2年A組のヤミ
「別に良い子ぶってないけど!」
「さっき良い子ぶって鏑木と一緒に甲本の事、助けてたじゃないか」
「あんなの別に甲本を助けたワケじゃないけど、掃除をサボっていたあんた達を注意しただけなんだけど、って言うか百歩譲ってサボるのは勝手だけどわざわざ人の班まで来て、さっきみたいに掃除の邪魔するの止めてくれない?」
膨らみ過ぎた怒りの感情に助けられ好美は自分でも驚く程、面と向かって意見していた。
そして反撃に身構えたが運よく教師が通りかかってくれたので、その絶好の機会に足早に学校を後にした。
『へー、じゃあ今日も掃除の時間とか大変だったんだ、でもヨッシー遂にガツン!って抗議したんだ?歩と一緒に・・・・・・頑張ったね!』
「うん、でも実は明日何かされないか内心ビクビクしてるんだよね、今も、その事ばかり考えちゃってる、放課後も武川と軽くやり合っちゃったし」
『放課後も?』
「うん、放課後はね、一対一だったんだけど、甲本を庇ったりして良い子ぶってるって言うから、不満も溜まっていたし一対一だったから、その不満に任せて掃除とかの邪魔するなって言ってやったんだけど、それを恨みに思われて明日からターゲットになっちゃったらどうしよう」
怯えてみせる好美に真希は慎重に言葉を選んだ。
『・・・・・・大丈夫だと思うよ、嫌な言い方するけど、ちょっと反抗されたからってターゲットが、そう急に変る事はないと思う、あいつ等、今は甲本イジメが愉しいんじゃないかな、甲本が転校したり不登校になったりしない限り大丈夫だと思うよ』
真希の冷静な分析を受けて少しだけ気持ちが軽くなった。
『それにしても歩は、やっぱ、そういう子だよね、白黒ハッキリしてるっていうか、今日、ヨッシーが加勢した事、絶対に歩、喜んでいたと思うよ』
歩とケンカ中の真希だったが、歩の長所を高く評価する気持ちは変らず有った。
「そんな歩ちゃんと早く仲直り出来ると良いね・・・・・・たまには真希ちゃんも愚痴ってよ、いつも私ばかり愚痴ってるからさ、今日も散々愚痴っちゃったし、今日はタイムリミットまで真希ちゃんの思いの丈を聞かせてよ」
好美は連日、クラスでの愚痴を時間一杯まで真希に聞かせてしまっている事が心に引っかかっていた。
一度吐き出すと愚痴が止まらなくなり真希が抱えている悩みや愚痴を聞く時間が無くなってしまっていた。
とはいえ、実は真希が抱えている不満は意外と多くはなかった。
クラスで特に問題が起きているわけでもなく、歩が以前のように部活動にも参加せず恋愛に現を抜かしているという事もなく、以前のように過度に両角に反発する事もなく、過去の自分を反省して雑用をこなしつつ真摯に陸上に打ち込む姿に不快感を覚える事は勿論なかった。
『愚痴か~、何だろう、強いて言うなら、自分の心の狭さにウンザリしてるって所かな』
「えー、真希ちゃん心狭くないよ」
『何かさ翔君の気持ちとか自分に向かせる事も出来ないし、陸上の才能を感じ取って両角先生が熱く指導するのは私じゃなくて歩だし、何一つ歩に勝てない嫉妬心とか邪魔して素直になれなくて仲直りしたい気持ちにブレーキをかけている自分が居て、もっと心が広かったら色んな事を水に流して歩とも上手くできるのかなって、そんな気持ちに苛まれる今日この頃』
こういう時は、真希のネガティブな考えを真っ向から否定しても何の解決にもならない事を知っていたので、気晴らしに真希をウィンドーショッピングに誘ってみた。
『んー、そうだね、お小遣いも貰ったし、私ちょっと本屋さん行きたいんだ、読んでるコミックが新刊出てるみたいなんだよね』
「そっか、じゃあ本屋さんも行こう、クレープも食べよう」
週末、好美は真希とともにショッピングモールに居た。
フードコートでクレープを堪能した後、真希が愛読しているコミックの新刊を探すために書店に立ち寄った。
