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標~進むべき道~  作者: 渋谷幸芽
19/33

親の苦悩、子供の戦場

過たず核心を突き返され、小さく頷きながら不安を口にしていた。

「・・・・・でも、戻れるかな、私ずっと酷い事を」

「戻れるかな、じゃなくて、戻るんだよ!まずは、もう「鏑木さん」呼びを止めな、そんなブレーキ掛ける必要なんて無いよ!ムカつく事があっても、やっぱ簡単に友達を止めるなんて出来ないって事が今回よく判った!弱気になってる場合じゃないよ!歩と、ちゃんと向き合おう、本心に気付けたその時こそ、自分の行動を変えるチャンスだよ!」

「うん・・・・・・!」


 迎えた試験最終日。

近くのショッピングモールで歩への誕生日プレゼントを探した。

「何が良いのかな、三千円で買える物で歩が喜びそうな物って何だろう」

2人、小遣いを出し合って予算を三千円と決めて、モールの中の色んな専門店を練り歩いた。

数時間掛けてモールの中を練り歩いたが、結局、決める事が出来なかった。

「何かさ、友達!とか言っておきながら私達、歩の事よく判ってないよね・・・・・・実は日記とかにヒントが沢山散りばめられていたのかもしれないけど、ヨッシー、日記の中で何か印象に強く残ってる内容とか無い?」

「えー・・・・・・もう久しく交換日記から離脱してたし、真希ちゃんは?何か印象に残ってる内容は無いの?」

「んー」

記憶の糸を辿りながら明確な目的が無いまま、何となくレストランゾーンに入った2人は、とある店のショーウィンドを見て思わず顔を見合わせた。

「形に残る「何か」って偏って考えていたけど、予算的にも丁度良いよね!巨大パフェ」

「うん!!無謀かもしれないけど3人だけで食べよう!完食して歩ちゃんと真希ちゃんと、もう一度、ちゃんと再出発したい」

方向性が決まり、2人、気持ちが軽くなった。

「いつが良いかな、どうせなら誕生日当日の明後日が望ましいけど歩の都合も有るもんね」

張り切ってプランを考えながら、真希が、ふと我に返った。

「そういえば三者懇談の予定とかって、ヨッシーどうなってる?」

「大丈夫!私は最終日だから、真希ちゃんは?」

「私も最終日だよ、じゃあ早速、歩の都合を確認してみる」

言いながら手っ取り早く歩の予定を確認する為に通話ボタンをタップして端末を耳に押し当てたが直ぐに通話終了ボタンをタップした。

「どうしたの?」

「まさかの電波が届かない所か電源が入っていない為っていうオチ」

「えー・・・・・幸先悪いね、少し時間を置いて今度は私からも掛けてみるね」


「どう?ヨッシーの方は、あれから連絡取れた?」

肩を落としながら好美は首を振って見せた。

「ねぇ、もう直接、歩ちゃんの家に行ってみない?多分、同じ小学校だった坂口君なら歩ちゃんの家も知ってるんじゃないかな」


 「ゴメンね、翔君」

「あのさ、案内するのは近くまでで良いかな?俺、この後、三者面談だから」

「大丈夫、無理言ってゴメンね、三者面談、間に合う?」

「ああ、平気、でも1つ頼みがあるんだけど、もし何で家を知ってるのか聞かれても俺が教えたって言わないで欲しいさ、どうにか自分達で調べて会いに来たって事にしておいて欲しい」

