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新世界復活戦!世界に変化をもたらそう!  作者: 小泉
第2章 異世界!新たなる始まり!
11/22

11 現実の交錯 一フィナ編

異世界に来て、もう一週間が経った。

この世界での生活は、いつの間にか楽しくなっていた。


以前は、ここをただのゴミのような世界だと思っていた。

だけど、今は違う。


住む場所があって、暇な時は市場をぶらついたり、お喋りしたりできる。

それに、ユキナのような素敵な人とも出会えたし、ティナカやヨルジュとも知り合った。


ハーレムも作れなかったし、ギルドでレベル上げもしていない。

だけど、それでも今の生活は前よりずっと楽しい。

なぜなら、もう一人じゃないから……。


それでも今、一番気になっているのは——

俺の頭の中に浮かぶ、目に見えて、触れることもできる白い流体の存在だ。


前にも見たことがある。

あれは、もう一つの世界にいる俺——

いや、元の世界にいる「俺」だった。


以前、危機に陥った時、一瞬だけ元の世界に戻ったことがある。

だけど、今の俺にはもう戻る勇気がない。


あそこにいる「俺」は、あまりにも孤独すぎる。

永遠に、ただ一人きりだった……。


俺は柔らかな草の上に寝転がり、手を空へと伸ばす。

このすべてを考えながら——

彼らに、このことを話すべきだろうか?

だけど、もし話したら……?


——その時。


「っ!?」


突然、俺の頭上にボールが落ちてきた。

まとまりかけていた思考が、一瞬で吹き飛ばされた。


ムッとしながらボールを拾い、遠くに投げようとした時——


「ご、ごめん! 大丈夫……!?」


慌てた様子で、三人の少女が駆け寄ってきた。


彼女たちは普通の人とは違う、不思議な服を着ていた。

それに、エルフ族のように耳が尖っているわけでもない。


「えっと……ボール、返してくれる? 本当にごめんなさい……」


俺はボールを手渡した。

すると、ボールを受け取った少女の顔色が、急に変わった——。


「ところで、お前たちは誰だ? その格好からして……エルフか?」


何気なく尋ねると、少女の一人が答えた。


「うん、私たちはエルフ族。今年で11歳と12歳だよ。

本当はもう二人仲間がいたんだけど、一人は最近、悪霊族のモンスターに襲われて、まだ病院で治療中。

もう一人は王族の女の子だったんだけど……

ある変態クズな“0階級者”に殺されたって聞いたの。

……可哀想に。

0階級なんて、この世界で一番のゴミだよ……。」


少女はそう言いながら、次第に目に涙を溜め、やがて泣き出してしまった。


俺は何も言えなかった。


彼女たちの話を聞いて、言葉にできない感情が込み上げる。

どう返事をすればいいのか、わからなかった。


俺はそっと木に手をつき、考え込んだ。


「……お兄さん、大丈夫? なんか顔色悪いよ?」


別の少女が、心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。


俺は拳を握りしめ、立ち去ろうとした。


——その時。


「ねえ、お兄さんって……もしかして、0階級者?」


……心臓が凍りついた。


声をかけたのは、さっきボールを受け取った少女だった。

その表情は、真剣で……怒りを含んでいた。


彼女の言葉を聞いた他の二人は、驚き、戸惑いながら彼女を見つめる。


俺は何も言えなかった。

どう答えればいいのか、わからなかった。


やっぱり、異世界を甘く考えすぎていたのか……?


いや……。


もし俺が、すべての真実を話したら……。


——その時だった。


「ちょっと! 何言ってるの!?

どうして階級だけで人を判断するのよ!?

私たち、それが嫌でギルドに入ったんじゃなかったの!?」


他の二人が、憤慨した様子で少女を引き離す。


そして、今度は俺の方を見て、こう尋ねた。


「ねえ、お兄さん……この話、本当に知ってるの?

だって、0階級の人なんてほとんどいないし、私たちも初めて見たよ!」


俺は、深く息を吸った。


そして、決意する。


「……ああ。じゃあ正直に話そう。」


少女たちは、息を呑んだ。


「……君たちが言っていた“0階級の男”——それは、確かに俺だ。」


「!!」


「だけど、話は君たちが思っているような単純なものじゃない。

これには理由があるんだ。俺は……」


——しかし。


言葉が、喉で詰まる。


毎回そうだ。

真実を話そうとすると、必ずこの瞬間で止まる。


「……それなら、どういうことなの?」


先ほどの少女が、鋭い目で俺を睨む。


俺は唇を噛んだ。


俺は何もしていない。

何も悪いことをしていない。


だけど——。


なぜいつも、こうなってしまう?

なぜ俺は、最後の瞬間で……怖気づく?


少女が、さらに言葉を続けようとしたその時——

他の二人が彼女を引き戻し、怒鳴った。


「いい加減にして!

なんで階級だけで決めつけるの!?

私たち、そういうのが嫌でギルドに入ったんでしょ!?」


——沈黙。


そして、彼女たちは俺の方を振り向き、言った。


「……お兄さん。ごめんなさい。

私たち、間違ってた。」


……人生で初めてのことだった。


俺は、誤解された後に、謝られたことなんてない。

いつだって、俺が正しかろうと間違っていようと——

気づいた瞬間、周りは俺を指差して罵った。


だけど、今は違う。

初めて、誰かが……俺に、謝ってくれた。


俺は、自分の右腕をそっと撫でた。


——これは、一体何なんだ?


この、初めて感じる気持ちは……。


少女たちと別れた後、俺は再び木の下に腰を下ろす。


迷いはあった。


それでも、心の奥で、確かに何かが温かくなっていた——。


俺はそっと目を閉じる。


そして、頭の中に広がる景色へと向かう。


新たな決意を胸に、未知の道を歩き出す——。



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