表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/82

第11話「ベサリウス領」

さて、ここらでそろそろ西方に目を向けねば・・・と言う事で対岸からですw


第11話「ベサリウス領」お楽しみください。

―――ホードラー レノン対岸



戦乱に焼け出されたり戦乱から逃れて来た難民のいる集落を遠目に騎兵が見ていた。

「ベサリウス卿。あれは放置して構わないのですか?」

ベサリウスと呼ばれた若い騎士風の男は後ろに従う騎兵(従者)に振り替える。

「君は私に彼等をどうしろと言うのだね?」

アウル・ベサリウス元男爵はそう言って従者の目を見る。

血気にはやる従者は領内の不穏分子として叩くべき、と考えたが、ベサリウスの落ち着いた穏やかな表情を前に言えなくなっていた。

「我が領内の民ではない。だが、だからと言って彼等に危害を加えようとは思わないな」

そう言って再びベサリウスは難民たちを見た。

本来なら彼自身がどうにかしてやりたいが、残念ながらある程度の広さがあっても領内に余裕がない。

領民を飢えさせない様にする分しかないのだ。

まして、周辺の元貴族たちは勝手に王を名乗り狭い土地の奪い合いをしている。

ベサリウス自身、王国が滅びたのは天命と思っているが、だからと言って元貴族たちの身勝手さを認める気にならない。

だが、残念ながらベサリウスの領地は広さがあっても土地が痩せており収入が低い。

そのために見向きされていなかったのだが、目の前に日本と言う国が迫っている。

このままでは何れ呑み込まれるのは時間の問題だと思っていた。

それでもベサリウスは構わない。

日本は寛容で民衆に優しいと言う噂だ。

ならば呑み込まれても領民は助かるだろう。

ベサリウスに取って領民の行く末が良ければ他はどうでもよかった。

「しかし、何故彼等は橋を渡らないのですかね?」

別の従者がベサリウスに声をかける。

「恐らく、工作者の侵入を警戒してるのだろう」

少しずつではあるが、日本が自国内に難民を入れてる事から簡単に分かる。

「彼等にしてもそれは怖いのでしょうな」

ベサリウスの答えに側近が笑う。

だが、ベサリウスは笑い事ではないと考えていた。

あれだけ強力な軍勢を持った日本が、力を頼りにせずに事細かな事柄に意識を向けているのだ。

それは国としての基盤を固め、将来への統治をやりやすくすることになる。

つまり、日本は軍事力も経済力も国力も並び立つ者がいないほどしっかりしている恐ろしい国、と言えるのだ。

「まあ、我々が感知すべき事ではない。他の強欲な連中に比べれば話はできるだろうがな」

ベサリウスの関心は日本には向いていたが、それよりも周辺の強欲な元貴族たちの方に向いていた。

略奪目的だけで領内に侵入してくるのだ。

一応自衛の為に戦力は整えているが、このままでは秋の収穫が望めないほどに住人が離散してしまっている。

早い内に手を打つ必要がベサリウスにはあった。


対岸の難民キャンプから少し離れた丘に姿を見せていた騎兵が何もせず姿を消した事に伊藤は安堵していた。

万が一難民キャンプを襲撃するならそれを止めなくてはならない。

でなければ混乱した難民が一斉にこちらに来るだろう。

それが一番厄介な懸念事項だった。

「偵察、ですかね?」

部下の言葉に単なる様子見だけにしてもらいたい気分だ。

「偵察なら次は軍勢か?流石に相手に出来んよ」

負ける事はあり得ないが、今後を考えればそんな真似は出来ない。

レノンは城壁が邪魔で発展が困難なのだ。

シバリアの様に城壁の外に都市を新たに形成したいが、城壁内の住人がそれをやるとは思えない。

だから難民を住まわせて農耕に従事させていたぐらいだ。

安全な城壁に囲まれた生活に慣れたレノン市民が今さら城壁の外に出て暮らすのはまだ無理があった。

「この難民キャンプがどうにかならないと我々の気苦労は絶えないな」

伊藤の苦労は市長の田辺も同様に感じているだろう。

しかし、難民キャンプの難民はまだまだ多く、解決には程遠かった。