「判った!翔君の名前は絶対に出さない!約束する」

2人との約束を信じ、余り気が進まなかったが翔は歩の家を教えた。

「そこの角を曲がった2軒目の家だよ」

言いながら角を曲がったところで、3人の目にショッキングな状況が飛び込んできた。

歩の家の前に救急車が止まっていて、中から、首筋を血に染めた、意識が無い様子の歩が隊員に励まされながら運び出され車内に収容された。

その後、大地も乗せてサイレンを鳴らさず、どこかに走り去った。

「・・・・・・・え?!見間違ってなければ、今のって歩ちゃんじゃなかった?」

「首の辺りから凄く血が出てたよね」

「何だよアレ、俺の所為か・・・・・・・・?」

3人、激しく動揺し混乱して、どうやって、その場を離れたか思い出せなかった。


個々にフラフラと自宅に戻り、呆然自失の時間を過ごした。

好美は机に突っ伏し、溢れ出す涙が止められなかった。

カーテンを閉め切り延々と涙を流し続け、気付けば、随分と時間が経っていた。

「どうしたの好美、電気もつけず、しかもまだ制服・・・・・え?あんた、何・・・・・?」

買ってきた食料を、無造作に食卓に置いて好美と向き合って座った。

「・・・・・・お母さん」

「どうしたの?!友達とケンカでもしたの?確か今日、友達が誕生日だから巨大パフェ食べに行くって言ってたわよね」

「言った、でも行けなかったの・・・・・・・・その肝心の友達と連絡が付かなくて、思い切って、その友達の家に行ったら!!」

「連絡がつかないって、どういう事?」

「・・・・・その子、少し前から不登校だったの、ずっとイジメに遭ってて、だから家に行ってみたの」

話しながら、脳裏に焼きついた情景が鮮明に蘇って苦しくなった。

「家に行ったら、どうしたの?」

「・・・・・・救急車が停まってて」

「え?」

「中から友達が運び出されて、何処かに搬送された・・・・・・友達、首から凄く血が出てて!!友達なのに、裏切って保身に走って、一緒に戦わなかった事とか、ちゃんと色々謝りたかったのに」

初めて聞かされる娘が抱える問題に耀子は少なからず動揺した。

動揺しながら、とりあえず好美と目を合わせず食材を冷蔵庫にしまっていった。

そして全ての食材を冷凍庫や冷蔵庫にしまった後、好美の前に座ってストレートに確認した。

「・・・・・その口ぶり、流石に、あんたが率先してイジメてたわけじゃないと信じて良いのね?」

真っすぐ見つめ返し力強く頷くのを確認し、ほんの少しホッとしたが。

だからと言って容認など出来る筈が無かった。

「どうして大事な友達に一人で戦わせたの?どれだけ辛いか判ってる筈でしょう」

「私だって一緒に戦いたかった!でも、もしも庇ってまた同じ目に遭ったら、私達が学区外に逃げた事が無駄になる!でも、私が保身を選んだ所為で歩ちゃんは・・・・・・ねぇ、怒ってよ、もっと怒ってよっ!」

