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第12話「難民を守れ!」

難民に迫るガリウスの軍勢に自衛隊が防衛を開始した。

しかし、予想外の攻撃に準備不足の自衛隊に犠牲者が出てしまう。


第12話「難民を守れ!」お楽しみください。

―――レノン対岸難民キャンプ


難民キャンプに向けて槍を持った歩兵隊が走ってくる。

それに対して掛井義一かけいよしかず少尉率いる40名の小隊は89式小銃で応戦を開始した。

「近づけさせるな!撃ちまくれ!」

掛井は耳をつんざく騒音の中で喚く。

背後には戦う力のない難民たちがいる。

ここで食い止めねばならないのだ。

だが、旧王国の時と違い彼等は一向に怯まなかった。

目に見えない攻撃を前にしても混乱せずにただ前へと向かってくる。

「バカな!?」

掛井はそう言いながらも弾の切れた弾倉を交換し射撃を再開する。

掛井は知らなかったが、ガリウスの兵たちは奴隷や下層民に特別な魔法の込められた薬物が与えられている。

それにより身体能力は勿論のこと精神、思考能力を抑制されている上、痛覚を含めた感覚が麻痺しているのだ。

言わば指示、命令を実行する知能を持ったゾンビに近い。

そのため銃撃により自身の身体を撃ち抜かれても衝撃に身じろぎしても意に介さず進み続けていく。

とは言え、不死身ではない。

生命活動を続けられなくなる程のダメージ(脳の損傷、大量出血などによる生命維持が出来なくなる程度)を与えれば倒れて動かなくなる。

しかし、そんなことは掛井たちに分るはずも無い。


そんな生きる屍たるガリウス隊に対し掛井の小隊は小銃などの基本的な装備しかない。

しかも携行弾薬も限られている。

射撃開始から20分程で手持ちの弾薬を使い果たした。

一方、伊藤が送り込んだ増援は混乱する難民に阻まれ未だに辿り着けていない。

「掛井少尉!小銃の弾が・・・!?」

あちこちから弾薬欠乏が報告されてくるがどうにも出来ない。

「9mm拳銃で応戦!それも尽きたら・・・後退するしかない・・・」

後ろにいる難民のことは気になるものの、部下の安全も考えねばならない。

はっきり言って銃剣で甲冑を着込んだ兵士に対抗出来るとは思えなかったからだ。

たとえ出来ても戦力差がありすぎる。

だが、掛井は見た目の重厚さからガリウスの歩兵隊を見誤っていた。

情報が無いのだから仕方ないのだが、これが彼と彼の部下の運命を決定付けた。

掛井たちが9mm拳銃を手に応戦を始めた時、ガリウスの歩兵隊は見た目の重厚さとは裏腹に常人離れした速度で持って一気に突撃してきたのだ。

思わず撤退を叫んだ掛井だったが、時既に遅かった。




「なんと言うことだ!?」

ガリウスは歩兵隊の損害に信じられない物をみた。

歩兵隊300が難民を守る40人を前に半数以上も損害を出したのだ。

銃撃だけで直接の被害が80人、その後、銃撃の負傷により更に100人以上が死亡したのだ。

つまり掛井たち40人の前に180人が打ち倒されたのだ。

残った歩兵隊も負傷者が多く、戦力としては壊滅状態だ。

「奴等の力はこれ程までに強力だというのか?」

ガリウスは日本が防衛に来たのも意外だったが、たった40人なら簡単に潰せると踏んでいた。

しかし、実際には全員を討ち取りはしたものの、その損害は軽視出来ないレベルになっている。

「日本め・・・侮れんな」

冷静になって考えたガリウスは、日本の兵士の装備品を集めて持ってこいと指示した。

これを解析し参考にすれば日本に対抗できるばかりか一大軍事勢力になれると踏んだからだ。

しかし、その望みに立ちはだかる障害が現れる事になる。



丘の上に辿り着いたベサリウスは眼下の様子に自らの動きが遅かった事を認識した。

難民キャンプはなんとか無事の様だが、ガリウスの軍勢はその手前で動きを止めてなにやらやっているのが見える。

「奴等、難民を守った日本の兵士をなぶっているのか!?」

ベサリウスは激昂した。

難民キャンプを守った日本の兵士たちの遺体から衣服から何から何までを強奪していたのだ。

例え戦いに敗れても敗者の躯は丁重に扱うべきだ。

しかし、ガリウスはそうはせずに好きに暴れていた。

「ベサリウス様!」

着いてきた従士もその無惨な光景に怒りを燃やした。

騎士たるものがやるべき事ではないからだ。

ガリウスも元は騎士であるならそこは考えて然るべきであった。

「全騎続け!滅びたが我等はホードラーの騎士!あのような無道を許すな!」

戦力差があると言えどガリウスの兵士は日本の兵士の遺体を漁るのに忙しい。

ならばその虚を突く!


