第十一章後半 「それぞれの末路」
シーン3「悲しみの決戦」
珍しく今日も一人での登校だった。
頭の中に残ったしこりは依然として消えることはなく、いつも後ろを誰かに付けられてるのではないかという恐怖感に包まれている。
せっかくの霊感もこんなときだけ役に立たない、根拠のないことに頼るなんてやっぱり私らしくないのか、でも少しでもこの恐怖心が薄れるようになんでもないと教えてくれればいいのにと思ってしまう。
住宅街を歩き、狭い横断歩道を渡り、頭上の電柱の張り巡らされた螺旋模様を見ながら学校までの道のりを歩いていく、人が同じように歩いているのを見て安心して、小道に入って一人になると不安になって、通学路の道のりはここ数日こんな事の繰り返しだった。
今までここまで不安がることなんてなかったのに・・・、むしろ何かを感じ取っているのだろうか? どれだけ考えても答えは沸かなかった。
学校に着いて私はいつものように何気なく下足箱を開けた。
今日も何もなければいいのに・・・、しかしそんな願いは今日は届かなかった。
あまりに唐突に急速に時間は回り始める、もう一人はいるであろう犯人の影、ずっと逃げようとしても逃げられないだろうと思っていた、むしろ立ち向かわなければならないだろうと覚悟していた、いつか必ずその時が来ると覚悟していた。
そう、あの日の犯行予告は石毛さんではない、由佳里を襲ったのは石毛さんではなくクイーンというもう一人の存在、今この時そのクイーンがもう一度私に向かって牙をむきだした。
下足箱に入っていたあまりにブキミな真っ黒の手紙、切り絵のように書かれた幾何学模様の文字、まるで何かの儀式のように、私にはそれはあまりある憎悪を表現しているように思えた。
「――――今一度あの場所で、午後5時の公園の鐘の下
今度は決して逃げることは許さない、また大切な人を犠牲にしたくないなら
一人対峙することを提言する
この事件を終わりにしたいなら、決して逃げることはないように」
不造作に配置された言葉を配列し、訳していくとそんな風に読むことが出来た。
どちらにせよ逃げることなど出来ないだろう、誰を頼ることも出来ない、今度こそ私が解決しないと。私は確かな決意を固めた。
どんなに怖くても運命からは逃れられない・・・。
どうして私をここまで付け狙うのかはわからない・・・、しかし私には立ち向かう以外の選択肢は残されていなかった。
あまりに虚ろに、作戦なんて考える余裕もなく刻々と時間は過ぎた。
私は内ポケットの中のコンバットナイフを握った、畑山さんから預かった護身用のナイフを握ると少しだけ勇気がわいてくる、終業のチャイムが鳴り、私は真っ直ぐに公園へと向かった。
ゆっくりとした足取りで公園までを歩き、その時間を待った。
―――PM:5:00、黙祷を捧げるように鐘の音が鳴る。
時計台の下にはよく見知った顔が、この時をずっと待っていたように佇んでいた。
「覚悟は出来てる?」
制服姿の少女は私に問いかけた。
「どうして・・・、あなたが・・・」
「私はもうあなたの知る内倉 友梨じゃないわ、あなたが何を思ったって無駄よ、これは避けることの出来ない殺し合いなのよ」
まるでこの空間だけが世界から切り取られたかのように、異空間に飛ばされたかのようにこの場所だけは現実感などなく、何者の干渉を許さず二人だけの戦場へと変異していた。
「友梨ちゃん・・・、どうして私たちが争わなきゃならないの? こんなのおかしいよ!」
「これは運命よっ! 主の願いだから、私はそのために生まれてきたのだから!」
友梨の体が閉塞した空間から解き放たれるように高速で私に向かって襲いかかる。
黒魔術を連想させるような奇妙さでまるで中世ヨーロッパに出てくるような細長い剣を振りかざす、私は体へと届く寸でのところで懐からコンバットナイフを取り出し振りかざされた切っ先を止める。
あまりのサイズ差で止めるのがやっとだった。
「しっかり武器ぐらいは備えてたのね。でもいいの? そんなか細いナイフで? 私はあなたを殺す気で来てるわよ、このクイーンレイピアからはどうやっても逃れられないわ」
どんなオカルトかはわからないけど、どこから持ち出したのかも分からない銃刀法違反の代物にしか見えない剣を何度も躊躇なく友梨は振りかざしてくる。
あまりの凶器の性能の差に私はナイフで一つ止めては避けるようにうまく体をずらして相手の背後を取ろうと金属の交錯する切っ先を離し、避けるように体をひねる。
しかし友梨にはすでに殺すことしか頭にないのか闇雲に剣を振りかざすことにどれだけ背後を取ろうとも次の一撃が高速で襲いかかりとても不意打ちをする余裕はない。
キン!! キン!!! カキン!!!
