メリー・クリスマス! ②
時間は午後二時を回った頃、場所は移り紫蘭の部屋にて――
「それじゃ、かんぱーいっ!」
そんなハイテンションなあやめの掛け声をきっかけに、クリスマスパーティーの幕が上がった。ちなみに、今の音頭がなぜ家主であり主催者(名目上)である紫蘭ではないかというと、『乾杯の音頭なんて私のキャラじゃないから』らしい。俺から言わせれば友達を家に呼んでクリスマスパーティーをするという行為自体が既に十分キャラじゃない気もするけれど……、そこはまあ、色々成長したということなのだろう、多分。
「そこ、なにか変なこと考えてないかしら?」
「……いやいや、まさか」
とかなんとか考えてたらどうやら顔に出てしまっていたらしく、目ざとく紫蘭に見つかってしまった。ちなみに他の参加者であるあやめと東雲さんはというと、俺と紫蘭のやり取りはいつものこととしてまったく気にも留めず、目の前のケーキを女の子らしい幸せそうな笑顔で頬張っていた。
「それにしてもこのケーキ、美味しいですね。どちらで買われたのですか、紫蘭様?」
「……別に、どこだっていいでしょ。ていうか、私が作ったんだけど、これ」
「なんと、自作ですか。……あの、将来パティシエにでもなるつもりなんですか?」
「んなわけないでしょ、ただの趣味よ」
東雲さんは前に比べるとかなり明るくなった。特に紫蘭とかなり仲良くなっていて、今みたいなやり取りもよくしてるし、休日にはしょっちゅう二人で買いものに行ったりしてるんだとか。この二人、昔はそこまでじゃなかったはずなのに、いつの間にここまで仲良くなったんだろう……。ちょっと気になる。
「えーっ、趣味でこれって相当凄いって。ねえねえ、今度作り方教えてよ」
「別にいいわよ。なに、竣介にでも作ってあげるつもり?」
「えっと……、うん」
「……相変わらずラブラブねぇ。ま、こんど暇なときにでも教えてあげるわ」
「やった! ありがとね、紫蘭」
「では、その時は私にもお願いしますね、紫蘭様。いいですよね、あやめ様?」
「もちろん! こういうのはみんなでやった方が楽しいしね」
「相変わらずちゃっかりしてるというかなんというか……。ま、いいけど」
……話に割り込む隙がなかった。いつの間になのかはよく分からないけど、本当にこの三人は仲良くなった。まあ紫蘭とあやめは割と最初から仲良かった気もするけれど、今では自他ともに親友と認めるレベルで仲がいい(紫蘭は照れ隠しで否定するだろうけど)。東雲さんもいつの間にか自然に紫蘭とあやめの仲に溶け込んでるし、もうずっと昔からの仲良しグループですと言っても違和感ないくらいだ。実際、このパーティーの解散後にはこのまま女子三人でお泊り会をするらしいし、仲良しグループなのは間違いないだろう。
「って、なにぼーっとしてるのよ、竣介」
「いや、その……仲良いなって思って」
「まあ、否定はしないけど。ていうか、あんたも会話に入りなさいよ」
いや、女子三人の会話に割り込めってそれはちょっと無理というか……。たださえ男は俺だけで若干アウェー感あるというのに。
「まあ、女子ばかりの会話に混ざるのは少々ハードルが高いですよね、藤川様」
「そうそう。皆仲良さそうに話してたし」
「よく言うわよ。いっつも女子と一緒にいるくせに、まだ初心を気取ってんの?」
「いや、そこまでいつもって言うほどじゃ……」
紫蘭に言われてちょっと考えてみる。朝は紫蘭と一緒に登校、あやめの電車のタイミングが合えば三人になることもしばしば。教室では授業中はともかく、休み時間は大体あやめと会話してるし昼休みは屋上や中庭に移動してあやめと二人で昼食をとってる。そして帰宅するときもほぼほぼあやめと一緒、部活がある場合は部室で東雲さんと二人きりでそのまま一緒に帰宅。……あれ、もしかして俺、言い訳できないくらいに女子とばっかり一緒にいる、のか?
「ひょっとして、いままで自分の置かれてる状況に気付いてなかったの? ……呆れた。あんた、新学期はもうちょっと気を付けた方がいいわよ。変なことしたら学校中の男子に敵意向けられる羽目になるんだから」
「……うん、気を付けるよ。あと、もうちょっと男子とも会話するようにする」
「そうしときなさい。私だってあんたの撲殺死体なんて見たくないもの」
――いやー、撲殺で済めばいいですね。
とかいう笑えないジョークがうっかり口から出そうになるくらいには、俺の今置かれている状況はヤバいと気づいてしまった。なにせ学年の美少女ランキングトップ3と名高いあやめ、紫蘭、東雲さんの全員と仲が良い上に、その内の一人は彼女だって言うのだから。学年、いや学校中の男子からいつ嫉妬の対象にされてもおかしくない。つい3か月前までは女子はむしろ苦手なくらいだったのに。まったくもって凄い変わりようだ。
「ほら、さっさとケーキ食べちゃいなさいよ。早くプレゼント交換したいんだけど」
「りょーかい。……皆早いね」
気づいたら女性陣は既に一人残さず完食済みだった。結構喋ってはずなのに、早いな……。
「まあ、甘いものは別腹ですから。これくらいの量ならスルッとはいりますね」
「だねー。アタシなんか午前中もケーキ食べたけど、全然余裕だったし」
「いや、それは流石に食べ過ぎじゃないかしら……?」
「大丈夫だって! ちゃんと運動してるし、そもそもあんまり太らないタイプだしねー」
そんな女性陣の姦しくも楽しそうな会話に耳を傾けながら、美味しいケーキを少しだけ急ぎつつ堪能する。俺だって早くプレゼント交換したいし。そう、この後はさっき紫蘭が少し言っていた通り、皆で持ち寄ったクリスマスプレゼントの交換会をする予定なのだ。皆それなりの物を用意しているらしいので、密かに俺も結構楽しみにしてたりする。果たして皆どんなの持ってきてるんだろう。
――さあ、まだまだクリスマスパーティーは始まったばかりだ。




