5-3.舌戦
舌戦 デイジー
数日後には、パーティでクリスを紹介する事も再開しました。破談した事はまだ、友人達に知らせていなかったので、謹慎中もお誘いをいただいて、返事がまだのものがあったのです。
クリスに余興を求める人が、かなりいなくなった事に驚きました。
クリスに聞いたところ、私のいない間、余興をした相手にはダンスの相手をお願いするようにしたそうです。するとめっきり減ったと。今後は私がダンスに連れ出す方式に戻す事にしました。
と、真珠の貴公子に連れられて来るのは!「姉様!?」
「あら、デイジー。元気?キングストン次期伯爵もお久しぶり。」
「ごぶさたしています。ローズ嬢。」クリスが返しました。
真珠の貴公子が私に向かい「ごぶさたしています、デイジー嬢。その後、ブライス伯爵にローズ嬢を紹介されましてね。あなたと違って話のわかるお方だ。」
「デイジー、こちらの方は?」クリスから聞かれました。
私が答える前に、姉様が答えました。
「私と婚約することになった、アカーディア男爵家のご長男レオナルド様です。」
「はじめまして、キングストン次期伯爵。お互い順調にいけば義兄となるので、お見知りおきを。」真珠の貴公子がクリスに軽く礼をしました。
「はじめまして、ご婚約おめでとうございます。」クリスは正式な礼で返しました。
私も遅れて「おめでとうございます。」軽く礼をしました。
「いゃあ、まだ準備中でして、それはまだ早いですよ。僕はそんなにお待たせしませんけどね。」真珠の貴公子はクリスへ言いました。
「さすがですね。機会がありましたら真珠について、いろいろ教えてください。」
クリスはさっきから営業スマイルです。
「それはかまいませんが、真珠をとる前の貝は、お食べにならないでくださいね。」
「真珠貝って、食べられますの?」と姉様が、真珠の貴公子に尋ねました。私も知らないです。
「食べられるそうですよ。なかでも貝柱と呼ばれる部位が珍味だそうです。」クリスが答えました。
「さすが、グルメ伯爵よくご存じだ。」真珠の貴公子が、軽く拍手をされました。
「それにしても、こうしてお二人並んでおられると、本当によくお似合いですね。」
「デイジーは、僕にはもったいない女性です。それこそ豚に真珠ですね。」
クリスが親しくない人に、自虐を言うのを初めて聞きました。
「あはははははは、楽しい事を言われるお方だ。」
「レオ様、あちらへ参りましょう。」姉様が、しびれをきらしたようです。
「あぁ、すまない。つい話こんでしまった。では又。」軽く礼をして、去っていかれました。
「私のせいでごめんなさい。」クリスに頭をさげました。
「あやまる事ないよ。十分、和気あいあいと話せたじゃない。」
「あれが和気あいあい?」
「あんなの、軽い前哨戦だよ。」
クリスは、利権の取り合いとかの経験があるのでしたね。
「ありがとう。」
嵐 デイジー
朝から嵐が吹き荒れていました。昼もおさまらずに、部屋の中は暗いままでした。
「それぞれする事を持ち寄って、一つの部屋で過ごしませんか。」クリスから誘われたので、お母様と集まりました。時々雑談を交えて、楽しく過ごしました。
翌日の朝には嵐が過ぎ去っていました。
翌週のパーティで、クリスの余興もほどほどにしてもらい、休憩しているとお姉様が一人で歩いてきました。
「お姉様よくお会いしますね。真珠の貴公子はどちらに?」
「お二人ともこんばんわ。」クリスも含め、お互いに挨拶をかわしました。
「真珠の貴公子との事は、お断りしましたの。」
「は?」もうですか?