何度となく金属同士が触れ合う鈍い音が辺りに響き渡る。
「絶対おかしいよ!! こんなの間違ってる!! 私には全然こんなことしなきゃならない理由なんてわからないよ!!!」
「あなたが理解しようがしまいがどちらでもいいのよ!! ただ私はジャックの借りを返すだけ、彼の無念を晴らすだけよ!!」
遠慮などない次第に激しくなる剣劇に私はどれだけ避けようとも逃れることが出来ない、止まることなく続く命を狩りあうような緊張感で頭がおかしくなりそうになる。
カン!!! キン!! カキンっっ!!
止まることのない衝撃に次第に息が荒くなる、小柄な友梨からは信じられないくらいの力で私の身体を引き裂こうと切っ先を向ける。
「あなたたちは、何の理由があってこんなことをっ!! 訳が分からないわよ!!!」
触れ合う金属金属の間をすり抜けるように友梨の体に足を振り上げる。
ドン!! という音を立てて友梨が体を転ばせる。
「あの日由佳里を襲ったのがあなただというなら私は簡単には許さない。
まだ抵抗するのなら容赦しないわよっ!!」
「友人を身代わりにしておいてよくそんな言葉を・・・、あなたがすべての元凶でしょう!!」
立ち上がった友梨は息を荒くしながらも決して立ち止まることなく私に襲いかかる。
「誰があなたに人を傷つけていいと許したのよ!! そんなこと誰にも許されていいわけないでしょ!!」
襲いかかる友梨に覚悟を持って私は立ち向かう、力と力がぶつかり合いお互いが吹き飛ばされるように後ろへと倒れかかった。
「そんな・・・、霊媒師だとでも言うの・・? 体中がズキズキする・・・、頭が割れそうだっ・・・」
吹き飛ばされた衝撃で友梨が苦しみ出す、私は間を入れずに友梨に向かって切っ先を向け襲いかかった。
「ううぅっ! でも私は彼のためにもこの身を投げ出すわけにはいかないのよ!!」
友梨は辛く顔を歪ませて、頭を左手で押さえながらも右手の剣で私を押さえつけた。
使命感や決意を持って、一歩も引くことなく二人は対峙する、いつ終わるともしれない緊張感、決死の覚悟で私は友梨を追い詰めていく。
「(なんでっ・・・、体育も休みがちで体の弱い友梨ちゃんがこんな力があるなんてっ!)」
普段は大人しい友梨、でもこの前見せてたーオカルトな側面はどうしてか頭の中に残っている、それは友梨が突如として友梨ではなくなったような、そんな突発的な変異。
もしかして・・・、オカルトにも程があるけど何か別の何かに憑依されているとでもいうのだろうか、体までも浸食してしまうほどの強い意志を持って。
「ああぁっ!! 頭が痛い・・・、焼けるようだっ・・・」
友梨は左手を頭に押さえて私の攻撃を振り切ると公園の奥、山の奥の方へと突き進んでいく。友梨は止まることなく斜面を登っていく、それを追って私も木々を横切って追いすがる。
「どうしてなの? どうしてこんなことに私が巻き込まれなきゃならないの?
