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第一六章後編「海岸都市へ」

謎の手紙から海岸都市を目指しやってきた羽佐奈から始める後編

手紙に隠された謎が次々と明らかになります

おっとネタバレ・・・、ではどうぞぬるりとお楽しみに。。

シーン4「You and beautiful world~白い雪の降る街で~」


 目的地の海岸都市に着いた頃には15時を過ぎてしまっていた。

「雪で電車が遅れるなんて想定外もいいとこよね・・・」

 ずっと電車の中で寒さに耐えながら縮こまっていたため身体が妙に硬く感じる。もう昼下がりだというのに雪の勢いはさらに増し、すでに足が四センチか五センチ埋まるほどに事態は悪化していた。

「ここまで来ると何が何だか分からないわね」

 雪が激しく降る中では視界がぼやけて先が見えない、こんな状況で目的地を探すなんて無謀もいいところだ。寒さに耐えるばかりでブーツも雪で沈みどこに行けばいいのかもさっぱりだった。

「なんとかならないかな・・・」

 私は電車の中でも何度も見たがもう一度海岸都市の地図を取り出し場所を確認した。

「おそらくこの幽霊文字の漢字があるところに行けばいいんだよね・・・、他に特に目立つ印もないんだし・・・」

 安直だとは思ったがそれ以上のヒントも駅前では得られず私は結論づけた。

 そんなとき、白い雪上をユラユラ?と歩く一匹の黒い犬が見つけた。

「なんだろう・・・、飼い犬じゃなさそうだけど・・・」

 私の膝にギリギリ届くくらいの小型犬で、ゆったりとした足取りで、時折身体に付着する雪を身体全体を振るわし払いながらこちらに近づいてくる。

「寒かったのかな・・・」

 雪は辛そうだがしっかり目は見えているようだ、黒い犬は私の元に辿り着くと膝に何度も鼻を当て言葉にならない訴えをした、当然私は言葉ではないので何のことかわからなかった。

「とりあえず、めちゃ可愛い・・・・・・」

 目つきはそれほど可愛いものではなかったが、シチュエーションも相まって可愛さは否定できず私は寒さを我慢して雪道でしゃがみ込んで可愛い犬を何度も撫でた。

「うーん・・・、ほんとにノラっぽいな、首輪もないし・・・」

 種類として黒い犬だから甲斐犬とかだろうか、ちなみ黒犬はUMA(未確認生物)の一つで球電現象を恐怖心や怯えによって黒犬の目が見つめていると勘違いをする現象である。

大体の黒犬の噂はめちゃくちゃなものが多いので信じられてはいない。

 何はともあれそんな理解不能なものよりも目の前の犬は可愛いので余計なことは忘れることにする。サイズからして甲斐犬だとしてもまだ大人ではないだろう、寒そうにしている甲斐犬を温めてあげようと抱きかかえようとするとするっと私の腕を抜け出して、一度私の方を伺うとちょこちょこと雪道を歩き始めた。

「付いてこいってこと?」

 さっきの一瞬送られた視線でなんとなくそう思った私は甲斐犬を追いかけた。

「あんまり急がないでっ、ブーツに入ってくる雪が冷たいっ!」

 本当なんでブーツなんて履いてきたんだろう・・・、歩きづらさが尋常ではない。雪のせいで視界がぼんやりしていて私は雪の上に出来た小さな足跡を頼りに犬を追いかける。もちろん私の後ろには私の足跡が延々と付いていてすでに駅の姿は見えなくなっていた。

 こんな雪の中を歩いてるなんて畑山さんに知られたら家まで連れ戻されてしまうだろう、しかしここまで来て引き返すなんて選択肢は私にはもはや考えられなかった。

 慣れない雪道に知らない街並み、当然努力はしても私の足取りは遅く、時々黒い犬は閃光のような目を送って一旦立ち止まってはまた先に進んでいく、それがなんとなく私を待ってくれているように思えて、私は出来るだけ迷惑を掛けないよう早足でその足跡を追いかけた。

