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深い闇との戦い

 森は戦場へと様変わりしていた。


 吠える魔物。折れる木々。悲鳴。

 視界は乱れ、足元は土埃と返り血でぐしゃぐしゃだ。


(くそ……っ! 終わる気がしねぇ……!)


 俺は剣を振るうたびに腕が悲鳴を上げるのを感じていた。目の前の狼型の魔物が喉を鳴らし、牙をむき出しに飛びかかってくる。


「――ッ!」


 剣を横に滑らせて受ける。

 刃が軋み、肩が悲鳴を上げる。

 ほんの少し押し負けるだけで腕が持っていかれそうだ。

 こんなの普通の魔物じゃない。


 防いだ体勢からなんとか切り返すが魔物の皮が硬いのか致命傷を与えられない。休む暇もなく横から大型の魔物が引き抜いたであろう木を振り回すのが見えた。

 それを地面に転がり、なんとか避ける。


(こんなのあと何回、防げる……?)


 考えた瞬間、心臓が冷えた。


 そんな中――


「――がっ!!」


 鈍い衝撃音。

 視界の片隅で、ザックが大型の魔物に横殴りにされ、派手に転がった。


「ザック!!」


(やばい……! でも今行ったら俺も死ぬ……!)


 ザックの方へ駆け寄る余裕は一切なかった。

 俺だってギリギリで生き残っているだけなのだ。

 

 歯を食いしばって立ち上がる。

 泥と血が混じった味が口に広がる。


 狼型が低く身構え、その後ろでは大型が丸太を引きずっている。冷や汗が止まらない程の威圧感。

 警戒を解かないように一瞬、周囲を確認する。

 

 ――いた。

 

「トーマス!!」


 前だけを見ながら少し後ろで投擲をしていたトーマスを呼ぶ。すると震えた声が返ってきた。


「は、はいっ!!」


「ポーション沢山持ってんだろ!! まだ間に合う!ザックを頼む!!」


「ぜ、全部ですか!? これ、高い――」


「いいから早く行けぇ!!」


「ひぃ! わ、わかりました!!」


 トーマスが背負った袋を抱え、転がるようにザックの方へ走っていく。

 

俺は二人の前に立ち塞がるように、足を踏みしめた。


(絶対──通さねぇ……!)


 震えてても。

 勝てなくても。

 足がすくんでても。


 背後では叫び声を上げながら、手当たり次第にポーションをザックへぶっかけ始めた。


「おいおい……飲ませるんじゃねーのかよ……」


 思わず呆れるが、今はそんな余裕もなかった。

 

 狼型が地を蹴る。


「くそっ!!」


 剣を振る。

 刃が肉を裂く感触はあるのに、傷は浅い。

 狼が跳ね退き、即座にもう一度襲いかかる。


 腕が鉛のように重い。

 剣を振るタイミングがずれている。

 疲労で足が震える。


 なんとか狼型の攻撃を防ぐが体勢が崩れ尻餅をつく。


「う、ぉっ……!」


 横から影。

 人型の丸太が横薙ぎに振り抜かれる。


 その体勢のまま仰向けになるように避ける。丸太は狼型を巻き添えにし、顔面スレスレを掠めていった。


「なんでもありかよっ!」


 なんて愚痴る余裕もないようだ。人型はそのままの勢いで俺を踏みつけようと足を大きく上げる。


「ルカぁぁぁ!!」


 後方からザックの声が聞こえると同時に人型に切りかかる。致命傷は与えられなかったがバランスを崩す事に成功した。


 その隙に、俺はフラフラになりながら立ち上がり剣を構えなおす。

 

「お前……生きてたのか!助かった!」


「見ろよこれ! 胸当て!!」


 ザックは胸当てを叩いた。

 新品同然だった黒狼の革は大きく裂け、内部の金具が曲がっていた。


「……お前、これが無かったら即死だったな」


「だろ!? これ、買っといてよかったわ……! いやほんと……買ってから三日でぶっ壊れるとかあり得ねぇけど!」


「修理代ヤバそうだな」


「やめろォォ!! 現実に戻すな!!」


「元気そうで何よりだ!! ほら来るぞ!!」


「ひぃぃ!? まだ戦うのかよ!!」


冗談を言っている余裕はないようだった。先程の大型と更に狼型が二体こちらに迫ってくる。

 

 そのとき――森の奥の方から、空気が震えた。


 大地そのものが唸るような音。

 そして、眩い光が森の奥から放たれる。


 周りにいた魔物は急に動きを止め、光に体が朽ちて行く。

 

「な、なんだあれ……?」


 誰かがつぶやく。


 森の奥の上空に巨大な“魔法陣”のような光が暴走するように渦巻いていた。


 次の瞬間、爆音とともに森の奥から衝撃波が走り抜け、襲いかかっていた魔物たちが一斉に跡形もなく消え去る。


「うおっ!?」「なんだ今の――!」


 何が起こったのかはわからない。

 

 ――だけど。

 

 あの“赤い目の異常”も、戦いの気配も、全部。


(……終わった、のか?)


 恐る恐る立ち上がる冒険者たち。

 俺たちは、呆然とその場に立ち尽くしていた。


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