おかしいじゃない・・・、ちゃんと説明してくれないと訳分からないよ・・・」
斜面を登り切った友梨が足を止めた、もう後ろに道はなかった。
「私たちだって被害者なのよ・・・、まさかこんな子がいるなんてね・・・。
私たちはただ自分たちの体が欲しかっただけなのよ、まだ生きていたかっただけなのよ。
あんたに言ったところで何の意味もないだろうけどね、私はこんな所では終わらない、終われるはずがないじゃない・・・、せっかく若い体を手に入れたのに、引き渡せる訳なんてないじゃない」
友梨は今にも飛びかからんとばかりに右手を真っ直ぐに伸ばし凶器を突きつける。
「分からないよ・・・、あなたたちが何者かなんて・・・、でも、そんな身勝手なことが許されるわけないじゃない」
「あなたはまだ気付いていないのね」
「何を一体・・・?」
「私たちはね、霊体なのよ。正真正銘の死後の存在なの。
そしてこの子は霊界に興味があったのね、私が最初に見たときからあまりに強力なくらい心が不安定だった。だから私はこの体を選んだのよ。憑依するには心が不安定な弱った肉体の方がより取り憑きやすく制御しやすいからね。
酷く悩んでたのよ、あなたが友梨と呼ぶこの少女はね、何も知らなかったんでしょう?あなたは」
あまりの信じがたい真相だった。この今話しているのが友梨ちゃんじゃなくて幽霊?
この変なビリビリとした違和感ようなものがそうだというの? あまりに常識を逸脱した話しに私は何が何だか分からなくなる。
「一ついいことを教えてあげるわ」
「何よ一体! これ以上まだ与太話をしようというの!?」
「混乱してるの? まだ信じることを否定してる? でもこれは全部本当の事よ、だってあなたの知っている友梨という少女は全然違う性格で全然違った喋り方をするはずでしょう?
まさかこれが演技のはずがないじゃない? ジャックはあなたの注意を逸らすために必死に嘘を貫いたけどね、私は嘘なんて付かないわ、だって私の目標は復讐を遂げるだけだもの。
さて、余計なことばかり話しすぎたわね、一番大切なことを教えてあげるわ。
この子の魂はね、私にずっと体を乗っ取られていることでもうすぐ消滅するわ、精神崩壊を起こすの、そして完全に私の身体になる、もう元の内気な少女には戻らないのよ」
言葉を発しているのは確かにあの友梨ちゃんなのに・・・、まるでその友梨ではないかのように言葉を続ける。石毛さんを犯罪者へと変貌させたのはジャックっていう別人格でこの友梨ちゃんの体を乗っ取っているのがクイーンと自分で名乗ってる別人格って事? なんて奇想天外なめちゃくちゃな話し・・・、でも、このままじゃ友梨ちゃんの魂が消えるって、私はどうすればいいの? こんな話しを信じるの? だけど・・・、このままじゃ何も守れない、何の解決にもならない。例え相手が友梨ちゃんでも引き下がることは出来ない。
「私は・・・、みんなを守らないといけないの。あなたが由佳里を襲ったことが事実なら、あなたに罪の重さを教えないといけないのよ!!」
私は止まることなく友梨の体へ向かった突進した。
「どうして・・・、こんな時に頭がズキズキする。何が異常だっていうのよ!?」
友梨は私の突進に対して頭を左手に抱えて鈍く抵抗することしかできない、そして友梨の激しい抵抗と共に激しく二人は交錯し、衝撃と一緒に体が崖から投げ出される。
「「“ああああぁぁぁああっっっ!!!」」
私たちは悲鳴を上げながら崖を転がり落ちていく、もの凄い衝撃と痛みを受けながら果ての分からない距離を落ちていく。
「う゛うううっ・・・・・・」
どれだけ落ちたのか、微かに私は意識を取り戻した。
崖の下の落ち葉の大量に積もった土の上に体が転がり込んでいた。
「本当にあなた化け物ね。こんな度胸があるなんて・・・、ジャックが手に負えなかったのも無理ないわね」
