06 異世界へようこそ…
無言のカボチャ…
【流血描写あり】【自殺未遂あり】【シリアス】
『パタ……キィィィ……』
再び目を開けると、目の前には依然として地獄のような光景が広がっていた。傷の痛みはすでにそれほど感じなかったものの、歯も鼻も粉々に砕けてしまっていた。私は石の上から体を何とか起こし、無理やり立ち上がった。
カイは私を見て、一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに喜びに満ちた笑みを見せた。彼は素早くこちらに近づいて私を支え起こしたが、次の瞬間、私を地面に強く押し付けた。
その時、仮面をつけた男が暗闇からゆっくりと姿を現した。
『聞くぞ。あの少女を殺したのは誰だ?彼女は俺の恩人だったんだ!』仮面の男が怒りに満ちた声で問い詰めた。
『おお!英雄様のご登場か?まったくな。王月の娘を殺したやつが誰か知りたいか?それは目の前のこいつだよ、この0階級の狂人だ!彼女を犯して、それで殺したんだよ!』カイが憎しみのこもった表情で答えた。
『ははは、そうか。目の前のこいつが全ての元凶か……』仮面の男はその言葉を聞いて、意味深な笑みを浮かべた。
彼はゆっくりと手に持っていた刀を持ち上げた。その瞬間、私は自分の感情を抑えることができなくなり、怒りの声を上げた。
『もうやめろ……こんなことはもうたくさんだ!この世界は一体何なんだ?俺には何一つ良いことがないのか?なぜだ?俺は何もしていない。俺はあれだけ頑張ったのに、なぜ何も得られず、こんな酷い目に遭わなければならないんだ?本当にもう耐えられない……』
『なるほど、それで復讐が終わると思うのか?いや、まだ足りない。お前たちが彼女にしたことは、こんなものでは到底許されない。彼女は俺にとって、この世界で唯一の生きる希望だった。彼女は俺の階級を恐れることも嫌うこともせず、いつも友達として接してくれた。俺と全てを分かち合ってくれた。そんな彼女が、自ら命を絶つことを選んだんだ……』
『もう……何も言うことはないだろう……』
仮面の男はそう言い終えると、冷たい霜を纏った剣を抜き、容赦なく私の体に振り下ろした。剣が体を切り裂く寒気とともに、辺りには雪が舞い散り、私の体は次第に氷に覆われ、最終的には完全に動かなくなった。
その時、カイともう一人の男が立ち去ろうとしたが、仮面の男がその行く手を遮った。
『どこへ行くつもりだい?無能階級の道化ども。』仮面をつけた人物が冷たい声で、嘲るように言った。
『何を言ってるんだ?犯人はもう捕まえただろう?一体まだ何がしたいんだよ!?』カイが怒りと焦りのあまり声を荒らげた。
『そうか?だが、お前たちのような階級の人間も、この世界のゴミの一部にすぎないんじゃないのか?最底辺より一つ上の階級ってだけだろう。』仮面の人物は手にした剣を振りながら、淡々とした口調で、しかし殺意を込めて言い放った。
『この愚か者が!ゴミならすでにお前が殺しただろう?一体まだ何をするつもりなんだ?!この世界は元々不公平だ!俺たちはただ階級が低いだけなのに、なぜお前らみたいな奴らに無情に殺されなきゃならないんだ?!』カイの隣に立っていた道化が怒鳴り声を上げ、感情を完全に失っていた。
だが、その言葉が終わると同時に、一閃の斬撃が空を切り、彼の首が宙を舞った。頭部は少し離れた地面に落ち、身体はその場に崩れ落ちた。鮮血が噴水のように溢れ出し、地面を赤く染めた。
『だから言っただろう。他人をバラバラにするのがそんなに楽しいのかい?愚かな道化兄弟ども。』仮面の人物は冷笑しながら言い、手を伸ばして仮面を外した。
その瞬間、彼らの前に現れたのは、透き通るような水色の長髪を持つ、美しい容姿の少女だった。
『はじめまして、よろしくね。私は雪娜、英雄階級の者だ。本当はただ私の親友を探していただけだった。彼女はこの世界で最も高い階級を持つ人間だったけど、階級で人を判断するようなことは決してしなかった。彼女はいつも私にこう言っていた。「階級で全てを測るなんて制度は最も愚かだ」って。でも、そんな彼女が、お前たちのような奴らの手で命を奪われた……』
