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第一章 「ジャックナイフ」 シーン1、2

これは長編小説「羽佐奈シリーズ」の3つ目の作品になりますが特にここからでも問題なく読み進めることが出来ます。

 内容としてもちろん一作目、二作目の内容も絡んできますが、複線の回収はしっかりしていくので大丈夫です。。

 ちなみ一作目は羽佐奈が8〜9歳の頃、これは事故から意識が戻り病院を退院してシングルファーザー家庭として敏夫と暮らす過程と学校に通い始め由佳里と出会う話しです。

 二作目は13歳の初恋編、なんやかんやで彼氏と付き合い、別れるまでを描く一大スペクタクル、テーマは「あなたのためにできるすべてのこと」、

羽佐奈〜3rd story〜

15歳編・a Ghost Winter….

Episode to

Messengers who repeat encounter

〜邂逅を繰り返す使者達〜


第一章 ジャックナイフ


シーン1―基点映察―


黒きものは迷いを好み

白きものは清浄を好む


繰り返されるは殺戮

いかなれどどうするすべもなし


ただ招かるは人の魂

それ、いかなるは冥界に召すべし


この世に生かされるは残るべして

ただここには数千の形見だけが眠る


ただ求むるは 千年を持ち望んだ邂逅

それあらば我 いかなる次元も忘れよう



 私は占いは信じる方ではない、しかしそれも時と場合にもよるというものだ。

そもそも占いとは一般的に統計学的データや社会学的なデータによるものであり必ずしも当てずっぽで言ってるわけではない。

 それがわかるのが性格診断だったり血液型による行動分布(性格形成原理に基づく)であったりするが、もっぱら占いが占いの結果を呼ぶとされている。

単に私が信じないというのは人間を血液型とか干支で区別して性格形成をコントロールしようという策略が見え隠れするからだ、これを言うとよくひねくれ者だとかなんか疑り深い人と呼ばれるがどうにも納得できないでいる。

「赤津―――!」

 気付けば先生が私の名前を呼んでいた。そういえばテストが返ってくるって言ってたっけ・・・、私は席替えの際に決まった窓際後方の席を立ってタッタッと小走りに教壇に向かった。

 それから約50分後、昼休み。

「赤津すごーい! また満点取ってる!」

 昼休みになってまもなく、いつの間にか気付けば私の席の周りには数人のクラスメイトがやってきていた。

「たまたまだって、あの先生のテストいつも基礎しか出さないから」

 私は少し面倒に思いながらも答えた。

「でも数学は結構平均点低かったらしいわよ、今度勉強教えてよ」

「ははっ・・・昼休みでよかったらね」

 私は苦笑いを浮かべながら言った。勝手な推測だけどこんなテスト問題で平均点落ちるようでは先生は頭を悩ませているだろうと思う。

「あたしも今回はギリギリだったって、なんか公式覚えるの面倒だったし、期末は応用とか言われたらホントについていけないって」

「そんな瑠美全然勉強してないで寝てばっかりだったじゃないの、それであれだけ取ってたら十分じゃないの、むしろ怪しいぐらいよ」

「何言ってるのよ、テスト前はちゃんと勉強したわよ、そう言えば由紀奈今回は国語だけ悪かったけど何か前日に忙しいことでもあったの?」

 瑠美は由紀奈を疑わしい目線を送って言った。

「何もないってば、勝手に話し作らないでくれるっ!」

「あははっ! 由紀奈ってば何動揺してるの? もしかして彼と違う勉強でもしてたの?」

 瑠美は一番とテンションを上げて声を張り上げた。

「ちょっとちょっと、何の話し?」

「由紀奈の彼氏の」「あー、バスケ部の? それがどうしたの?」


「ちょっといい加減にしてよ、詩澄まで入ってきて」


 三人はどうもいつもの調子で盛り上がっているようだった、由紀奈は割と勉強もできてスタイルもいいからクラスメイトの中でも人気が高い、特に運動部のマネージャーもしてるからそっちの繋がりの方が大きいとは思うけど。

それが原因かはわからないけど最近つきあい始めた彼のことで弄られることが頻発に起きていたりする、言うなれば宿命なんだろうけど。


「赤津さんは・・・どんな勉強の仕方をしてるの?」

「えっ? あっ友梨ちゃん」

 かなり大人しめの華奢な女の子、友梨ちゃんはそぉーと私の隣まで自然とやってきて質問をしてきた、いつの間にやら話題が変わったところに入ってくるとは、友梨ちゃんも場の空気を読めるようになったのかな。と思ってみたりする。

