第十二・五話 お食事中の出来事
魔「――いやー、私も昼食に招待してくれてありがとうな、レミリア。」
レ「あなたは本を無断で持っていくけど…まあ、そこら辺はパチェに任せるわ。」
パ「今日こそは本を返してもらうわよ…!」
魔「おいおい、私は死ぬまで借りてるだけだぜ。」
麦「人はそれを借りパクって言うんですけどね…」
霊「はいはい、今はお食事の時間なんだから喧嘩しないの。後でやって頂戴。」
これは昼食中の出来事。
レミリアからの提案で紅魔館にいる人達全員でお食事会をすることになったのだが…
麦「こんなに混沌としたお食事になるとは…」
美「誰も思いませんよね〜」
隣にいた美鈴がのほほんとしながら言う。
美「前に宴会に行ったことはありますけど…お食事会でもこんなにわちゃわちゃするとは…」
麦「宴会かぁ…」
前の人生で一回もしたことはなかったなあ…
麦「私もできますかね…?」
隣でパスタを食べる美鈴に問う。
美「ん?…ああ、出来るんじゃないですかね?今は春ですし、みんな宴会したがってると思いますよ?」
麦「え、本当ですか!?」
美「ええ、まあ…」
麦「――あっ、でも…」
そういえば、今幻想郷では異変が起こっているんだった。
流石に今宴会を開くことは出来ないだろう。
非情な現実を思い出した麦。
美「…?どうかしました?」
麦「いえ、何でも…」
麦は、その落胆の声を抑えた。
美「ま、今はこの時間を楽しみましょうよ。」
麦「…そうですね。」
麦は出された料理――美鈴と同じトマトソースのパスタ――を頬張った。
麦「――!」
美味しい。
トマトソースのシンプルなパスタだが、その分味に深みがある。
――こんなに美味しいのを食べたのは久しぶりだ…
内心で感動する麦。
ふと、騒がしいなと思い、横を見ると――
パ「…やっと今までの借りを返す時が来たわ…!」
魔「ふぅ〜…よし、飯も食い終わったし、食後の運動と行きますか。」
パ「今日は喘息の調子がいいから、全力であなたを叩けるわ…!」
魔「じゃあ私も全力を出そうかなぁ~。」
と、軽口を叩きつつも、二人は臨戦態勢になっていた。
?「パチュリー様〜!やっちゃってくださ〜い!」
と、紫髪の人――多分名前はパチュリーだろう――を応援する赤髪で羽根の生えた少女。
麦は名前を知らないので、隣の美鈴に聞くことにした。
麦「あの赤髪の人って誰ですか?」
美「その子は小悪魔っていう名前ですよ。」
麦「…小悪魔が名前なんですか?」
美「そうですね。……実のところ、誰も本名を知らないんですよ。」
麦「そ、そうなんですか…」
小悪魔に少し不憫なところを感じた麦であった。
――麦が美鈴と話している内に、魔理沙とパチュリーは弾幕ごっこを始めた。
眼前では、麦が見たことのないスペルカードが使われている。
使われたスペルカードは色鮮やかで、綺麗で、まるで花火のようだった。
麦「――綺麗。」
麦は、無意識のうちに声を漏らしていた。
美「また、宴会したいなぁ…」
麦「…最近は行けてないんですか?」
美「ええ、私には門番の仕事がありますから…」
寂しそうな表情を見せる美鈴。
………。
麦「――いつか、幻想郷で出会った人全員で大宴会を開くので、それまで待っていてくれますか…?」
すると、それを聞いた美鈴が少し驚いたような表情になった。
そしてあはは、と照れくさそうに笑った。
美「…招待してくれるなら、是非。」
麦「絶対に招待します。」
美「…それは頼もしいですね。」
――今、私の生活は充実している。
こうやって幻想郷の輪に入れてもらって、住むところがあって、気さくに話し掛けられる人が出来て、前の生活とは段違いである。
――この幻想郷の平和は、私が守ってみせる。
麦は、決意を抱いた。
今回はまた箸休めの回です。ハイ。
次は《迷いの竹林の支配者》という章に行きます。
今週は…ハイペースで行けるかなぁ…(後十二話)
次回もよろしくお願いします!
パチュリー・ノーレッジ:紅魔館の頭脳。
喘息持ちで、体力は平均的な人間をも下回る。
喘息の調子がよければ、滅茶苦茶強い。
能力は、『魔法を使う程度の能力』。
小悪魔:下級悪魔。
気まぐれで、いたずら好き。そして後先を考えない。
名前は誰も知らない。
能力もあるか分からない。