03 紅之蘭 著 『天才紅教授の魔法講義 其の三』
天才紅教授の魔法講義 其の三
私は紅教授の助手、魔法人形の縫目フラ子である。
「恒例、わが魔法教室実技演習を開始したい――」
紅教授の魔法教室受講生は二十名だ。それを四名で班割りし、AからEの五班をつくる。各班は、学校正門をスタート地点とし、紅教授が設定したルートをたどりつつ、島の中央にある中央火口丘を目指さねばならない。途中にはいくつかのトラップがあり、それに引っかかって、班から一人でも脱落者が出ればゲームオーバーだ。
「ではみんな、縫目ちゃんに注目!」
ばっ。
紅色の髪をダウンテールにした紅教授が、私のスカートを豪快にまくりあげた。
「教授、何するんですか!」
「バン・キュ・ボンな私と比べて、未発達であるな」
どういたしまして、たしかに私は貧弱ですよ。でもロリータ体型も一定の支持層があるでんすからね。べーっ。
陰キャ系学生が鼻血を出して卒倒していた。
「はい、E班、第一トラップで脱落。以降は他の班がすんなりゴールできないように、嫌がらせをするように」
――紅教授、この人、ほんとに性格悪いわ。
東京都黄戸島村は、太平洋に浮かぶカルデラ火山島で、島は外輪山で囲まれている。
外輪山は完全な環状ではなく、南側に切れ間があり、入り江になったところがある。そこが島の玄関口である港となっている。入り江に臨んで大学や村役場、それにささやかな市街地が立地している。
島の大部分を占める外輪山に囲まれた盆地〈火口床〉は、中央火口床を取り囲んでいる。半分は水源用のジャングルで、残り半分がミカン畑になっている。
南の入り江に臨む大学正門。
そこからスタートしたAからDの四班は、E班のディフェンスを受けながら、五キロ先にある休火山・中央火口丘山頂に旗を立てなくてはならない。最大の難所は途中にあるジャングルで、車で先回りしたE班が、落し穴やら仕掛け網なんかを設置して、待ち構えている。
E班の活躍でB・C・Dの三班が第二、第三トラップで脱落。班員は速やかにディフェンス側に加わった。
――こいつら、なんでディフェンスになった途端、生き生きしだすんだよお。
私はドローンを操縦士、紅教授はモニター越しに学生達を監視していた。
「縫目ちゃん、旗を持ったA班が今まさに山頂に旗を立てようとしている。リーダーはメガネ君だ」
だが、そこには最終トラップがあった。
――縫目ちゃんの下着、持ち帰った人は一名様に限り、ご褒美デート――
なんだこの看板は――
A班の学生たちは四人全員男子だ。
ファィアーボール、ウォーターボール、ストーンシュート……が飛び交う。
そして結局、同士討ちで全滅した。
了