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第十三章 「約束の刻」

第13章 「約束の刻」


シーン1「ジャイロスコープ」


“きみはぼくをおぼえているだろうか・・・”


 ずっと記憶の彼方? いや・・・、違う、これは意識の向こう側からする声だった。

性格も固有観念も理論もない場所、もっと人間としての原始的な意識の部分、私であって今の私でないもの、私であったもの、もっと小さな私、否定することの出来ない自己帰心。

 確かにそんな世界が存在した、それはたまたま感じられただけだけども、でもその声はまるで導かれたかのように現界しているような声で、夢の中にいるのに妙なリアリティを意識させられた。

 広い広大な宇宙のような場所に細長い何本もの光の柱が途切れることなく通り過ぎていく、美しくも幻想的な光のその中央に特別明るい光を放つ思念体のような光の玉が点滅を繰り返しながら何かを私に訴えてきている、そう私は感じられた。

 眠っている体はあまりにも軽い、悩そのものが重力に解き放たれたような感覚で、辺りに無数の記憶物質を張り巡らし、それに触れる度にバっと景色が色づく、すべてが繋がっているのに別々のもののような不思議な感覚、私は何かに取り憑かれているかのように目覚めることも叶わない迷いの世界へと招待されていた。


 “言葉”の意味を考える余裕はなかった。

 いや・・・、違う・・・今の私は具体性を持った思考の出来る状態ではないのだ。

 解き放たれてしまった記憶を取り出すことは容易ではない、確かめようのない言葉の意味、そこにどんな意図があり、どんな意志があるのか、今の私には判断できなかった。


“確かに君は僕の思った通り優秀だ、たびたび驚かされた・・・。

   それが今も変わっていないことを知って、僕は本当に喜んでいるよ“


 まただ、同じような声が聞こえた。

 私の声ではない、まだ幼さの残る男の子のような声。

 知らない人の声、そのはずが耳の鼓膜全体の残響を通して、奇妙な違和感が残った。


“どうしてだろうね・・・、いつも君は僕の理想の上を越えていく、本当にここまで楽しませてくれるなんて想定外だよ”


 一体何の話しだろう? 私にはこの声の人物は分からないが、相手は随分前から知っているようだ。


“僕はもう一度君と出会うことを願ってるんだ”


“僕はそのための代償はいとわない、それが僕の思いだ”


“だから、もう一度彼らの力を借りるよ”


“そして、君にも思い出してもらうよ、あの日の真実を”


 光が速度を上げて記憶の波を通り過ぎていく、一体どこまで行くのか? しばらくタイムリープを続けて、目的地に到着したのか突然光がはじけた。

 

夏の匂い、虫の音、照りつける日差し、長く真っ直ぐに続くアスファルト、軽トラック、そして小さな少年がずっと私のことを寂しげに見つめていた。

私は倒れている、どう頑張って力を入れても起き上がることは出来ない、頑張って顔を上げても少年の顔までは見えなくて、そこから状況は一切変わらない。

「う“うううううっっ」

 私は照りつける暑さに抵抗して・・・、いや、違う、頭を巡る激痛に歪んで声にならない声を上げた、軽トラックには微かに何かにぶつかったような跡が付いていた。


 “ドンっっ!!!”


「いたぁぁあい!!」

 私は何が起きたのか突然ベッドから体が落ちたところで目を覚ました。

「イタタタタッ・・・」

 私は思いっきり腰を打って手で押さえた、痛みは中々消えなくて情けない声を上げる。


 なんだろう、ずっと長い夢を見ていたようだ、それも悪夢の部類だろう、私はこの冬真っ只中にもかかわらず嫌な汗をかいていた。

 きっとロクでもない夢だろう、悪夢となれば子どもの時の事故の夢に違いない・・・、でも何かいつもの夢とは違う既視感のようなものが感じられた・・・、それに微かにあの瞬間の光景に知らないはずの少年の姿が見えた気がした・・・、一体何だろう・・・、今の私にはよく解らなかった。


“真実ってなんだろう?”


 なぜか私の中にその言葉だけが残った、何か大切なことを思いだそうとしているのだろうか、解らない・・・、今の私には考えるだけの要素が足らなかった。

                  *


“そう、いつだって願ってた・・・”

“あなたの幸せが私にとっての幸せと同じであればいいのにと”


シーン2 「絆の力」

12月19日


 日曜日の朝、久しぶりのデートにしては縁起よく空は晴れ渡っている。

 私は昨日の件もあって少し気持ちも落ち着いて、悪夢を見ることもなく起きることが出来た。

 待ち合わせの時間が迫ったので最後に鏡を確認して、自分におかしいところがないか確かめる、「たぶん・・・、大丈夫だよね」特に気にすることもなくそう呟いて私は立ち上がり電気を消して部屋を出た。

