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第19話「同盟締結」

これで駄目なら交渉は一旦打ち切らざるを得ない思いで田辺は今日の交渉に臨むつもりだった。

しかし、昨日とは打って変わって今日のベサリウスには余裕が感じられない。

具体的に何があったのかまでは流石に分らないが、どうも問題が発生しているのは確かなようだった。

(と、なれば時間はかけられないわねぇ・・・北野さんからも了解を得てるけど・・・タイミングが難しいわね)

昨夜の内に北野と連絡を取り合った田辺は、北野から切り札の使用許可を貰っていた。

ただし、北野はその使い道に関して注意していたことがある。

「貴方に任せてますから良いですが、使わない方向を考えた方がいいですよ?」

それを聞いて田辺は、使ってはいけないのではないか?と考えてしまった。

交渉を有利に進めるには使うべきではないだろうか?

確かにニホンの自由と平等の精神には反するかもしれないが、切り札たるカトレーア元王女にとっても悪くない話になるはずだ。

田辺はそう考えていた。

もっとも、この場に北野が居れば全く何をやっているのか?と怒っていただろう。

とは言え、一任した北野にも責任があるのでそれ以上のことは言わないだろうが・・・。

(さて、どんな会談になるかしらね・・・)

ベサリウスの身に何が起きてるのか把握出来ないまま最後の会談が始まった。




会談は始まったが、先日とは打って変わり前向きな形で進んでいた。

今までは田辺が提案し、それをベサリウスが何かと理由をつけて拒否、となっていたのだが、このときばかりはそうではなかった。

今まで提案してきた内容をまとめ、ベサリウスは1歩も2歩も踏み込んで修正案を出してきたのだ。

こればかりは田辺も予想していなかったが、一つ一つを見る内に漸くベサリウスが重い腰を上げたことが読み取れた。

(つまり、対等な立場を確保しようと言うことね)

ベサリウスからの提案は、要約するとその一点につきるといえた。

「私としても義理を通したい。しかし、それがわが領民と引き換えにすべきものか?と問われればそうではないからな」

気持ち悪いぐらいに方向転換したベサリウスに田辺は何を狙っているのかが分らなかった。

一応話は進歩しているのだが、今までが今までである。

何がそうさせているのかを見極めねばならない。

「なるほど、漸く決断していただけた様ですね」

率直な感想を伝えたが、その言葉にはベサリウスは眉間に皺をよせた。

ベサリウスとて受けたいわけではないからだ。

そうしなければならぬ状況になったからの決断で、自分の意思でそうしようとしているわけではない。

しかし、今後を考えるならばこの程度のことは些細な事柄と言える。

故に眉間に皺を寄せたのは一瞬だった。

「まあ、我々もこのまま、と言うわけには行きませんからな」

努めて平静を保ちながら、ベサリウスは頷いて見せた。

その上で田辺にタラスク王国の進出状況を教えた。

この件には日本も危機感を持っていたからだ。

「・・・なるほど・・・。由々しき事態、と言えますわね・・・」

田辺はこの話を聞いたとき、タラスクの脅威がベサリウスを動かした、と判断した。

しかし、それは後に間違いであったことを指摘され、してやられたと憤慨することになる。




この会談で決まった基本的なことは以下のようになっていた。

・両国は互いに独立した国家であることを認める。

・両国は互いの国境をレノン大河(レノン市近くの川の正式な名称)とする。

・両国は交易協定を結ぶ。

・両国は互いの安全を保障する相互不可侵条約を結ぶ。

・両国は互いの国に大使、並びに領事を派遣し自国民の権利を保障する。

・両国は不測の事態に対し、交渉を行った上で適切な対応を取る。


両者は、今回の会談で正式な調印は後日としながらも、概ね合意に達した事に胸をなでおろしていた。

田辺はホードラーと西方諸国との間に緩衝地帯を作れたことに、そしてベサリウスは日本を巻き込むことが出来たことに・・・。


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