カイはその言葉を聞いて愕然とした表情を浮かべ、後ずさりした。
雪娜は突然前方に疾走し、一瞬でカイの目の前に現れた。そして拳を固く握り、全力で彼の顔面を殴りつけた。
鈍い音が響き、カイは血を吐きながら吹き飛ばされた。彼の顔の骨は粉々に砕け、血が止めどなく噴き出した。その裂け目の周囲は瞬く間に氷で覆われた。
カイは苦痛に呻きながら地面に倒れ込み、痙攣を繰り返した。雪娜は振り返り、道化の遺体へと歩み寄ると、その四肢を全て切り落とし、それをカイの砕けた右側の口に無理やり押し込んだ。
『うん、これで復讐が終わったと思うか?いや、まだ足りない。お前たちが彼女にしたことは、こんなことで簡単に許されるものではない。彼女はこの世界で、俺が生きる唯一の希望だった。彼女は俺の階級を恐れたり嫌ったりすることは決してなく、いつも友達として接してくれて、全てを共有してくれた。もし彼女がいなかったら、俺はとっくにこの世界で自ら命を絶っていただろう……』
その時、俺の周りを覆っていた氷が少しずつ溶け始め、俺の体がゆっくりと氷の中から現れた。そして気づけば、さっきまでの傷が全て消えていた。
その瞬間、雪娜がゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。
『おいおい、坊や。やっぱりお前がやらないとダメみたいだな。全く、0階級の坊やのくせに妙に努力家じゃないか。実は犯人が誰かなんて最初から分かってたけどな。さあ、これからはお前に任せるよ!』雪娜はそう言うと、カイの四肢を容赦なく斬り落とした。
『な……何だと?まさかお前……』俺は緊張しながら拳を握り締め、問い詰めた。
『お前のことはあの子から話を聞いていたんだ。彼女はこう言っていたよ。「ある0階級の男がいる。みんなから嫌われているけど、いつもそれを黙って耐えている。その人なら、もしかしたら深く付き合える友達になれるかもしれない」ってね。その時は信じられなかったけど、今は分かるよ。さっきの判断で怒りを見せたけど、何も無茶なことはしなかった。それに、0階級のお前があれだけ重傷を負っていたんだからな。だから、俺からすると……本当にお疲れさまだ。』雪娜はそう言いながら俺の肩を軽く叩いた。
その瞬間、俺の思考がすべてクリアになった。もうこんなふうに落ち込むのはやめよう。この状況を受け入れて、大胆に、勇敢に生きていこう。
気づけば、涙が俺の目から止めどなく溢れ出していた。
『彼女がかつて助けた人たちは、どれも間違いなく善人だったようだな。坊や、これからはお前が復讐を果たすんだ!』雪娜が大きな声で叫んだ。
復讐……俺が……?でも……
拳を握りしめ、俺は前に進み、すでに四肢が砕け散ったカイの前に立った。しかし、その瞬間、俺はどうすればいいのか分からなかった。俺は怯んでしまった。ただ、それは恐怖からではなかった。怒るべきなのか、喜ぶべきなのか、自分でも分からなかったからだ。そんな俺を、カイは極めて軽蔑的な表情で見つめていた……。
「この無能め。どれだけ助けられたって、お前みたいな弱虫のゴミは救われやしない。ここまできて、何一つできないなんてな。愚か者め、誰からも見捨てられて当然だ。お前の周りの奴らが死ぬのも当然の報いだろう……」
カイは嘲りの笑みを浮かべながら大声でそう言い放った。
その言葉に激怒した俺は拳を力強く握りしめ、彼の顔に一撃を叩き込んだ。
「もういい、後は私に任せなさい……」
雪娜が低い、悲しげな声で呟いた。
鋭い斬撃が空気を裂き、カイの身体は一瞬で四つに引き裂かれた。
その後、雪娜の刀が手から滑り落ち、地面に深く突き刺さった。
「さあ、坊や、もう行きなさい。これから少し、私を一人にして……」
雪娜は低くも優しい声で俺にそう告げた。
「そうか……」
俺はそれだけ言うと、雪娜を残してその場を離れた。これが俺の長い異世界での生活の始まりになるのだろうか?
