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気になるあの子は勘が良い/おせっかいなのは分かるけど……

「はあっ……」


 週が明け月曜日。放課後に皆が準備しているのを眺めながら、ついため息が出る。


 土曜日、もうちょっと何か出来たんじゃないかな……


 せっかく二人きりで買い物に行くというまたとないかもしれない機会だったのに、特にこれといった進展をすることができなかった。このままじゃ恋人はおろか告白すら夢のまた夢だ。


「ドキドキ、ねえ……」


 先週東雲さんに言われたアドバイス。なんとなく考えてみるけれど、やっぱりどうすれば立花さんにドキドキしてもらえるか、なんてこれっぽっちも思いつかない。むしろこっちがドキドキしっぱなしだよ。


「なにがドキドキ、なの?」

「うわあっ! ……た、立花さん――?」


 顔を上げると立花さんが悪戯っぽい笑顔を浮かべながら俺の顔を覗き込んでいた。しかもばっちり聞かれてしまった。これは、マズいのでは……?


「なんか元気なさそうだから様子見に来たんだけど……どうしたの? なにか悩み事?」

「え、えっと……」


 悩んでるのはあなたの事です、とは言えず思わず口ごもる。


「さっきのつぶやきから察するに……ズバリ、恋かな? なになに、誰が好きなの?」


 なんでそう的確にこっちの急所えぐってくるかなぁ……


 *


「まあ。それでこちらに逃げてきたのですね?」

「そういうこと、です」


 結局あの立花さんの質問には答えられず、「ちょっと用事あるから出てくる」と言い残し文芸部の部室に逃げてきてしまった。


「ふふっ、立花様もなかなか鋭いですねぇ。しかし、どうされるんですか? まさか戻らない訳にもいかないでしょう?」

「そうなんですよね……」


 ただかといって今すぐ戻ったら何言われるか分かんなさすぎて怖い。すこしほとぼりを冷ました方がいいだろう。


「まあ、少しここにいさせてください。ちょっとしたら戻りますから」

「私に断りを入れなくてもここは藤川様の部室でもあるのですから、いくらでもいて大丈夫ですよ。まあ、早めに戻って立花様とお話しされた方がいいとは、思いますけどね」

「ですよね……はぁ」


 立花さんから見れば、落ち込んでいた俺に話しかけたらいきなり変な言い訳をしていなくなったのだ。不審に思われていてもおかしくない。


「私からの意見ですけど、よろしいでしょうか?」

「えっと、聞いていい、ですか?」


 正直どう話しかければいいか分からなくなっているので、この状況でのアドバイスはかなりありがたい。


「まあ、といっても普通に謝ればいいだけですけどね。立花様は察しの良い方だと思いますので、分かってくださると思いますよ」

「……それでいいのかな」

「ええ。まさかこのタイミングで告白する、という訳にもいかないでしょう? それができるのならそれがいいと思いますけど……」

「それは、ちょっと……キツイなぁ……」

「でしょう? でしたら、素直に先程の行いを謝るというのが一番よろしいかと」

「……なるほど。そうしてみます」


 せっかくの立花さんの厚意を無駄にしてしまったのだ。ちゃんと謝ろう。


 *


「えっと、さっきはごめん。いきなりどっか行っちゃって」

「……ああっ、別に気にしてないよっ、大丈夫大丈夫! こっちもごめんね、変な事きいちゃって」


 ちょっと間が空いた気がするけど、許してもらったのだし気にしないでおこう。


「まあ藤川くんにも色々あるだろうし、今は、まだ聞かないでおこうかな。……そのうちもっと仲良くなったら聞かせてね? 相談にも乗るからさっ!」

「うん。ありがとう」


 いつも通りの女神のような笑顔で笑いかけてくれる。その笑顔を見て確信する。やっぱり、俺は立花さんの事が好きだ。


 ――うん、いつか、もっと仲良くなれた時には、ちゃんと告白しよう。いつになるかは分からないけど、なるべく近いうちに。


 *


「ふうっ、今日も終わった終わったー! 帰ろっ、藤川くん」

「うん。ちょっと待って、今準備するから」


 二人で残って作業やまとめをすることも増えて、最近はこうして立花さんと二人で帰るのも当たり前になってきた。冷静に考えて、これって相当な役得だよな……


「ねね、藤川くん。……ちょっと聞いてみたいことがあるんだけど、いいかな?」

「もちろん良いよ。答えられることなら、だけど」

「えっとね、恋ケ丘さんの事なんだけど」

「紫蘭の?」


 紫蘭の本性はこの前の騒動の時に話したけれど、何か気になることがあるんだろうか。


「恋ケ丘さん、藤川くんと知り合ったころは普通の女の子だったんだよね?」

「まあ、そう……だったと思う。あんまり覚えてないけど」

「それなのに突然ひどい事言うようになっちゃったって、何かきっかけとかあったんじゃないかなー、って思ってさ。まあ、余計なお世話なのは分かってるんだけどね」


 そう言いながら、あははと笑う立花さん。純粋に俺と紫蘭の仲を心配してくれている、のだろう。


「きっかけ、かー。全然覚えてないんだよね。なんか、喧嘩したような気がしないでもないけど……だからって今の今まで引きずられても、ねぇ……」

「まあ、それはそうだね。でも、そっか、喧嘩か……」

「ん……?」


 顎に手を当てて何やら考えている様子の立花さん。一体なにを考えているんだろう……


「ま、いっか。とりあえずは」

「えっと、何がいいの?」

「んー、こっちの話。気にしないでっ!」


 ……そう言われると気になるけど、気にしないようにしとこう。


 *


 電車に揺られながら考える。


 ――どうやったらあの二人の関係を修復できるんだろう、と


「おせっかいなのは分かってるけど……」


 でも、何もしないなんてアタシらしくないもんね。


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