「いや、少し気になったものですから、いつも成績がいいから、特別な勉強法でもしてらっしゃるんじゃないかと」

 そうゆっくりと異常なぐらいに丁寧な口調で友梨ちゃんは言葉を続けた、友梨ちゃんからこんなこと聞かれるなんて、ちょっと不思議な気分。

「私そんな特別な勉強なんてしてないって、授業の内容は一度聞いたら覚えられるし、通信の資料で大体先のことまで勉強しちゃってるから出来てるだけだよ」

「でも赤津さんって、あっ、でもそういう人も中にはいるのか」

 友梨ちゃんはボサっと小さな声で言った。

「うん?? 何か言った?」

「赤津さんって、DIQが高いんじゃないかって思って」

「はぁ・・・、友梨ちゃんってそういうこと考えるの趣味な人?」

 DIQかぁ・・・、ちょっと複雑、私はあんまり自分を特別な人間だとか思っていないから、今だってたまたま出た結果だと思ってるし、私の年齢から考えてもデータの総数から言ってもあまり正確とか言えないわけだし・・・。

「あっメール・・・、誰からだろ」

 メールは由佳里からのようだった。

「(なんだ・・・、今日はお昼一緒出来ないのか、ちょっとここ抜けられそうにないし、今日は教室で済ませるか)」

 親友の由佳里と一緒にお昼を食べれないのは残念だ、あんまり騒がしい教室で食べるのも好きではないんだけど、この際諦めるしかないか。

「ちょっと、赤津さん、赤津さん!!」

「えっ?」気付けば話しかけられていたようだ。

瑠美は待ちくたびれたような表情を浮かべて呆れ顔だった。

「ドラマの話しよ、ドラマの話し、それを聞きに来たんだから」

 そう言えばそうだったなぁと彼女たちの興味から考えて思い出した。

「昨日の第一回の放送見たよぉ、凄いビックリしたんだから」

 一緒に詩澄も乗っかって言葉を繋げた。

「あははははぁ・・・」

 私はさすがに突っ込まれるかと少し諦めも込めて苦笑いを浮かべた。

仕方ないけど相手にするしかないか、瑠美に詩澄に由紀奈、それにちょっと気になってるような目線で友梨ちゃんも隣で話しを待っていた。

「ホントにあの妹役って赤津さんなんだよね? あたしあれ見た瞬間固まっちゃったんだから」

「あのドラマ結構出演陣も豪華だしねぇ、特に石毛さんとか! あたし結構好きなんだよね、ホントにあんな人がお父さんだったらいいのに」

「羨ましいわねぇ、ゴールデンタイムのドラマなんて早々出られるものじゃないじゃないの」

 瑠美と詩澄、由紀奈が順番に発言をする、どうにも話すタイミングが難しい・・・。

「出るようになったのはほんの偶然だよ、本当は育成枠から出すはずだったみたいだけど病気になったらしくて、その代わりだから。

 マネージャーさんが偶然その話しを聞いてて私を薦めたみたいで、あのドラマの演出さんが私のこと覚えてくれてたみたいで、ホントにドラマ自体も初めてだし、助演だとしても迷惑掛けるだろうから一度は断ったんだけどね。

 今更代わりを探す時間はないって押し切られちゃって。

だからほとんどレッスンとかなしでやっちゃってるから、凄い見苦しいと思うけど」

 昨日から放送が始まった水10のドラマ。

 団地を舞台にした家族間の交流がメインになってるドラマで、どうしてか私はその中の一つの家族の妹役に任命されたのだった。

結構出演者自体も多くて、私の家族の姉役も育成枠の人だったりする、その父親役が有名な芸能人で私はかなり緊張して挨拶に行ったのを覚えている。

 その家族形態がシングルファザーの家庭で私としては他人事では思えなくもなくちょっと楽しかったりしている。

 実のところ多くの家族が紹介(というか話しに関わってくる)ので台本を見る限り出番のない回もあるようでちょっと安心してもいる、しかし迷惑は掛けたくないのでいつもプレッシャーの中で演技していることには変わりはない。