「何かあったのですか?」クリスも驚いています。
「先日の嵐で、真珠貝に多大な被害があったそうなの。落ち着かれたら再度、婚約を検討させていただく事になりました。」
「まぁ、それはお気の毒に。」
「被害は、真珠貝だけで済んだのでしょうか。」とクリス。
「さぁ、そこまでは聞いておりませんわ。お相手を探さないといけないので、これで失礼。」
お姉様は去っていかれました。本当に"話のわかる"方です。
「ダルトンにさせたい事ができたので、ちょっとはずすよ。」クリスもいなくなってしまいました。たぶん今の事ですよね。
支援 クリス
僕は調べさせた、アカーディア男爵領の簡単な被害報告を受けた。
「食べ物に困っていそうなんだね?」
「海岸地域で畑にも被害がでているようなので、おそらく。」
「キングストン領でできすぎた、ゴロモを支援物資として無償提供したい。バージルはゴロモの売買を支援しても良いと言っていたから、その資金の一部を使わせてもらおう。
この旨を叔父上にお願いして、了承が得られたら、アカーディア男爵に支援を申しでる。」
「はい。」
「あと、キングストン商工会に、損をしない程度の値段で、ゴロモをアカーディ男爵領へ売ってもらえるよう依頼する。双方へ依頼文を書くから、早馬をだして。」
「承知いたしました。」
翌週、キングストン領からアカーディア男爵領へ、ゴロモを送った。
もしもの時には クリス
「レオナルド・アカーディア様が、クリス様とデイジー様にお礼を申し上げたいと、当家においでです。」執事から伝えられた。
「急に?真珠の貴公子が、デイジーにも?」
「はい。」
「レオナルド様をお通しして。後、デイジーに声をかけてみて。嫌だったら留守という事にすると伝えるように。」
「承知いたしました。」
結局、二人で会う事にした。
真珠の貴公子は、深く礼をした。
「本来なら父がお礼すべきですが現在、災害対応で手が離せず私が代理で参りました。
この度はご支援いただき、ありがとうございました。」
僕は感心した。さすが貴族のご子息。
「わざわざ、挨拶に来ていただき恐縮です。できすぎた作物が、役にたってよかったです。」
真珠の貴公子は、今度はデイジーに向かって言った。
「あなた方は双方の強い要望で再度、婚約されたと聞きました。」
「はい、伯爵夫人のおかげです。」
「もし、キングストン領で災害があった場合、あなたはどうされますか。」
「次期伯爵がゆるしてくだされば、一緒にキングストン領へかけつけたいと思います。」
「一緒に向かわれるのですね。あなたは、すばらしいお方だ。」
「"僕にはもったいない女性"とお伝えしたはずですが。」僕が口をはさんだ。
「あの時は失礼しました。お二人に謝罪したくて、デイジー嬢にもお会いしたかったのです。どうぞ、お許しください。」真珠の貴公子が頭をさげた。
「謝罪を受入れます。」デイジーが会釈した。
「僕も同様です。それから、僕と友達になってくれませんか。同世代の男友達が少なくて。」
「私で良ければ、レオと呼んでください。」
「僕はクリスと呼び捨てで良いよ。」
「では、私の事もデイジーと。」
「都から離れない人も多そうだけど、クリスは災害時にキングストン領へ行くのだね?」
「うん。僕は領地経営を学び始めたばかりで、災害対応などどうして良いやら分からない。それでも、遠く離れた都で報告を待つよりも、領主代行の叔父の横で心配していたい。」
「迅速に支援物資を手配しておいて、どうして良いかわからない、は無いだろう。」レオはあきれたように言った。
「そうか。食べ物の心配と手配は、人の倍うまいかも。」
「まぁ。」「君って本当に面白い人だね。」二人に笑われてしまった。
「レオはどうするの?」
「真珠貝をゆずってもらいに、他領へ赴くよ。ほいほい買える物じゃないんだ。」
「さすがだね。」「お気を付けて。」
僕達は玄関で、真珠の貴公子を送りだした。
デイジーがこちらに向いた。「クリス。」
「何だい?」
「私は苦しい時でも、あなたについて行きます。応援しかできないけど。」
「ありがとう。一緒に立ち向かってくれる人がいるだけで、心強いよ。」
僕はデイジーの手を取ってキスをした。ダルトンに声をかけられるまで、二人だけの時間が過ぎた。
"豚に真珠"は自虐に聞こえるように、わざと用法を違えています。
相手も正しい用法の知識がある、と思って言っています。