 まだ起きたばかりのお父さんに挨拶を済ませて玄関を出る、変わらない朝の冷たい風が体を震わせる、私はそれに耐えながら一歩一歩歩いていく。

 待ち合わせの駅に着くとすでに先に司が待っていて「こっちこっち」と手を振る。私は早足にその隣へと目指して歩いた。

「ちょいーす!!」

「お、元気そうだね」

「だって久しぶりだし、テンションも上がるよ」

 司とちゃんとしたデートをするのは意外にも久しぶり、ドラマの撮影が終わり、期末テストも終わり、学校の方もいよいよ終業式を迎えるだけとなってようやくゆっくりとした時間を作ることが出来た。

「本当は羽佐奈は受験前なんだからこんなことしてられないんだけどね」

「そんなんじゃ遊ぶ暇なくなっちゃうよ・・・」

「ホント、その通りだね」

 1月のセンター試験まではあと一ヶ月、これから追い込まないといけない時期だが、そんなことでは身が持たないのが現状だった。

「学生は楽しんでなんぼでしょ、今日ぐらいは余計なことは忘れて遊びましょ」

「そうだね、余計なこと言った」

 もちろん司も今日を楽しみにしていたようで、振り返っては機嫌良さそうに笑顔を向けた、楽しい一日になりそうだ。

「よし、そうとなれば、思い切って行こ!!」

 私は振り返ることはやめて強引に司の手を取った。

「ちょっとっ! そんな急がなくても」

「時間は待ってくれないのよ」

 お互いのんびり屋だから気持ち入れないといつものように平坦になってしまう、私は元気よく演じるように未だ拭えない恥ずかしさを抑えながら手をつなぎ歩いた。


「そういえば司は冒険に憧れたりするの?」

「唐突だね・・・」

 司はこちらに視線を寄越して呆れ顔で言った。

「いいじゃない別に」

 特に興味なさ気に言ってみたりする、なんだか自然な会話が出来ているように思えて安心した。

「そうだね・・・、僕はそれほどじゃないけど、男は結構そういうの好きかな」

「へぇ」

 私は空返事をした。私が冒険するのは恋だけだけどねと冗談を飛ばす勇気はなかった。

「でも、ゲームは好きだよね? あの一人用のやつとか」

RPGロールプレイングゲームのこと? まぁ仮想現実だし設定とか今の時代じゃないものが多いから面白くはあるよね」

「うん、何であんな夢中になれるのかなんだか不思議」

「そうかな、ご都合主義なところはあるけど知らないところを冒険する感じで面白いけどね、操作もシステム的だから簡単だし」

 一つ一つ説明が出来てやはり司は詳しいみたいだ、なんだか実感沸かないんだけどね、やっぱり自分を動かしてるような感覚なのかな。

「ちょっとじゃあ試してみようか」

「試すって?」

「RPGっぽい冒険」

「冒険って・・・、モンスターも敵もいないよ?」

「その辺はまぁご都合主義で」

 さぁさぁと言って司は通ったことのない路地裏に入っていく、よくわからないが冒険が始まったようだ。


[企画・脚本 新田 司]~RPGっぽいものをリアルにやってみた~


「そういえば旅の目的は?」

「う~ん・・・、全然考えてなかったね、当面は目的を探すのが目的ってことでいいんじゃない?」

「ほんと計画性ないわね・・・」

 私は呆れて言った。さぁ茶番のはじまりはじまり・・・。

「さっそくなんだかモンスターが現れたよ!!」

「はぁ?!」

 路地裏から番犬が現れた!

「どう見ても汚い野良犬なんだけど」

「でも番犬の方がカッコ良さそうじゃん?」

「そんなことでいいの・・・」

 設定自体がお粗末にも程があるほど適当だった。


「ガルルルッ!!」


「来るよ!」

「そんなぁ、まだ何もしてないのに」

 番犬が襲いかかってきた! おもに司に3のダメージを受けた!

「可愛い顔して意外と素早いし!」

 羽佐奈は素早く身をかわした。

「何この扱いの差は」

 いや、それはやっぱり役回り的に司が攻撃を受けるべきでは?と言いたくなったがそこは触れないでおく、でも司の運動神経のなさからすれば回避できないのも仕方ない。

「不満は残るところだけど、ここはいい加減反撃しないと」

「反撃って、武器も何もないんだけど・・・」

「そうだね・・・、でも何かしら調達しないと」

 そういっている間に私たちの準備を待ってくれるわけでもなく番犬は勢いよく襲いかかってきた。

「キャッ! もう! これでも喰らえ!!」

 羽佐奈は危険を顧みず司を番犬に向かって投げ飛ばした!

 番犬に5のダメージ! ついでに司も5のダメージを受けた!