 それに許可なしに勝手にとはいえ推薦してくれたマネージャーの霧島さんにも悪いし、どうしてそこまで気に入られているのかは未だによく分からないんだけど、そんなに私は度胸があるのだろうか? 疑問は尽きない。

「全然そんなことないって、凄い演技も違和感なかったし、これが赤津さんなのって目を疑ったぐらい!」

「そうよね、全然違和感とか感じなかったし、むしろ表情が自然に見えて、緊張してるようには見えなかったわ」

 現場ではあまり褒め合ったりとかいう余裕はないので実際にこの場で評価を受けて驚いていたりする、普段マネージャーの霧島さんに褒められても信じないタチだからそれは一層大きい。

「そんなことないってば、凄く緊張してたよ。

余裕なんてこれっぽっちもなかったし、時間の感覚も麻痺するぐらいだったんだから」

「でも凄いわよね、芸能人相手に普通だったら萎縮しちゃうだろうに、特にあの伊吹さんが母親役の家族の子どもとか、あれはヤバかったよね」

「確かに、目に見えて緊張してるのわかったし、ちょっと気の毒よね」

 あの子はね・・・、と現場での壮絶な経験を思い出しながら思った、意外と二人はいいところを突いているなぁと感心した。

「それでさ、お願いなんだけど、できたら石毛さんのサインもらってきてよ、絶対お礼はするから」

「マネージャーさん通さないといかないから貰えるかわからないけど、一応頼んでみるよ」

 私は少し面倒に思いつつも承諾した。

 ちなみに現場では出演陣が多いのでサインのお願いなんかはマネージャーを通せと裏で言われている、一応個人的な付き合いがある人は普通に交流をしているようだけど、芸能人と違ってこっちは下っ端だからあまり目立ったことができないことになっているのだ。

 そんな話しが昼休み中しばらく続いて、昼休みが終わる10分前ぐらいになって私はようやくお弁当を開くことが出来た。


 先生が出張のようで6限が自習になった。

 そしてたまたま、ふと話し声が聞こえた。

「如月公園の話し聞いた?」

「えっまたなの?

