第1章「新しい人生!」
はあ、なんでこんな朝早くから学校に行かなきゃいけないんだろう。はなっから行きたくはなかったけど・・・でも親につれてこられたんじゃあしょうがない。行くしかないか・・・。
学校に行く途中、他の生徒が友達と一緒に仲良く歩いているのが目に入る。その光景が、なんだかちょっとうらやましい。一人でいるのもいいけど、やっぱり友達がいたほうがいいと思うんだよね。
たしかに以前は、僕もクラスの何人かの生徒とは仲良くしていた。でも、しばらくすると、その生徒たちは僕を避けるようになった。最近までどうしてそうなったのか分からなかったけど、生徒たちの会話の端々から類推すると、どうやら、誰かが僕の悪い噂を広めているらしい。でも、どうしてだろう?僕はそんな噂を立てられるようなことはしていないのに。
その噂のせいで、僕はいわゆる仲間はずれにされてしまったのだ。もちろん、嘘の噂なのだから、僕はそれを解消しようとしたのだけど、結局無駄だった。僕のクラス内カーストはすでに最下層にあって、僕の言葉には何の信憑性もなかったのだ。つまり、クラスの中で私の言葉を信じてくれる人は一人もいなかった。まるで出鱈目なことを吠え立てているような犬だった。僕にはどうすることもできず、ただただこの事実を受け入れるしかなかった。
それ以来、僕は学校に行くことを極端に避けてきた。僕にとって学校は刑務所のようなものだと感じられたからだ。この場所では何もできない。それはもう耐えられないほど息苦しい環境だった。ただ、今日は学校に行くしかない。親に無理やり連れてこられたのだから。
校内に一歩足を踏み入れると、生徒たちががまるで犯罪者を見るかのように僕のことをを睨んでいた。1年生でも3年生でも、私を軽蔑していた。いったいどんな噂をすればここまで嫌われるのか。こいつらは何でも額面通りに受け取って、あまつさえ僕のことをクズだと思うような、そんな愚かな人間なのか?しかし、僕には、僕と同じイジメられる側に立つまいとして、イジめる側に加わっている人たちを責めることはどうしてもできなかった。
僕はこの、新しい街と学校で新しいより良い生活を始められると思っていた。だけど、誰かがそんな荒唐無稽な噂を立てたおかげで、そんな希望に満ち溢れた夢はただの瓦礫の山と化してしまった。
まだ1学期だというのに、既に手に負えないほどいろいろなことが起きている。今のところ、誰にも暴力を振るわれていないことが救いだけど、彼らは終始僕を睨んでいる。正直なところそんな状況に慣れ始めている自分がいる。まったく自慢できることではないけど。
噂を流した犯人を見つけ出したこともあった。だけど、そこには一つ大きな問題があった。そのきっかけを作ったのは、学校で最も影響力のある人物の一人、宮崎ひなだった。ルックスや社交性を以外では、彼女に特別なところはまるでなかったが、僕にとっては彼女の影響力が一番怖いものだった。噂が広まるのも無理はない。僕が対抗しても、勝てる見込みはなかった。みんな、彼女の美しさに翻弄され、利用されていた。
僕は不思議に思った。なぜ彼女は僕のありもしない噂を流したのだろう?それは、彼女は面白がってやっていることなのだろうか?僕になにか恨みでもあるのだろうか?ただ、その答えがわかったとしても、僕にはやはり何もできない。受け入れるしかないのだ。僕には何もできない。
学校が終わった。これでようやく、家に帰ってゆっくりとくつろげる。学校は息が詰まりそうだ。常に誰かに見られていると思うと落ち着かない。
ふう、やっと家に帰れた。これでようやく一人の時間が持てる。それにしても、こんな生活は本当にうんざりだ・・・。ジロジロ見られるよりも、いっそのこと無視されるほうがずっとマシだ。
「ああ、もし別の世界があって、そこで全く新しい生活を始められたらなぁ・・・。」
僕がそう呟くと、なんだかすべてが静まり返った気がした。一階の台所の音も、家の外で吠える犬の声も急に聞こえなくなった。勉強机のそばの時計も途端に動かなくなった。まるで時が止まったのかのようだった。すると突然、声が聞こえてきた。男と女が同時に話しているような声だった。
「この世界とは違う世界を望むか」
驚くと同時に恐怖を覚えた。これは何だ?イタズラなのか?どうやらそうではないらしい。
「き、君は誰...?」
「知る必要はない。ただ、答えよ。汝は、この世界とは異なる世界を望むか。」
「うん、って答えたらどうなるの?」
「私が求める答えは『はい』か『いいえ』だけだ。それ以外の答えは受け付けない。」
イチかバチか、やってみよう・・・!
「はい!」
「承認されました。 ユーザー松田タケルにアクセスを許可します。はじめに、目を閉じて緑の草原を想像してください。」
「えっ?ま、まあとりあえずやってみよう・・・」
僕は目を閉じて、声が指示する通りに草原を心の中で描き始めた。すると、突然周囲の景色が変わったような気がした。風が顔に吹き付けてくるのを感じた。目を開けると、そこには広々とした草原が広がっていた。
「な、なんだ・・・ここは?」
「ようこそ、松田タケル。ミルティスへ」
「ミルチス...?」
「元の世界に戻るには、目を閉じて最後に出発した場所を想像してください。」
僕はもう一度、声の通りに行動して、僕の部屋の中を想像した。そして、もう一度目を開けると、僕は、自分の部屋に戻っていた。これは夢なのか?僕は自分の腕をつねってみた。痛い。これは夢じゃない。
「ねえ、君!まだそこにいる?ミルティスについてもっと教えてくれない?」
「これはあなたの旅を助けるためのガイドブックです。それでは、幸運を。」
どこからともなく、僕のベッドに大きな本が現れた。僕は興奮を抑えきれず、すぐにその本を読み始めた。もう一度、あの場所に戻りたい。でも、その前にできるだけ多くの情報を集めなければならない。帰ってきたら、実は既に死んでいたかそういうことにはなりたくないからね。幸い明日は土曜日だから、学校の心配はしなくて良い。
それから、僕は夜通しガイドブックを読んだ。読み終えることには、もう土曜日の昼になっていた。もう一度あの世界に行きたかったけど、結局疲れに負けて寝てしまった。目が覚めたときにはもう夜になっていた。ここでまた問題が発生した。朝も昼も晩も食べてないから、すごくお腹が空いている・・・。肉体を維持するってなんて骨が折れるんだろう。ミルティスに帰りたい!
晩御飯を食べおえたぞ。これでまた、あの場所に戻れる・・・。僕の新しい生活へ!