―――レノン対岸ベサリウス領北部


ベサリウス領の北にある山に囲まれたザハン・バジル子爵領はその地形から鉄鉱や木材、そして量は少ないが銀が産出される。

そのため金銭的には裕福な土地なのだが、反面食料があまりとれない。

だから食料は他の領から輸入していたのだが、この度の分離独立により唯一の交易路が成り立たなくなってしまった。

自業自得と言えばその通りだが、ザハンはそれを補う為に自領南にあるベサリウス領に度々略奪を仕掛けていた。

そしてこの日も略奪に赴こうとしていた。

だが、先日略奪したばかりなので、今度は東に向かい川沿いを目指すことにしていた。

「ガリウス様、部隊が揃いました」

ザハンの配下でありバジル王国(自称)将軍になったガリウス・ザッハトールは髭を撫でながら部下の言葉に頷いた。

集めた戦力は500程だが、ガリウスはベサリウスの軍勢は分散配置されているのでそれほど心配していない。

「では、今日も演習に向かうとしよう」

まるで略奪を楽しむかの様なガリウスにならず者を集めた軍勢は歓喜の声をあげた。

彼等に取って略奪は生きる為の行為以上に「人間狩り」を楽しめる訓練に過ぎない。

略奪は「ついで」なのだ。

そのガリウス率いる500の軍勢はベサリウス領に侵入すると東に進路を向けた。


そこにはレノンの対岸で難民キャンプがあるだけだと言うのに・・・。



ベサリウスはバジル王配下のガリウス将軍が領内に侵入したと聞き、即座に迎撃準備を整えた。

配下たちも慌てふためいて準備をしたが、その進路が東であると聞いた配下たちは一様に安堵した。

「いや、東にはあの流れ者たちの集落があるだけ、助かりましたな」

気楽に言っている配下にベサリウスは怒りの声をあげた。

「馬鹿者!その流れ者たちを見殺しにするつもりか!」

普段の領主としての温厚なベサリウスと打って変わって、将軍としての表情に変わっていた。

彼は例え難民でも領内にいるならば守る義務が領主にはあると考えていた。

「しかし、日本の連中が何とかするのでは?」

暢気な配下の様子にベサリウスは苛立ちが溜まる。

そんな他人任せで領内を守れるものではない。

そもそも、好き勝手に領内に侵入し好き勝手に行動されては領民がたまったものではない。

「集められる兵は?」

ベサリウスの配下の騎士が50騎ほど、と答えるとベサリウスをそれを率いて出撃を宣言した。

配下のものたちにベサリウス領の中心であるコンスタンティを守備する様に命じ、即座にコンスタンティを後にした。


ガリウスはベサリウスがコンスタンティを立った事をまだ知らないが、ベサリウスの軍勢が来る頃には略奪は終了していると考えていた。

「なんだ?難民の群れか・・・」

つまらん、と呟いたが、難民ならベサリウスも文句は言うまいと考え軍勢を整列させた。

そしてその様子は対岸の日本国レノン駐屯陸上自衛隊からも見えていた。


「やらせるな!迎撃しろ!」

伊藤の指示で自衛隊が素早く迎撃体勢を敷く。

とは言え防衛に出られる部隊は限られ、難民キャンプに最も近い部隊は僅かに40人。

これで少なくとも15分は稼がねばならない。

「良いか、撃破を考えるな。攻撃を断念させればいい!」

伊藤の命令に難民の川を使った流入を警戒していた部隊が即座に臨時編成され対岸に上陸した。

その彼等は日頃からボートで警戒していたのだ。

「臨時守備部隊は難民キャンプ前に到達!」

これで相手が諦めれば・・・。と言う淡い期待があったが、期待は当然ながら裏切られた。


ガリウス将軍率いる軍勢は一直線に難民キャンプを目指し突撃してきた。

以前、高橋が押さえた時と違い平地で隠れる場所もない。

しかもガリウスは横陣を取っており正面きっての戦いになるのは明白だった。


第11話、如何だったでしょうか?


実は今回登場したベサリウスにはモデルがいます。

名前も似てますよ。


さて、誰でしょう?w


では次回でまたお会いしましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