僕は主人公
“駄作”と呼ばれた物語の主人公のお話。
ぼくはしゅじんこう。
“ださく”のしゅじんこう。
つまらないんだって。
なんかいもいわれた。
なんにんにもいわれた。
ずっといわれた。
ハラハラしないアクション。ワクワクしないぼうけん。ドキドキしないなぞ。
ちっともおもしろくないものがたり。
みりょくのないしゅじんこう。めだたないわきやく。てきとうなあくやく。
ちっっともおもしろくないものがたり。
ざつなせかいかん。つごうのいいてんかい。もとめられないハッピーエンド。
ちっっっっっっっともおもしろくないものがたり。
ごめんね。
ぼくのことがきらいって、だれかがいってた。
ただただめぐまれただけの、ぼんじん。
とりあえずのいけめん。とりあえずのつよさ。とりあえずのかしこさ。
まわりにもちあげられただけ。
ぼくもはじめはこうじゃなかった。
かおもそんなによくなかった。つよくないし、かしこくない。
いつからかえられたんだっけ。
わすれたなあ。
そのほうが、みんなにすかれるとおもったのに。
かっこいいじぶんになれるとおもったのに。
しゅじんこうであれるとおもったのに。
まわりのやつがきらいって、だれかがいってた。
しゅじんこうをもちあげるだけの、ギミック。
ありがちなあいぼう。ありがちなヒロイン。ありがちなライバル。
はなしをまわすだけのピエロがいっぱい。
そんなつもりじゃないんだよ。
みんなひっしにいきていた。ギミックじゃないし、ピエロじゃない。
がんばってたんだよ。
そうはみえないんだろうけど。
みんないいひとたちだったのに。
たいせつなひとたちだったのに。
なかまだったのに。
あくやくがきらいって、だれかがいってた。
しゅじんこうにひとつもかてない、けっかんせいひん。
しんねんのないあく。つらぬきとおさないあく。かっこよさのないあく。
わるぶってるだけのこどもみたい。
かれもいろいろかんがえてたんだよ。
つらいかこがあった。ゆるせないもの、こわしたいせかい。
かれはとってもがんばってた。
ただまけるためのひとじゃなかった。
つよかったよ。かっこよかったよ。
がんばってたよ。ただしかったんだよ。
だいきらいでだいすきなぼくのてき。
こんなせかいでも、ぼくらのせかいだ。
こんなてんかいでも、ぼくらのはなしだ。
こんなおわりでも、ぼくらがつかんだ、ぼくらのみらいだ。
ゆるしてよ。たのしんでよ。
こうするしかなかったのさ。
こうじゃないといけなかったのさ。
これがぼくらのものがたりさ。
“ださく”だとしても。
なんどよまれても、たいくつ。
なんどみられても、つまらない。
なんどきかれても、おもしろくない。
ああ、ひょうしがめくられるおとがする。
ごめんね、ごめんね、ゆるしてね。
ハラハラしないアクションと、ワクワクしないぼうけんと、ドキドキしないなぞしかないんだ。
がっかりするかもしれない。でも、ぼくたちだってがんばったんだよ。
がんばって、たのしんでね。がんばってね。
アーァ。
なんていわれるかな。
「おもしろい」
え?
ホントに?
ぼくは“ださく”のしゅじんこう。
ハラハラしないアクション。ワクワクしないぼうけん。ドキドキしないなぞ。
みりょくのないしゅじんこう。めだたないわきやく。てきとうなあくやく。
ざつなせかいかん。つごうのいいてんかい。もとめられないハッピーエンド。
つまらないってみんながいうよ。
おもしろくないって、なんどもいわれた。
でもね。
みんなって、“ぜんいん”じゃない。
なんどもいわれても、それだけじゃない。
きっとだれかはたのしんでくれる。
きっといつかはみてくれる。
きみとあうのをたのしみにしてるよ。
ああ、はやくひょうしをめくっておくれ。
僕は“君”のための主人公。