03 紅之蘭 『天才紅教授の魔法講義 其の二』
毎年思うのだが、四月になって講義が始まったかと思えば、すぐにゴールデンウィークとなって大学は長期休業になってしまう。そんな四月下旬だった。
バン・キュッ・ボーンなナイスバディーを誇示する紅教授は、教授会なる老人会に呼び出されて、くっちゃべっているのだろう。
黄戸島村立大学の錬金術研究所には、今や骨董品と化した魔道具、そして試行錯誤の果てに失敗した魔道人形が山積されていた。
魔道人形とは、自律的行動型人形のことで、かくいう私・縫目フラ子もその一体である。
教授はだらしなく、部屋はすぐに散らかる。
助手たる私は整理整頓をする。
このとき本棚から一冊の本が床に落ちて開いた。
私が開いたペイジをみると、「魅了」に関する魔法陣が解説されていた。
――なんか面白そう。
早速私は床に、チョークで描いてみた。
それから紅教授が、教授会から戻って来た。そして、なんということだろう、かの魔法陣を踏んでしまったのだ。
魔法陣が発動し、紅教授が発情し、私を床に押し倒す。私は涙目だったに違いない。
さらに教授は「金縛り」の術式で私を拘束した。
――乙女の貞操が危機だ!――
しかし、読者諸君およびwebサイト運営委員諸氏よ、安心したまえ。一線を越えさせることは許さない。なんてったって、私は魔道人形なのだ。
紅教授の術式を気合で乗り切った私は、逆に教授を羽交い絞めにし、〈縫目ビーム〉で魔法陣と魔法所を焼き払った。
「縫目ちゃん、なんてことを――」
紅教授の術が解けた。
「ハラスメントした教授が悪いんです」
「なんだ、その焼かれた魔法陣は?」
「気のせいです」
「本も一冊焼かれていたではないか?」
「目の錯覚です――」
禅問答はしばし続いた。
了