第十六話 謎の契約書
優「――この縄を解けっ!さもなくば、貴様らを八つ裂きにしてくれるわ!」
魔「縄に縛られているのにそんなこと出来る訳ないだろ。」
ぎゃあぎゃあ五月蠅いうどんげに、冷静に突っ込む魔理沙。
麦はそれをうどんげの隣で聞いていた。
…よく聞こえなかったが。
麦の視線の先では洗脳されていた永遠亭の人達と、異変解決を手伝った人全員が話し合っている。
話の内容は分からないが、多分うどんげをどうするか~とかそんなところだろう。
――何故うどんげが縄に縛られているのかというと、その話は少し前まで遡る。
霊夢がうどんげを気絶させた後、洗脳が解けたらしい永琳や輝夜、そして彼女達の相手をしてくれていた妹紅や紫が駆けつけてきた。
霊夢はそのままうどんげを祓おうとしたのだが、事情を聞いた永琳と紫が待ったを掛けたのだ。
――うどんげはこんなことをする娘ではないわ。何かしらの原因があるはずよ。
その永琳の言葉のお陰か、すぐにうどんげが祓われることはなくなった。
その結果、うどんげは縄で縛られて、麦と魔理沙の監視の下、うどんげのことについて話し合うことになった。
ちなみに、麦はうどんげの能力を封じる係である。
だからこうしてちょくちょくうどんげのことを触っている。
――もうそろそろだ。
麦はそう思い、うどんげに触ると――
眼鏡がまた文字を並べてきた。
読まずに出しているのも鬱陶しいので、とりあえず読むことにした。
――うどんげが持っている『繋がりに干渉する程度の能力』は強引に授けられたもの。その影響でうどんげの魂が歪み、性格が変わった。
――ん?
うどんげって元々『繋がりに干渉する程度の能力』持ってないの?
それにこんな話し方じゃないの?
そんなことを思っていると、霊夢がこちらの方向へ向かってきた。
霊「麦?うどんげは変な事、してない?」
麦「はい、大丈夫ですよ。」
霊「そう。ならよかったわ。」
麦「そういえば…そっちのお話はどんな感じですか?」
霊「ああ…こっちはさっきからうどんげの処遇について話しているんだけど…うどんげをどうしたら元に戻せるか分からないし…かと言ってうどんげを祓うにも二人から反対意見が出るし…全然話が進まないわ。」
霊夢はため息をついた。
霊「具体的な解決策が見つからなくてね…一応魔理沙や麦に聞こうと思って来たんだけど…」
麦と魔理沙を交互に見やる。
魔「いや、私から言えることはないな…」
麦「…私はあります。」
麦は少し前に眼鏡が教えてくれたことを話した。
霊「…つまり?」
麦「私がうどんげの能力を奪えばうどんげが元に戻る可能性が高いんです。」
霊「…成る程ね。麦は能力の回収が仕事なんでしょう?ならうどんげから取っちゃいなさい。それ以外にいい案がないから…」
霊夢からのお墨付きも貰ったところで、麦は手袋を着けた右手をうどんげの額に当てた。
優「貴様っ!何、を…」
うどんげが話し終わる前に、麦は能力を回収した。
それと同時に、不可解な出来事が起きた。
うどんげが気を失い、そして紙が麦の目線の先に現れたのだ。
麦「…?」
ひとまず、それを手に取ってみると、そこにはこんなことが書いてあった。
契約書。契約者、鈴仙・優曇華院・イナバは能力を授けられる代わりに――
そこまで読んだ後、この紙が突如として発火し、燃え尽きてしまった。
霊「…ねぇ、今の何?」
麦「…合っているか分かりませんが、あれは契約書らしいです。」
霊「ふぅん…」
霊夢は眉をひそめた。
麦「とりあえず、これでうどんげさんが起きるまで待つだけですね。」
霊「…そうね。」
霊夢は視線を下げ、何かを考えていた。
ーーーーーー
少女待機中…
ーーーーーー
優「んっ……あれ、ここは…」
魔「おお、目を覚ました。」
それから数十分ほど。
うどんげは永遠亭にあったベッドで目を覚ました。
麦「よかった…」
うどんげが起きて安心した麦。
霊「…うどんげ、あなたここ最近の記憶ある?」
優「……無いです。」
霊「最後に覚えていたことは?」
優「うーん…?」
うどんげは腕を組み、懸命に思い出そうとするが――
優「うーん…何も思い出せないなあ。何してたんだろ…」
霊「……」
ここ最近の記憶はすべて飛んでしまったらしい。
麦「…もしかして、霊夢さんがうどんげさんの頭を強く叩きすぎたのでは?」
霊「…まさか。」
霊夢は軽くあしらったが――
霊「あり得るかも…」
と、声を漏らした。
霊「あなた、名前は?」
優「…私が自分の名前を覚えてないとでも?」
霊「記憶喪失にはなってなさそうね。」
優「え?私何かされたんですか!?」
霊「そ、そんなことないわよ?」
内心ぎくりとする霊夢。
優「霊夢さん、怪しいですよ…」
霊「…そんなことよりも、私はうどんげが起きたことをみんなに知らせないといけないから…麦と魔理沙、後のことはよろしく!」
麦「えっ!?」
そう言うと、霊夢はそそくさとこの部屋を去ってしまった。
麦「行っちゃった…」
優「…魔理沙?」
魔「よう、久しぶりだな。」
優「久しぶり。…それで、隣の人は?」
うどんげが麦の方を見る。
魔「隣にいるのは稲美麦。私達と一緒に異変解決を目指している。」
優「なるほどね。…私は鈴仙・優曇華院・イナバ。長いから気軽にうどんげと呼んでちょうだい。」
麦「分かりました。うどんげさん。」
麦がそう言うと、うどんげはむずがゆそうに頬を少し掻きながら、
優「あー…別に“さん”とかつけなくていいから。それに、私と話すときはため口でいいわ。私もため口で麦と話すから。」
と言った。
麦「……分かったよ。うどんげ。」
のどから敬語が出かけたが、何とかため口で喋れた。
魔「…さて、麦とうどんげの話がひと段落ついたところで…今、うどんげの置かれている境遇について話そうか。」
魔理沙は少し真剣な表情で言った。
こんにちは。たると林檎です。
少しお知らせなのですが…
土曜日の定期投稿の時間を午前十一時にしたいと思います。
今まで見にくい時間帯にしていてごめんなさい。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
次のお話もよろしくお願いします!
後十話ガンバルゾ!