第二話 プライドの危機
慌てた癒者から治癒の魔法をかけてもらう。
こんなはずではない。
マクスヴェル家に継がれる血と才能は確かなものであると証明されるはずだった。
視力が回復してくると、俺は周りの大人たちの顔色をうかがった。
今日を祝福するために集まった魔法使いたちは、哀れむ表情を俺に向けていた。
父の表情はもっと大きな変化を遂げている。
普段は余裕を持った顔色を崩さない父。そんな人が両眼を抑えながら、顔色を怒りと失望とで赤や青に変えていた。
俺は初めて見る父の異変に恐怖していた。
このあと開かれる予定のパーティーを中止にする。
そう父が家令に告げると、俺を一度も見ることなく立ち去った。
指示を受けた家の使用人たちが来客の帰りを案内している。
俺は誰とも目を合わせたくなかった。
どの目も俺がこれまでに向けられることがなかった感情がこもっている。それを見てしまえば、自分の中の自尊心やプライドと呼ばれるものが壊れていくように感じた。
視線をさまよわせていると、自然と部屋の中央に鎮座する星球儀へと吸い寄せられた。
この魔道具は触れた者の魔法使いとしての才能を調べる。そう父が言っていた。
魔法使いなら生まれながら持つ魔法を、強度については中央の水晶が光の強さで表す。そして範囲、敏捷性、持続性、耐久性、可変性、応用性、特殊性の七つを、星球儀の円環に配置された対応する星々が輝きジャッジするのだ。
俺の二人の兄は直視した人間が気絶するレベルで水晶を光らせ、さらに七つの項目全てに秀でた魔法使いだけが起こす、虹色の輝きを放ったと聞いている。
なら俺はなんだ?
まったく光らせることができなかった俺の魔法はどれだけ平凡で、魔法使いの才能はどれだけ惨めなのか。
翌日。
俺は父の部屋に呼びつけられた。