「(本当にあの子どこかに案内してくれてるのかな・・・)」

 どういう意図があるのかわからないけど様子を伺いながら先を行くのを見るとそう捉えるのが自然にも思えた。

「(もしこの雪が犯人にとって想定外のものだったら・・・)」

 もしかしたら目的地に時間にまでに到着できないことを恐れて案内をさせているのかもしれない・・・、あまりに深読みすぎるかもしれないけど、これほど解読が無茶な内容の物を送ったのだから少しは考慮してくれているとも考えられる、どちらにせよオカルトな考えだけど今はこの黒い犬を信じるほかない、私は見失わないよう引き続き追いかける。

 ふいに犬の姿が透けて見えた、何事かと私が立ち止まると黒い犬の姿は見えなくなり遙か先まで足跡が続いている。

「ヤバイ!! 置いてかれてる!!」

 私は現在地もわからず見失ってしまったらどうしようもなくなってしまうと突然不安に駆られ急いで足音を追いかける。しかし一歩進むごとにブーツが雪に沈みなかなか進むことが出来ない。

「くそ!! こんな手間取ってる場合じゃないのにっ!!」

 私は息を荒くしながら必死に雪道を駆ける、そして途方もなく走り続けているとふいに踏切が鳴り響く音が聞こえた。点滅する明かりが黒い犬の姿を照らし、ようやくその姿を確認させてくれた。

「――――よかった、追いついた!」

 しかし息をついたのもつかの間、待ってくれていると思った黒い犬は何を思ったか踏切の中へと入っていく、引き続き鳴り響く警音、ゆっくりと踏切棒が無感情にも降りてくる。

黒い犬は何かを悟ったように踏切の中で静止していた。

「そんなっ! 危ないから早く戻って!!!」

 私は叫び声を上げた。しかし私の声には応えず黒い犬はじっとこちらを見続けたままだった。

「どんな理由があったって! 死ぬ必要なんてないんだよっ!!!」

 相手が犬であることも関係なく私は言葉を伝える、しかし言葉では通じないことを悟った私はなんとか助けようとなりふり構わずすでに降りてしまった警棒を上半身を曲げてくぐり、急いで犬の元へと向かう。

 死の恐怖が迫りギュっと胸が締め付けられるような感覚に襲われながら、しかしもう引き返す時間的余裕もなく犬の身体を抱え込むように掴む、気付けばここは駅の近くなどではなく列車はスピードを変えることなく通過していくだけの踏切であることがわかった。左からもの凄い閃光が差し込み列車がガタンゴトンと迫ってくる。迷っている暇はなかった、私は持てるめいいっぱいの力を込めて犬を抱え上げ線路の先へとダイブした。

「ああああああああああああああああああぁぁぁぁああああああああああああああああああああああぁぁぁぁあっっっっぁぁぁぁああああああああああぁぁあ」

 一瞬、命が枯れるようなグロテスクな感覚を覚えた。生きるか死ぬかという瞬間的な命のやり取り、それはここ一ヶ月で何度も経験してきた事件と同じように感じ、そのおかげでなんとか恐怖で足をすくむことなく瞬発的に身体を動かすことが出来た。

 心臓が破裂しそうなほどの暴音と触れたら一瞬で肉を引き千切られそうほどの風速を持った質量がすぐ後ろを通り過ぎる、間一髪、列車にひき殺されることなく犬を救い出すことが出来た。

「―――――はっはっはっ・・・・・・」

 私は目を大きく見開き必死に走ったのとあまりの恐怖体験を同時に経験したことで緊張状態が解けず荒く息を吐いた。

「――――――――生きてる・・・、はっっはぁっっはぁぁぁっっ、私、生きてる・・・・・・」

 本当に死ぬかと思った・・・・・・、今までは相手が人間だったからある程度恐怖もコントロールできたけど・・・、これはとても耐えられる事じゃない・・・・・・、あと一秒でも遅れていたら一体どうなっていたか・・・、想像するのも恐ろしい・・・・・・。