一緒にすぐそばで倒れ込んでいる少女、友梨の声だった。
体中がズキズキして、立ち上がるのさえ容易ではない、なんとか私は体の向きを変えて友梨の方を見た。
「どうしてそこまでして生きようとするの・・・?」
きっと頭は混乱していたんだと思う、沢山に言いたいことはあったはずなのに、ふとそんな言葉がぽっと出た。
「それは人間だからでしょうね・・・、私が今こうしているのは本当はほんの偶然なのかもしれない、だって、例えば自分が突然死んでしまったとしたら信じたくなんてないでしょ?生きられるものなら生きていたいと思うでしょ? これはただそれだけのすれ違いなのよ」
友梨はただでさえ体が弱いのに体中を擦り傷だらけし、所々に血が流れ落ち、あまりに痛々しい姿でもうボロボロになっている。そしてすでに虚ろな瞳で私の方を見つめもう戦うことも出来ない状態だとわかっているのにその必死な目を離そうとしない。
12月の冷たい風が吹くというのに顔の表面には汗が滲み、長い髪が汗の部分にへばりつき、なんとか体を動かさそうと手足で必死に抵抗を続けていた。
“私たちが願った未来はこんな地獄じゃなかった”
私は堪らずに口に出していた。これまでいろんなの想いが溢れてくる、こんなうまくいかないことばかり、守るって決めたのに、こんなボロボロな姿で倒れ込んで、まだ誰も助けられていない、私は悔しくて堪らなかった。
「・・・・・・どうかお願い、主様のことは恨まないで。あなたが正義感の強い人だということはよく分かったわ。だから主様自身も被害者だということを忘れないでおいて・・・」
友梨はそれだけを言った後にゆっくりと瞳を閉じて、次の瞬間力が抜けたように、グッタリと倒れ込んだ。
「いややぁぁぁぁぁああぁぁあぁぁぁっっっっ!!!!!!!!」
意識の閉じた友梨を見て、私は気持ちを抑えられずに叫んだ。
“また大切なものを失ってしまった”
こんなことになるなんて、誰も想像できないような結末に至って、私はこれ以上気持ちを抑えることが出来なかった。
夕焼け空が次第に夜空へと変わるような空の下、落ち葉の沢山降り積もる木々の中で、ずっと友梨の倒れた姿を見ていることしかできない。
そして私は信じられない光景を目にした。友梨の体から白い球体をした光が上空向けて昇っていく、それはあまりに幻想的で現実と思えるような現象ではなかった。
「やめて!! いかないで!!!」
もう私は感覚でしか言葉を発することしかできなかった。
まるでそれが友梨の魂が昇っていくように見えたから、見えてしまったから、私は何度も離れていく光に向かって叫び続けた。
そして私は、しばらくして力を失い、自分自身も意識を閉じた。
「ありがとう・・・、彼女のことを解き放ってくれて」
ずっと意識の奥、光の照らす場所でどこからか声が聞こえた。
「(友梨ちゃん?)」
私はその声がさっきまでの口調とは違う本来の友梨ちゃんの声に思えた。
「私は彼女と一緒にいる中で、彼女の哀しみも共有できたから分かるの。
私は生きていて無駄ではなかったって、これで満足とは行かないだろうけど彼女にとっても気持ちの整理が出来たはずだから、これは私が何をしたらいいのかも分からないで無価値なことばかり繰り返しているよりはずっと有意味だったと思うの。だから私は後悔してない。
うん、ただ、それだけが伝えたかったの。
私の話し聞いてくれてありがとう。こんなに優しい気持ちで話せるのは初めて。
本当にありがとう赤津さん・・・。そしてごめんなさい・・・、苦労ばかり掛けさせて」
白い光が辺りを包んでいく、記憶の中からシルエットまでは浮かんだ、でも今している表情までは分からなかった。
でもきっと悲しそうな表情はしてなかっただろうと思う、私は遠い意識の中でそんな風に思った。
*
シーン4「ユグドラシルの黒煙」
あれ? ここはどこだろう?
