015
そこはスライムの森とは一風変わった場所。
周りは蛍やらの光が飛び交い、不思議な光で満ちた森。
森は森とはいえどスライムの森とは全く違う部分があった。
そう、ピクシーと思われる存在が空中に彷徨い時には話しかけてくるのだ。
なんともメルヘンな場所。
そんなフェアリー大森林と呼ばれるフィールドに一人、手ぶらでやってきた男がいた。
「ま、俺なんですけどね。つか、手ぶらってなんだよ!俺はなんの武器が持てるか分かんないから手ぶらなだけで、その気になれば…」
ぐちぐちと文句を言うユウであった。っていうかオープニング雑じゃない?前から思ってたんだけどどうにかならんもんかね。
そこは作者の文才の問題である。触れるな。
「で?フェアリー大森林に来たわけだけど。ぶんぶんぶんぶん羽音がうるさい場所だなぁ」
実際五月蝿いのだが、なんともメルヘンにそぐわない感想である。
さて、このフェアリー大森林。難易度は下の中。ランクDのスライムの森を攻略したものが次にいくとされる場所なのだ。その為魔物もスライムの森に次いで強くなっている。
現れる魔物はゴブリン、フェアリー、ピクシー、スプリガン、それと此処には隠れ集落としてエルフの集落があるとされている。
エルフの集落は未だ誰にも発見されていないほど周到に隠されており、開発陣のある種の執念の跡が垣間見える。
このフィールドの名前にも入っているフェアリーや、スプリガンが出ると言ったが浅い層に現れる魔物はゴブリンのみとなっており深い層でも現れるのは一匹ずつだったりしてレアなのだ。
そして、このフィールドのボスは一人のエルフ。精霊魔法を使いこなす、ほとんどのプレイヤーにとっての初めてのPVP戦を此処で経験することになる。
「あれ?またなんかのイベントか?」
フェアリーや、ピクシーの羽音がなくなり大森林が物音ひとつしない静かな湖の辺りに出た。
湖近くに生えている大木。そこに見覚えのあるスライムが……
「あっ、またいた!おーい!!」
2回目?3回目の再会となるあのメタモルスライムさんだ。ある種のイベントなのだろうか
「五月蝿いなぁ……誰だいボクの睡眠を妨げる愚民どもは」
「はい!グミどうぞ」
この人はいつもグミを欲しがるなぁ。ん?違うって?そうなの?
「あのさ。グミはありがたくいただくけど……むぐむぐ……これは、これは美味……じゃなくて!」
なんなのだろう反応が面白い人だなぁ
「何の用なの!」
「バトルしませんか?」
「しません。」
「そこをどうにか!」
パンっと、手を合わせてお願いする。何故手があるのかって?今変身中なんだからあるに決まってるでしょ?
あの時変身をもらってから常時変身中なのだから当たり前だ。
「しませんか?」
「何を」
「バトル」
「しません。これあげるから帰って」
あ、メタモルさん。
『プレイヤーYuuはメタモルスライムを吸収した。
プレイヤーYuuはメタモルスライムから変身(Lv.1)を吸収した。統合して、変身(lv.6)にUPしました。
メタモルスライムの一部を吸収した為ドロップはありません』
アナウンスが響くと同時にまたも景色が切り替わり、妖精たちの五月蝿い羽音が目立ち始めた。
「むぅー、あのスライムさんシャイなのかな」
冷静に考えてみれば、寝起きにいきなりバトルは嫌かも知れない。うん、今度あったら少し謝っておこう。
気づけばフェアリー大森林も深くまで来た。
このフィールドには迷いの森という、冒険者を迷わせて毒や泥酔で殺すギミックが出てくる。
迷いの森を乗り越えるには煙を出せばいいらしい。翼から聞いたのだから多分間違っていない。
そう、こんな時のために大きな木のフィールド?で手に入れた木を燃やせばいいのだ!
てってれ〜ユグドラシルの枝
『それはやめた方がいいわよ。今は、まだ。ね』
「え?な、何?半透明だ。凄い!幽霊さん?」
半透明の少女。よく見ると銀髪の長髪で耳が長かった。うん。この人がエルフかぁ……綺麗な人……
「どういうことですか?此処で使っちゃいけないって…」
『それはいずれ分かること。古の記憶は必ず現に受け継がれる。時が来れば……』
「え、えっと、いにしえ?うつつ?時が来ればって」
えー?今じゃダメなの?と聞き分けのない子供みたいな事を考えているとスーッと目の前のエルフが消えていった。
「何か不思議な体験したなぁ。じゃあ、木を燃やして……」
『だ、ダメだって!』
「お、おぉ!?また出た!」
いい加減にしてと言った表情で詰め寄るエルフ。うーん。ごめんなさい。この木を燃やしちゃいけないんだね。分かった。
『わかりましたか?その木はいつかの時のために取っておいて下さい。決して燃やしてはいけませんからね!』
ふん!と鼻息荒く説明するエルフさん。ちょっと怖いって思ったのは俺だけ?別にいいじゃん、先っちょだけとかさぁ。だめ?ごめんなさい。
「分かったー。普通の枝にするよ。此処にある枝に、"ファイアボール"」
ぼっ、と火がついてパキパキと音を上げ煙が空に上がっていく。
ずっと奥にいたと思っていたフィールドが全然浅い場所にいたことが分かり、あともう少し行けばボスだった。
大森林は迷いの森あっての大森林なのだと理解した。そうじゃなければ簡単にクリアできてしまう。
「よーし、もうボス戦かー」
今回はフィールドボスと会っていない……が、あんなボスと連続で出会うのは確率的に宝くじ一等当てるレベルの奇跡なので当たらなくてよかったのだ。
"アイシクルランス!!"