 私は抱えた犬の無事を確認してなんとか一安心することが出来た。

「―――お願いだから・・・、こんな無茶させないでよ・・・・・・」


「どうして邪魔をする? もうこの身は灯火と成り果てているのに」


「えっっ声? どこなのっ?!」

 低い大人の男の声が空間を通して響いた。私は突然の事で誰がどこから言った声なのかわからなかった。


「見えたのだろう? この身が透けているのが?」


「何の話し? 何を言ってるのかわからないよ!」

 まるで機械で調整されたようなノイズ混じりの声、瞬間的にその声がとても近くに感じられて私は目の前に抱えた黒い犬と目があった。

「あなたなの?」


「案内できるのはここまでだ、後は自分を信じて進め」


 せっかく目があったのに、心が通じた気がしたのに黒い犬は私の疑問には答えず先ほどの緊張感から解き放たれたことで力の抜けてしまった両腕からするりと抜け出し、踏切を抜け出し道路へと駆け走っていく。

「ダメ!! まだ危ないよ!!!」

 私の制止は聞かずに犬は私の元をどんどんと離れ信号が赤のままの道路に飛び込んでいく、私は座り込んだ体勢から力を入れて起き上がるには時間が掛かってしまいとても助けるには間に合わない。

 次の瞬間、空間はスローモーションに包まれて私はどうしようもなく間に合わない状況を突きつけられる。


 ―――――――“守りたいもの”が目の前にあるのにどれだけ手を伸ばしてもどうしようもなく届かない、その刹那、私は蜃気楼を見たような感覚に陥った


―――――バンっ!!! と鈍い音が鳴ると同時に私の胸が一瞬締め付けられた


「いややあややややややややややぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁあぁぁあぁぁぁあああああああああああああああああぁぁぁぁあぁっぁぁぁぁっぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 静止した時間を呼び戻すような私の叫び声だった。

 私は目の前の現実から目を反らすことはなかった、修羅場のスローモーションの視界そのままにその顛末を肉眼で体感した。猛スピードで道路を走るバイクが1コンマ一秒というレベルの一瞬の瞬間、バイクはすでに半透明となった黒い犬を跳ね飛ばした。いとも簡単に吹き飛ばされたことで私には黒い犬の身体に質量があったのかも判断が付かないほどであった。大量の血を流しながら黒い犬はうずくまり、雪の上に無惨にも取り残されてしまった。私は急いで黒い犬のもとへと駆け寄る。しかしもうほとんど黒い犬には動く力は残されていなかった。

「どうしてこんなことをっ!! 自分で自分の身体を棒に振ることなんてないのにっ!!」

 不思議と吹き飛ばした張本人であるバイクは何の衝撃もなかったとは思えなかったがすでに通り過ぎ去ってこの場にはいなかった。

「―――この身体は私のものではない。私は使命のためにこいつの魂を食ったのだ、だから使命を終えた私が肉体を遺して逝っては遺された肉体は暴走を起こしてしまう。これはすでに定められた結末なのだよ」

 確かに声は黒い犬から聞こえた。心と心で通じ合うようなコンタクト、それはまるでテレパニーのようであった。しかし今は聞こえるという事実だけが先行して霊感のあるなしによる影響などは考えなかった。

「使命だなんてっ! そんなの私にはわからないよっ!! でも、その身体を自分が持っているのなら、生きることを全うしないといけないんだよ!! これは命を与えられたすべての物質に与えられた存在意義なんだから!! それを理性でねじ曲げてしまったらみんな被害者になっちゃうんだよ!!!」

 私はもうどうしようもないと解りながらも血が止まることなく流れる身体を抱きかかえた。酷く肉体は引き裂かれ骨までが浮かび上がり、見るにも無惨な状態だった。私は服が汚れることなど気にする余裕もなく泣きじゃくった。

「――――そうか、君は優しいのだな。君に見送られるなら悪くない、きっとジャックもクイーンも納得してくれるだろう、主様は立派な友達を持った」

「そんなぁ! 寂しいこと言わないでよ!! 最後まで私を案内してよっっ!! 無理だよ・・・・・・、私一人じゃ辿り着けないよ・・・・・・・・・」

「もう君は十分に強い・・・、私たち三人の試練に逃げることなく立ち向かった、それは本当に誇っていいことだ。私たちも未練なく空を昇っていける、これは私たち自身も感謝していることなのだ・・・・・・、恨んでくれていい、君の彼を主様のところに連れ去ったのはこの私だ、私の未練は主様の未練を解消することによって初めて達成される、この使命を尽くすことこそが未練であったのだ」

