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1-2.お見合い

お見合い  デイジー


 翌週。化粧品にドキドキしなくなってきました。効果がでるのに、数週間はかかるって言ってましたね。

 クリス様の事は継続中。気づくと思い出しています。又、どこかのパーティで、お会いできないかしらと思っていました。


 そんな中「キングストン次期伯爵から、お前に見合いの申し込みがきた。」とお父様から告げられました。

「キングストン次期伯爵?」知らないですね。

「伯爵とお会いした事はあるが、御子息がいるとは知らなかった。」

「婚約の申し入れじゃなくて。お見合いですか。」

「うむ。気に入らなかったら断って良いそうだ。無難な事だな。」

あちらからも断れるって事ですね。確かに無難ですね。

「それで、いついらっしゃるの?」

「伯爵夫人が病弱で、こちらから来てもらいたいそうだ。日取りは、こちらの都合でというので、三日後にした。」

「急ですのね。」

「さっさと、かたづけるべき案件だろう。」

もう断られる覚悟ですね。わかりました。


キングストン家  デイジー


 キングストン家は、ブライス家と同じくらいの規模でした。馬車を降り、両親に続いていくと、大きな人が待ち構えていました。

 クリス様!!?なぜここに!?驚いて立ち止まると、タイミングよく挨拶されました。

「キングストン次期伯爵、クリスハ-トです。おいでいただき、ありがとうございます。」深々と礼をされました。

 クリスはニックネームだったのですね、ぼーとしながら思いました。いいわ、私の中では引き続きクリス様で。

両親の挨拶が耳を素通りし、母から促されて、あわてて挨拶しました。

「次女のデイジーです。」礼。

「先日のパーティーではキチンと名乗れず、すみません。」軽く頭をさげられました。

両親が驚いてこちらを見てきます。

「いいえ。」クリス様に笑顔を向けました。少しひきつっているかしら?

「母は、奥でご挨拶させていただきます。こちらへどうぞ。」


 案内される途中で、伯爵の肖像画を拝見しました。前伯爵とクリス様は、髪と目しか似てないような気がします。

お父様が前伯爵とお会いした事がある、とクリス様にお伝えしたら、関心されていました。

 応接で、伯爵夫人オードリー様と挨拶をかわしました。細くて、小柄で、あどけなさのある美人!大変失礼ながら、クリス様とは全然似ていらっしゃいません。

 キングストン伯爵は半年前に急逝された事、次期伯爵は来年15歳になった際に伯爵家を継がれる事、この話を受けた場合、正式な婚約はその後になる事が告げられました。

 私はその間、ここでクリス様と縁談が進んでいる事が、信じられないでいました。

 その後、両家の最近の様子を交換していると、伯爵夫人が言葉を切りました。

「ここは一旦おひらきにして、伯爵ご夫妻には邸内をご覧いたたき、お二人は庭へどうぞ。私はこれで失礼させていただきます。」

お具合が悪そうです。三人で「お大事に」と言いました。クリス様も心配そうです。


 クリス様に連れられ、庭のパラソル付きのテーブルに座りました。庭へ出る際に日傘を差し出され、席も日陰をすすめられました。

 席についたクリス様が突然、がばっと頭をテーブル面までさげられました。

「ご迷惑をおけしてすみません!ダンスの後で、贈り物をしたのを勘違いされたようでして、この縁談どうぞ断ってください!」

「え?どうしてですか?」愕然としました。嫌われた?

