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第2話「シバリア市」

今回はシバリアの説明が多い話です。

ここらでちょっとやっておくべきかな?と思いましたので・・・。


その分、ストーリーがやや短いかとw


では第2話「シバリア市」お楽しみください。

―――ホードラー地区シバリア市


ホードラー、アルトリアの行政府があるシバリアは旧王国よりも活気に溢れていた。

元々王城を中心に四方に大通りが町の外まで繋がっている為に商業的発展性が確保されていたからだ。

そのため、今までは大商人や王家や貴族の庇護を受けた商人だけでなく、一般の人々も商売を始めれる様になってからは商業都市のごとき姿へと変わっていた。

反面、王城は見てくれだけで守りが極めて弱い。

かつての王国歴代の王が権勢を誇る目的でこうした都市開発を行ったからだ。

それが今では商業的価値を高めたのは皮肉だろう。


そしてシバリアに残る旧迎賓館はカトレーアの住居となっている。

その住居も半場身寄りのない子供たちが多く住んでおり孤児院みたいなものだ。

だが、そのかいあってか元王族でありながら元からの人気もありその身柄は保障されていた。

そのカトレーアの邸宅に元宮廷司祭やどうやって入国したのかファマティー教の宣教師等が日本への取り次ぎを仲介させようと良く訪ねて(ほとんど押し掛けだが)きていた。

先程も宣教師が来ていたが、カトレーアは今は王族でも何でもないただの一般人としてお帰り願ったばかりだ。

正直、その影響力はまだまだある身だが身の程を弁えているカトレーアは仲介をする気は無かった。

そもそも、カトレーアはファマティー教徒であったが、それは王族はそうあるべき、と言う風習に従っていただけで基本的にたしなみ程度でしかない。

しかも元々、異教徒や異端者だからと言って迫害するのにも抵抗があった彼女は根本的にファマティー教に疑問があった。

だから幾ら司祭や宣教師が来ても何もしようとは思わない。

ただ、このままでは要らぬ誤解を日本に持たれないかが心配だ。

そのため、わざわざ北野に手紙を送って相談を持ちかけていた。

「なるほど、どうも貴女を御輿に担ぎたいみたいですね」

シバリア行政府に来ていた北野はカトレーアからの手紙を受け取り、時間を作って来ていた。

北野の前に座るカトレーアは憂いをその表情に浮かべていた。

「私といたしましても、今さら彼等の要求通りに出来る立場にありません。ですが彼等は王権の復興が出来ると口々に言うのです」

下手すれば自身が危うくなるかも知れない発言だが、北野ならそうは見ないとカトレーアは信じていた。

「ふむ、かと言って会わない訳には行かないのですね?」

北野の言葉にカトレーアは頷いた。

これでカトレーアが会わない、として面会すら拒否してはそれこそ民衆に「カトレーア元王女は日本により幽閉されている」と噂されかねない。

そうすれば民衆に良くない噂が広がり日本の統治に疑問を持つだろう。

日本としても不味い事態な上、その日本の庇護を受けているカトレーアにしても不味い事態になる。

「民衆が今の生活に満足してるなら今更滅んだ物を再び甦らせる必要も無いでしょうに・・・」

カトレーアの偽らざる言葉に警護のものたちも頷く。

彼等にしても平和で重荷から解き放たれたカトレーアに義務や責任を再び背負わせるのは本意ではない。

「まあ、我々としましてもそこはご安心くださって大丈夫です。カトレーアさんが王家の復興をする気がないのは理解していますから」

そう言って北野は笑顔を向けたものの、内心はマグマの様に煮えたぎっていた。


(静かに暮らそうとする人までも利用するか・・・)


