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第7話「動乱の結末」

ファマティー教の一斉蜂起は失敗した。

そしてその結果はファマティー教側に取って最悪の事態へと繋がる。


第7話「動乱の結末」お楽しみください。

―――シバリア市行政区未明


シバリア市内各所で夜半過ぎから発生していたファマティー教による一斉テロ攻撃は沈静化へと向かっていた。

既に奇襲をかけたはずのテロ側は地の利を生かしたものの、圧倒的な力の差に目的を果たすことなく制圧されていった。

ただし、ファマティー教徒側の主力を投じた行政区は未だに戦いは終わっていない。

暗闇にまぎれ、影に隠れて強襲と繰り返す。

だが、日本側の赤外線、サーマルゴーグルなどの装備により次々とその姿が晒されてしまいろくな抵抗も出来なくなっていった。

「少佐。大部分を撃退しました」

その報告を聞きアーノルドはようやくか、と言う思いだった。

だが、大部分であり全てではない。

ここで気を緩める訳に行かない。

「各隊を掃討戦へ移行させろ。ミスターキタノの言う通り徹底的にだ」

その言葉は直ぐに命令として伝達される。

米軍の各部隊は建物を一つずつ検索しながら残敵掃討に移った。


この時点で態勢は決したと言える。

既にファマティー教徒側は組織的抵抗力を喪失し、自身が生き延びるためにシバリア市外へと落ち延びなければならなくなっていた。

だが、彼等は大きな過ちを犯していた。

降伏であれば助かる道もあった。

しかし、逃亡を選択した以上は野盗になられても困る上、また牙を剥く可能性を考えれば殲滅するしかない。

そしてシバリア市上空には何機ものヘリが飛行して監視体制に入っていたのだ。

夜も明けだした今となっての逃亡は自殺行為に他ならなかった。

そこを理解している者は再び潜伏するのだろうが、今度はテロリスト捜索が執拗に行われるだろう。

そうなればやはり発見されてしまう。

どちらの選択も余程運に恵まれてない限りは極めて絶望的だ。


だが、彼等は降伏できない。

降伏は異教徒にファマティー教が屈するのと同義だからだ。

それでもまだ良識があったミラやその他の一部は早期に降伏しその身の安全は保証された。


どちらが正しかったのかは当人たちにはわからない。

ただ、生き残ったと言うだけで間違いではなかっただろう。


北野は昨夜の蜂起における報告を各所の責任者から聞いていた。

人的損失は行政区の職員1名、市街戦での米軍兵士の損失は3名、自衛隊は2名だった。

米軍兵士の損失はやはり最大の攻撃目標だった事と、最初の庁舎への奇襲によるものだった。

だが、北野を更に怒らせた事柄があった。


シバリア市民の損害だ。

此方に対する陽動でもあった市内各所の蜂起に巻き込まれた市民に死傷者が出ていた。

その数、約300名。

中には地下トンネルの出口にされていた住宅などの住人も含まれている。

非武装無抵抗の死傷者に流石にこの世界の価値観が全く違うとしても許せなかった。

「・・・市民に出来る限りの支援を行いなさい。それとアーノルド少佐と高橋少尉を呼んでください」

努めて無表情に言う北野に職員たちも触らぬ神に祟りなし、と言った感じだ。

「日本外人部隊、海兵隊所属のアーノルド・バストムーア少佐であります」

「日本国陸上自衛隊特殊任務部隊の高橋政信たかはしまさのぶ少尉です」

いつもと違い公式の会議の場なため、二人は形式通りの挨拶を行った。

「良く来てくれました」

笑顔を見せる北野だったが、やはりその表情は無表情に近い。

無理矢理笑顔を作った、と言える表情だ。

「市内の治安維持と警戒は自衛隊に任せるとして、貴殿方二人に頼みがあります」

北野からの話に二人は直立不動のまま聞く。

「今だ潜伏するテロリストを炙り出し、これを殲滅しなさい」

厳しい口振りに高橋は余程頭にきたのだろうと簡単に予想できた。

何より、現地に派遣されてる職員や自衛隊、そして外人部隊は命を落とす可能性は低くないだろう。

しかし、本来ファマティー教側でも守らなければならない対象たる民間人に対する所業は見過ごせないのだ。

最早、日本政府も北野たちシバリア行政庁もファマティー教を宗教だとは思っていない。

単なる宗教を騙るテロリストとしてしか見ていない。