……
「ふう……どうやら、この世界で生きていく意味ももうなくなったみたいだね。こんなことになるくらいなら、もっと早く彼女と一緒に行っておけばよかったよ。生きる目標も意味もないまま、この残酷な世界にいる理由なんてないだろう……」
そう言いながら、雪娜は刀を持ち上げた。
「もともと、私はずっと前から自分を終わらせたかったんだ。ただ、ようやく見つけた生きる意味があったから、それを理由に踏みとどまっていただけで……」
雪娜は刀の刃先を自分の喉に向けた。
その瞬間、俺は彼女の前に飛び込み、刀の刃を力強く掴んだ。たとえ手のひらに無数の傷と血が刻まれたとしても、俺は離さなかった。
「何をしているんだい、坊や。そんなことをしたら危ないじゃないか……」
雪娜は驚きと困惑の入り混じった表情で言った。
俺は彼女の刀を強く投げ捨て、怒りを込めて叫んだ。
「一体何をしてるんだよ! 君は……!」
「え? 自殺だよ。だって私はもうこの世界にうんざりしてるんだ。彼女がいなくなってから、生きる力も目的も何もないんだからさ。じゃあ、どうすればいいって言うのさ?」
雪娜は静かで平然とした顔で答えた。
「分からないよ。確かに人それぞれ生きる価値や目標は違う。でも、自殺なんて死に方を選ぶ人は、結局、自分が受け入れられない運命から逃げようとしてるだけじゃないか。受け入れられないから、すべてを終わらせようとする。それで本当にいいのか?」
俺は涙をこぼしながら、震える声で問いかけた。
「はあ……何を言ってるの? お前は私じゃないんだから、この世界が私にとってどれだけ……」
そう言いかけた雪娜だったが、俺の方を見つめたまま黙り込んだ。
雪娜は静かに立ち上がり、拳を握りしめた。彼女は少し歩いたが、すぐに地面に座り込んだ。
「私は……今、本当に何をしたらいいのか分からないよ。すべてを失って、唯一そばにいてくれる人がいなくなった今、私は何もできない。だって、本当に寂しいんだよ……」
雪娜は地面に座り込み、静かに涙を流していた。
「そうかい?もし君が本当に孤独なら、僕と友達にならないかい?辛いときは大声で僕に教えてくれ。実は僕もとても孤独なんだ。僕が不器用すぎるせいで、すべての痛みが自分に跳ね返ってくる。だから、どんな時でも自分を変えたいと思っているんだ。人生はここからきっと輝き始めるから……」
俺は雪娜の隣に座り、そう語りかけた。
「でも、本当にそれでいいの?私は本当に君を助けられるの……?」
雪娜は躊躇いながら呟いた。
「試してみないと分からないじゃないか!だって君は僕の英雄なんだよ。君自身がどう思おうと関係ない。僕にとって君は英雄だ。崩壊した世界で必死にもがいていた僕を救い、階級の低い僕を信じてくれたから……だから、僕は君を助けたい。そして君と友達になりたいんだ……」
俺は拳を握りしめながら強い口調でそう言った。
「英雄?私はただ、この階級の者なら当たり前にすることをしていただけだよ。正義感で動いているなんて思ったこともないさ……」
雪娜は平淡な声で答えた。
(そうか……みんなそうなのか?困難に直面するたびに、結局同じ結果になるのか?どれだけ努力しても、何も変わらないのか……。ホワイトハウス、妹、弟……)
(いや!たとえ僕の力が誰も救えなくても、一つだけ確かなことがある。もう絶対に諦めたりしない!)
俺は心の中で最終的な答えを見つけ出した。
拳を強く握りしめ、俺はもう一度雪娜の前に進み出た。どんなに険しく困難な道が待っていようとも、もう絶対に退かない。人生を諦めることなんて、もうしないんだ。ここで何もかも終わらせるために。
「雪娜、たとえ君がどんなに拒んでも、どんなに冷たい言葉を投げかけても、僕は絶対に諦めない。もう一度だけ、やり直してみよう……」
俺は手を雪娜に差し出した。
「君は……どうしてそこまで……」
雪娜は驚いた表情で言った。
「雪娜、もし君が生きる意味を見つけられないなら、0階級の僕を助けるという理由で生きてみないかい?僕は、この世界で友達を作りたいんだ。そして普通に暮らしたい。もう階級のせいで理不尽な扱いを受けたくないんだ……」
心の奥に押し込んでいた本音がつい口をついて出てしまった。失敗したのだろうか?俺は祈るように拳を握りしめた。
「ははっ、本当に君って緊張しすぎだよ。そんなに肩肘張らなくていいんだよ。友達になりたいなら、もっと気楽に話しかけてくれればいいさ……悪かったね、さっきはちょっと意地悪だったよ。本当にごめんね……」
雪娜は笑顔でそう言うと、俺の両手を握りしめた。
「分かった。僕は君と友達になるよ。それに、契約者としてもね!これからは一緒に暮らして、パートナーになろうじゃないか!」
雪娜は笑顔でそう言った。
『契約?』私は驚いて、腰が抜けて地面に座り込んだ。
『そう、契約よ。自分が望む相手と契約を結ぶことができるの。別の言い方をすると、自分より階級が高い存在とパートナーになれるということね。でも、どうであれ、私は無条件で君を助けるわけにはいかないのよ。どうする?』雪娜がそう言い終えた瞬間、彼女に握られた私の両手から、きらめく光が放たれ始めた……
すべてはその日から始まった。そして、物語もここから展開する。目の前にどれだけ恐ろしいことや未知の出来事が待ち構えていようと、これからが本当の人生のスタートだ。