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文学少女によるパーフェクト(?)恋愛相談室

「こんにちは、東雲さん。良かった、やっぱり部室にいた」

「あら、藤川様。文化祭の準備はよろしいのですか?」

「ああ、それは大丈夫。今日は皆買い出しに行ってるんだ。で、俺は留守番。やることないから昨日のお礼でも、と思って来てみた」


 昨日せっかく気合を入れたにも関わらず、今言ったようにさっそく暇を持て余してしまった俺は、買い出し班が帰ってくるまでの暇つぶしと昨日のお礼を兼ねて文芸部の部室に足を運んでいた。


「昨日は助かったよ。あの後大変じゃなかった?」

「いえ、大した事はありませんでしたよ。そこまで大勢いらしたわけではありませんし」


 いや、それなりの人数はいたと思うけどな……


 しかし実際、今日の学校の様子を見てもいつもと変わった様子はないので東雲さんが綺麗に収めてくれたのは間違いないんだろう。まあこれも東雲さんの人徳のなせる業、といった所だろうか。


「それなら良かったよ。あと、一応聞いとくけど……紫蘭は、今日どうだった?」

「あら、ふふっ。なんだかんだと仰っていても気にはなるのですね、恋ケ丘様の事は」

「まあ、あの騒ぎで一番怪我したのは間違いなく紫蘭だし。場合によってはこっちにとばっちりが飛んでくるかもしれないから把握しときたいんだよ」


 そう、それだけ。別にそれ以上の意味はない。


「ふふ、そういう事にしておきましょうか。……少なくとも、私が見た限りではいつもと変わりないように見えましたよ。まあ、心なしか口数が少ないような気も、しないではありませんが……もとより普段はあまりお話をされる方ではありませんし、大した違いではないでしょう」

「まあ、なら大丈夫……か」


 目に見えてやさぐれてたりしないかと危惧したが杞憂のようだ。まあ紫蘭も自分のイメージを崩したくはないだろうから取り繕っているんだろう。いつまでそれが保つかは分からないけど。


「そ、れ、よ、り、も、ですね? 私、藤川様にぜひとも聞きたい事がございまして!」

「え、えっと……なに、かな?」


 話がひと段落着いたと思った途端、東雲さんが急にグイッと迫ってきて、好奇心丸出しの笑顔でそんな問いかけをされた。


「あら、分かっていらっしゃるでしょう? 立花様の事ですよ。昨日は一緒に実行委員をしている、と仰っていましたけれど……、実際のところ、どうなんです?」

「どう、って……その通りだけど」

「あら。では、質問を変えてみますね。立花様の事を、どう思っていらっしゃいますか?」

「ああ、そういうこと……」

「ええ!藤川様が自分からクラスの実行委員になるなんて、よほど何か理由があるのだと思いまして。そうなると、やはり立花様についてなんだろう、と思ったのです」


 いやぁ、性格読まれまくってるなぁ……


「まあ、思ってる通りだと思うよ、多分」

「つまり、そういうことなんですね!?」

「まあ、うん。……テンション高いね?」


 俺の知る限りこんなにハイテンションな東雲さんは見たことない。色恋沙汰、好きなのかな……?


「それはもう。友人の恋愛事なんて面白……失礼、素晴らしい出来事、応援しない訳にはいきませんから。どうなんです?ひょっとして、もうお付き合いなされてるんですか?」


 なんか聞き捨てならない単語を口走りかけていたような……。聞かなかった事にしておこう。


「いや、まだ全然。やっと普通に話せるようになったかな、ってくらい」

「あらあら。それはよくありませんね。ちゃんとアタックしておりますか?」

「いや、まずは仲良くならないと」


 友人でもなんでもないのにアタック仕掛けても俺には成功するビジョンが見えない。もちろんそれで成功することもあるんだろうけど。


「まあ、それも一理ありますけどね。しかし、まったく気持ちに気づかれないままで高校生活が終わってしまう、という事にはならないように気を付けてくださいね。それは必ず後悔いたしますよ?」

「それは確かにそうだね…… ただ、実際アタックするって言っても、どうすればいいのやら」


 悲しいかな告白どころかアタックを仕掛けた事も仕掛けられた事もないので、まったくその辺の駆け引きとやらが分からない。


「そうですね……やはりここは、正面から立花様の事を褒めてみるのはいかがでしょうか。やはりどんな方も褒められれば嬉しいものですし、それを殿方にされた、となれば気になってしまってもおかしくないかと」

「な、なるほど……」


 いつの間にか東雲さんのペースに乗せられる形で、恋愛相談室が始まってしまった。ただたしかに困っていたのは事実なので、ここはありがたくご教授されておこう。


「ただ、立花さんって友達多いし、普通に文武両道で成績優秀だし、褒められ慣れてそうだけどなぁ……」

「なら、あまり褒められてなさそうな所を探してみるのはどうでしょう。そうすれば藤川様としても、立花様の今まで知らなかった一面も知ることができて、より好きになってしまうかもしれませんよ?一石二鳥ではないですか」

「まあ、確かにね。……それはありかもしれない」


 気づかれるのが怖いけど、少し立花さんの事を観察してみようか……やりすぎたらストーカーだけど。


「後は過程を飛ばして、吊り橋効果を狙ってみるのなんてどうでしょう? 成功すればきっとイチコロだと思いますよ?」

「いや、それはちょっとどうなの、かな……」


 だいたい吊り橋効果って狙うものじゃないと思う。というか狙ったら人としてよろしくない。


「まあ、吊り橋効果は確かに言い過ぎかもしれませんが。ただ、一緒にいてドキドキする、というのは恋愛としては大事な事だとは思いますよ?」

「それは、分かる気がする。……少し考えてみようかな」


 やっぱりせっかくお近づきになれたのだ。このままで終わり、というのはちょっともったいない。


「ええ、それがよろしいかと。……どうか悔いのないように頑張ってくださいね。困り事があれば、いつでも相談には乗りますから」

「うん。ありがとう。……やば、そろそろ皆帰ってくる時間だ。じゃあそろそろ戻るよ。またね、東雲さん」

「ええ、また」


 笑顔の東雲さんに見送られて、俺は部室を後にした。


「――ドキドキ、ねぇ……」


 果たして、どういう状況でなら俺にそんな感情を抱いてくれるんだろう?


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