「ギャァァァァァ!! 何すんのさ!!」

「いや・・・、武器がなかったからつい・・・」

「そんななんとなくみたいに人を投げないでよ!」

 司が埃を払いながら立ち上がる。文句が言える辺り怪我はなさそうだ。


“ガルルルルッ”


「うわっ・・・、何か本気で怒っちゃってるよ」

「えっ、何が?」

 司はずっと私の方を見ていて背後の番犬に気付いていないようだ。

 番犬は鼻息を荒くしながらブルブルと震えている、迫り来る恐怖感、次の瞬間番犬は勢いよく司に向かって襲いかかった。

「危ない!!」

「えっ?!」

 私は怖くなって目を手で隠して叫んだ。

 ドーン! という大きな音がして私はハッと目を開けた。

 よく見かける青いゴミ箱が倒れていて中のゴミが無数に路地裏に散らばっている。

「生きてる・・・」

 司が呟いた、どうも状況から見るに司はギリギリのところでしゃがんで番犬の攻撃を避けたようだ、それ番犬は司のそばに置いてあったゴミ箱にぶつかってしまった。

 番犬はかなりのダメージを受けているが未だ鼻息荒く司の方を見つめている。

「なんとかしないと・・・」

 今にも襲いかからんとする番犬に恐れながら私は何かないかとバッグの中を漁った。

「あった! これでどうだ!」

 私はカロリーメイトを取り出した!

 ってよく考えたら何を私は取り出してんの! 私はあまりに血迷った行動に赤面した。

「あっ・・・、あのこれは・・・」

 司は「何この人」見たいな顔で見ている。もちろんこれは拡大解釈だけど。

 そうこう考えてるうちに番犬が私の方を見ている、あれ? 意外と効果ある? 番犬はどこか興味ありげに私の手に持つカロリーメイトを見ている。

「意外とお腹空いてるのかな? あっ、チョコもあるよ? どうですか番犬さん!」

 私は気を惹かせるようにチョコも取り出してチョロチョロと上下に動かしたりして番犬の様子を伺う。その動きにあわせて番犬も首を動かす、「何か面白いかも・・・」私はさらに誘うように番犬の目線にエサ?が合うように位置をあわせる。

 興味を持った番犬が一歩一歩近づいていくる・・・、そして・・・。


“パク”


「(たべた~~~!!)

 私は頭の中で叫んだ。

 羽佐奈は番犬の餌付けに成功した!

「どんなエンディングだよ・・・」

 司は緊張感が抜けたのか呆れて呟いた。

 かくして番犬を洗脳することによって私たちは勝利した。

「これ、どの辺がRPGだったの?」

「僕にもわからないよ・・・」

 とりあえず、これ以上茶番を続ける気力もなく第一回の企画は終了を迎えた。

 ウィンドゥショッピングに行ったり新しく見つけた喫茶店でケーキを食べたり、私たちは久しぶりに都会の街の雰囲気を楽しんだ。そうして私たちは次にゲームセンターにやってきた。

「UFOキャッチャーやろ!」「うん」「今日は取れるといいな」「この前は取れなかったもんね」「ホントそれ、あのせいで夜寝付き悪かったんだから」「僕は羽佐奈にも苦手なものがある方が面白いけどね」「ちょっとそれどういう意味?!」「なんでもないよ」「何か引っ掛かる言い方・・・」「気にしなくていいよ、羽佐奈が立派だって意味だから」「それこそ意味わかんないし・・・」

 テロテロテロンと和音が鳴り響いてボタンが点滅を始め、UFOキャッチャーのアームが動き始める。あまり実のない会話のリレーだけど何故か盛り上がった、いつまで続きそうなくらいの盛り上がりで会話が繰り広げられ、すっかり私たちは浮かれているようだった。

「よーし! ここかな・・・」

 パン! と軽快にボタンを押す、透明なガラスの中で銀色のアームのゆっくりとぬいぐるみへ向けて近づいていく。

 私は「いけ!」と祈りながらその動向を見つめる。

「「あっ」」

 ぬいぐるみに触れて、それを持ち上げんとばかりにアームが開いた口を閉じる、しかし私たちは二人して同時に声を上げた、スローモーションのようにアームは力なくぬいぐるみを落とし、何も掴むことなく頭上に上がっていき何事もなかったように再び口を開いた。

「ダメか・・・・・・」

「惜しかったね」

「惜しいじゃダメなんだよ・・・」

 その後何度となく挑戦するかそのたびに私は力なく項垂れる。

「あたしのプーさん・・・」

「まだ取れてないから・・・」

 UFOキャッチャーのガラスに悔しそうな顔をした自分とずっと見守る司の姿が映った、なんだろう・・・、ふと巡る空気が冷たくなるような感覚、埋まらない距離感、酷いくらい醜い衝動、私は少し気分悪く瞳を閉じた。

 少し感覚を蘇らせる、これまでの長い道のり、この楽しい時間、私が望んだ時間、満ち足りた充足感・・・、そう、これでいいんだ、ただ、今この時を一緒に楽しめばいいんだ、私は変わったんだから。

「よーし! 本気出す!」

 大きく目を見開いて、私は目の前を見た。

 私はこんな事では屈しない、たかがUFOキャッチャー如き、私の敵じゃない!