通い慣れた店で真希が直ぐに目当てのコミックを見つけて嬉しそうに手に取った。
その隣で好美も好きな漫画家の新しいコミックを見つけ思わず手にした。
「あ・・・・・新作出てる」
2人、目当ての書籍を見つければ長居する理由もないので颯爽とレジに向かった。
真希に続いてレジの方へと進んでいたが。
急に真希が立ち止まって、ソーイング関連の書籍が置かれているコーナーに目を向けた。
「っと・・・・・どうしたの?」
思わずぶつかりそうになりながらも、何とか止まって真希が凝視している方に視線を流した。
そこにいたのは高浜だった。
高浜が熱心に見ていたのは編み物の本だった。
「他人の空似かな・・・・・・まぁ良いや、とりあえず買ってこよう」
「うん」
2人は二台あるレジで二手に別れ、ほぼ同時に会計を済ませた。
好美がピッタリの会計を済ませレシートを受け取って振り返ると、後ろに高浜が編み物の本を持って並んでいた。
驚きすぎたあまり、レジ前から大きく身を引いた後、理由もなく謝っていた。
「あ・・・・・・すみません」
何故謝られたのか判らない様子で、高浜は会計した。
その隙に好美は足早に真希と共に書店コーナーを離れて、絶対に高浜が立ち寄らなさそうな所に逃げた。
2人、癒しを求めペットショップに立ち寄り、自由に過ごしている子猫に大いに癒されながら好美が書店での出来事に改めて驚いた。
「それにしても本当にビックリしたよ!やっぱ他人の空似じゃなかったね、あの高浜さんが編み物か・・・・・・どうしても高浜さんが編み物をしている所を想像できない」
「私だって想像できないよ・・・・・・でも実はセーターとか自分で編んでたりするのかな」
「判らないけど・・・・・・まあ、よくよく考えてみると学校で色んな所を修繕したりしてるし、花壇の手入れも念入だし、手先が器用で編み物と意外と得意でも不思議な事じゃないのかもね」
好美達が、あれこれ想像を膨らませている頃、高浜は押入れから紙袋を引っ張り出した。
その中には亡き妻が生前、途中まで編んでいたマフラーと毛糸が入っていた。
ギリギリ首周りを一周出来そうだが、全く長さが足りない未完成のマフラーだった。
当初、本当に何も手がつかず高浜は、妻の編みかけだったマフラーも、そのまま紙袋に入ったままの状態で押し入れにしまい込んでいたが、新盆を迎えるにあたって遺品の整理を行った。
遺品の整理を行ったことで少しずつ自分の気持ちも整理されていくのを感じて、未完成のマフラーを完成させる目標を立てた。
漠然と本格的な冬が始まる前には完成させようとアバウトな目標を立てた。
全くの素人の自分が、どれだけの時間をかけたら完成させられるのか甚だ疑問だったが、やる気が萎えてしまう前に行動しようと編み物の本を購入していた。
早速本を開いて、眼鏡をかけたり外したりして老眼と闘いながら毛糸と格闘したが苦手意識が邪魔をして簡単と謳われている説明も妙に難しく感じて早くも挫折しそうになった。
上手くできずに思わず編み棒を置きかけたが、仏壇の妻と娘の写真を振り返って肩と首を軽く回して、もう一度じっくり説明を読んだ。
そして、生前、妻と娘が他愛ない話をしながら軽快に編み棒を動かしていたことを懐かしく思い出し改めて尊敬した。
二度と聞くことができない2人のガールズトークに思いを馳せながら、根気よく編み棒を動かし続けた。
月曜日、好美が登校すると、既に乾と武川が登校していて、丁度、悠太の机に豆板醤を塗り広げていた。
他の生徒たちは見て見ぬフリを決め込み、2人から適度に距離を取り複数個所に固まって差し障りの無い雑談を繰り広げながら、2人の敵意が間違っても自分に向けられないように神経をすり減らしていた。
