沢山買って行ってくれるから助かるわ!」
「そりゃよかったな」
俺はカゴを受け取り、日持ちしそうな野菜を次々と放り込んだ。正直どれがいいのかなんてわからないが。
「おお!そんなに沢山買ってくれるのか!祝勝会でもやるつもりか?」
「いや、俺はソロだからしねーよ」
「いい加減パーティくらい組んだらどうだ? まあいいや!まいどあり」
ずしりと重くなった背負い袋を持って宿に向かう。その途中、人通りの少ない路地の方が騒がしい。
少し気なって足を向けた。
「や、やめて下さいっ」
「うるせー!亜人は消えろ!」
「お前が森をおかしくさせたんだろ!」
「……おい、もう行こうぜ」
まだ成人になっていないくらいのガキが五人。何かに向かって石を投げつけていた。
(ちっ……マジかよ!)
よく見ると、あの元奴隷少女が頭を守りながら座り込んでいた。周りには投げつけられたであろう石が散らばる。
(……ハヤトはどこ行ったんだ)
俺はため息を吐いてから背負い袋を地面に降ろすと、足元にあった小石を拾う。
(……見なかった事にするのが、一番楽なんだがな)
思いっきり振りかぶって少女の頭上を狙って投げつけた。
小石は少女の上を通り過ぎる。後ろの建物の窓ガラスが大きな音を立てて割れる。
「げっ!やべぇ!」
「誰だよ!しっかり当てろよ!」
「おい!いいから逃げるぞ!」
まあ、あの建物は空き家なんだけどな。
ガキ達が一目散に逃げて行ったのを確認し、重たい背負い袋を背負い直す。ふと視線を感じたが宿に向かって歩き出す事にした。
(気分転換にうまい飯屋に行くかな)