いつなのか、何も分からぬまま意識が開く。目を開くと白い天井が見えて、私は白いシーツにくるまられて眠っていた。
「目が覚めた?」
「由佳里?」
声のした方に目を向けるとぼんやりと由佳里の顔が見えた。制服姿だった。
「随分疲れてたのね。もうまる一日経ったわよ」
「えっ? ずっと眠ってたの?」
「そうよ、本当心配させて、でもよかったわ、なんとか目を覚まして」
そう言って由佳里は優しそうな目を送った、うっすら瞳からは涙が滲んで見えた。学校が終わった後なのにずっとそばにいてくれたんだろう、きっと感謝しても仕切れないだろうなと私は思った。
まだ体全体が痺れたような感覚がしてなかなか起き上がることが出来ない、わたしがなんとか起き上がろうとすると由佳里はそれを制止した。
「無理しないの、まだ力が入らないでしょ」
「うん・・・、ごめん」
また謝ってしまった、なんだかいつも謝ってばかりのような気がする。でも今は由佳里の優しさが凄く嬉しかった。
「そうだ!? 友梨ちゃんはどうしたの?」
私はあの時の記憶を辿って、なんとかその問いを導き出した。
「大丈夫よ、きっと、今も眠ったままだけどね」
「そんな・・・、本当に大丈夫なの?」
「何があったのか知らないけどね、頭に包帯巻いてた、綺麗な長い黒髪だったのにね・・・、なんだかそう思うと辛いわね」
由佳里は寂しげに遠くの方を見た。それは全然大丈夫じゃないと思う・・・、あの時のことを思い出す、崖から私と一緒に転げ落ちて友梨ちゃんはとても苦しそうにしていた、そしてどこかから聞こえた声、それが友梨ちゃんだったのかは分からない、でもどうしてかその声はすべてを悟りきったかのようで、死にゆく人の遺言のように聞こえたのだ。
「由佳里は友梨ちゃんの異常に気付いてた?」
私は一番の疑問を由佳里にぶつけた、この問いにどう答えるかは私自身も怖いところであった、しかしこんなことになって、聞かないわけにはいかなかった。
「ねぇ、私は思ったのよ、それを言ったところで誰が信じたんだろうって」
「えっ?」
思わぬ回答に私は言葉を失った。それはどういうことだろう? どれだけその意味するところを説明しても受け入れられないだろうって事?
「私がどれほど彼女のことをF60に基づく人格障害なり総合失調症だと思ったとしても、どうしたってそれを証明するすべはないし、そこまでのことをする勇気も私にはないし、私はクラスメイトをそうして傷つけるようなことはしたくなかった」
「それは・・・、そうだけど・・・」
「確かに何もかも間違いであればいいと思ったわ。
でも残念なことに結果的にはそういかなかったのね、辛いことだけど」
人を疑うようなことはしたくない、そんな気持ちが由佳里にはあったのだろうか。
由佳里は自分が襲われたことをあまり話そうとはしなかった。
「だからこそ否定できないか・・・、私も信じられないもの・・・」
「そう・・・、ならいいじゃない。もう全部済んだことなんだから」
そうなのかな・・・?
私の中に幾つかの疑念が残った、今でもいくつかクイーンと名乗る友梨ちゃんの取り憑いていたとおぼしき人格の言葉を思い出す。
果たして全部解決したのか? 魂に還った彼らは全てを満足したのか? これ以上彼らの関係者はいないのか? 主とは一体誰を指すのか? 私は考えれば考えるほど安全の保証なんてこれっぽっちもなんじゃないかと思った。
「明日には退院できるでしょ? また遊びにいこう」
「うん、そうだね」
私は由佳里に合わせるように答えた。
「羽佐奈はコーヒー好きだもんね、私はまだ苦手だけど、喫茶店また来てくれたらいいよ、私また通い始めたからさ」
「そうなんだ・・・、うん、絶対いくよ」
私はまだ体調も万全ではなく力なく答えた。
そして、翌日私は退院した。
受けた傷自体は擦り傷や切り傷が少し残っていただけで大事には至らなかった。
友梨ちゃんはまだ病室で眠っているらしい、あの場に一緒にいたものとして本当に悪いことをしたと思う。犯人が犯人なだけに警察の捜査もそこそこに済まされるだろう。
何事もなかったようにとはいかないが、私は再びいつもの生活に戻ろうとしていた。
これにて第二部「ジャック&クイーン編」は終了です。
そして次回からの第三部がいよいよ最終部となります。
最後とあってシナリオもメインキャラクターフューチャーがほとんどになります。
この物語の表のテーマ「絆」をメインにそれぞれの人物を巡るドラマの最後を是非お楽しみください。