 私の弱音に考えを変えることなく半機械的にテレパシーを通して声が伝えられる。彼が手紙を送った犯人と関係する存在であることは間違いなかった。

「司は・・・、司は・・・・・・、生きてるの?」

 すがるように私は問いかけた。

「ああ・・・、人質としてまだ殺しはしてはいないだろう」

「そっか・・・、それなら私はまだ立ち止まってはいられないんだ・・・」

 まだ救いは残されていた・・・、それだけでまだ私は立ち上がらなければならない、守りたいものがあるかぎり戦わないと行けない、立ち止まってはいられない・・・。


「――――すべては10年前の記憶だ、どうか儚い願いではあるが主様の願いを叶えて欲しい、ずっと生きるとも死ぬともいえない虚構の中を彷徨ってきたのだ、どうか主様の最後の願いを聞いてあげて欲しい、これが私たちの総意だ」


 そう言って黒い犬の身体から魂の球体が空へ向かって昇っていく、到底現実のものとは思えないほど神秘的な光景だった。消えるのに従うように黒い犬の姿も透明になって消え、大量に流れた赤い血も浄化されていくように消え去っていく。まるですべてが幻であったかのように、体験としての現実感を残したまま、物質的な証拠は消え去ってしまう、私はその光景をただ見つめることしかできなかった。

「あっ・・・、あうぅ・・・、そんなぁ、勝手すぎるよ・・・・・・、私は平和に何事もなく司と一緒にいたいだけなのに・・・・・・」

 魔力を起こすように雪に覆い包まれて何もかも消え去ってしまう。それはあまりにもあっけないもので、これっぽっちも私の都合などお構いなしであった。

 私はスッと携帯電話を開いた。時刻はもうすぐ16時を過ぎる、残された時間はもうおよそ一時間しか残されていなかった。

「司・・・・・・、絶対無事でいてね・・・っ」

 失意の中で私は司の無事を祈った。携帯電話の待ち受け画面を見ても、液晶の周りのプリクラを見ても私のよく知った優しい司の姿があった。幻なんかじゃない、司はここにいる、司はこの海岸都市で私のことを待ってる、私は自分にもう一度気合いを入れて立ち上がる。涙は自然と止み、私自身を縛る痛みはどこにも感じなかった。

「――――大丈夫・・・、きっと間に合うから」

私は海岸都市の地図を片手にもう一度走り出した。

「――――現在地はここだから・・・、後はこの先を曲がって・・・、大丈夫、あの子がここまで案内してくれたから、海岸線はもうすぐ傍だ」

 雪に遮られてはいるがかすかに遠くから潮の香りを感じられた。私は急いでその方角に向かって走る。

 そして視界がバッと開くように潮風がと共に海岸線の景色が浮かび上がった。まさに極寒の海そのもので景色としては雪景色と相まって素晴らしいものだったけどさすがに寒さが身に染みた。

 私はもう一度地図を確かめる、幽霊文字の漢字に印の描かれた場所、おそらくこのごく近く、しかし私は残酷なまでの光景を目の当たりにした。

 そこには無数の搬送用の一時的な在庫置き場なのか用途はわからないがコンテナらしき物が無数に置かれていた。それはサイズにして一つ当たりにしても車が何台も入りそうなほど大きく、それが2桁以上は優に超えるほど立ち並んでいる。

「これを全部探さなきゃならないの・・・・・・?」

 圧倒的なまでの量とサイズに目がくらみそうになる、これをわずか一時間も経たずに全部調べるなんて到底間に合うものじゃない・・・、地図で見るのとはあまりに比較外の光景に私は呆然と立ちつくす他なかった。

「とんでもない詐欺だよこんなの・・・・・・」

 最後にとんでもない試練を置いていったもんだ・・・、すでに限界に近い足腰が今が絶好のチャンスとばかりに悲鳴を上げる。ここまで頑張ってきたのに・・・、来たこともない海岸都市を捜索するなんて最初から無理があったんだ・・・、足は棒のようになり手はブランと力を失ってしまった、雪が頭の上に降り積もる・・・、泣きそうなくらい冷たかった・・・、今すぐ家に帰ってストーブの前で暖まってこの冷えた身体を休ませてあげたい・・・、それは至極全うな願いだった。

