表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/22

2-4.幼なじみ

幼なじみ デイジー


 店から出たところで、女性から声をかけられました。「クリス!」

お店の方かしら。いるだけで明るさを感じます。そばかすがあるけど、私が見てもカワイイ。私は何か納得してしまいました。

「やあアリス、久しぶり。」クリス様はすごく嬉しそう。

「ここへ来るなら、教えてくれればいいのに。」

「今回は、彼女を紹介しに来たんだ。」私を振り返りました。

「婚約者のブライス伯爵の次女、デイジー嬢。」

「デイジーです。」私はアリス嬢に会釈した。

「初めてお目にかかります。ギブソン商会の長女アリスでございます。」

完璧なお辞儀をされた。さすが商会のお嬢様。

「クリスとは・・・。いえ、クリス様とは幼なじみなんです。ご婚約おめでとうございます。」

「ありがとう。もしかして、以前クリス様が化粧品を贈られたというのは、あなた?」

「はい。おかげで随分薄くなりました。」顔に手を添えながら微笑みました。

「私も、クリス様からいただいて、薄くなってきました。養父様から買い足した方がいらっしゃるとうかがって、使ってみる気になったのです。あなたには感謝しないと。」

「いいえ、製品をみつけてきたのは、クリス様ですから。感謝はクリス様に。」

アリス嬢は、クリス様に向きなおって。

「早々に、こんなすてきな方と婚約をお決めになるなんて、クリス様は随分とやり手になられたのかしら?」

「僕も、正式に伯爵になってからと思ってたんだけど、ご縁があってね。」クリス様は頭をかきながら答えました。

今度は私に向いて「クリス様は、大丈夫かなーと思う事もあっても、無難に切り抜けられますから、任せて大丈夫ですよ。」

クリス様が苦笑いしました。「過大な評価を、ありがとう。」


 馬車の中で、聞かずにはいられせんでした。

「アリス嬢と、婚約の話はなかったのですか?」

「そういう事になるんだろうな、とは思っていたのですが、結婚相手の事は15歳を過ぎてから、と両親に言われましてね。今、思えば、あの時には既に僕が伯爵になる事が、考えられられていたんですね。」クリス様は遠い目をしました。ふと、何かに気づいた感じで。

「アリスは、とっとと婚約を決めてしまいましてね。恋人という程には、なりませんでしたよ。女性を好きになったのは、あなたが初めてです。」

しまった、自分で恥ずかしい状況を作ってしまいました。


 恥ずかしい状況を打開すべく、話題を変えました。

「私がアイリーン様とお話している間、どうされていたのですか。」

「父と弟に、あなたとの婚約のいきさつを迫られていました。」

!!それは、説明を求められますよね。赤くうつむこうとするのを耐え再度、

「アイリーン様から近頃、伯爵になるにあたっての決意を新たにした、と伺いました。」

「決意ですか?」クリス様は考え込みました。「ああ、あの時の事か。」

私は話を促しました。

「僕は今はまだ伯爵にもなれませんが、後を継くからには、伯爵家と伯爵領をもりたてていきます。」一度言葉を切って「もちろん、あなたの事も、幸せにするつもりです。」

!!結局、赤くなって、うつむいてしましました。

アリス嬢、クリス様はやり手になられてますわ!