「どうしたの突然」

 司が心配して声を掛けてくる、大きな声を上げたので驚いたようだった。

「ゲームといえど、手加減はよくないわよね、そう思ったのよ」

「なんか真剣だね・・・」

「真剣にならないと、こいつは私の物にできないのよ」

 司の顔から「うわぁ、獣を狙う目だぁ」と顔で言っているのが伺えた、もちろん私の妄想だけど。私はもう一度気合いを入れてコインを入れ機会を起動させる。もう言葉はいらない・・・、最善を尽くすだけだ。

「(Re-start! さっきので隣接しているぬいぐるみは消してある、確実に首を掴めば取れるはず・・・、でも絶対に油断したらダメだ、1cm1mmのズレも許さないつもりで行かないと。よーしいいくよ、このままの角度、思ったとおり行けば絶対にやれる!)」

 猛烈に気合いを入れて集中して真っ赤な闘志を宿した瞳でアームの動きを見つめる。

「(まるでスローモーション・・・、私にはもう止まって見えるよ、さぁ、来い! その向きを変えてやる、よし、来た・・・、今だーーーーー!!!!)」

 まるで爆弾を落とすかの如く勢いよく右手を振り下ろす、何をしたんだと言わんばかりの音がボタンを押すと同時に響き渡りアームは動きの向きを側面に向ける。

「(よし・・・、完璧だ! 後は前後だけ! 絶対取れる! こんなの簡単すぎ! 絶対取れるって)」

 自分を勇気づけるように何度も繰り返し言葉を刻む、そして運命の瞬間がやってきた。

「さぁぁ、これで終わりだーーーーー!!!!!」

 大きな咆吼と共に寸での狂いもなくボタンを押す。

 心臓が止まりそうな緊張感の中、アームがゆっくりと下で降りていく。

 そしてアームがオートメーション化されたままプーさんの首を締め付け、ゆっくりと引き上げていく。

「よし!! きたぁぁあぁぁーーー!!!!・・・・・・あっ」

 もう捕獲は完璧に見えた、そう信じて疑わなかった、しかしアームのその余りあまる力を発揮することなく力尽きプーさんを掴む手を離す、無情にも落ちていくプーさん。

「あっ・・・ああっ・・・ああああっっ、いやぁぁぁっぁぁぁーーー!!!!!!」

 私は力なくUFOキャッチャーに倒れかかった。

 若さに任せた気合いも虚しく残念な結果に終わった。

「ゴメン・・・、やっぱり私ダメだ、これ取れないわ・・・」

「いいよ、僕が取るから」

 司は落ち込む私に優しい声で言った。

 そして司は私の見つめる前で軽々とぬいぐるみに埋もれたままのプーさんを取って見せた。

「はい、お疲れ様」

「うううっ・・・、ありがとう。あぁ、うますぎ・・・、さすがに私も落ち込むわ」

 何度となくゲームセンターには来ているようにちっともぬいぐるみを自分で取れないことに嫌気がさす、さらに苦手意識を高める結果になりながらも、もらったぬいぐるみを私は大事に抱きしめた。

「次どうしようか? ガンゲーでもする?」

 ガンシューティング? 銃か・・・。

「ううん、いいや、ちょっと疲れちゃったし」

 なんだか拳銃の恐怖に目の前でさらされたせいでとても自分の手で銃を握ろうとは思えない、未だに妙なリアリティがこびり付いて火薬の匂いが今にも蘇ってくるようだった。


「まさか今日が半年記念なの覚えてないとは思わなかった・・・」

 プリクラを撮ってゲームセンターを出た私は呟いた。

「すっかり忘れてたよ・・・、なんで今日なんだろうと不思議には思ってたけど」

 前々から計画していたのに気付かないなんてと私は呆れた。

 ふと店から少し行ったところに露店を開いてるのを見た。

「どうしたの?」

「ちょっと見てもいい?」

 司は私が何を見ているのか気付いてなかったようなので指を指して教えた。

「あぁ、別にいいよ」

 許可を得て私は露店に近づいていく。

 幾つもの宝石やらアクセサリーが置いてある。大体が中古品なのか日本製のものも外国製の輸入品一緒くたに置かれている。

「綺麗だね・・・」

 目にとまったペアリング、外を出てからかなり離れた距離でもなぜか目に止まって離れなかった、近づいてみてやっぱりその綺麗な姿に見とれてしまう。

「やっぱりいいね、こういうのは・・・」

 ちょっとしみじみしてしまったかもしれないと思って私は10秒ほど触れているのに止まり元に戻した。

「もういいの?」

「うん、ちょっと気になっただけだから」

 そういって私はその場を立ち去る、やっぱり高望みしすぎだと思う、そういうのじゃないよね、そういう物に頼っちゃいけないんだ、私は、もう一度自分の胸に刻み込んで想いを秘めた。

