第十四話 永遠亭突入大作戦
紫「――全くもう、何で霊夢はそんな簡単に結界を緩めるの?もし結界が壊れたらどうするつもりなのよ!」
そう言うのは、謎の割れ目――霊夢達は【スキマ】と呼ぶらしい――から体を出した人物。
霊夢は、八雲 紫と呼んでいた。
霊「ハイハイ、今はそんなことどうでもいいの。――私は紫の力が借りたいのよ。」
霊夢がそう言うと、少し驚いた様に見えたが、すぐに表情をを戻しながら、扇子を開いて口を隠した。
紫「あら、霊夢が私の力を貸して欲しいって言うなんて珍しいじゃない。」
霊「…正面から行ってもいけるかどうか分からないのよ。」
紫「……博麗の巫女が困っていると言うのなら…今回は力を貸してあげるわ。」
紫は少し熟考してから言った。
紫「それで?私は何をしたらいいの?」
霊「紫にはうどんげの所まで連れていって欲しいの。」
紫「それぐらいお安い御用よ。…他には?」
霊「後は囮役にもなって欲しいんだけど。」
紫「…まあ、いいでしょう。私は噓をつかないからね。」
霊「どうだか。…妹紅も、囮として頑張ってくれる?」
妹「元々そんな感じの作戦だったじゃないか。…囮の役割は引き受けるから、うどんげの方は任せたぞ。」
霊「ええ、任されたわ。」
どうやら、永遠亭突入大作戦(仮)の作戦がまとまったようだ。
魔「――話はまとまったか?それじゃあ作戦のおさらいしておこうぜ。勘違いがあっても困るしな。」
霊「…そうね、そうしましょう。」
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少女確認中…
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紫「――それじゃあ、準備はできたかしら?」
霊「勿論。」
紫「なら、この中に入りなさい。このスキマから落ちた先にうどんげが居るわ。」
紫はそう言って、スキマを広げた。
スキマの中には眼が大量にあって…ぎょろぎょろ動いていて…とても恐怖心を煽られた。
霊「…行くわよ。」
麦「…はい。」
霊夢が躊躇せずにスキマの中に入る。
続けて入ることになっているのは麦だ。
――ええい、ままよ!
麦はスキマへ飛び込んだ。
◇◆◇◆◇◆◇
紫「――さて、私達も動くとしましょうか。」
妹「…そうするとしよう。」
これは、霊夢達を見送った後の出来事。
妹紅達は永遠亭へと向かった。
妹「……」
紫「…ずっと黙っているけど大丈夫?」
永遠亭に向かう途中、妹紅は一言も喋らなかった。
妹「…ああ、大丈夫だ。」
紫「そう。」
――何だこの感じは…
妹紅は何故か胸騒ぎを感じていた。
…霊夢達の心配のしすぎだな。
妹紅はそう思うことで、この胸騒ぎを落ち着かせることにした。
そう考えている内に、二人は永遠亭の近くに着いていた。
妹「…準備はいいか?」
竹林に身を隠した妹紅が、紫に問いかける。
紫「私はいつでも。」
紫は余裕しゃくしゃくそうに言った。
妹「行くぞ…!」
妹紅の合図のもと、二人は竹林から姿を現した。
永遠亭の戸の前には、永琳とてゐ、更には蓬莱山 輝夜までもがいた。
妹「これは骨が何本も折れそうだ…!」
輝「――侵入者を発見、排除します。」
輝夜達は二人を見るやいなや、襲いかかってきた。
――霊夢達は大丈夫だろうか…
無事であってくれ…!
胸騒ぎが当たらないようにと、霊夢達に向かって祈った。
◇◆◇◆◇◆◇
――スキマの中に落ちていく感覚はとても耐え難いものだった。
毒々しい景色と、地に足が着かない恐怖につられて、大量の眼に見られているという錯覚を起こした麦は、目をつぶり身を縮こませた。
そして――
麦「痛っ!!」
床に盛大に背中を打ち付けた。
霊「……」
魔「…大丈夫か?」
いつの間にか降りてきた魔理沙にそう聞かれた。
麦「だ、大丈夫です…」
まだ背中を打ち付けた所が少し痛むが…何とかなるだろう。
麦が立ち上がると、前には椅子にふんぞり返るかのように座るうさ耳――うどんげがいた。
優「…なあ、霊夢よ。其方は何故そこにいる?」
霊「あなたの悪事を止めさせるためにいるのよ。」
霊夢は断言した。
それを聞いたうどんげは高笑いをした。
優「ハッハッハッ、私のやっている事を悪事呼ばわりか。それは酷くないか?」
霊「永琳達を洗脳することが悪事でないとでも?」
優「…我が主の命令は悪事ではない。」
うどんげはそう言った。
霊「そう。この騒ぎを止める意思がないのなら――あなたを祓うだけよ!」
霊夢はお祓い棒を構えた。
優「フハハハハハ!我に挑むと――そう言うんだな!霊夢よ!」
うどんげが椅子から立ち上がる。
霊「――…うどんげが、本当に異変を起こすとは思わなかったわ。」
霊夢が、感情のこもった声を出す。
この感情は…幻滅…?
優「我は主の命令に従ったまでよ。」
うどんげが、さも当然かのように言う。
――分析致します。
不意に、声が聞こえた直後、目の前に文字の羅列が表れた。
眼鏡がうどんげの事を分析してくれたようだ。
名前、鈴仙・優曇華院・イナバ。種族、妖獣。能力、『波長を操る程度の能力』、『繋がりに干渉する程度の能力』。概要、『繋がりに干渉する程度の能力』を使って他の人達を操っている。霊夢にこの能力が有効。
――霊夢に有効!?
麦に衝撃が走る。
このままでは霊夢までもが操られてしまう!
そう思ったが、もう霊夢とうどんげの話はもう終わろうとしていた。
優「あくまでも、我等の邪魔をするのなら…貴様等と決着をつけてくれよう!」
麦「…霊夢さん!」
麦は咄嗟に手を伸ばしたが――それも虚しく、空を切るだけだった。
そして、うどんげの目が赤く光る。
霊「――っ!?」
霊夢は、うどんげと目を合わせてしまった。
直後、霊夢からの気迫が消える。
魔「大丈夫か!?霊夢!」
魔理沙は問いかけた。
霊「ええ…大丈夫よ。」
それは、今までとは違う、抑揚の無い声だった。
霊「それよりも…あなた達、この御方と戦うのよね?」
…御方?
言動が怪しい霊夢。
霊夢はこちらを向いた。
霊夢の目に、光は無い。
霊「――私は優曇華院様の守護者、博麗 霊夢。この御方には、傷一つ付けさせない。」
こんにちは。たると林檎です。
日曜日にあげられなかった分頑張ります。(後十一話)
…実はあとがきの最初に書く挨拶に困っています。
何かいい案がありましたら感想ついでに教えて欲しいです…
次のお話もよろしくお願いします!
八雲紫:幻想郷の賢者。
幻想郷を作った内の一人で、最古参の妖怪。
基本的に胡散臭くて、信用されにくい。
だが、話したがり屋で色々と教えてくれたりする。(信用出来るかどうかはさておいて…)
能力は『境界を操る程度の能力』。
鈴仙・優曇華院・イナバ:今回の異変の一角。
実は永遠亭を乗っ取ったときでも永遠亭のサービスは一応続いていた。
元々は中二病みたいな話し方ではない。
そうなったのは『繋がりに干渉する程度の能力』のせい。
能力は『波長を操る程度の能力』と『繋がりに干渉する程度の能力』。