燿子は盛大な溜息をついて呆れて見せた。

「・・・・・私に怒られたら罪悪感も少しは軽くなるかも!って思ってる?」

「!」

「そんな子を叱っても無意味ね!あんたがしないとならないのは後悔じゃない!反省でしょう!」


 好美が反省と後悔の狭間で苦しんでいる頃、真希と翔も重い後悔の時間を過ごした。

食事は喉を通らず、何とか、その後悔の念から逃れたくて真希は便箋を引っ張り出してきてペンを取った。

けれど、『Dear歩』とペンを滑らせた後、書き出せなかった。

今更どんな事を書けばいいのか。

書いても受け取ってもらえるのか。

もしかしたら手渡す事さえ適わなくなってしまうのではないか。

悪い想像しか頭に浮かばず、いつまでも便箋を見下ろし涙を零し続けていると咲希がシャワーから上がって部屋に戻ってきた。

「ねぇ、何があったか知らないけど、とりあえずシャワー浴びてスッキリしてきたら?」

正直、そんな気力さえ残ってない精神状態だったが、気力でシャワーを浴びた。

浴びた所で爽快感を感じる事は微塵も無かったが・・・・・・・・。

真希がシャワーを浴びている間、咲希は、さり気なく机の上を見た。

涙を吸った便箋は、その部分が皺になっていた。

思わず色々と心配になりながらも咲希は干渉する事を避けた。


 食べれない、眠れない夜を過ごし迎えた翌日。

いつもの時間に鳴り響くアラームに叩き起こされ、真希はベッドを降りた。

「・・・・・ちょっと、大丈夫?今日は休んだら?」

朝食の準備を進めていた母親が制服姿でリビングに入ってきた酷い顔色の真希を止めた。

「平気、行って来ます」

「あ、ちょっと待ちなさい!昨夜も、食べてないんだから朝ごはんは!」

「要らない」

「そんなわけに行かないわよ!そんな事してたら身体壊すわよ!だったら、せめて野菜ジュースだけでも飲んでいきなさい」

言ってミキサーからグラスに注いで手渡した。

真希は渋々、母親特製の野菜ジュースを飲み干して登校した。

「ごちそうさま」


 何とか参加した陸上部の朝連も全く集中出来ず。

解散して直ぐ、どんなメニューをこなしたかも思い出せないくらいの状態だった。

トボトボと自分の教室に向かう為に廊下を歩いていると、職員室前に張り出された期末試験ランキングを満足げに見上げる悠太を目撃した。

小さくガッツポーズをする悠太を見て、真希は完全に頭に血が上った。

怒りをコントロール出来ず理性より体が先に動いてしまっていた。

鞄を廊下に叩きつけ、間髪置かずに掴みかかっていた。

大きな物音に訝し気に振り返った瞬間、真希に掴み掛かられていた。

「痛って!ビックリした!放せよ、何だよ急に!!」

「ねぇ満足?!歩が来なくなって満足?!此処に歩の名前が載ってない事は、そんなにあんたを喜ばせる事?!あんたの所為で歩は昨日!!」

悠太はキレながら真希の手を振り払った。

「鏑木が昨日どうしたっていうんだよ!何なんだよ俺は今回も実力で1位を守った!その結果を喜こぶのは、そんなに悪い事なのか?!」

廊下に響き渡る口論に職員室から教師が飛び出してきた。

「おい、どうした小沢!ちょっと落ち着け」

激しく取っ組み合う2人を引き離すために真希のクラスの担任が出てきて悠太と真希の間に何とか体を割り込ませた。

加勢するように更に複数人、教師が出てきて、最後に岸本も出てきた。

「何が有ったの、甲本君、よく分からないけど一応、相手は女の子なんだから手加減しなさい」

「でも、こいつが先に・・・・・・」

「はい、話は後で聞くから!小沢さん!貴女も女の子なんだから怒鳴り散らして男の子に掴みかかるような乱暴な事は良くないわよ、いったい何がケンカの原因なの?」