好美は教室の後方の小さな黒板に複数の女子生徒と共に猫の足跡を悪戯書きをしながら、1人が黒板消しを手にしたのを見て、好美はチョークを握りしめ用意した。
直後に入ってきた悠太が机を拭いて注意深く椅子に腰を下ろした刹那、武川が硬式野球のボールを力いっぱい、その背中に投げつけた。
嬉々として乾も硬式のテニスボールを投げつけ監視するように教室内を見回した。
好美が弱めの力で投げたチョークは少しだけ悠太の制服の袖口を汚しただけだった。
便乗したくない、こんな時、歩だったら、どうしているのかとチラリと、その様子を盗み見てみると、教科書を開いて朝学習をしていた歩は蛍光ペンを適当なコントロールで放っていた。
そして歩は不意に立ち上がった。
「・・・・・・・?」
武川が素早く反応して歩の腕を掴んだ。
「どこに行く気だ!」
「何?離してよ!職員室に行くんだから」
「チクリに行く気か?!」
一層強く掴まれた腕を振りほどいて吐き捨てた。
「日直なので日誌を取りに行くだけです!信用できないなら付いて来れば?!」
武川と乾が顔を見合わせた。
好美は2人が教室から出て行ってくれる事を切に願った。
そして・・・・・・・。
歩に続いて2人は教室を出て行った。
好美は、その機会を逃さなかった。
悠太の前に立ち、1人でも味方に付けたくて他のクラスメイト達にも訴えるつもりで思いの丈をぶつけた。
悠太の為に涙を零すつもりはなかったのに、思いのた丈をぶつけながら涙が溢れ出し止められなかった。
「ねぇ、前にも言ったけど戦ってよ!私達が加勢する為のキッカケを作ってよ!もう本当に鏑木さんの時のような後悔はしたくないんだよ私!あんたが、そうやって受身に徹していると私達は何も出来ないの!あんたがイジメやめるって言った時、私凄くホッとした!なのに何でまた結局イジメを強要されないとならないの?!皆本当は、こんな事やめたいと思っているんだよ!お願いだから、やめさせてよ!」
ぶつけられた本音に悠太も堪えきれず涙を見せた。
止められない涙を拭い続ける2人を見て、複数人が貰い泣きしていた。
できるなら岸本が教室に来るまでの間に泣き止んでいたかったが、なかなかコントロールできず、好美たちは暗い顔で席についていた。
程なくして歩達と共に岸本が教室に入ってきた。
複数人の生徒が泣いている、明らかに異様な教室を目の当たりにしながらも顔色1つ変えず授業を始めた。
僅かな期待もしていなかったが、好美たちは岸本への不信感を更に深めた。
特に大きな混乱もなく1時限目が終わって短いトイレ休憩の時間に突入した。
まだ黒板を写し切れていなかった好美は必死に書き写していた。
その横で悠太も必死にシャーペンを走らせていたが。
休み時間に入るや否や、乾と武川が黒板を写している悠太の邪魔をした。
「ちょっと、邪魔」
好美が抗議したが無反応だった。
仕方なく腰を上げたり、首を左側に伸ばしたりしながら何とかノートを写し終え、次の教科の準備をしていると突然すぐ近くから鈍い、けれど大きな音がした。
思わず教科書を取り落としそうになりながら音のした方を見ると2人で邪魔をしながら武川がコンパスをノートに突き刺していた。
一歩間違えたら、怪我をする所だが、臆する事なく、一瞥しながら、刺さったままのコンパスを抜いて武川の足元に投げ返した。
「邪魔だ!後で好きなだけ相手してやるから退けよ!」
鈍い音を立て、自分の、つま先ギリギリのところに突き刺さったコンパスを見下ろし激高し、わめきながら、悠太を椅子から引きずりおろし馬乗りになって手を振り上げた。
「刺さったら危ないだろう!調子に乗るな!謝れ!!」
好美が止めに入るより先に歩が手を掴んで止めた。
「何だよ!イチイチ邪魔するな!鬱陶しい!そしてデカイ図体で俺の後ろに立つな」
