008
途中見慣れないアイテムを所持している描写がありますが、何処で入手したかはご想像にお任せします。
「所で我が主人よ。甘味を持っておらぬか?」
「……………」
いきなり出てきた挙句、何やら契約を結ばされ、終いには甘味?何がしたいのだコイツは。
「なぁー主人よー。」
「ええい!よるなすりつくな鬱陶しいなぁ。はい!これタピオカ」
何処から取り出したのかは企業秘密だ。俺だってこのゲーム始めてから何もしてないわけじゃない。タピオカを作れるくらいの素材はインベントリに確保してあるのだ。むん!
「努力の方向性間違えてるよね。なんでゲームでタピオカ………然も自家製だよねこれ。」
俺は高校生時代某スターなバックスで働いていたことがあるのだ。原材料さえ揃えばこの程度楽々である。
「美味しいなら良いじゃん。」
ツバサはタピオカミルクティー、俺は抹茶ラテで、古龍さんはタピオカカフェオレだ。
「ふむふむ。美味だのぅ……」
「あれ?古龍さんがいつになくだらけた表情を………」
それもこれもタピオカパワーだろうか?やはり甘味は世界を越えるのかもしれない。っていうか、甘味目的で契約したんじゃないだろうな?
「古龍さんでは堅苦しいだろう。何か名前をつけてくれんかの」
「じゃあ、タピオカ好きっぽいからピオちゃんで!タピちゃんだと俺が知ってる人の飼い犬と同じ名前になっちゃうから」
その飼い犬に似た名前になっているのだが、古龍、ピオは気にしなかった様だ。尻尾をふりふりして喜んでいる。
「ふむ。この甘味の名前から取ったのか。悪くない。むしろ好きであるな」
「なんか拍子抜けしちゃった……古龍と言うからにはもっと威厳のある存在かと思いきや、これとは…」
ツバサはさっきまで放心してたしね。後ツバサ、これとか言っちゃ失礼でしょ!
「ほ?あぁ、さっきからビクビクしてるかと思いきやこの姿が原因しておるのだな。待っておれ」
するとまたも神々しい光が舞い上がり、円状の赤い光がくるくるとピオの周りを飛び交い、ピカっと光ると、そこには赤い長髪の中性的な人物が立っていた。男子とも女子とも取れる姿で、背丈は恐らく190超えている超ビックなお方である。この姿でも威圧感は拭えなかった。
「 」
「あぁー、またツバサが放心しちゃったよ……」
そりゃいきなり人間の姿になられたら吃驚するよなぁ。俺はピオの主人だからか、ピオの考えていることが大体わかる。何やら妙な一体感があるのだ。思考がリンクしているというか、多分これ念話も出来る。
「(なぁ、ピオ。その無駄な威圧感辞められないのか?)」
「(ん?おお!我が主人。これは………念話?懐かしき記憶が……」
最後のは口に出てたし、懐かしき記憶って何さ。ゲームのAIにも真面目に働いて欲しいモノだね。そして、トリップしだすピオ。
「おーい。トリップすなー。はぁ……こんなんでやっていけるのか…」
溜息を良くつくのはツバサだけど、やっとツバサの気持ちが垣間見えた気がする。俺はいつもこんな感じなのかもしれない。そうなると、今度からは少しだけツバサに優しくしようと思う気持ちが芽生えた。
「あ、ゴブリンだ!」
「ぬ、我の出番であるな!地獄の業火!!」
バゴンッ!!!!ピカっ!!