続々と登校してきた生徒たちが遠巻きに状況を傍観していた。

「ほら、お前たち!見物してないで教室に行け」

悠太が勝ち誇ったように掲示板に視線を走らせ的外れな推測を口にした。

「俺、何か判る気がします、きっとランキングに自分の名前が載ってないのに俺がまた一番だったから悔しかったんじゃないですか」

「は?何見当違いの事言ってるの?!」

「じゃあ何が原因なの?」

想像力を微塵も働かせようとしない岸本が面倒臭そうに真希に確認した。

思わず岸本にも嫌味の1つでも言ってやりたくなったその時、職員室で電話が鳴った。

近くに居た教諭が電話を取って対応した。

二言三言、相手と言葉を交わした後、保留ボタンを押した。

「岸本先生、保留一番に鏑木歩さんのお母様から電話です」

「!」

「?はい」

岸本が訝しげに電話に出た。

「ホラ、2人とも、とりあえず教室に行け、話は放課後、改めて聞かせてもらうから」

素直に教室に移動する悠太を見送りながら、少しでも歩に関する情報が欲しくて真希は聞き耳を立てた。

「お電話代わりました、岸本ですが・・・・・・はい?入院って、どういう事ですか?」

聞こえてきた「入院」というキーワードに真希は歩が一命を取り留めた事に安堵した。

もっと情報を得たかったが、再度、退場を促され、一旦諦めて真希は職員室を出た。

そんな騒ぎから少しして、好美も登校してきた。

泣きすぎて腫れぼったい目元が気になったが登校して、席に着いた。

「おはよう為末さん、今日遅かったね」

「おはよう・・・・・ちょっと寝坊しちゃって」

「そうなんだ、ところでさ、もう知ってる?鏑木さんの事」

「え?」

思わず動悸が強くなった。

「私さっき日誌取りに行った時に聞いちゃったんだよね、鏑木さんの家族から欠席の連絡があったみたいで、詳しく知らないけど入院って聞こえてきて」

「入院って言ってたの?!」

好美も、一命を取り留めたという情報を得られて思わずホッとした。

「うん、職員室でも結構ザワついてた」

直後に校舎内に響き渡ったホームルーム開始のチャイム。

直ぐに岸本が入ってくると思いきや、5分経っても10分経っても教室に姿を現さなかった。

「あれ?今日って自習?今日の日直、何か聞いてる?」

甲本が日直の生徒に確認した。

「私は別に何も聞かされてないけど・・・・・・・・」

そんな話をしていると岸本が教室に入ってきた。

「遅くなって悪かったわね、今日は急なんだけど皆に協力して欲しい事が出来たの」

言いながら用紙を配りだした。

岸本が切り出そうとしている事を予測できた生徒達が顔を見合わせヒソヒソと言葉を交わした。

「その様子だと知ってる人も居るみたいね」

全員に用紙が渡ったのを確認して岸本が直球で話し始めた。

「教えて欲しいのは鏑木さんについてよ、あの子、昨日馬鹿な事したみたいで」

「馬鹿な事って何したんですか?自棄になって万引きとかですか?」

一切把握してない武川が、一応立ち上がってから発言した。

「そういう馬鹿なことじゃなくて、首を切って入院したって」

刹那悠太の顔が強張った。

大半の生徒が動揺を滲ませる中、どうでも良さそうに乾が立ち上がり発言した。

「俺達、鏑木と話した事ないから何も知らないです」

「あの子、ガード堅くて協調性に欠けてるから皆が、あの子の悩みなんて判らないのも無理ないわね、悪いんだけど、本当に判る範囲で良いか今日の放課後までに出してほしいの」

提出期限を伝えながら返却するテストの準備を整えた。

「とりあえず時間が押しているので授業を始めます、今日は、この間の試験を返します、満点は3人、今回も甲本君、武川君、乾君、凄いわね、ちょっと意地悪で画数の多い漢字とか読み間違え易い漢字を出題してみたけど」