「そうなんだって、これで先月に続いて二件目だって言ってた、今回は死人は出なかったみたいだけど、狙われた人が大怪我を負ったって」

「ちょっと最近、そういうの多くない?」

「ニュースで結構やってるよね、地元放送多いし」

「それでね、先月のと共通してるんだけど、やっぱりあったんだって

“切っ先がとがったナイフ”が、今回のはそれが直接の凶器じゃないっていうし、これは犯人があえて残したものじゃないかって言われてるのよ」

「ちょっとそれ出来すぎじゃないの? そういうの猟奇事件って言うんじゃないの?」

「でも私もニュースで見たよ、確かに凶器とは別にナイフが置かれてたって、被害者も前回と同じで中高生だったみたいだし、やっぱ狙ってたんじゃないの?」

「そんなぁ、そういうことは別の場所でやってくれたらいいのに、近所でそういう事件があるって思ったら怖いし」

「そうよね、ほんとに気をつけないと、犯人まだ捕まってないんでしょ?」

「そう、先月の事件の犯人もまだ目星付いてないみたいだから、まだこの近辺で潜んでるんじゃないかって」

「なんかそろそろ先生とかから話しも出そうよね、私バイトの手伝いしてるのに、帰り怖いなぁ」


 話しはどうも最近頻発してる猟奇事件の話しだった。

そういう人がいるっていうのは半ば信じられないけど、私は昨日はニュースで同じ話しを観たので信じざる終えなかった。

 先月の事件の時は地方局が中心でニュースになってたけど、今回はどうも全国で一度ニュースになったみたいだ。

 早く捕まってくれればいいんだけどと思いながら、同時に私は今日の献立も考えなければいけないのだった。

「(そういえば今日はお父さんの帰り遅いんだっけ・・・・・・)」

そんなことを思い出しながら自習の時間は過ぎていった。

終礼のチャイムが鳴る。

16時前という時間にもかかわらず先ほどとは打って変わって私は少し気持ちが高まっていた。

教室はザワザワと今日の学校の終了を祝うように生徒達の声で溢れている。

バタバタとした教室ではそそくさと教室を出て各々の場所へと出て行く人。

話したりず未だ談笑を続ける生徒、今日のこの後の予定を決めたりする生徒とさまざまであった。

 私は一つ気持ちを落ち着かせてから横に掛けてある帰り支度の済んだ指定カバンともう片方側に掛けてあるお弁当箱の入った小さく可愛くプリントされた袋を手に掛けた。

そうして次に私はイスから立ち上がった。するとそこに同じく準備を済ませた由佳里がやってきた。

「羽佐奈〜! もう帰り?」

「まぁね」

「おっと、今日はデートだっけ?」

 残念なことに親友の由佳里は大体が直球で言葉を放ってくるので容赦がない。

「デートってほどじゃないって、うちに遊びに来るだけ」

「そっちの方がある意味熱いと思うけど」

「おちょくらないでよ・・・、無茶言うんだから・・・」

「あはははっ・・・、そうね、お幸せにね」

 意味もなく頬を赤くして笑いながら由佳里は言った、事情を知っているだけにどうも冗談にも弱さを感じてしまう。

「はいはい、そういう由佳里は今日はどうするの?」

 私はそのままの位置で一度カバンだけを机に支えに立てて、由佳里の方をもう一度見た。

「またおじさんの所に行ってくる、やっぱ体動かすのは気持ちいいし」

 由佳里はさも機嫌良さそうに言った。

「バレたら停学になるわよ・・・」

「そんなことにないって、これは形式上バイトじゃないから。

私はおじさんのお店(喫茶店のウェイトレス)のお手伝いをしてそのご褒美にお小遣い(給料)をもらってるだけだから」

 カッコ書きが無惨に現実を語ってるような気がするけど・・・、由佳里は今は運動部にも所属にしてないし気分転換には打って付けだってたまに手伝いというか仕事に行っているのだ。

 まぁ何を隠そう私だって人のこと言えないようなことをやっているわけだが・・・。

その辺を突かれるとまた返しに困るのでこれ以上ケチを付けるのはやめておこう。

「無理しないでね、あんまり体強くないんだから」

「そんな体力だって落ちてないし、怪我しないよう気をつけてるから大丈夫だよ」

 そして私は一つ返事を返してとりあえずは納得するのだった。

「それと、来週でいいから喫茶店来てね、私も一緒だし、おじさんとかお姉さんとかにまた連れてきてって誘われてるから、二階の部屋も使ってくれていいって言ってくれてるし、別にいいでしょ?」

「う〜ん、あんまりお世話になってばっかりで悪いけど、この際断らないほうがいっか」

「よし、素直じゃないけど了承したからね、今日おじさんにも言っておくから」

「うん、わかった」

 ちなみにその喫茶店にはもうかれこれ長いことお世話になっている・・・、出来るだけお金は払うようにはしてるんだけど、時々遠慮に預かり奢ってもらっている。

 コーヒーの味を知ったのもこの喫茶店に通うことになってからだと思う。

といってもまだブラックで飲めるほど大人の味に目覚めたわけでもなくカフェラテやらカフェオレを飲むことが多い、でもこれでもコーヒーメーカーで作られた豆の味がわかっただけでも大きな進歩だと自分では思っている。

「それじゃあ、私はこれで行くね」

「うん、最近物騒だから気をつけてね」

「ありがと、早めに上がらせて貰えるよう言ってみるよ、私も乙女だからね」

 何気に生意気なことを言い残して由佳里は教室を後にした。

 全部私の方が勝ってるのに・・・。

と言ってやりたいが素直さでは負けてるかもと少し感傷に浸りながら私は一度携帯をポケットから出して時間を確認する。

「あっ! ヤバイ!!」

 はしたなく私は声を上げて随分と時間が過ぎてしまったことに気付いた。

彼が校門のちょっと先で生徒達が帰るのを警戒して見ながら待っている姿が目に浮かぶ。

「あ〜、待たせたらいけないっていつも思ってるのに・・・」

 私は急いで教室を後にする。トビラの所でドタンと肩をぶつけて激痛に体を振るわせながら、とりあえず軽く走れば痛みなんて忘れるだろうと半ば適当な気持ちで階段を駆け降りていく。