振りほどこうとする、その手に更に力が込められたようで、武川が眉根を寄せていた。
歩は、その手を離してやった後、けれどすぐに襟首を掴んで悠太から引き離し、傷を隠すように、おろしていた髪を纏め上げ、制服にも手を掛け、胸元の傷も晒した。
好美はその傷を目の当たりにして血の気が引いた。
「・・・・・相手が登校出来ている間に止めておきな!同じ失敗、繰り返したくなかったら」
心の準備も無いまま傷を目の当たりにした好美を含む女子が数人、泣き出した。
「やめてよ、もう・・・・・・イジメなんかして何が愉しいの、そんなに追い詰めて何が愉しいの!!鏑木さんみたいな選択を、そいつがしたら責任取れるの?!」
好美の涙の懇願は、けれど乾達には全く響かなかった。
「そんな勇気、こいつにあると思うか!!余計な口挟むな!」
吐き捨て、周りが止める間もなく乾が歩を乱暴に押し退け、悠太の脇腹に膝蹴りを入れた。
衝撃の強さに倒れ込んで、一瞬息ができなかった悠太。
そんな悠太を一瞬見下ろした後、歩は2人に間合いを詰めた。
反射的に身を引いた2人に、更に踏み込んでいきながら声を荒げた。
「自殺は勇気なんかじゃない!!同じ立場に立てないと判らないの?!」
「そうだよ、もう、いい加減に止めて!」
好美も何とか、これ以上の暴行を止めたくて、歩に加勢するべく2人に詰め寄った。
好美は背後で脇腹を押さえながら、悠太が自分たちの背中を見つめている気配を感じた。
フラフラ立ち上がると悠太は教室を飛び出していった。
「あー、もう!お前らが邪魔するから土下座させようと思ったのに逃げちゃっただろう!代わりに謝れ!俺はコンパスで足を刺されそうになったんだぞ!!」
武川の言い分に思わず呆れ返って歩と顔を見合わせると数学の担当教諭が入ってきた。
「甲本、戻ってこなかったね」
流しで歩と鉢合わせた好美は思い切って話しかけた。
「うん、戻ってこなかったね」
相変わらず2人の言葉のキャッチボールは続かなかった。
好美は1年の1学期の言葉のキャッチボールの感覚を何とか思い起こそうとしたが全く思い出せなかった。
思わず漏れそうになる溜息を噛み殺しながら何となく2人で教室に戻ると、丁度、悠太も教室に戻ってきた。
悠太の姿を見た刹那、武川が詰め寄った。
「おい、根性なし!女に庇って貰ってどさくさに紛れて逃げてんじゃねぇよ!俺の足にコンパス突き刺そうとした事、土下座して謝れ」
見ていても聞いていても不快感しか湧かなくて、悠太より先に好美が口を開いていた。
「じゃあ、あんたも甲本に謝りなよ!」
「は?!何でだ!」
「先にコンパスで危ない事してたよね、私、ちゃんと見てたよ」
クラスメイトはハラハラしながらも自分の思いを代弁する好美に内心、エールを送っていた。
「お前は関係ないんだから口を出すな!良いんだよ!刺さらなかったんだから謝る必要なんて無いんだよ!」
例え女子が相手でも暴走する可能性が充分ある武川を牽制するように、歩が援護するように好美の後ろに立った。
好美は歩の援護をひしひしと感じながら言いたい事を臆せずに最後まで言い切った。
「それなら良いじゃん、あんたの足にも刺さらなかったんだから水に流しなよ、どうしても謝ってほしいなら先に自分が謝りなよ」
武川が沸々と湧き上がる不満を持て余しながらも歩への苦手意識から舌打ちしながら渋々引き下がった。
そんな事があった翌日、悠太は登校してこなかった。
思わず、このまま悠太が不登校になってしまう事を懸念しつつ、休み時間は武川と乾に絡まれないように隣のクラスの真希のもとに逃げ込んでみたりして警戒しながら過ごした。
一時限、また一時限と何とか順調に授業を消化して行って、程なく迎えた帰りのホームルームの時間。
掃除分担場所から生徒達が教室に戻ってきても、岸本は何故か、なかなか教室に来なかった。