ベサリウスの号令一下、騎兵50騎丘を駆け降りガリウスの軍勢に迫った。



「ふむ、これ等を持ち帰れば王も喜ばれるだろう」

一ヶ所に集められた掛井たちの遺品を前にガリウスは満足そうに笑みを浮かべた。

だが、その笑みが一瞬にして凍りついた。

丘から駆け降りてくるベサリウス率いる50騎の騎兵を見たのだ。

ベサリウスは爵位こそ男爵どまりだが、その天才的な騎兵戦術、そしてベサリウス自身が鍛えた騎兵隊の勇猛さは知れ渡っている。

そのベサリウスと騎兵が一直線に自分たちに向かってくる様にガリウスは血の気が引いていくのを感じた。

「て、敵だぁ!」

他の兵士も気付き周囲は慌てふためく。

「お、落ち着け!全軍、密集陣形ファランクス!騎兵の突撃を防げ!」

ガリウスは対騎兵戦術でベサリウスの騎兵の動きに対抗しようとした。

だが、槍と盾を全面に押し出した密集陣形は最初の一撃で脆くも砕け散る。

ガリウスの部隊が弱かった訳ではない。

だが、掛井たちの必死の応戦の前に戦力が大きく低下しているのもあったが、何よりもベサリウス騎兵隊の衝力は半端ではなかったのだ。

騎兵それぞれが脆く、隙間があるところを探しそこに飛び込む。

密集陣形の隙間を突かれたガリウス軍は一気に突き崩された。

「生かして帰すな!」

ベサリウスが自ら率先して剣を振るう。

騎兵隊はベサリウスと共に剣を振るいガリウスの部隊を分断した。

「くっ!やりおるなベサリウス!」

ガリウスも自ら剣を取り自分に迫るベサリウスの攻撃をいなそうとするが、歩兵中心で残りは弓兵と徒歩騎士ばかりなため騎兵の相手が厳しい。

機動力に翻弄され騎兵の衝力に吹き飛ばされ頭上から鋭い一撃が見舞われる。

如何に魔法薬により強化されていたとしても、とてもではないがガリウスの部隊ではどうにも抑えきれない。

なによりも、独自の判断力が失われているために咄嗟の対応に遅れがでてしまう。

つまりガリウスの歩兵隊は単純な状況による攻勢に置いては極めて強力ではあったものの、咄嗟の判断が必要な状況では後手に回らざるえないのだ。

だが、数の差がそのベサリウスの勢いを止めてしまう。

なまじ密集陣形に突入したので人の壁に囲まれてしまったのだ。

だが、ベサリウス騎兵隊はそんな事では討ち取れはしない。

ベサリウスの背後に常に付き従う旗を持つ騎兵を目指して集結し、密集陣形の包囲の中から飛び出した。

「反転!このまま後背を突く!」

先頭のベサリウスが反時計回りにガリウス軍の周囲を駆け出す。

ガリウスが慌てていたのもあるが、瞬時の判断が出来ないガリウスの軍はその動きに素早く対応出来ずに弓兵ばかりの脆弱な後背を突かれた。

「おのれ!」

忌々しいと言わんばかりのガリウスだったが、このままでは勝ち目はない。


戦利品を失いたくなかったガリウスは撤退を考えた。

「弓兵は諦めろ!全軍撤退!」

そう言って自分と護衛の数騎で戦利品を片手に逃亡を開始した。

「逃がさんぞガリウス!」

ベサリウスはそう叫んだが目の前の敵を片付けなければならない。

このままガリウスを逃がしてしまうか?と思われたその時、ガリウスの前方の地面が吹き飛んだ。

「うわぁ!?」

急に立ち止まった乗馬から思わず落馬してしまう。

「な、なにが・・・?」

全身に響く痛みをこらえ前を向くと金属で出来た馬のいない馬車があった。


「逃がすな。殲滅せよ」

伊藤は感情を押し殺し、ただ目の前の外道を逃がさない事だけを考えた。

伊藤は難民の混乱で増援に行けなかった場合を考え、別の場所に急遽橋を作ってここに来たのだ。

使わないと思った92式浮橋がこんな形で役立った。

だが、掛井率いる小隊の最後は遠目からでも見えていた。

そしてその後の扱いも・・・。

「仲間の仇を取れ!全隊攻撃開始!」

89式装甲戦闘車の35mm機関砲がガリウスの周囲に激しい土煙をあげる。

「ヒィィ!」

情けない悲鳴をあげつつ膝を丸めてガリウスは身を守った。

しかし、そんなので身を守れるはずもない。

次の瞬間にはガリウスは肉片と化していた。


第12話終了です。


遂に出た被害に自衛隊は、日本はどうするのでしょうか?


この続きは次回でw


では次回でお会いしましょう。

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