 下足箱から紐で綺麗に整えられた靴を多少乱暴に地面に置き、急いで履き替える。

そして上履きを靴箱に戻してガチャンと勢いのある音を立てて靴箱を閉めて急いで校門を出た。

シーン2「children's lovemake a happy home time」

 学校からの帰り道の一つ目の角、気休めに少し生徒の通る数の少ないその場所が私と彼のいつもの待ち合わせ場所なのだった。

「ごめんっ、待たせちゃって」

 彼を見つけるなり私は傍まで急いで手を合わせ腰を落として謝った。

「もう、遅いよ」

 ホントに待ちくたびれたように項垂れながら彼は言った。それで私は少しスイッチが入ってしまった。

「そういう時は、今来たところって嘘でも言うのよ!」

「そんなの無理だよ・・・、ここで待ってるだけでいつ誰かから話しかけられたらって怖い思いしてたのに」

「そんなことで怯えてるんじゃないわよ、さっ、早く行くわよ」

 強気に私は彼に訴えかける、そう、この恋において主導権はほとんど私の方が握っているのだった。


「今日は親父さん帰ってくるの遅いんだって?」

「そう、だから料理はいつも通りだけど食事は先に二人で済ませるってこと」

「そうなんだ・・・、一応僕はもう昨日のうちに家に伝えておいたから、お世話になるね」

「うん、私が誘ったんだし、遠慮しないで」

 夕食の買いものを制服姿のまま二人で済ませて家路へと急ぐ、こうしてまだ陽も落ちない時間だけど買いものをして一緒の家に帰るのは恥ずかしくてドキドキしてならない。

ものは慣れだと言うけど、こんなシチュエーション、嬉しくって私には慣れそうにない。

 思えばこうして私の家へと二人で歩くのも何度も繰り返したことだけど、彼のこの微妙に緊張している物言いとか態度っていうのはなかなか変化がなくて新鮮さを損なわなくて私には楽しみ甲斐がある。

「今日はまたゲーム持ってきたから」

「そうなの?」

「今度の面白いよ、最近ハマってるんだ」


 そんな話しをしながら2,30分する帰り道を歩く。

時刻はまもなく17時を指そうとしていて、少しずつ道に影を作り出していた。


 隣で歩く彼の名前は新田 司、身長は大体160いかないぐらいで私よりも少しだけ低くて華奢な体型をしていてあまり運動も得意ではないようだ。

私が休日のデートでヒールを履いてきた時なんて随分バランスの悪い二人に見えただろう思う、私自身はそんなことは気にしないし、私が子どもなりにスタイルがいいことをアピールできて優越感を感じられて私なりに全然気分は悪くなかったりする。

 こうして私の家で過ごすのは大体週に1、2回で多いときはもっと頻繁だったし、過ごさないことももちろんあるし結構まちまちな方だ。

 学年が一つ下で年下である彼と付き合ったのは偶然のようなものだけど、私的にはあまり気を遣わずに接しられてそれが長続きしている理由でもある。

 かれこれ付き合って4ヶ月以上だし、出会ったのは前の学年の時だから振り返ってみればいろんなあったし、大分落ち着いてきたなって思えるのも当然で、ふといろんな思い出を回想できるのも当然だった。

 最近は10月の中間テストであまり遊ぶ機会も取れず、勉強の手伝いをするぐらいだったから今日なんかは特に気分がよくこうしていられる時間は幸せで仕方がない。


 彼について語ることはたくさんあるけど、何より私の方が一度とはいえ恋愛経験があり、知識があるので、彼との付き合い方は時々不器用になる。

 何より未だ一度としてセックスをしてないことは、不埒ではあるけど私的には信じられない思いなのだ、まぁすぐにする気ももちろんなかったんだけど、さすがにこれだけ季節を過ぎると、タイミングも難しく、何度もスルーされ続けたことで、私はもう諦め気味である。それでも幸せであることに変わりないからいいのだけど・・・。

 彼はなんとも驚くくらい知識も意識もない、付き合っているだけで訳の分からないというか信じられないといった感じなんだろう、なんだか友達みたいな関係で会話することを自分を落ち着かせてるような対応にも見えて忍びない。

 私としてはもっと・・・、と、まぁこれ以上彼のそういう部分に触れるのはやめておこう・・・、少し虚しくなってくる・・・。

 そういう彼だから、私は求めてしまったし、傍にいて欲しいと思ったのだから。

そう考えると、私はまだ治療の途中ではないのかと思うこともあるし、見落としてきた道筋をもう一度確かめているという見解にも取れ、私は立派な理解の中で日々を過ごしているのだと考えようによっては納得できるのだった。