3人を高く評価した後、テストを返却して答え合わせをしていった。

好美たちは正しい答えを脇の余白に書き込みながらも、まるで、答え合わせに集中出来なかった。

歩の自傷行為の原因は間違いなく自分達にあると確信していた。

けれど、そんなことは簡単にはアンケートには書けない。

程なく一時限目が終って迎えた短い休み時間。

教室に幾つものグループが出来た。

「為末さん、アンケートどう書く?」

同じ班の女子に確認され思わず悩んで見せた。

「どう書くべきなのかな」

チラチラ皆で悠太の顔色を窺い当たり障りの無い回答を口にしていた。

「乾も言ったように殆ど話さないから判りませんとしか書けないよね」

そして気が重くなる事を早く終わらせたくて、そのままアンケート用紙に判らない旨を書き込んだ。

「やっぱ、そうだよね、うん!私達も書いちゃおう」


そうして、帰りのホームルームに無意味に思えるアンケート用紙は回収された。

教卓の上で判で押したように心当たりがないという回答をパラパラ確認して用紙の束を整えて事務的にアンケート協力に礼を述べ解散を指示して教室を出て行った。

好美が盛大に溜息をつきながら教室を出ると、丁度、真希のクラスからも続々と生徒が出て来た。

「あ、真希ちゃん、帰ろう」

「ごめん、ヨッシー、私、職員室に呼ばれてて」

「そうなの?」

「うん、甲本と派手に大ゲンカしちゃったから、盛大にお叱りを受けそうだよ、どれぐらい掛かるか判らないから、先に帰ってて?」

「判った」

「ゴメンね、帰ったらライン電話するね」

「うん」


 帰宅後、とりあえず着替えて、まだ空腹を感じれる精神状態では無い中、それでも耀子が作っておいたお昼ご飯を食べた。

風邪を引いた訳でもないのに全く味を感じる事が出来なかった。

事務的に完食を果たした頃、真希からライン電話が掛かってきた。

『ヨッシーお待たせ、お小言と反省文用の原稿用紙を貰って帰ってきたよ』

言いながら白紙の原稿用紙を見せてきた。

「そういえば何で甲本と大ゲンカになったの?」

『ランキング表を見上げてガッツポーズしてて、別にガッツポーズでもピースでも好きにさせれば良いだけなんだろうけど、どうしても赦せなくて、気付いたら掴みかかってた』

「そんなの見たら私も勘弁できないかも!!」

『でしょう!なのに無理矢理、先生達に仲直りさせられた、でもさ、甲本の事も心底赦せないけど、自分の事も同じぐらい赦せないんだよね』

ライン電話の向こう側でまなじりに滲んだ涙を乱暴に拭う真希を見て、好美もたまらず胸の内を吐露していた。

「私もだよ、甲本は本当に最低だけど自分も同じぐらい最低だって、そんな最低な事をしておきながら、昨日、涙が止められなくなった自分が最低すぎて赦せない」

2人で一頻り泣いた後、無意味なアンケートの感想へと話は変っていった。

『あの無意味なアンケート、岸本が作ったのかなって思いながら書いたけど、無意味って言うか悪意さえ感じるレベルだったよね、ひたすら歩の欠点を探してるような感じだったよね、私なんて腹が立ちすぎて書きながらシャーペンの芯折っちゃったし』

「私も折りそうになった、怒りの余り」

失笑し合った後、真希がポツリと漏らした。

『・・・・・でも、歩が一命を取り留めてくれて本当に良かった、詳しい状況は判らないけど、落ち着いたら面会に行きたい、そして謝りたい』

「私も、とにかく謝りたい」

『それにしても三者懇談の前に、やらかしちゃったなぁ・・・・・・・・・・』

「お互いに気が重いね」


 気が重いまま迎えた三者懇談の日。

「好美さんは至って普通の生徒さんですね、成績も中の中といった感じで可も無く不可も無く、友人関係も特に心配な要素も有りませんし」

岸本は淡々と当たり障りの無い言葉で、流れ作業のように好美を評価した。

クラス内で起きた事件には一切言及せず一学期の反省と二学期の目標を聞かれ好美は適当に答えた。

「私の方からは以上です、お母様の方から何か有れば、仰ってください」

「いえ、大丈夫です」

実りが無いと感じる時間を、これ以上長引かせたくなくて頭を下げながら席を立った。

「では失礼いたします」


「あの先生、クラスで起きた、あんたの友達の事件に全く触れなかったわね」

帰宅後、耀子が夕飯の支度をしながら、ようやく口を開いた。

あの涙の告白以降、2人の間に殆ど会話が無かったので、耀子から切り出された事で好美は酷くホッとした。

好美は耀子の隣に立って何となく一緒に夕飯を作った。

手際良く「冷しゃぶ」の準備を進めながら耀子は胸の内を明かした。

「お願い・・・・・・・約束して、二度と友達を裏切らないって、もしもまた、教室で同じような事が起きても絶対に!でも、もしもイジメに遭ってる子を庇ったりした所為で、あんたが、またイジメに遭うような事が有ったら、ちゃんと話して?お母さん、そんな中で、あんたを一人で戦わせようなんて思ってない、安心して戦う為の逃げ道を、ちゃんと考えておく・・・・・・・大人の責任として」

好美は涙ながらに、二度と同じ後悔を繰り返さない事を誓った。

「さ、食べよう」

2人で食卓に着いて箸を手にした。

「頂きます」

覚悟も決まって、改めて味方が居る事を実感出来た好美は数日ぶりに食事の味をしっかり感じた。

いつも以上に噛みしめる好美を訝しげに見て確認した。

「・・・・・どうかした?」

「どうもしない、美味しいって思っただけ」

「そう?」

「うん」

「食べたら、ちょっと買い物に行くけど、あんた、どうする?」

「行く」


 組んでいた予算より安く済んで大満足で会計済みの商品をエコバックに詰め込む耀子の横で、好美は一本だけ野菜ジュースを買って店を出て行く悠太を目撃していた。

先頭に立って歩を排除しようとしている時とは打って変わっていた。

肩を落とし覇気をまるで感じられなかった。

好美達が店を出ると、既に悠太の姿は無かった。

何故だか漠然とした心配に駆られ歩調を遅くしていると耀子が振り返った。

「どうしたの?冷凍食品解けちゃうから早く乗って」

「うん」

足早に耀子を追いかけ車に乗った。

しっかりシートベルトを締めた所で真希からラインが入った。

『三者懇談お疲れ、甲本と大喧嘩した事は先生、敢えて触れずにいてくれたので可もなく不可も無くの三者懇談は終わったよ』

『私も何とか無事に三者懇談を終えたよ』

『一つ報告が有るんだけど、歩の入院してる病院が判ったよ』

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