あ、これあかんやつや。
「「ゴホゴホッ」」
どうやらやり過ぎてしまったらしい。このゲームってキノコ雲なんて出るんですね?いや、良いんですよ。責めてはいないんです。でも、序盤のゴブリンにこれは……ねぇ……
「や、やり過ぎだよピオちゃん!ラスボスでもあるまいし」
「ん?おお、久々の戦闘故な、ちょっと張り切りすぎたみたいだ。と言っても、初級魔法で何をそんな呆けておるのだ?」
「「しょ、初級魔法………あれが?ないない。」」
あれが初級ならゲーム内バランスが著しく崩壊しいくわ!無双ゲーじゃないんだから。
「お主らが信じようと信じまいと初級は初級だ。雑草を焼くのにちょうど良いのじゃよこの魔法は」
「あ、頭おかしいよこの古龍。核兵器級の攻撃で雑草を焼くってどんだけ資源無駄にしてんだ……」
いや、ツバサよ。魔法だからノーコストだ。
「たかだか魔法ひとつで………まぁよい。ほれ、ユウよ。ゴブリンの死体じゃぞ。吸収するのじゃ」
「吸収?って、あぁ、そうか」
魔物を倒したのは初めてだったから忘れていた。
スライムの本懐。スキル吸収は、正にスライムの為にあるスキルだ。
丁度ゴブリンが三体いるからこれを吸えばいいのかな。
『プレイヤーユウがスキル吸収を行いました。
スキル吸収がゴブリンを記録しました。
野獣系、妖精系、人型モンスターに対してダメージカット3%
野獣系、妖精系、人型モンスターに対してダメージ1%アップ
ドロップ、変形ーゴブリン。
ゴブリンAtk +1 レア度C
ゴブリンAtk+2 レア度C
ゴブリンDEF+24 レア度R
ドロップを肥やしにする場合は、ドロップ欄から強化をお選びください。現在のステータス変動率は1/10です。』
「ふむふむ。達成報酬型のクエと似てるな。出来高制だからマックスまで積み上げるのが基本か。で、ステータスは倒した敵次第ってことね。でも、倒した敵全部を吸収するわけにもいかないから強敵の場合は吸収できないというわけか。なる程、面白いシステムだ」
「むー。何がなんやらわからんよー。つまりツバサは何が言いたいのさ」
長々とアナウンスがあった後に、ツバサが長々と考察を述べた。ツバサは自分の事でなくとも楽しそうだ。
「やり込み要素が多いゲームだなって事だよ。それに、普通の敵に勝つには俺とユウどっちも今のステータスじゃ叶わないからね。みたところさっきのゴブリンだってステータスは基本3桁くらいだろう。ふふ、ハードなゲームな事だ」
「主人よ。言い忘れておったが、ほれ、これをやろう。」
「なーにこれ?」
ピオからいきなり指輪を渡された。まさか、結婚指輪?!ピオ……な訳ないわな。ちょっと古びてるし。
「これは契約の指輪≪エンゲージリング≫と言って契約魔法で結ばれた者にしか扱えぬ代物よ」
「ふーん。でも、契約って……あ、そっか俺たち契約してるのか…」
契約魔法で結ばれたものは能力の共有と、召喚魔法を覚えることができる。今俺が扱える召喚魔法はサモンだけだけど。もっと上級まで行けばワープやエスケープなども使える様になるらしい。
「うむ。我らは一心同体よ。貴殿が死ねば我にも影響がでる。そのことをゆめゆめ忘れるでないぞ」
「ん?どういうこと」(・・?)
「あぁ、バッドステータスや、luck加算のことね。ステータス半減が重なればいずれステータスは1になるからそれを気をつけろって言ってるんだと思うよ。」
はえー、ツバサの説明だとやっぱりわかりやすいなぁ。
「じゃあ、これからは気安く死ねないね!」
「まぁ、死んでるのはユウだけなんだけどね」
はっ!そうだ。死んでるのは俺だけだ。てか、死にやすすぎなんだよねーこのゲーム。もうちょっと死なない様にならんのかね。
「死なないスライムだったらもっとラクだったんだろうけどな」
ほんと、ツバサの言う通りだった。
「ちゅちゅちゅ」
「く、くそ、また出てきやがったなねず公」
「ちゅ、ちゅー!」
「な!何?!二番煎じは嫌だからって俺の周りをぐるぐる回ってオリジナリティを出そうとするなぁあああ!」
「ちゅ!」