                   *

 今日は先に夕食にしようという彼の提案で、先に料理を済ませた。

今回は時間もあったしお互いの勉強会のような形で一時間ほど掛けて調理をして、料理が完成するとすぐに夕食にした。

「お父さんの分も一緒に作ってくれてありがと」

 私はお父さんの分を綺麗にラップをし終えて、予定通りに調理を終えられたことに満足しつつ、改めて彼に感謝をした。

「うん、でも羽佐奈はやっぱり料理上手だよ、レパートリー的にもそうだし、やっぱり工程が一つ一つしっかりしてる」

「そんな、褒められると照れるよ」

 私は変に嬉しくなった、どうにも彼のこういう所には弱くてすぐに子どもみたいに喜んでしまう。

「司こそ一個一個の料理が丁寧だし、盛りつけとかまでこだわり所はやっぱり勝てないよ。

私はやっぱり闇雲に料理も続けてきただけだから、日本食とか全部ごちゃまぜだし」

 そう言うと彼は全然そんなことはないとあっさりと私の料理の腕を認めてくれた。

 そうして私と彼は褒め合いを続け、ゆっくりと夕食を済ませた。


 そして約束通り夕食も終えて二人きりのゲーム会が始まった。

私だって負けじと少しずつPSの操作を覚え始めていて、徐々にハマりつつあるのだ。

しかしハマりつつあるところ悪いことに、彼はゲームに関してはかなり意地悪である。


 (例1)

「このゲームはわかりやすくて簡単だと思うから」

 そうしてやらせてくれたのは一人用のバイクのレースゲームだった。

「ねぇ」

 ふと私は気付いて声を掛けた、「何?」と簡単に返されて私は言葉を言いはなった。

「なんで普通に押してるだけなのにどんどん周りの自動車抜かしていくの?」

「これ、そういうゲームだから、余計なこと考えずに抜かしていっていいよ」

「そんなこといったって・・・、よく周り車にぶつかるし! なんか凄い怒鳴り声が聞こえるんだけど! エンジン音とかヤバイし・・・」

「そりゃそういうゲームだからね」

 そして・・・、次にありえないことが起きた。

「ちょっと、司! 警察に捕まってゲーム終わったんだけど!!」

「それはちゃんと逃げないとダメだよ」

 マジメなレースゲームだと思っていた私がバカみたいだった。

 そして捕まったバイクレーサー(公道走ってたけど!)というか暴走族は逮捕した警察に刑罰というかよくわからない辱めを受けていた。

えっ? 実際何をされたかって? そんなの私の口からは絶対言えない!


(例2)