ホームルーム開始時間から5分が過ぎ10分が経過しても岸本は来なかった。
少しずつ教室内がざわつき始めた。
痺れを切らせた乾が、イライラし始めた。
「おい、何で岸本は来ないんだよ」
武川もイラつきながら、その日の日直に命令した。
「今日の日直、岸本呼んで来いよ!」
指名された日直の男子は面倒くさそうにしながらも、何も言わず教室を出て行って、5分程して日直は1人で戻ってきた。
そしてクラスメイト達に報告した。
「何か岸本、校長室に呼ばれて出てこないらしい、教頭に指示を仰いだら、岸本が来るまで待ってるようにって」
報告を済ませ席に着いた日直が質問攻めに遭った。
「えー、あてもなく、ただ待たされるの?だいたい、どれ位掛かりそうとか言ってなかったの?」
「どれ位前に呼ばれたとか」
「何の話で呼ばれたんだよ」
「そんなの知らないよ、まあ教頭が言うように、黙って岸本を待つしかないだろう」
「役に立たないな!もう良いや、俺たちで様子見に行こうぜ武川」
「ああ」
2人、周りが止める間もなく教室を出て行った。
乱暴に扉が閉まった刹那、2人と同じ班の若林から大きなため息が漏れた。
一斉に注目され、一瞬気まずそうにして見せたが自分の前の2人の席を見ながら本音を吐露した。
「当分、帰ってこないでほしい、何なら明日から、もうずっと来ないでほしい」
「若林も大変だよな・・・・・あいつらが真面目に掃除してる所なんて見たことないし」
「そうなんだよ!大変なんだよ、我慢も結構限界なんだよ!」
暫し2人の悪口で盛り上がっていると、武川と乾が岸本と共に教室に戻ってきた。
「遅くなって悪かったわね、ちょっとね、今日、甲本君がお母様と校長室に乗り込んできてイジメに遭ってるって言うものだから・・・・・・そういうの本当に困るのよね私のクラスで!それで校長先生から皆に確認してくれって指示が出ちゃって、とりあえず今回も名前は書かなくて良いからアンケートに答えてほしいの」
言いながら用紙を配り始めた。
全員に行き渡ったアンケート用紙には無意味に思える質問が列ねられていた。
面倒くさそうにシャーペンを取り出すクラスメイト達に牽制をかけるように見回した後、武川と乾もシャーペンを取り出しカチカチとシャーペンの頭をノックして記入を始めた。
「書けた人から前に持ってきて」
程なく、当事者の乾と武川が一番乗りで岸本に提出した。
「じゃ、俺たち帰って良いですか?」
「まだ駄目よ、皆が終わるまで待ってなさい」
「えー、何でですか、俺たちも暇じゃないんですけど、アンケートに書いたことが全てですけど、残されても話す事なんて何もないんですけど」
文句を言いながらも自分の席に着いた。
そして急かす意図で教室内を見回した。
皆、武川達と目を合わせたくなくて素早くアンケート用紙を埋めていって相次いで提出していった。
好美も真面目に答える気になれなくて適当に記入欄を埋めていった。
「これで全員ね」
ようやく帰れるとコソコソと乾と武川が下校の準備を始めた。
岸本は、その場で一通り目を通した後、ようやく簡単なホームルームを始めた。
「とりあえず帰りのホームルームが遅くなって悪かったわね、連絡事項は、特にもうないので解散」
その指示に一斉に帰り支度を始め、ゾロゾロと教室の前後のドアに集中した。
部活動の時間が始まってしまって焦っていた歩を含む複数の生徒たちは殺気立って足早に教室を出て行った。
一方、これといって予定がなかった好美は殺気立つクラスメイト達に積極的に進路を譲っていた。
急いで帰らないとならない理由もないが残っている理由もないので、一応、岸本に「さようなら」を告げ好美も教室を出ようとしたが・・・・・・。
「待って、為末さん」
「はい?」
「あなたに話があるの、良いかしら?」