これを見過ごす訳には行かないだろう。

見過ごせば庇護している日本が責任を放棄していることになる。

更に密入国しているファマティー教宣教師やテロ容疑で指名手配されている元宮廷司祭などが一般人を担ぎ出そうとするのは許しがたかった。

北野は元王女と言う立場の彼女が日本との仲介をすれば、王族を無視出来ない日本、そして王家の健在を示す事になる。

それはまたこのシバリアが不安定になる要素を孕んでいた。

「分かりました。こちらで何とかしてみましょう。カトレーアさんはどうか安心して今の生活を続けてください」

カトレーアを安心させると同時にその心労を労ると、ファマティー教に対する本格的な捜査が必要だと感じていた。

「ありがとうございます北野さん。私たちに出来る事ならご協力いたします」

ありがたい申し出だ。

悪辣ではあるがカトレーアの言葉に北野は囮役を思い付いた。

はっきり言って潜伏しているファマティー教司祭などを探すのは今の段階では難しい。

だからこんな手段しか取れない。

「その時には協力願います」

一礼して立ち上がると、まだ仕事がありますので、と言い残し北野はカトレーアの邸宅を後にした。



シバリアでは王国滅亡と同時に他国への交易路が途絶えてしまい、外国との貿易が止まっていた。

それが元で外国製品の高騰化が起こっていた。

生活必需品ではないが、砂糖や香辛料と言った嗜好品は余程の資産家でも無ければ市民の口に届かない。

結果、それらを独占した商人が莫大な利益をあげていた。

しかし、北野はその状況をよしとはしなやかった。

「自由経済を否定しませんが、国内の品物を買い占めての独占商業は認められません」

シバリア行政府でホードラー、アルトリアにおける経済活動の会議で北野は真っ先にそう主張した。

「一応、ホードラー全域に買い占めやそれによる値上げを禁止してますが、法が施行される前にやられたこれらは規制しようがありません」

役人の一人がそう言って法の遡及は出来ないと主張している。

しかし、このまま一部大商人だけに利益があればシバリアのみならずホードラーの産業(アルトリアには農業以外の産業はまだない)は牛耳られてしまう。

そうなれば他の商人や商売をしようとする人々が何も出来なくなる。

「ですので、意図的にホードラーに日本からより安価で高品質な品物を中小零細企業に流しましょう」

北野の恐ろしい発案に役人たちは自由経済に介入するのか?