「これはアドベンチャーゲームだから、話し聞いてるだけでいいから簡単だよ」

「ホントに?」

そう言いながら私はそのゲームを借りて、一日彼が帰った後にやってみた。

「ギヤーー!! グロすぎ!! 」

手が吹っ飛んだところで私はテレビの電源を消していた。

「あぁ・・・、怖かった」

「こんなの本当に販売してもいいの・・・?」

すっかり私は血の気が引いて危うくトラウマになるところだった。

「う〜、これは怖いどころじゃないわよ・・・、精神も肉体もイっちゃってるって、子どもに見せていいもんじゃないわ。

私は子どもができてるかを確認するためにお腹を引き裂いたり、実験と称しては釘を体に打ち付けたりするとこなんて見たくありません・・・」

そんな事を言ってる時点で結構な所まで進めてしまった気がするけど、その翌日二度する気はない、と、彼に盛大に文句を言いまくった。


「今日のゲームは大丈夫だよ・・・」

 どこからそんな自信が来るんだと私は思いながらも、彼の自信ありげな笑みを信じてみることにした。

「これは二人でできるから」

「そうなの? 何々?」

 二人でできるということで私のテンションは上がった、いつも一人用ゲームが多くてめんどくささを私は感じていたのだ。

「ブロックくずし2」

「それわざわざ協力してやるものなの?」

 しかも何気に2だし、今回も訳が分からない・・・。

「僕は協力するからこそ面白いんだと思うけど」

 彼はケースからディスクを取り出して床に引っ張り出したPSにセットしてガチャっと上蓋を閉めて電源ボタンを押した。

すると噂のブロックくずし2のディスクがブィィーンと回り出す音が聞こえ始め、テレビ画面にいつものロゴが表示されゲームが起動された。


「これ、普通のブロックくずしじゃないの?」

 PSだけあって妙に綺麗なブロックくずしの画面に不思議な錯覚を覚えながら聞いた。

「いろいろ進化してるから、例えば卓球みたくタイミングよくボールがくると同時にボタンを押すとスマッシュが打てるし」

 というと彼は豪快にスマッシュショットなるものを打ち、立ち並んだ壁を一気に貫通して壊していく、その光景を見ると今までのブロックくずしで一マスずつ壊していっていたのがキチガイに思えるぐらいに爽快感があった。

「よし、私もやってみる」

 そして私はタイミングよく、ここぞというタイミングでボタンを押すと同時に光を発光させボールを飛ばす、しかし・・・・・・。

「うわ〜何これ?! 180度回転して下に落ちたよ」

 まさに信じられない奇跡というか悲劇、下に落ちたら失敗だというのに自分から落としてしまうなんて何事!?

「それ、角度付けてスマッシュできるから、あまり横に方向切ったまま打ったら変な回転かかるよ」

 冷静に説明されてもこの衝撃は伝えられはしない・・・、しかしこんなことで屈してはいられない。司のためにも私は気持ちを入れ替えて頑張ることにした。


 10分後・・・。

「大分慣れてきたみたいだね」

 彼が嬉しそうに笑いかける。私もブロックを貫通させて壊す爽快感に感動を覚え始めていた。

「うわっ何これ!!」

 今度は慣れてきたところで二個三個と増え、スマッシュするごとに速度を増したボールが縦横無尽に走り回っていく。

「ちょっと、羽佐奈! そんなに速度上げたら処理できないって!!」

「そんなこと言ったって・・・」

 すでにブロックを消している場合ではなく自分の命が危うくなっていた。

「や、やめて!! 司! こっちに寄ってきたら私が左側に動けないでしょ!!」

「そんなこと言ったって・・・、ボールが来るんだから弾かないと」

「あーー寄らないで〜〜!! 反対側にも来てるから!!」

 どうしようもない叫びだけが部屋を木霊する、プレイヤーは一列になっているため、二人並ぶとカバーするためにお互いがお互いのいる方向に進まざる終えず、動きの遅い私はあっという間に動くスペースを失っていた。