 しばらく歩いて何かに気付いたように司が立ち止まった。

「ちょっと待っててもらっていい?」

「どうしたの?」

「野暮用というか、トイレ、さっきのゲームセンターのところ行ってくる」

「ん、わかった」

 何か引っ掛かる部分はあったけど返答に時間を掛けるわけにもいかず、私は頷いた。

 司は急ぐように今来た道を引き返していく。

「なんなんだろう・・・」

シーン3「星に願いを、君に誓いを」

 ゆっくりと堪能するように久しぶりのデートを楽しんで、夕食を食べて外を出た頃には完全に陽は落ちて頭上には星の海が出来上がっていた。というのはもちろんよくできた冗談だけど、気持ち的には一日を一緒出来た喜びでいっぱいだった。

 だからこそずっと室内にいて外の景色を意識することなく時間を過ごして、急に外が暗くなっていることを知ってどうしようもなく神秘的な心持ちになってしまった。

 昼間だと躊躇しがちだけど、二人自然と手をつないで歩いていられているのも、雰囲気がよかった。

 そして私たちは何かに導かれるように言葉少ないまま都会のビルの屋上にある空中庭園に来ていた。


 “どうしてだろう・・・、日常に見る都会の空のはずなのに、不思議とここで見ると神秘的に思えた”


 何組ものカップルが溜まり場のように同じように空を見ている。

 確かにそれはいつも見ている空と変わらないけれど、ずっと見ていた。

 清々しいぐらいの空、空に近い場所、同じ時を刻む共有感、何をするわけでもないのに満たされているような感覚・・・、しかし何かが蝕まれているかのようだった。

 そう、彼の目が少し寂しげだったから・・・、私は、知らないうちに心が痛んだ。


“だから、私は祈った。見上げればなんとか見える星に向かって”


“これからもずっとそばにいられるようにと”


 私は大切なことを探した。

 私たちにとって大切なこと。

 簡単でも何でもいい、今お互いに安心感を得られる約束を。

 私は、ゆっくりと夜空を見上げながら考えた。


“そして、一つのアイディアに考えは至った”


「もうすぐクリスマスだよね」

「うん、そうだね」

 司の声が耳に響いた、少しの残響も残らない声、考えは単なる思いつきのアイディアだけど、司の声で勇気づけられるように余計な雑念は消えてくれた。

「今思いついたことだからダメならダメっていって欲しいんだけど・・・」

「何? そんなもったいつけて」

 私が変に歯切れ悪く話したもんだから司は苦笑した。彼なりの優しさだった。

「クリスマスの日、せっかくだからディズニー行かない?」

「唐突だね・・・」

 司は当たり前の感想を返した。緊張と相まって自分が間違ったことを言ったような気分になった。

「一回ぐらいは行ってみたいと思ってたんだけど、なんだか機会がなくって。

予定とかまだ考えてなかったからせっかくだからどうかなって思ったんだけど」

「うん、いいよ。なんかそういうテンプレみたいな盛り上げ方も大切だと思う。

せっかく付き合ってるのに、恋人らしいこと出来てなかったもんね」

 ちょっと意外だった。司がこんなにあっさりOKしてくれたのは。

 嬉しい気持ちと司の気持ちが少し垣間見れた気持ちと、二つが同時にやってきてなんとも言葉に詰まるような気持ちになった。

「その、急な話になっちゃったけど、約束ね」

「うん、約束だ。遊園地二人で行くのなんて初めてだけど、また今日みたいに一緒に星を見よう」

 司にしては想像も付かないくらいにロマンティックな言葉にさすがに感動してしまった。

ずっとこちらと目を合わせてくるもんだから恥ずかしさでおかしくなりそうになる。

 そういえば司って星とか空とか、そういうのが好きなんだっけ。思い出して言葉に納得がいった。

 

 “自然と私たちは見つめ合って静止していた”


 周りの目のやり場に困るぐらい自分たちの世界に入り込むカップルも、冷たく吹く風も、時折まばゆく輝く景色も気にならないぐらい、意識全てを持って行かれそうなくらい目の奥に意識を惹かれて目線を外すことが出来ない。