と騒然となった。

「ただし、あくまでも一部大商人を弱らせるのが目的ですので、我々が出来るのは販路の紹介です。そこからはそれぞれの商才に委ねます」

つまり、大商人をそのまま放置しつつも、中小零細となる商人や商売を始めようとする人々には率先して商売のノウハウや交渉窓口を作る。

と言うものだ。

こうする事で買い占めの労力と資金を値上げと言う形で利益に還元しようとする商人は打撃を受け規模を縮小するしかない。

下手したらそのまま倒産もありうる。

「悪質な商売をやる以上はそれなりの覚悟があるはずです」

北野の案は大雑把な方針だけしか示していないが、少なくとも詳細を詰めればそれなりに効果をあげそうだ。

「分かりました。詳細を研究し法案化しましょう。念のため政府にも提出し了解を得ましょう」

役人たちにやる気がみなぎりだす。

自分たちの力でこの地域一帯に自由経済を本格的に根差せようと出来るのだ。

やる気も出ると言うものだ。

役人たちは即座に人員を選出し、準備会を立ち上げるため動き出す。

基本的にホードラーやアルトリアに派遣されてる役人などは日本では有能でも出世街道から外れたり、上司との折り合いが悪かったりした者がほとんどだ。

その為、厄介払いや左遷代わりに派遣されたのだが、北野はホードラーやアルトリアを流刑地にする気はない。

むしろ流刑地と認識している本土の役人たちの目を覚まさせてやるつもりで役人たちを使っていた。

「はてさて、結果が出るのはまだまだ先ですかね」

一人会議室に残った北野は一人そう呟いた。

その上で北野はシバリアに暫く滞在せねばならないと思っていた。




今やこの世界における日本の一大拠点と言うべきシバリアは、先に述べた通り元王城を中心に東西南北に大通りが走っている。

街の郊外との間には城壁が設置されてるが、見栄え重視で作られた為に防御効果は望めない。

そして大通りとぶつかる部分に装飾が施された門が着いている。

以前は夕方に閉まり日の出と共に開いていたが、現在は常に開け放たれている。

その代わり治安警備隊が常時張り付いて人の出入りを監視している。

そして、北大通りは官庁街、西、東大通りは商店が立ち並び、南大通りは倉庫群となっていた。

これは東西ホードラーが食料生産地であると共に西は交易路と繋がっているからだ。

そして北部は未開地であったため脅威らしい脅威がなく、政治に関わる建物や軍設備が中心になった。

南は南ホードラーが山岳地帯で資源が豊富だった為に倉庫が多くなった。

結果、東西南北で役割に合わせて見事な別れた作り方になっている。

最後に生活の場である住宅は城壁の外に建ち、人々はそこからシバリア中心に向かって働きに行くのだ。

こうして見るとシバリアは都市として実に考えられた造りをしている。

また、シバリアから西に進むとレノンへと繋がる川がある。

南の山岳地帯からレノン方面へ流れるこの川からシバリア市内に飲料水として引っ張られていた。

つまりは上水道だ。

下水道こそないものの、シバリアの地下に水脈が無い故の処置だったが、シバリア全人口5万人を賄うに十分なぐらいだ。

ただし、基本的に水は浄水されておらず、シバリア各所にある為水場を共同で使う様になっているため、必ずしも衛生的とはいえ無い。

また、下水道が無いので基本的に毎日汚水を溜めた所(特定の場所)から汲み取り郊外の処理場(穴を掘って埋めるだけ)に持って行かねばならない。

これは各市街の住人に割り当てられ、交代で処理している。


これらの事情もありシバリアは王都として栄えつつも、基本的に市民生活は二の次になっている。


そこで日本はまず手始めに浄水場を建設している。

出来上がりはまだ少しさきだが、これができれば仮に毒物が流されても浄水場がそれらを食い止めてくれる。

その上で上下水道を整備し、インフラを整えればいい。

また、電気も何れは通す予定だが、現状は行政府などの一部に太陽光発電や発電機を設置し限られた範囲でしか使わない様にしている。

これは発電所の建設の全く目処が立たないためだ。


アルトリアではダムを建設して水力発電が出来るが、シバリアは広大な平原にある都市のためダムが使えないからだ。

唯一南ホードラーでは見込みはあるが、現状は南方貴族連合の支配下にある。

そして制圧に向かうだけの余力はない。

と、なれば火力発電所か原子力発電所が必要だ。

これならレノンやその他周辺都市に電力供給が可能になる。

ただし、この際だからと言う話で風力発電、太陽光発電を中心とした新技術を用いた発電システムも想定されていた。

これはまだ人口が少ないためでもあるが、火力発電は今後に悪影響がありえ原子力発電はウランの入手が困難だからだ。

日本でも取れなくはないが質が悪く、生成に手間と費用がかかりすぎる。

これなら輸入したほうが安上がりなのだが、元の世界ならまだしもこの世界でウランが取れる可能性は低い。

だから風力や太陽光発電が計画にあがっているのだ。


それらの計画が本格的に動き出すにはまだまだ時間を必要としており、解決にも時間がかかるがシバリアの抱えてる問題のいくつかは解決した。


西方との境にある川には交易路として使われていた橋がある。


通称「栄光の橋」と名付けられている橋は大軍を通過させれるように大きく、強固な作りだったので改修がいらない。

西方諸国との交渉で交易路を確保できるときに利用でそうだ。

そして何より橋を確保したことで防衛が楽になり南方にだけ気をつければ問題無くなったのだ。

これにより比較的防御の難しい南方の拠点を増強できた。


後は時機を見て南方と交渉、いや、恐らく武力による平定を行うことになる。


これらから考えるに日本の前途は明るくはないが暗くも無い。

そういう意味ではシバリアは重要な位置にある都市といえた。

以上で「シバリア市」は終了です。

如何だったでしょうか?


いままで省いてきた説明を多くしたことでシバリア周辺の動向、並びに背景が多少は見えたかと思います。


さて、次回ようやく主役が登場しますw


第3話まで出番なしとは・・・w


まあ、楽しみにしてやってくださいw


では次回でお会いしましょう。

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