「ブロックくずしなのに・・・、こんなに難しいなんて・・・」

 私はそれからもさまざまなステージを不器用ながらも進めていく。

 そうして夜はいつの間にか深くなって、外はすっかり真っ暗になり、ゴールデンの時間帯すら過ぎ去ろうとしていた。

「あ〜盛り上がった、変なゲームで難しかったけど、楽しかったわ」

「覚えてくると結構面白いよね、やっぱり協力プレイの方が楽しいよ」

「もうこんな時間だよ」

「ホントだ、かなり長時間やってたみたいだ」

 私は一つ用事を思い出した。

「そうだ、いい加減お風呂はいらないと、準備はもう済ませてあったんだった。

まだ制服のままだし、着替えないといけないから入ってくるね」

 私は半日以上着続けていた制服をつまんで、しわとかが汚れが付いてないか心配に調べらながら彼に言った。

「あっ、そういうことなら僕はそろそろ・・・」

 そそそっと遠慮がちに彼は言葉を小さくしている。

この行動は彼女として許すまじき態度だ。

「ダメ、ちゃんと私がいいって言うまで帰っちゃダメだから、途中までは送るからちゃんと待ってて」

 私はお姉さんみたいに彼に言い聞かせる。

「うう・・・、わかったよ」

 彼は逃げられないとわかったのか弱気に承諾した。

私は更衣室に向かって歩いて一つ彼に振り返った。

「一緒に入る?」

 私は何とも言えない笑顔で彼に聞いた。これでも私にとっては最大限の勇気を振り絞っていっているのだが。

「無理だよっ!!」

 嫌とか恥ずかしいとかいう次元じゃないみたい・・・、無理って何? せっかくの私の提案を破棄するなんて勿体ない・・・、まぁ断られることはわかっていたことだけど。

本当に純粋というか、せっかく付き合ってるのに、少しぐらいそういうことを楽しめないのかな? と思ってしまう。

「そう、カギ閉めないけど覗かないでね? 一緒に入りたければノックしてくれればいいから? 大丈夫、エッチなことはしないから」

 私はより一層意地悪な目で彼に言葉を掛けた、彼はそれに最大限の動揺で応えてくれる、彼の焦った表情がなんとも私に至福の喜びを与えてくれる。

「そんな勝手に覗いたりできないよっ! それにい・・・、一緒に入る時点でエッチじゃんか」

 そんな返しが余計に面白かった。やっぱりこんなことを言ってる私がおかしいのだろうか? いやでも一緒にお風呂はいるぐらい・・・、普通じゃないのかな?

いい加減可哀想だし、そんな考察はおいて置いて、早くお風呂に入ろう。

「でも、いつ入ってきてくれてもいいからね、それじゃあ適当に待ってて」

 私は更衣室の扉を閉めて鏡を見ながらお風呂に入るため、服を脱いでいった。

 正直あんまり私だってエッチな下着を着ていないのだが・・・、いや、本当付き合って最初の頃だけ期待してちゃんとしたの着てたけど・・・、今じゃ楽さを重視して済ませちゃってる・・・、彼氏いるっていうのに、ちょっと寂しい現実・・・、いや、15で考えることじゃないか。

 そんな風に、私は自分に言い聞かせて湯船の中でプカプカと泡を出したりして気持ちを落ち着かせていた。

 お風呂に入って火照った体を冷まさせるため、彼を途中まで送る。

 時間でいえば10分ちょいの距離。実際の彼の家まではそこからまたかなり離れている。

時々やっぱりこの距離をわざわざ来てもらうのは悪いなって思うときもある。

 でも私にとって彼といられる時間は大切だから、私は少しわがままだって思われるかもしれないけど、この時間を大切にしたいのだ。

 先ほどから彼は私のほうを見ていない、私だけが先ほどと変わりない、でもちょっと夜風を浴びて寂しげな制服姿の彼の姿を見ている。

 私の今の姿は綺麗かな? それとも普通にしてるけど私が変にエッチに見えて見れないのかな? 正直なところよくわからない・・・。

でもき、少しは私の姿に関心とか、色っぽさとかを感じてくれてるから私のことを見れないんだと私は思いたい。

 彼の好みとか私は未だによくわかっていないから、それはちょっと寂しい、聞けば褒めてくれるけど、似合ってないとか言われたことないし、こうした方がいいとかも言われたことがない。

 みんなテレビに出てるぐらいなんだからそんなこと気にしないでいいって言うけど、私は彼にとっての私でありたいんだよ、そんな無茶な訴えをしたくなる。

 完全に下ろした長い髪は未だ少し濡れていて、時々風に吹かれて頬に当たる髪がひんやりと冷たさを感じさせてくれた。

「羽佐奈のお父さん、最近帰り遅いよね? 仕事忙しいの?」

 もうすぐ別れ道というところで彼はようやく私の方を向いて聞いた。

私は突然のことだったので、彼と目があって驚いた。それに内容もどんな事を考えて出したのかわからなくて珍しく私は動揺した。

「今の捜査してることがなんだか厄介だって言ってたけど、仕事の内容とかは私もよくわからないの」

「そうなんだ・・・、結構不定期だもんね・・・、早く一段落付くといいね」

 あっ、いつも一人で家の中で待つ私のこと心配してくれてたんだ・・・、私はそのことに気付いてどうしようもないぐらい嬉しい気持ちになった、彼は本当に不器用だけど私のことを考えてくれていて、しかも言葉も優しいのだ。

「司・・・、ありがとう」

「えっ? どうして突然・・・」

 私の言葉に彼は驚き、恥ずかしそうにうつむいた。

「心配してくれて、凄く感謝してる」

 そんな言葉を言っている自分に恥ずかしさが溢れてきたけど、言葉を失うほど驚く彼をみるだけでもう十分だった。


 夜は更けていく。

 今日もいろんな事があった。

 私は彼とまた明日と別れて、家路に着いた。

 そして私は自分の部屋のベッドの中でウトウトとした意識の中で、お父さんの帰ってくる物音を聞きながら、変わらない一日の終わりに感謝をした。





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