新たな拠点とメイドさん
翌日、最初に向かったのは鍛冶屋だった。
この間の戦闘でかなり消耗しているだろうと親父に修理を依頼する。
しかし、返せてきた言葉にため息をついた。
刃こぼれが酷い。歪みが酷い。おまけにヒビまで入っているそうだ。
命を預ける道具としては、もう信用できない。
愛着がないわけじゃない。
だが、強い思い入れがあるほどの代物でもなかったが、ただただ財布に優しくない。
「軽さ重視、取り回し優先。値段は抑えめで」
俺の要望に、鍛冶屋の親父は鼻で笑った。
「欲張りすぎるぞ」
「現実的だと思うが?」
そんな軽口を言いつつも、親父はいくつかの剣を机に並べてくれた。順番に持って確かめてみる。
重心。
柄の太さ。
振った時の戻り。
正直、剣の良し悪しが分かる程の使い手ではない。だから自分の直感を頼りに選ぶ。
細身で、無駄な装飾はなし。
重量は軽め。
そして、価格が良心的。
「これでいい」
「これでいいとか言うなよ。……まあいいんじゃないか」
親父がそう言って、にやりと笑った。
*
次は馴染みの店に防具を見に行く。
開口一番。
「派手にやったねえ」
やりたくやったわけではない。
靴だけは新調したばかりだったからか、少しの調整で大丈夫そうだ。それ以外は見事に全滅だった。
「動きやすさ優先で」
「それなら靴に合わせて黒狼の装備で合わせるかい?」
それでもいいかと考えたが、ふとザックの胸当てとお揃いになるなと思う。
「胸当てだけ他になにかないか?」
選んだのは、胸当て以外は黒狼の皮を使用した物にした。重要な部分は金属で補強されてはいるが、前の装備よりも軽く動きやすい。
胸当ては狂熊製の物にした。黒狼の皮よりかは重量はあるが、必要のない部分は軽量化がされている。その為、前の装備と殆ど変わらず着用できた。
着替えてみると派手さはなく、よくある色合いだ。
だが、戦場で目立たないのは長所だ。
(……まあ地味だな)
*
会計を済ませていると、店主が声をかけてくる。
「ついでだ。安くしとくぞ」
差し出されたのは、小さな革袋。
「閃光玉。三つセット」
握ると軽い。
だが、割れ物特有の慎重さが必要な重さ。
「これはな逃げる時に便利だ」
「逃げる……ね」
「聞いたぞ?死にかけたんだってな。売り物だからタダじゃ渡せないが特別に安くしてやるよ」
店主なりの心遣いなのだろう。
結局、それも買った。
使わないに越したことはない。
だが、持っているだけで選択肢は増える。
ギルドへ戻る途中、腰に手を当てながら歩くザックとトーマスに声をかけられた。どうやら草集めを一緒に行ったらしい。
「お、新装備か?」
「一応な」
「……派手じゃねぇなぁ」
「うっさいな。これでいいんだよ」
ザックは文句を言い、トーマスは目を輝かせて見ていた。
「かっこいいです!冒険者って感じで!」
「いや俺たち冒険者だろ……かっこいいってなんだ」
本当に、そういうつもりはない。見た目よりも機能性と金額で選んだだけだ。そういえば今回の報酬が全て消えた。むしろ少し足が出ている。
ただため息が出る。
「どうした?金欠かぁ?」
嬉しそうなザックを放っておいて、改めて新しくなった装備を見る。――新しくなると少し嬉しくなるな。
明日からまた草集めするか。
……また装備を見て思う。もっと安いのでよかったかも知れない。
これにて一章完結です。