「市民の中からもファマティー教に対する怒りの声が上がりだしました。向こうから正式かつ公式に謝罪が無いならばファマティー教そのものは認められないでしょう」

北野の話に二人はここに来る途中を思い出した。

元は市民もファマティー教徒であったが、繰り返されるファマティー教の暴走にシバリア市民はファマティー教そのものを見限っていた。

それどころか言論、思想、宗教の自由が認められたばかりでまだそれほど浸透していないにも関わらず民衆は市内の自衛隊駐屯地や行政区前に集まりデモの様な真似をしていた。

デモをするのは良いが、無許可集会になるので取り締まらねばならなくなる。

だが、まだ法が施行されてから短いのもあり、浸透してない為に群衆は自然と無許可デモ行為を行ってしまっていた。

そしてその数は増える一方なのだ。

治安警備隊では取り締まれる規模ではない。

「市民を納得させる為にも彼等テロリストはこの地から根絶せねばなりません」

北野の言葉には群衆がこのまま暴動になられては今までの苦労が水の泡になりかねない。

その危険性を防ぐ意志が感じられた。

「分かりました。こうなれば市民の協力もあるでしょう。早速行動します」

高橋は北野に敬礼して答えた。

アーノルドは高橋たちと違い規模が大きい部隊だ。

その為に実戦部隊と情報収集部隊とに分ける事を告げた。

勿論、その情報は北野の下にもたらされ、全員で共有する事になるだろう。

「今回ばかりは信仰の自由云々など言ってられません。何せ現状ではテロリストですからね。手心は不要です」

北野はそう言うと二人に退室を命じた。

まだ会議で話さねばならない事がありすぎる。

北野がここから出るのはずっと先になるだろうと、誰もが簡単に予想できた。


「さて、テロリスト掃討か・・・厄介だな」

会議室を出たアーノルドは開口一番でそう言った。

高橋は頷きながらもそこまで厄介にはならないかも知れないと思った。

アーノルドはかつてのアフガニスタンやイラクでテロリスト相手に戦った経験から言っていたのだが、今回は現地の人がテロリストを匿ったり協力する訳でもない。

むしろ完全にファマティー教を敵視している。

つまりテロリストは民衆の協力が得られず、一定の場所から動けないからだ。

民衆の協力があればある程度は動けたが、協力がなく逆に敵となられたらまず身動き出来ない。

そこを高橋は考えたのだ。

「少佐。まずはテロリストの協力者を炙り出しましょう。その為にも情報が必要です」

高橋の提案にアーノルドは確かに、とうなずくと先ずどう情報を集めるかを考えた。

「ただの民間人に成り済まされたら探すのは困難だぞ?」

テロリストの一番恐ろしいところは民間人に紛れ込むことだ。

故に民間人とテロリストの区別がつけられない。

だが、高橋は先程の考えを説明した。

テロリストは最早市民に取っても敵になっている、と・・・。

「なるほど、つまり、市民から情報を募れば良いのか」

かつての王国の時はファマティー教は一般的に存在し、そのファマティー教に献身的な者は少なくない。

そして王国が失われた今でもファマティー教を信望している人を探せば良いのだ。

後は情報を精査し、その人物がファマティー教の協力者かどうかを調べればいい。

その際は誤認でテロリスト扱いしない様に細心の注意が必要だ。

「しかし、それはうちの部隊では難しいな」

長年テロリストの脅威に曝されてきた米国故にテロリストに対する拒否感が半端ではないのだ。

どう言って聞かせても「やり過ぎ」になりかねい。

「なら、情報を集めて下さい。私たちが疑わしい人物に直接接触し見極めます。此方には強力な助っ人もいますからね」

高橋は頭の中に例の三人が思い浮かんでいた。

その様子にアーノルドは殲滅は此方の役目だな。と感じていた。


珍しく「三部作」をやって疲れた作者ですw


いや、疲れるほどの長さは無いのですが、色々考えることが多すぎて・・・。


正直言って、この選択と判断、対処が本当にいいのか?

と悩んでます。

しかし、書いた以上は予定通り「このまま暴走」しますw


では、今回はココまでです。

次回でお会いしましょう。

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