養育係 デイジー


 クリス様の養育係でもあるダルトンを、部屋に呼び寄せました。

「お尋ねになりたい事がある、と伺い参りました。」

「クリス様は今は?」

「他の者から、領地経営のお勉強中です。」

「そうですか。あなたの知るクリス様を、教えて下さらないかしら。」

「ご本人には、お聞きにならないのですか。」

「えぇ、クリス様はご自身の大切な事を、私に話してくだされないから。」

 「ご存じと思いますが、我々もクリス様とお会いしてから、半年しか経っていないのです。」

そうでした。半年前に急に戻られたのでしたね。

「奥様と使用人の古株は、2歳までのクリス様を憶えておいでだそうですが・・・。」

「それは、参考にならなそうね。」

「はい。では、二人で知っている事を、確認いたしましょうか。」

私はうなずいた。


 「クリス様は、貴族として自信を持てないご様子です。ですから、ご自身をアピールできないでおられます。元々、過度に自身を飾り立てる事のない方のようですし。」

「それにしては、"君が好きだ"攻勢が激しいような・・・。」

「それは私も驚いております。女性とは縁がないと仰せでしたので。嘘偽りのない、ご自身の思いだからでしょう。」


 「自己顕色はされないのですが、自虐がお得意です。後、割と天然であられます。」

「思い当たりがあるわ。」額を押さえる。


 「いつも穏やかで、感情を大きく出されない方です。先日、初めてお怒りになるところを拝見しました。」

「何があったの!?」驚いて大きな声をだしてしまい、口に手を当てました。

「デイジー様が、身の回りの品しか持たされなかったからです。」

「それは家の者の不手際で、ご迷惑をかけたのだから当然ね。」目をふせてしまいます。

「いいえ。連絡が無かった事にではなく、故意でないにしても、デイジー様の受けた仕打ちに対してお怒りでした。」

「どういう事?」違いが良くわかりません。


 「あの時クリス様が、"僕と同じ"と漏らされた事に、気が付かれましたか?」

「はい。」言われてそんな事があったと、思いだしました。服が用意されていない事で、すっかり忘れていました。

「デイジー様が部屋を出て行かれてから、すぐに訂正されました。」

"僕は、伯爵が平民の服を着るわけにはいかないし、事前に採寸して、持っている衣類を全て見て色形の好みを把握してもらえた。"


 「ではクリス様も?」

「はい。着ておられた衣類も、到着した直後に下着から替えていただきました。」

「私より、ひどいのでは?」

「ご本人納得の上です。デイジー様は、不本意な目にあわれたので、お怒りになられたのです。」

私の為だと言ってますか?顔が赤くなりそうだったので。思いつきを口に出して逃げます。

「クリス様は、怒った事がないのかしら。」

「何年か前に、怒りにまかせて手近の椅子だか、小机をたたきつけた事がおありだそうです。」

「たたきつけてお終い?」

「クリス様が申されるに。」

"派手に壊れて正気に返って相手を見たら、涙目で怯えられてねぇ。壊した謝罪もそこそこに退散したよ。僕は、怒っちゃだめだとつくづく思ったね。"

「ちなみに、商店で荷運びのお手伝いを兄弟で、よくされておられたそうで、そこそこ力持ちであられます。」

あの体で暴れられたら、怖いだろうなぁと思いました。「クリス様を、怒らせちゃだめね。」

「はい。」


 「クリス様は、養父様に一人前の商人と認められた方です。商品や商人としてのご自身は、アピールがお出来になられるのでしょうし、営業スマイルもお出来になる。今は貴族としてのアピールポイントが、おありでないのでしょう。」


 「デイジー様、我々はお互いクリス様とは知り合ってから、まだ間もないのです。さらにクリス様は現在、平民から貴族へ変わられる途中です。本質そのものが変わっていかれるかもしれません。ゆくっりご理解されて、いかれてください。」

「はい。」


 「なにか湿っぽくなったので、クリス様の自虐を一つご披露しましょう。」

「ええ。」

「こちらへ初めて来られた時に、ダンスを踊られた事が有るか、お尋ねさせて頂いた際の事です。」

"あぁ、取引先のお嬢様方と踊った事があるよ。どの方も、必ず一曲しか踊っていただけなかったけどね"。

苦笑してしまいました。僕はもてないんだって?

「楽しい方ですよね。一緒にいると、朗らかな気にさせていただけます。」

「そうですね。」


 夜にお義母様も交えて、クリス様とカードゲームをしてみました。

クリス様は、ポーカーフェイスではなく終始、営業スマイルでとおしたかと思うと、表情を逆にされたり、かなり手ごわい方でした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