うわっ!??何?何か飛んできたんだけど?これって、バトルで先制取られた時のエフェクト……
emergencyのエフェクトが目の前を覆った。
「"突進!"」
"アースボウ!!シャインアロー!アースウォール!!ファイアボム!ラッシュ"
くっ、さ、避けきれない。然も壁まで作って逃げ場を覆ってきているのだ。
え、えぐい。こちらが一のことをする間に6.7もの行動を同時にしているのだ。こんなチート野郎に勝てるのか?
と、思ったが、相手の攻撃も連続している技一つ一つは当たれば400以上のダメージを食らうが、結構粗い。粗さが目立つ攻撃が多いのだ。
俺は一度ダメージを食らえば死ぬ。だが、どうだろう、死をものともせず突っ切れば。
「いくぞピオ!!変身!!召喚古龍!!」
俺はこのゲームの最強種を知っている。
前に立つだけで脅威。
そばにいるだけで心強いが、対峙した時の恐怖は計り知れない。
そんな奴が仲間にいてこれまで使わなかった。それは、自分のプレイヤースキルを伸ばすためツバサにも言われていたことだからだ。
「おう!我が主人よ!!我が初級魔法で葬ってやろうではないか!」
原始魔法!!
「「ダブル・ファイアウォール・トルネイド」」
125433.damage
あ、あれ??や、やりすぎちゃった???
「ふむ。我が主人よ。我を呼び出すのが遅すぎやしないか?」
「え?そう?だってピオいたら俺がバトルできないじゃんか」
先ほどのバトルでも分かる通りピオは強すぎる。初級魔法で此処らのボスなら一撃で死ぬだろうダメージを繰り出す。
「うぅぅ、でも我だって!」
「はいはい。きび団子あげるから落ち着く落ち着く」
きび団子……それは岡山県名産のお土産としてよく買われるアレである。何故持っているのかについてはスルーしていただきたい。主人公のポケットは4次元ポケットなのだ。
「むぐむぐ………な、何だこの甘味は!美味しいのぅ……ムグムグ」
「さーてっ、吸収しますかぁ」
『プレイヤーYuuはエルフを吸収しました。
初めてNPCを吸収したボーナスで眷属支配を(Lv.3)にUPします。
【初吸収時のみ獲得】
・妖精種、精霊種、エルフの耐性50%UP
・妖精種、精霊種、エルフのLUCK値25%UP
【ソロ勝利時のみ獲得】
ありません
エルフから精霊魔法(lv.1)を取得しました。
エルフから連続詠唱(Lv.1)を取得しました。
エルフから詠唱破棄(lv.1)を取得しました。
ドロップ
エルフ
SR AGI +2543 Lv.35』
何か、俺は未だレベル一なのにどんどん先進んでいってる気がするんだけど気のせい?
「気のせいじゃないのぅ。主人よ、やはりお主には実戦経験が足らん。だから……」
「あぁー!!龍種だー!!リリスやっちゃえー!」
何か物凄い聞き覚えのある声と、覚えのある威圧感がその場を支配した。
「くっ?!だ、誰だ!」
「えーっと……ごにょこにょ、知らない!」
何だ?やけに人と話すのが苦手そうな……あ、もしかしてこいつ……
「リリス!何やってんの早く!龍種だよ!?殺さないと」
「いえ、リリ。この方は……」
ん?!リリ?やっぱ、こいつ
「莉里なのか?お、俺だ!話を聞いてくれ、」
「俺だ俺だ詐欺じゃん!はやく!リリス」
リリスは何やら分かっている様で、やれやれと言った様子でリリに話す。
「その方は貴方のお兄様ですよ。」
「へ?」
「ちゅちゅちゅちゅーー(メタな発言するとですね、リリスは殆どプレイヤーに近いんです)」
む??
「チュチュちゅちちちゅ(なので、プレイヤーに近い権限とゲームマスターに近い権限両方を持っています)」
むむむむむ?!
「ちちちちゅちゅちゅー!!!(リリスに一番近いのは現在出てきている中では古龍ですかね)」
ねず公!!ネタバレしてんじゃねぇえええええええ!!