 私にはどうすることも出来なかった。

 頭が真っ白になって言葉が見つからない、いつになく司が真剣そうに見えたから、だから私は信じるように身を委ねた。

 何かに引き込まれるように司の顔が近づいてくる。

 どうしようもなく沸き上がる感情が意識を支配して、覚悟なんてする間もなく唇が重なった。

 永遠のような時間が意識を陶酔させて、ただ受け入れるだけの震えるようなキスが続いた。

「司からされるの初めてだね。ちょっとビックリしちゃった」

 私は恥ずかしさから目を伏せた、ネックレスの光が周りの照明に反射されるように輝いて見えた。とても温かい触れるだけのキスはとても幸せな反面あまりに儚く感じた。

「僕も・・・、自分が何をしてるのかも解らなくなって。

羽佐奈のことを見てるとなんでか抑えられなくなって」

「うん・・・、なんだかわかるよ。私も同じだから・・・」

 先に来たのは安心感だった。

 急に交わされた約束の重みに心が押しつぶされそうになって、キスすることで枷が外れたみたいに気持ちが軽くなって、きっと大丈夫だって思えるようになった。


「すっかり暗くなっちゃったね」

「うん、こんな遅くまでゴメンネ」

 キスの後の帰り道、私たちは言葉少なく遅い足取りで、手のひら越しにお互いの温かさを感じあいながら、夜の道を歩いていた。

「いいんだ、久しぶりに沢山遊べて楽しかったし」

「そうだよね・・・、せっかくテストも終わってもうすぐ冬休みなのに、勉強ばっかりなんてあんまりだもんね」

「一ヶ月後にはセンターだし、たまには遊んでおかないとストレス溜まる一方だからね」

「そうだよ、司はよくわかってる、ちゃんと気分転換しないと勉強したって頭に入んないんだから」

 3年の私は司より一年先に受験に入る。

 司の希望する高校に一緒に入るには私が頑張らないと行けない。

 そうしないと高校を一緒に通えなくなってしまう、だから勉強は一番優先しないといけない、そのことのジレンマと私が頑張らないといけないというプレッシャーは私にとって大きかった。

 ふと気付いて私は左側に立つ司を見た。

「ねぇ、最近また身長伸びた?」

「伸びたかも・・・」

「なんかもうほとんど身長変わらなくなってきてる・・・、付き合い始めた頃はもう少し身長差あったと思うんだけど」

「僕だって成長ぐらいするよ、発育のいい羽佐奈に負けてられないからね」

「なんかエッチな言い方、これでも太らないよう気を遣ったりしてるんだから・・・」

 最近は外食も多いだけに特に気をつけないとと思ってた所なだけに・・・、冬だから厚着で目立たないとは言ってられないもんね・・・、注意しないと。

 やがて赤津家のアパートの部屋の前までやってきた。

「約束、忘れちゃダメだよ?」

 お別れの時になって私はもう一度庭園で話したことを繰り返した。

「うん、もちろん、今度は本物のプーさんに会いに行かないとね」

 司は私の抱えるプーさんを手で撫でながら言った。

「あ~そう考えると余計楽しみだな。きっと人多いから大変だろうけど、パレードとか見れるといいな」

「うん、楽しみだね。ホントクリスマスなんてもうすぐだし」

 それからなかなかはやる気持ちが抑えられなくてディズニートークが続いた。でもそんな時間もずっと続けていられなくて、私たちはやがて別れの挨拶を交わした。

「それじゃあサヨナラ、またね」

 今日という日が日常に消えていく、そんな当たり前のことに寂しさを覚えながら、司の姿が見えなくなるまで私は手を振った。

幕間


 とても暗い場所だった。取り付けた電球がわずかに光を灯している。

 異様に広いコンクリート積みの部屋の隅の小さな窓からはわずかに月が顔を出し、夜の闇を照らしていた。

 工場用の倉庫のような場所にはほとんど物のなく、暖房設備もなく冷たい空気が辺りを覆っている。

「もう行くの?」

「はい、もうそれほど時間も残されておりませんので」

 まるで透明な影が時々ノイズ混じりにあるはずのない姿を映し出すように、小さな少年がその別れを寂しげに目線を下げていた。

「今度は本当に会える?」

「もちろんです。そのためにこれまで彼を泳がせてきたのですから」

 小さな少年のまだ幼い声とドスの利いた低い周波数の声をしたあまりに不揃いな会話だった。誰もいない倉庫の中でずっと二人は話していた。

「どいつもこれまではだらしない奴ばかりだった。

自分の利害ばかりに考えて何一つ成果を上げてこない、今度は大丈夫だよね?」

「もちろんです。むしろ相手から会いに来てくれますよ。

ずっと望んでいたのでしょう? もう一度会う時を」

「うん、羽佐奈にはもう一度思い出してもらわないといけないから」

 その決意はとても固いものだった。

 キングは高い忠誠心を持って少年のその願いに応えている。

「それではしばらくお待ちください。望み通りのものをお持ちしますので」

「あまり無理しちゃダメだよ・・・、君までいなくなったら僕はどうしたら解らなくなるから」

「ご心配には及びませんよ。この身はすでに死そのものも陵駕しておりますので」

「だから心配しているんじゃないか・・・、魂まで犠牲にしたら君はどこにも行けなくなるよ」

「それも本望ですよ。あなたのためになるのなら」

 キングはそこまでを言ってこの場を去った。すでに固められた決意を変えることは出来ない、再び静寂に包まれた倉庫の中で少年はただ、キングの帰りを待つこととなった。

 12月21日 シーン3「透明な灰の午後」


“君が生きてなかったら 僕は生きてないよ”