クリス様は顔をあげられました。「こんな見た目の悪い者など嫌でしょう?幸い、そちらから断られても支障ありせんし。」

この話を断る?「嫌です。」ぼそっと声がでました。

「はい、ですからご両親がここにいらしたら、すぐにでもお断りください。」

「私、この縁談を断りたくありません!」思わず叫んでしまいました。

「は?断りたくない?」キョトンとされました。

「はい、お受けしたいと思います。」

愕然とした様子で「貴族って、特にデブが嫌いなんじゃ??」

「ニキビが私のチャームポイントでかわいい、という言葉が忘れられません。あなたをお慕いしております。」

クリス様は目と口を大きく開けて、固まってしまわれました。

 女性から愛の告白をしてしまいました。はずかしい。下を向いてしまいます。しばらく反応が返ってきませんでした。もしかして。目を上にあげて「私の事、嫌ですか?」

 クリス様は、両手と首をぶんぶん振りながら。「いえいえいえいえ。とんでもない!あなたは僕にはもったいない!かわいいし、ずっと伯爵家で育ったお嬢様でしょう?」

「かわいいと言ってくださったのは、次期伯爵だけですし、伯爵家なのは同じでしょう?」

 

 クリス様は、にわかに姿勢を正し「婚約を考えていただけるのなら、なぜ僕が伯爵をすぐに継がないのかを、お話しないといけませんね。」

私も姿勢を正しました。

「僕は2歳の時に、商店に預けられました。半年前に先代が急逝され、伯爵家へ戻りました。」

ピンときました。「グラハム商会に、預けられたのですね。」

「そうです。先日お会いになられた、ジョージ・グラハムが養父です。」

だから血の繋がりはないと。

「急遽戻ったので、貴族としての立ち振る舞いが全くわからず、来年15歳になるまで待ってもらっているのです。」

なるほどワケありですね。。

「この事はご両親にもお話いただき、よく考えてお返事ください。」


帰り道  デイジー


 クリス様に、玄関まで送っていただきました。

 馬車がキングストン家の門をくぐるなり、お父様に問いただされました。

「お前、次期伯爵を知っていたのか。」

「先週、ダンスを一曲踊っていただきました。その際お名前を聞き損ね、今日のお相手だとは思いませんでした。」本名を聞き損ねたのは本当ですから。

「その時に目をつけたんだな。お前に気に入ってもらおうと、必死だったじゃないか。」

 両親が庭に来てから、クリス様は私の事をいろいろと褒めてくださいました。

「お二人が来る前に、この話を断っても良い、とおっしゃっていたので、必死という事はないと・・・。」

「それで?断るんだろうな?」

「私はこの話を、お受けしたいと思います。」

「何!?あんなデブがいいのか!?あの大食漢は絶対、キングストン家をつぶすぞ!?」

お父様、そんなストレートな。

 二人が来た後に出された、お茶とケーキはご本人によるセレクトだそうで、どのようなものなのかを、ご説明いただきました。普通に、スイーツが好きな私よりも、詳しいと確信しました。

「まぁ、伯爵家どおしだから援助要請があっても断れる。下の階級の男に利用されるよりは、いいかもしれん。」お父様には、いろいろ思惑があるようです。


 「しかし、今日会うまで、ご子息がいると知らなかった。何か事情でもあったのか。」

私はクリス様が、話された事を伝えました。

「そうか、商店で甘やかされたんだな?」

次男、三男ならともかく、この国では成人前の長男=次期伯爵が、武術の心得がなさそうに見えたら、この評価はムリもないでしょう。

そんな単純な話ではない、と私は言いたかったのですが、根拠がありません。惚れた弱みでしょうか?

 見た目は確かに良くないです。貴族の立ち振る舞いがわからない、とおっしゃっていたけど、私の見たかぎり礼儀作法はしっかりしているし、ダンスもお茶もこなせる。温厚で思いやりがある。グルメなのは確実。

 でも、他の事はどの程度おできになるかは不明。ダンス踊って、ちょっと話しただけなんだから、あたりまえですね。

人が良いから信じたい。お見合いの印象としては、上等じゃないですか?

などと考えていると。

「お前は本当に、あんなのが良いのか?」お父様から、確認されました。

「はい。」

「暫く考える。」

お母様は、心配そうな顔をされてましたが、黙ったままでした。家でお父様と、相談されるつもりなのでしょう。


 私は、もっとクリス様の事を知りたい。でも、お父様のあの様子では、この見合いはだめかしら。

その後は、クリス様と出会ってからの事を、反芻して過ごしたのでした。

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