「もういいよね・・・、司あぁぁ、私、頑張ったよね? いっぱい頑張ったよね? もう私が無茶な約束立てちゃったことも許してくれるよね・・・、ねぇ・・・、司ああぁぁ、答えてよぉぉぉぉぉ!!」

 心からの叫びが響いた・・・、やっぱり私は年相応の弱い女の子だった・・・、こんなことで簡単に屈してしまう弱い女の子だった・・・、ごめんね司・・・、期待ばかりさせちゃって・・・、こんな私だけど、でも本当に今日を一緒に過ごしたかったんだ・・・、忘れないでね・・・・・・。

「ダメだなぁ私ってば・・・・・・、こんな弱音ばっかり吐いて、司が優しくしてくれるわけじゃないのに・・・・・・」

 

“想いが優しく世界を包む、これ以上あなたに伝えるべき言葉が見つからないよ”

“どうして?! 私にはわからない・・・わからないよ・・・・・・”


「不思議だね・・・、気付いたら羽佐奈といるのが当たり前になってて、羽佐奈なしじゃあいられなくなってるんだからね、だから時々思うんだ・・・」

「えっ? 何を?」

 これはベットに隣り合わせで座って最後に司と話したときの記憶だ・・・、こんな時に思い出すなんて・・・。

「僕は羽佐奈と出会ってなかったらどうしてたんだろうって」

 ダメだよ・・・、私・・・、こんな時に思い出したら・・・。

「それはもう一度私が目を覚まさなかったらお父さんはどうしてたんだろうとかそういう話し?」

「―――そうかもしれないね・・・。おそらく僕は・・・・・・・。

 “君が生きてなかったら、僕は生きていないよ・・・・・・”」

 喉元に釘が刺さるような衝撃だった。本当に・・・、こんな時に思い出させるなんて卑怯だよ・・・。約束をしてくれたあの日、空中庭園で司は初めて司の方からキスをしてくれたね・・・、本当に嬉しかった・・・、それで私は全部信じることが出来たんだから。そして司は自分から逃げ出したんじゃない、どうしようもない状況の中で事件に巻き込まれて私が助けに来てくれるのを待ってるんだ。

「行かないと・・・、私は司を捜さないと・・・・・・」

 過去の記憶は再び私の記憶の奥に戻り、私は今一度勇気をもらった。

 まだ時間はある、可能性は残ってる、最後まで諦めていいはずがない、私は司なんかよりずっと諦めが悪いんだから。

 もう一度私は走り始める。大きなコンテナを一つ一つ調べていく、しかしほとんどが扉すら開かない、そして私が予想より遙かに多くのコンテナがここには点在していた。

「何かヒントがあれば・・・」

 私はもう一度手紙を見た。まだまったくヒントとして効果を発揮していないもの、私が目に付いたのは「あ」~「ん」までのひらがな50音が書かれたこっくりさんに使うようなレイアウトをした手紙の裏面だった。

 私はどこかにヒントが隠されているはずとじっとその手紙を見つめ考え込む。

「これ・・・、もしかして・・・・・・」

 何かが閃いた、私は迷うことなく手紙の裏面であった50音を表にして封筒の中に丁寧に入れた。そして私は頭上を見上げた、ゆっくりと粉雪が頭上から舞い落ちてくる、そしてそれは封筒の幽霊文字である漢字に付着し、じわじわと紙の繊維を溶けさせ中の文字を浮かばせる。


「“つ”」


 はっきりとわかるほどの同じ位置に一文字が浮かび上がった。

「これだぁ!! “つ”の書かれたコンテナの場所に行けば司はいる!!」

 私の推理は確信に変わり私は走り始める、コンテナに書き記されたひらがなを見ながらどんどん先へと進んでいく。

「―――――――――――みつけた」

 目の前には“つ”の型式番号のコンテナが雄大な姿で私の前に立ち塞がっている。

 私はもう考えることはないと決意を固めコンテナの扉を勢いよく開いた。


“そして、そこには私が探し求めた人の影があった”


これでジャック、クイーン、キングと成仏しました、お疲れさまです。せっかくなので雪の演出を多用しています、本当に寒い時期に書いてると実感沸きますね。


次回最終章、ラストスパートしていきます、どうぞお楽しみに。


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