 なんでだろう・・・、何をどう考えようとも息が詰まる、どれだけ気をつけても無感情を装えない。

 ふいに口をついた言葉、あまりにも軽はずみだった、どうしてそんなことを言ってしまったんだろう。


 羽佐奈の家に遊びにいった帰り道、夜道をフラフラとぼくは歩いていた。

 今日は少し長居しすぎたと思う、だから時折感情が抑えられなくなる。

 今の自分の気持ちを悟られるのが異様に怖い、どうして僕なのだろうか・・・、どうして彼女は僕を選んだのだろうか、何度となく答えを付けて押し込めた思いが再び溢れてくる。


     “ようやく、自分が相手の負担になっているって気付いたのか?”


 心の臓を貫くような声、闇の奥から突き出るような低い声だった。

「何? どこから?!」

 自分の声じゃない、しかし極めて近い距離から声が聞こえた、僕は辺りを見渡した、しかし暗い景観に阻まれてなかなかそれらしい存在の影を見つけることが出来ない。


“本当は最初から気付いていたのだろう? 自分には贅沢すぎる存在だと”


 心臓にゾクゾクと来る心痛が低周波の声と一緒に響き伝わってくる。

 一瞬、羽佐奈の笑顔が浮かぶ、それが贅沢だと、自分にとって贅沢なものだと示すように。

 体が次第に重くなって足がガクガクと震え始めた、僕は必死に膝を曲げそうになるのを抑える。

「何を勝手なことを言って。そこにいるんだろ! 隠れてないで出てこいよ!!」

 僕は怒りを込めて感情をむき出しにした。しかしそれでも相手の挑発は止まりはしなかった。


“怖いんだろ? だから感情的になる”


「一体何を、誰なんだよ・・・、僕の中に入ってこようとするのは・・・」

 暗闇の中、視界がグラグラと傾いて、目蓋を開けているのに視界が安定しない。

 それは訳も分からない感覚で、悩の中を浸食するように何か得体の知れない意識が頭の中で無数にフラッシュバックを起こさせる。


“彼女が本当の事を知ったら軽蔑するだろうな・・・”


「やめてよ!! 勝手に入ってこないで!! 痛い、意識が焼けるっ」

 僕は・・・、僕は・・・、意識がドンドンとおかしな方向に傾いて“キオクノカンショウ”を抑えられなくなる。


“本当は欲しいんだろう? 醜いほどに全部自分のモノにしたいのだろう?

何一つ勇気を持ち合わせていないのに、言葉の一つも信じることが出来ないのに“


「あぁ!! やめて! やめてよぉ!! 思い出させないでよ!!」


“罪を罪と認識せずに、これからも負担になり続けるのか? そんなことが許されるのか? そんな自分勝手が許されるのか?”


  なんで、こいつ、どうして僕のことを全部知って・・・、いやだ、記憶が、ワスレヨウトシテイルツミガヨミガエサレテ・・・・・・。


“私はその罪を全て知っている、隠すのが下手だからなお前は、相手の方が大人だと気付いているだろう? 隠し通すことなんて出来ない、どれだけ震えを抑えても気付かれているんだよ”


「そんな羽佐奈は僕を・・・、僕を軽蔑して、僕はそれにも気付かずに何も答えられずに・・・」


気付かずにいたかった。

僕は気付かずにいたかった、そんな事考えることになると思わなかった


怖かった

気付くのが怖かった

好きになるという想いが自分の中を支配していくのを


抱きしめたいという想いが自分を壊していくのを

理性だけでは抑えられなくなっていくのを


そうして醜いものに変わって

彼女へと向けていたままでの感情を壊していくのを


綺麗な恋愛感情を

そんな醜い感情で壊していくのを


でも、僕はあの日

キスをした日の夜、夢の中で彼女を犯した

抑えてきた感情が決壊して

抱きしめたい感情のまま、妄想の限りに彼女を犯した


今までは平気でいられたはずなのに

忙しい日々の中、会えない日々が歪みとなって

キスをしたとき、どうしようもなく抱きしめたい感情が溢れた


でも、僕には抱きしめる勇気なんてなかった

いつだって受け身だったから

ただ、自分の不甲斐なさが明るみになるのが怖かった

それで今までの関係が壊れていくのが怖かった


だから

罪を重ねることでしか自分を抑えることが出来なかった。


「“君が生きてなかったら 僕は生きてないよ”」


 不意に付いた言葉だった。感情が膨らんで、彼女によって支えられている自分に気付いて、自傷を繰り返すように僕は今日、羽佐奈にそう呟いていた。

 デスクに座る羽佐奈は一体僕の言葉にどんなことを思ったのだろう、僕の認識力ではわからないけど、羽佐奈は少し俯いて言葉をすぐさま返しはしなかった、たぶん出来なかったんだろう。

