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2-2.伯爵夫人の決意

伯爵夫人の決意 デイジー


 翌日、お茶をしに庭へ出るとオードリー様だけが、いらっしゃいました。

「女だけで話したいと言って、クリス様には席を外していただきました。」

「はい。」


 「まずは、あなたに謝らないと。今回のお見合いの件、私が焦ってしまいましたの。」

「焦られたのですか?」

「ええ、伯爵様は急逝されてしまわれ、私は病弱。そんな中、ダンスを踊った後に贈り物をしたら、受け取っていただけた、という話を聞いたのです。」

はい、そうです。うなずきました。

「贈り物を受け取っていただける程度には、悪く思われていないのではと思い、お見合いの話を。ごめんなさいね。」

クリス様が、ホレたと勘違いしたわけじゃなかったのですね。

「謝らないでください。お見合い相手がクリス様とわかった時、ものすごく嬉しかったのです。政略結婚が当たり前のところを、好きな人にひきあわせていただき、ありがとうございました。」頭を大きく下げた。

「そう言っていただけると嬉しいわ。」


 二人でお茶を啜った。まずはという事は、本題はこれからですよね。

「私とクリス様の関係は、理解されましたね?」

「はい、義理の母だと。」

「最初、私とクリス様の関係をどう思われましたか?」

マザコンと思ったとは言えないですね。

「とても仲の良い親子だと。」

「実の親子よりも仲が良いのではなくて?あなたには、お兄様がいらっしゃるのでしょう?どう?」

「私も含め、ウチの兄姉よりも仲が良いです。」母が病弱でも、ここまでできるかどうか?


 「私、クリス様には嫌われると思っていましたの。」

「は?そうなんですか?」

 「伯爵の血を引く者は、伯爵家を継いで当たり前と思われますか?」

ん?話が変わりましたね?

「はい。」当然でしょう?

「クリス様は、積極的に伯爵家を継ごうとしていると思われますか?」

「はい。」そう思いますが?


「伯爵が亡くなった後、クリス様のお母様であるアイリーン様にお願いしましたの、クリス様に、伯爵家を継ぐよう説得していただけないかと。」

「お願いされたんですか。」本人に後を継げとか、実母に説得しろとかじゃなく。

「はい。元田舎の貧乏男爵令嬢の第二夫人なんて、冷たくされて当然なのに、元伯爵令嬢の第一夫人アイリーン様はたいへん良くしていただきました。伯爵の意向とはいえ、親子で追い出され、伯爵家の都合で無理やり子供だけ引き戻すなんて、私にはできませんでした。」

恩を仇で返す訳にはいかない、と言う事ですね。


 「クリス様が、どの様に決心されたのかは聞いていますが、私が語るべきではないでしょう。別の方から、あなたにお話があるようにします。」

「はい。」


「さて、そんな訳で、クリス様には嫌われると思ったの。」

「はい?」話についていけません。

「だって、グラハム商店で家族と幸せに暮らしていらしたのよ?そのままだったら、商人として大成されていたはず。それを私が、家を捨てて伯爵になれと言ったのよ?嫌われて当然でしょう?」

わかりました。うなずく。オードリー様は、相手の立場で考えられる方なのですね。


 「初めてクリス様とお会いした時に、私から直接、伯爵家を継ぐ事をお願いしました。その際にこう答えられたのです。」

"僕は、貴族の立ちふるまいが分かりません。オードリー様を、お母様と呼ばせていただいて良いのかもわからない。ですから伯爵家を継ぐのは、15歳まで待っていただけないでしょうか。それまでに身に着けます。"

「私は両方を了承すると共に、クリス様と呼ばせて頂く事にしたのです。」

そういう、やり取りがあったのですね。


 「クリス様はそれまでの家族を失って、新たな家族が欲しかったのだと思います。」

なるほど、うなずきました。

 「クリス様は、私をたいへん気遣ってくださり又、よく頼られるようになりました。

養育係のダルトンには、甘やかし過ぎないように言われましたわ。」

「甘えてくるんですか?」あの巨体で?

「はい。一番の傑作は"デートの仕方を、教えて下さい"ですね。」伯爵夫人は、クスクス笑われました。

 それを母親に聞きますか?!「そのデート、うまくいったのでしょうか?」思わず手を額にあててしまう。

 公爵夫人はキョトンとして。「こちらに来られた日、クリス様と買い物に出かけられて、いかがでした?」

「はい?とても楽しく・・・。」!!私と、どうやってデートするのかを聞いたのですかぁ!真っ赤になって下をむいてしまいました。なんという事を!

「では成功ですね。」クスクスクス。


 「話を戻して、そこで私はアイリーン様からクリス・グラハムを預かり、クリスハート・キングストン伯爵に育てる決心をしましたの。ご承知おきくださいね。」

「養子を、ご自身で育てられるのですね。」

「はい。それにしても、息子がプロポーズするところを見られるとは、思いませんでしたわ。」

「プロポーズ!?いつされたんですか!?」誰と!?

「"僕と婚約してください。"はプロポーズと言うには、気が早いかしらね。」クスクス。

!!この親子はぁー!もう、お二人は実の親子でいいです!それじゃあ。

 「たいへん厚かましいと重々承知のうえで、お願いしたい事があります。」

「なんでしょう?」

「お義母様と呼ばせていただいて、よろしいでしょうか?」

伯爵婦人は軽く驚き、

「息子のお嫁さんですものね、かまいませんよ。デイジー様。」ニッコリ。

だーかーらぁ、からかうのは、やめていただけませんか?


「明日から、私とのお茶は一日おきとしましょう。二人で楽しまれてくださいね。」

「はい。」赤くなって、うつむいてしまいました。


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