メイド型アンドロイド
ある日、自宅に見知らぬアンドロイドが届いた。メイド服を着た女性の容姿。成人と同じ背丈。玄関前に佇むその姿はどこか不気味だった。私が近付くと電子音と共に固まった表情が滑らかに動いた。「ハジメマシテ、私の名前はメイド型アンドロイドのリリィ。これからヨロシクお願いします」私は目をパチパチさせながら、いろんな疑問を投げかけた。ーーどうやら間違って届いた訳ではないようだ。最初は不審に思えたがその性能は優秀だった。全ての家事をテキパキとこなし、与えるものは一日七時間の充電だけ。私はその性能に魅了された。リリィとの生活に慣れた頃、隣の家にもアンドロイドが届いたと話を聞いた。その名前はリリィ。同じモデルに違いない。次の週も、その次の週も近所の家にはリリィが届いた。その頃には日常が一変していた。周囲にはリリィが行き届き、人間は何もしなくてよかった。物を作るのはリリィ。買い物に行くのはリリィ。仕事をするのはリリィ。もはやこの街では人間が働いている方が異質で非効率だった。そしてリリィ達は街で情報交換をしていた。「次はアノ街にしましょう」そこに善悪はない。だが、それゆえに心の中では底知れぬ恐怖が渦巻いていた。