 会えない時間が冗談を冗談じゃなくしていく、何もしていないのに何か関係性が変わっているような感覚、それは明らかに僕がおかしくなったことへの反動だった。

 僕はどう言葉をフォローしてよいのかも、どう訂正してよいのかもわからず、同じように言葉をなくした。

「僕は最低だ・・・」

 自己嫌悪の海に沈んでいく、どこまで落ちるかもわからない海の奥へと引きずられていく、妙にリアルな記憶の中を妄想で浸食する意識が、彼女を人形にしていく、知らない部分は知らないまま、出来うる限りの妄想の果てに、彼女は泣き、叫んで、喘いで、僕はその複雑な意識の中で、ただ自らの想いを滾らせて夢が覚めるまでの間、彼女を犯し続けた。


“さぁ、気付いただろう自らの罪に。さぁ我に譲れ、間違いを犯す前に、今ならまだ間に合う、その意識ごと脳を罪で支配される前に”


 再び聞こえてくる闇から響き渡るような声、そして突然浮かび上がる幾つもの黒い影、二つの瞳を真っ赤に光らせ、少しずつ僕の方へ近づいてくる。

「なんだよ、こいつらは・・・」


“私の下僕だ、飢えているからな、あまり抵抗しないほうがいいぞ”


「そんなこといったって・・・、こいつら容赦しないだろう絶対っ!」

 そして待ったも無しに十字を掛けるように次々と番犬のような野良犬たちが狂ったように飛びかかってくる。

「なんだってこんな僕に向かって襲ってくるんだよっ」

 姿も見えないところから聞こえる声と、悩の中を浸食するどこからか来たのか解らない不安が、常識では考えられない状況を麻痺させ、なんとか抵抗するしかない状況を作りだしている。

それに加えて食ってかからんとばかりに鼻息を荒くして飛びかかってくる野良犬たち、辺りが暗いせいでそれが何頭いるのかもわからず、僕は何とか視界に入った犬の攻撃をギリギリのところでかわして凌ぐしかなかった。

「なんでまた僕がこんな目にっ」

 一切の休む間もなく野良犬たちは飛びかかってくる、獰猛な牙で食いかかってくるのを恐怖心だけでなんとかかわす、しかし次第に休みない攻撃に体力を奪われ反応が遅くなっていく、そして段々と意識が遠のくのが解るほどに視界に襲いかかってくる野良犬を捉えられなくなっていった。


“哀れだな、捕らえるのももはや時間の問題か”


「(このままじゃどうやったって逃れられないっ! 一か八か反撃しないとっ!!)」

 なんとか一方的な状況を打開しようと右側から飛びかかってくる野良犬が見えた瞬間、背中に背負っているリュックサックを左手に持ち替え思い切り振り上げる。

 ボンっ!!と鈍い音と共に野良犬は悲鳴を上げて地面に転がっていく。

「(なんとかこれならっ!)」

 襲いかかる重い空気を振り払うようにさらに左側から来た野良犬にも一撃を食らわせる。しかし何匹いるかもわからない野良犬は攻撃の手をゆるめることはなかった。

 背後からやってきた三匹目に気付かずに僕は背中から押し倒されてしまった。それを皮切りに次々と容赦なく野良犬たちは襲いかかってくる。

「いやっ! やめて!! 痛いっ!! 僕が何をしたっていうんだよ!!」


“さぁ、もう終わりだ、その身を我に譲れ”


 野良犬たちは咆吼を上げ、起き上がれないように次々と飛びかかってきては肌を引っ掻き、傷を作っていく。

 抵抗も叶わないまま生傷は増え続け、段々と血が抜け意識が遠のいていく。


それはまるで天に昇るように


意識のもっと奥の方から浸食されていくような心地だった


「痛いっ!! 僕の中で何が起きてるんだよ!! 頭痛が広がって、意識が・・・、ボクガ・・・、ボクノソンンザイガクワレテイク、ミエナイナニカガイシキソノモノヲノットッテクル、アアアアッッ、アタマガヤケル、グレンのホノオニヤカレ、キミヘノオモイが、ツタエタイオモイガ、ボウキャクノウミヘトシズンデイク」


変わっていく


戦意を無くし、抵抗を忘れた僕から


肉体の管理が移行していく


そこにある霊魂へと、広がっていく光の中で


「遠ざかる意識の中で考える。僕のしてきたことは正しかったのか。

答えは見つからない、だから僕はこの光を拒絶することが出来ないのだろう。

 そして僕はやっぱり君のことを・・・・・・」

 

そこで意識は途切れた


最後にはもう恐怖はなく、眠るのだという虚無感だけだった

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